('A`)がコンビニ店員になったようです

3: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/10(日) 22:05:21.13 ID:u7SVCB4F0
  

 ――――――ξ゚听)ξ「8よ!」―――――――


夢を見た。
もう死んでしまった親父に背負われて、ゆらゆら揺られる夢。

確か、祭りに行った帰りだったっけ?

親父にだだこねて、出店で当たるはずのない当たりくじを何回も引いて、
結局当たらなくて、泣き疲れて寝て・・・。
その帰り道、こんな風に親父の背中で揺られていたよなぁ。

親父の背中って、こんなに広かったんだ。
俺も、いつかこうやって背中に子供を背負うのだろうか?


今はもう、遠い日の思い出。
ずっと昔の、子供の頃の記憶がよみがえってきたかのような夢。



4: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/10(日) 22:06:37.21 ID:u7SVCB4F0
  
(´・ω・`)「やあ、目が覚めたかい?」


気がつくと、俺はショボン先輩に背負われていた。
親父の背中と思っていたのは、ショボン先輩の背中だったのかよ・・・。


('A`;)「・・・何で俺、ショボン先輩に背負われているんですか?」

(´・ω・`)「ブーン達に助けを請われてね。
     現場に駆けつけて見れば、君が長岡組にボコボコにされているじゃないか。
     さすがの僕もビビったよ。」


そう言えば・・・
俺、瓶で殴られたんだっけ?
頭をさすると、包帯が巻かれているのがわかった。


('A`)「これ、ショボン先輩がしてくれたんですか?」

(´・ω・`)「いや、兄貴だよ。
     兄貴は自衛隊のレンジャー部隊にいたことがあってね。
     そのおかげで、応急処置はばっちりさ。」


・・・シャキンさんって、何者?



5: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/10(日) 22:07:19.37 ID:u7SVCB4F0
  
そのあと、夜道を歩きながらその後のことを聞いた。

といっても、話は簡単だ。
シャキンさんが長岡組の若頭(あの支配人)と話を付けて、
今回の件は無かったことになったそうな。


シャキン・ショボン兄弟に改めて恐怖を抱きつつ、
俺は、ショボン先輩の背中に揺られ続けた。



7: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/10(日) 22:08:53.09 ID:u7SVCB4F0
  
('A`)「あの〜、これから何処に行くんですか?」

(´・ω・`)「ん? 
     いいとこ、いいとこ。
     ふふふふふふふふふふふ。」


何故か知らないが、俺は貞操の危機を感じた。
言っておくが、俺はまだ股間に初心者マークのついた童貞だ。

ショボン先輩なんぞに奪われてたまるか。

そのうち、目の前に公園が見えた。
ショボン先輩、あんた、何ばする気ね?



8: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/10(日) 22:09:57.04 ID:u7SVCB4F0
  
そんな風に、俺が貞操の危機を感じていると
ショボン先輩は、公園の入り口の前で立ち止まる。

何事かと思い、辺りを見渡す。
すると、公園の中からブーンとツンの声が聞こえてきた。


(´・ω・`)「なんだか、もめているみたいだね。
      ここで、ちょっと盗み聞きすることにしよう。」


あんた、趣味悪すぎです。

心の中でそう思いつつ、俺はショボン先輩の背中から降り、
公園の入口の塀に背を預けて座った。


悪いとは思ったが、俺も耳を澄まして、ブーン達の会話を聞くことにした。



9: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/10(日) 22:11:23.24 ID:u7SVCB4F0
  
#゚听)ξ「あんた、ドクオを置いていくなんてどういうつもりなのよ?」

( ^ω^)「・・・ツンを助けることが、最優先だったんだお。」

#゚听)ξ「はぁ?
     大体ね、あたしがいつ助けてって言ったわけ?
     あんた達のせいで、もうあの店で働けなくなったじゃない・・・。
     どう責任取ってくれるのよ・・・。」


ツンが呆れた声で呟く。


(;^ω^)「ツンも見たお!
     あいつら、やくざ屋さんだお!!
     そんな店で、幼なじみを働かせるわけには行かないお!! 」

#゚听)ξ「それが余計なお世話だって言っているのよ!!」


突然、ツンがヒステリーを起こしたかのように大声を上げた。



10: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/10(日) 22:12:25.64 ID:u7SVCB4F0
  
#゚听)ξ「そんなことくらい、うすうす感じていたわよ!
     それでも働かなきゃいけない理由があるから、あそこで働いてんいたじゃない!! 」

(;^ω^)「あんな店で働く理由なんてあるわけないお!!
     デタラメ言うなお!! 」

#゚听)ξ「デタラメじゃないわよ!!
     パパの事業が失敗して、パパの会社がつぶれたの!!
     結局自己破産して、家は無くなるし、
     パパは精神的に参って入院するし、ママも心労で倒れちゃった。
     なら、あたしが働くしかないじゃない!! 」


ツンに、そんなことがあったなんて・・・。
それなのに、俺達は自分勝手な理由で・・・。


(;^ω^)「え・・・そんなこと聞いていないお。
     それじゃ、大学は・・・?」

#゚听)ξ「・・・今は休学中だけど、もう辞めることになるでしょうね。
     大体、うちが近所なんだから、そんなことくらいすぐわかるでしょ!?
     それで幼なじみなんて、よくもまぁぬけぬけと言えたものね!!」


