('A`)がコンビニ店員になったようです
- 14: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 02:43:46.42 ID:CUor4Esb0
-
―――――――川 ゚ -゚)「7だ。」―――――――
12月24日、午後11時。
俺は駅前からかなり離れた郊外の公園にいた。
そこで、助けてくれたライダーから一時間近く説教を受けていた。
川 ゚ -゚)「まったく、君は何をやっているんだか…」
('A`;)「………面目なかとです」
ライダーの正体はクーさんだった。
なんでも、駅前をバイクで走っていたら見慣れた後姿が警察官に捕まっていて、
近づいてみたら、「どうも僕です」だったらしい。
まあ、理由はどうであれ俺は九死に一生を得たわけだ。
一時間の説教も甘んじて受けよう。
そんなこんなで今に至る、というわけだ。
- 15: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 02:44:54.97 ID:CUor4Esb0
- やがて、クーさんは言葉を出し尽くしたのか何もしゃべらなくなった。
夜の公園は静かで、あたりには虫の鳴き声しか聞こえない。
俺はちらりとクーさんの横顔を見た。
街頭に照らされたその横顔は、いつも以上に美しく見える。
もうすぐクリスマス・イブも終わる。
それなのに、クーさんは俺なんかと夜の公園にいる。
この人に恋人はいないのだろうか?
('A`)「あの…つかぬことをお尋ねしますが……」
川 ゚ -゚)「……ん? なんだ?」
('A`)「クー教官って、彼氏いないんですか?」
川 ゚ -゚)「いるように見えるかい?」
いるように見えるから聞いたのですが……
俺が返答に困っていると、彼女はタバコを取り出しそれに火をつける。
- 16: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 02:46:11.64 ID:CUor4Esb0
- 川 ゚ -゚)「君も吸うか?」
('A`)「あ、すみません」
クーさんはタバコを一本俺に向けて差し出す。
俺はそれを受け取り、ライターを取り出して火をつける。
憧れの女性と、夜の公園で二人きり。
二人が吐き出した煙は、混ざり合って冬の夜空に溶けていく。
- 18: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 02:47:07.69 ID:CUor4Esb0
- 川 ゚ -゚)「……これでも昔はいたんだよ。
昔とはいっても、もう10年近く前だがな」
('A`)「そんなに……ですか?」
信じられなかった。なぜこの女性に彼氏がいないのだろう。
それにしても、10年前ってクーさんは今何歳なんだ?
川 ゚ -゚)「大学に入ってすぐに出来た彼氏でな。
そいつからバイクの魅力を教えてもらったよ」
('A`)「それで今教習所で働いているんですか。
よほどバイクが好きなんですね。熱中できるものがあってうらやましいです……」
川 ゚ -゚)「……教習所で働いているのはバイクが好きだからじゃないよ。」
('A`)「……なら、なぜ教習所で働いているんです?」
俺がそういうと彼女は少し黙り、煙を空に吐き出した後、言った。
川 ゚ -゚)「……未練…かな」
- 19: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 02:48:19.98 ID:CUor4Esb0
- ('A`)「未練…ですか?」
川 ゚ -゚)「ああ、くだらない夢の…な」
('A`)「……そんなこと言わないでくださいよ!」
俺はクーさん言葉に思わず立ち上がった。
('A`)「夢が…目指したいことがあるっていうことが…
どんなに素晴らしいことか、あなたはわかっていない!
それを探すってことだけでもすごく大変だって言うのに…」
立ち上がった俺を、少し驚いた表情でクーさんは見上げる。
すぐに表情を戻した彼女は、立ち上がって公園から出て行く。
('A`;)「ど、どこにいくんですか?」
川 ゚ -゚)「すぐ戻るから待っていろ」
- 21: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 02:49:11.99 ID:CUor4Esb0
- その言葉どおり、彼女はすぐに戻ってきた。
その手には二本の缶コーヒーが握られていた。
彼女はそのうちの一本を俺に向けて投げた。
川 ゚ -゚)「好みがわからなかったからブラックにしたが…」
('A`)「いや、ブラック好きです。 ありがとうございます」
タブの取れる音があたりに響く。
暖かい液体がのどを通り過ぎていくのが感じられる。
そんなコーヒーの温かさを全身で感じていると、静かにクーさんが口を開いた。
- 22: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 02:50:49.63 ID:CUor4Esb0
- 川 ゚ -゚)「世界をな……」
('A`)「はい?」
川 ゚ -゚)「……世界をバイクで旅したいんだ」
彼女はうつむきながら、小さな声でそうつぶやいた。
その表情は、わずかにはにかんでいるように見える。
頬がほんのりピンクに染まっているのは、
恥ずかしさのせいなのかコーヒーの温かさのせいかはわからない。
ただ、普段クールで表情をあまり表に表さないクーさんからは想像できないその表情に、
俺はつい笑みを浮かべてしまった。
- 23: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 02:51:22.57 ID:CUor4Esb0
- 川 ゚ -゚)「……笑うな」
('∀`)「いや、すいませんw」
川 ゚ -゚)「だから言うのは嫌だったんだ…」
('∀`)「いや、違うんです。 クーさんの表情がおかしくてつい……」
川*゚ -゚)「………」
俺がそう言うと、クーさんはさらに顔を赤くしてうつむいた。
くっー! 可愛いなーこんちくしょう!!
- 24: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 02:52:53.58 ID:CUor4Esb0
- ('A`)「でも、世界をバイクで走るなんてすごい夢じゃないですか!
かっこいいです! すごくかっこいいですよ!!
なんでその夢を追わないんですか?」
俺の言葉に、クーさんは一気に表情を変えた。
少し怒気をはらんだ真剣な表情だ。その表情に俺はたじろぐ。
川 ゚ -゚)「さっき君は夢を見つけることはすごく大変だと言ったな。
しかし、その夢をかなえることはそれ以上に大変だということを君はわかっていない」
('A`)「………」
川 ゚ -゚)「こんな馬鹿げた夢をかなえるには多くの金と時間がかかる。
定職に付けば金は確保できるが時間が失われる。
バイトをすれば時間は確保できるが金の工面が厳しい。」
('A`)「そんなの……単なるいいわけですよ」
川 ゚ -゚)「かもしれん。しかしな、考えてみろ。
大学にまで行かせてもらったにもかかわらず定職に着かず、
こんな馬鹿げた夢を追いにいく。 それで親に申し訳が立つと思うか?」
('A`)「………」
川 ゚ -゚)「どっちにしろ、バカで実現不可能な夢なんだよ…
それに私ももうすぐ30歳だ。そろそろ潮時だ……」
- 25: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 02:54:11.31 ID:CUor4Esb0
- そう言って彼女は俺に微笑みかけた。
それは寂しそうな笑みで、彼女にはとても似合わないものだった。
………あなたにそんな表情をしてほしくない!
('A`)「行きましょう」
川 ゚ -゚)「?? 行くってどこに?」
('∀`)「俺の知り合いにとんでもない人がいるんです。
その人なら、きっといいアイデアを出してくれますよ!」
俺は立ち上がり、彼女に手を差し伸べる。
その俺の手を見つめながら彼女は言う。
川゚ ー゚)「よくわからんが、暇だし付き合ってやろう」
そう言って彼女は俺の手をとり、少し笑った。
俺がはじめてみたクーさんの嬉しそうな笑顔だった。
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