('A`)がコンビニ店員になったようです
- 27: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 02:55:35.91 ID:CUor4Esb0
―――――――川 ゚ -゚)「8だ。」―――――――
日付も変わった12月25日の深夜。
俺とクーさんはバーボンハウスの扉の前にいた。
川 ゚ -゚)「このバーか?」
('A`)「そうです。 ここのマスターがすごい人なんですよ」
そう言って扉を開けようとすると、後ろから聞きなれた声がした。
ξ゚听)ξ「ドクオじゃない。 扉の前に立たれると邪魔なんだけど……」
すると、その声に振り向いたクーさんの顔を見てツンは押し黙る。
ツンは俺の手をとり、扉から少しはなれたところに俺を引っ張っていく。
- 28: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 02:57:30.76 ID:CUor4Esb0
- ('A`)「なんだよ?」
ξ゚听)ξ「あああああんた! 誰よ、あの美人!
もしかしてあんたの彼女!?」
('A`)「んなわけないだろ。 俺の教習所の教官だよ。
シャキンさんにちょっと相談があって連れてきたんだよ」
ξ゚听)ξ「なーんだ。 驚いて損したわ。
大体、あんな美人があんたの彼女なわけないわよねw」
(#'A`)「………あのなあ」
すると、後ろからクーさんが話しかけてくる。
川 ゚ -゚)「取り込み中のところすまないが、先に入っていてもいいかね?」
ξ゚听)ξ「あー、すみませんw
どうぞどうぞ、ゆっくりしていってくださいねw」
営業用の甘い声を出しながら、ツンがクーさんを店内へと促す。
そんなツンに少し辟易しながらも、俺とクーさんはバーの中へと入った。
- 29: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 02:58:20.50 ID:CUor4Esb0
- ξ゚听)ξ「マスター、お客さんですよー」
(`・ω・´)「やあ、ようこそバーボンハウスへ。
このテキーラはサービスだ。 まずは飲んで落ち着いて………」
お決まりのセリフを言うシャキンさんの口が突然止まった。
それと同時に、クーさんの足も止まる。
何事かと思いクーさんの顔を見ると、いつになく怪訝な表情をしている。
その視線の先には、シャキンさんがいた。
('A`;)「クーさん……どうしたんですか?」
俺の言葉を無視して、クーさんはただシャキンさんをにらみ続ける。
バーボンハウスが沈黙に包まれる。
その沈黙を破ったのは、シャキンさんの一言だった。
(`・ω・´)「………クーか。 久しぶりだな」
- 30: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 02:59:00.35 ID:CUor4Esb0
- 川 ゚ -゚)「シャキン……貴様がなぜここにいる?」
(`・ω・´) 「………」
('A`;)「え……二人は知り合いなんですか?」
俺は二人の顔を交互に見た。
なぜこの二人がお互いの名前を知っているんだ?
さっぱりわからない。
(´・ω・`)「まあまあ、とりあえず座りなよ」
川 ゚ -゚)「………」
('A`;)「………」
間に入ったショボン先輩の言葉に従い、
俺とクーさんはシャキンさんの目の前のカウンター席に腰掛けた。
- 32: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:00:20.39 ID:CUor4Esb0
- (´・ω・`)「…テキーラでいいかな?」
川 ゚ -゚)「いらん」
クーさんの言葉に従い、ショボン先輩はテキーラではなくお冷を俺たちの前に差し出す。
それに手をつけようともせず、クーさんはただシャキンさんをにらみつける。
一方のシャキンさんはというと、いつもの様子でグラスを磨いているだけだ。
川 ゚ -゚)「貴様、こんなところで何をしている?」
(`・ω・´)「何って見てのとおりさ。
しがないバーで、バーテンをしているだけだが?」
川 ゚ -゚)「それはなぜかと聞いている!!」
クーさんは立ち上がり、シャキンさんの姿を見据えた。
- 33: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:01:26.49 ID:CUor4Esb0
- (`・ω・´)「そんなに騒がれたら他のお客さんに迷惑なんだがね……」
川 ゚ -゚)「……ちっ!」
クーさんは振り返ると、扉の方へと歩き出した。
('A`;)「く、クーさん、どこに行くんですか!?」
川 ゚ -゚)「……帰る!」
そう言って、クーさんは扉の向こうへと姿を消した。
状況を飲み込めない俺は、ただその後姿を見送るだけだった。
- 35: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:02:50.67 ID:CUor4Esb0
- ('A`;)「……どういうことなんですか?」
俺はカウンターのほうへと振り返ってシャキンさんに尋ねた。
(`・ω・´)「それは彼女に聞くといい。
それより今は、彼女を追うことのほうが先決だろう?」
('A`;)「……話は後でじっくり聞かせてもらいますよ!」
そう言って俺は急いでクーさんの後を追った。
- 36: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:04:10.01 ID:CUor4Esb0
- 扉を出ると、そこには少し驚いた顔をしたブーンがいた。
ブーンは矢継ぎ早に俺に話しかける。
(;^ω^)「ドクオ! さっきすごい美人が出て行ったんだけど…」
('A`;)「彼女はどこに行った?」
(;^ω^)「あ、あっちだお」
ブーンはバイクの止めてあるほうを指差した。
ちくしょう! バイクに乗られたら追いつけないぞ!