胸が、痛い。
きっと、幼なじみのブーンにとっては、その痛みは俺の比ではないだろう。



11: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/10(日) 22:15:26.51 ID:u7SVCB4F0
  
#゚听)ξ「あたしみたいな小娘が高い給料もらえるところなんて、
     夜のお仕事しかないじゃない!!
     それで、やっと慣れてきた頃にこれよ!! 」

(;^ω^)「・・・・・・。」

#゚听)ξ「あんたみたいな親のスネかじっているニートに、
     あたしの仕事をどうこう言われたくないのよ!!
     これからのあたし達の生活、どうしてくれるのよ!! 」


そうだ。
俺達に、ツンの仕事をどうこう言う資格なんてなかったんだ。

俺は、なんてことをしてしまったんだ。



12: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/10(日) 22:17:08.14 ID:u7SVCB4F0
  
#;凵G)ξ「なんとか言いなさいよ!!
      あたしはこれからどうすればいいのよ!!
      親をほっぽり出して、大学に通えばいいの!?
      やくざな店で、汚いオヤジ達に囲まれて汚れていけばいいの!?
      ねえ、何とか言ってよ!! 」


ツンの、涙混じりの叫び声があたりに響く。

しばらく、沈黙が続いた。

すると突然、「ゴンッ!!」という鈍い音があたりに響いた。


;゚听)ξ「あ、あんた何やってんのよ!?
     電柱に頭突きかますなんて、ば、馬鹿じゃないの!?
     ち、血がいっぱい出ているじゃない!!」


何をやっているんだ、ブーンは・・・。
俺は痛む体に無理をさせて立ち上がり、公園の中に入ろうとした。

しかし、そんな俺をショボン先輩が手を伸ばし制止する。



13: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/10(日) 22:19:32.77 ID:u7SVCB4F0
  
( ^ω^)「・・・本当に、僕は馬鹿だお。
     熱くなれるものがこんな近くにあるなんて、気付きもしなかったお。」

;゚听)ξ「な、何言っているのよ!?」

( ^ω^)「ツン、僕がお金を稼ぐお。」

;゚听)ξ「はぁ!? あ、あんた、頭おかしくなったんじゃない!?」

( ^ω^)「むしろ、目覚めたんだお。
     ツンの言うとおり、僕は親のすねかじりのニートだお。
     でも、今は先輩のバーで働かされているお。
     だから、自分で稼いだお金は好きに使えるお。
     それを、ツンにあげるお。」



16: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/10(日) 22:23:36.79 ID:u7SVCB4F0
  
#゚听)ξ「はぁ!?何言ってんのよ!!
     あんた、あたしを馬鹿にしているの!?」

( ^ω^)「馬鹿にしてなんかいないお。」

#゚听)ξ「あのねぇ、他人様にお金を恵んでもらうほど、
     あたしの心は落ちぶれていないのよ!!」

( ^ω^)「言い方が悪かったお。
     それなら貸すお。返済期限はいつでもいいお。」

;゚听)ξ「な、なんであんたなんかにそこまでしてもらわなきゃなんないのよ!」

( ^ω^)「僕たちは赤ん坊の頃からの幼なじみだお。
     それでは、理由にならないかお?」

;゚听)ξ「な、なるわけ無いじゃない!!」



18: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/10(日) 22:25:00.04 ID:u7SVCB4F0
  
(;^ω^)「じゃあ、言うお。
     僕はツンのことが・・・。」



その時、ショボン先輩が俺に肩を貸した。
俺は先輩の肩を借りて立ち上がる。


(´・ω・`)「ここから先は、他人の僕たちが聞いて良いことじゃない。」

('A`)「・・・そうですね。」


そして、俺達は公園から離れていく。
やがて、体力の限界に来た俺は、再びショボン先輩に背負われた。



19: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/10(日) 22:27:01.75 ID:u7SVCB4F0
  
東の空を見ると、かすかに白みはじめている。
夜明け前の街は、驚くほど静かだ。

そんな中、背中越しにショボン先輩が話しかけてくる。


(´・ω・`)「あの時は、ダメダメじゃんなんて言って、すまなかったね。」

('A`)「・・・いいんですよ。」


高校時代、ツンとブーンと三人で話すことが何度もあった。
そのたびに、俺は思っていた。

ブーンと話しているとき、ツンはすごく楽しそうに笑うんだ。
そんな笑顔、俺や他の奴らと話しているとき、決して見せなることはなかった。

いや、一度だけ・・・・・・。
彼女に買い物に連れて行かれたあの時だけ、俺にも見せてくれたっけな。


俺には、その思い出だけで十分だ。



20: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/10(日) 22:28:05.84 ID:u7SVCB4F0
  
(;A;)「・・・・・・。」

(´・ω・`)「・・・泣いているのかい? 」


俺は目をこすり、呼吸を整えて言う。


('A`)「な、泣いてないですよ!!」


その俺の言葉に、ショボン先輩はクスリと笑う。

ああ、そうですよ。泣いていましたよ!
こんな時に泣かないで、いつ泣くんですか!?

心の中で愚痴っていると、ショボン先輩が言った。


(´・ω・`)「今日はおごるよ。
     僕のバーで、気の済むまで好きな酒を飲むと良い。」

('A`)「・・・それより、病院に連れて行ってくれませんかね?」



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