俺は挙動不審なブーンを置いて、クーさんのバイクのとめてあるほうへと急いだ。
- 37: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:05:05.48 ID:CUor4Esb0
- クーさんは幸いにもまだ出発していなかった。
それに安堵しつつも、バーでのことを思い出し俺は不安に包まれる。
しかし、話しかけなければ何も始まらない。
俺は意を決してクーさんに声をかけた。
('A`;)「クーさん……どうしたんですか?」
川 ゚ -゚)「………」
クーさんは手に持ったヘルメットを見つめたまま何も言わない。
しばらくそのままで立ち尽くしていると、クーさんがこちらを向いた。
川 ゚ -゚)「シャキンは……私の元彼だ」
('A`;)「なんですとーーーー!」
夜の街に、俺の間抜けな声が響いた。
- 38: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:06:07.33 ID:CUor4Esb0
- それから数時間後、俺はバーボンハウスの扉の前にいた。
そこには「Closed」と書かれた札がぶら下がっていた。
それをただ黙って眺めていると、裏手のほうからブーンとツンがやってきた。
('A`)「……まだ店の閉まる時間じゃないだろう?」
(;^ω^)「ドクオたちが出て行ったあと、シャキンさんがすぐに閉めちゃったんだお」
ξ゚听)ξ「ねえ、どういうことなの?
あの人とシャキンさんって、いったいどういう関係なの?」
('A`)「そのことについては後で話すよ。
シャキンさんと話がしたい。中に入れないのか?」
ξ゚听)ξ「裏口から入れるけど………」
('A`)「そうか。 悪いが入らせてもらう」
(;^ω^)「だめだお! シャキンさんに怒られるお!」
ブーンの言葉を無視して、俺は店の裏へと進んだ。
- 40: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:06:44.94 ID:CUor4Esb0
- (;^ω^)「だめだお! ドクオはシャキンさんの恐ろしさを知らないお!」
俺の後ろからオロオロと付いてきたブーンが続ける。
ブーンには悪いが、俺はその言葉を無視し続けた。
そしていざ裏手の扉に手をかけようとすると、ブーンが俺を羽交い絞めにする。
(;^ω^)「ダメだって! とんでもないことになるお!」
('A`)「いいから離せよ!」
ξ゚听)ξ「しっ! 静かに!!」
いつの間にかそばにいたツンの言葉に俺とブーンの動きが一瞬とまる。
すると、扉越しにシャキンさんとショボン先輩の話し声が聞こえてきた。
- 42: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:07:45.79 ID:CUor4Esb0
- (´・ω・`)「まさかクーさんがドクオと現れるとはね。 驚いたよ」
(`・ω・´)「まったくだ。 人生とはわからないものだな…」
おそらく酒でも飲んでいるのだろう。
「カラン」とグラスを傾ける音が聞こえた。
(´・ω・`)「夢のために捨てた女が、数年のときを経て目の前に現れる。
どこの三流ドラマのシナリオだろうね」
(`・ω・´)「誰がうまいことを言えといった?」
(´・ω・`)「ふふふ。 兄貴に鍛えられた話術の賜物さ。
それにしてもどうするつもりだい?
ドクオ君のあの様子じゃ、兄貴に何か話があったみたいだが?」
(`・ω・´)「さあね。まったく見当もつかんよ」
- 43: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:09:12.49 ID:CUor4Esb0
- ('A`)「失礼します」
(;^ω^)「ば、馬鹿! 空気嫁お!」
俺は裏口の扉を開け、バーの中に入る。
そこには、カウンター席でグラスを傾けている兄弟の姿があった。
('A`)「話は聞きました。お話中のところ失礼します」
(´・ω・`)「立ち聞きとは趣味が悪いね」
ショボン先輩、あなただけには言われたくありません。
- 44: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:09:51.45 ID:CUor4Esb0
- (´・ω・`)「ブーン、どうしてドクオ君が裏口からやってくるのかな?」
(;^ω^)「ぼ、僕は止めたんですお! ホントだお!」
(´・ω・`)「今日はたっぷり可愛がってあげるよ」
( ;ω;)「いやああああああああ!!
親方様―――! お慈悲を!お慈悲をおおおおおおおお!!」
ブーンの懇願もむなしく、ショボン先輩に引きづられてブーンは店の奥へと消えていった。
残された俺とシャキンさんは、誰もいないバーの中で向き合った。
(`・ω・´)「………ドクオ君か。 そろそろ来ることだと思ってたよ」
- 45: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:11:22.12 ID:CUor4Esb0
- ('A`)「話はクーさんから聞きました。
お二人は昔付き合っていたそうですね」
(`・ω・´)「……そのとおりだ。それがなにか?」
シャキンさんはいつものように落ち着いた表情で俺を見つめる。
俺はカウンター席に座るシャキンさんを見下ろしながら続ける。
('A`)「別に、そのことについてとやかく言う資格は俺にはありません。
ただ俺があなたに聞きたいことは一つ。 今もあなたはクーさんを好きなんですか?」
俺の言葉に、シャキンさんはグラスを傾けながらにやりと笑う。
(`・ω・´)「そんなわけないだろうw
彼女と別れてもう10年近く経つというのに……」
('A`)「別れたんじゃなくて捨てたんでしょう? あなたの夢を追うために」
- 46: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:12:39.65 ID:CUor4Esb0
- (`・ω・´)「やれやれ、彼女からそこまで話を聞いていたのか」
('A`)「ええ。 しかし、今となってはそんなことはどうでもいいです
俺が今日クーさんをここに連れてきた理由はただひとつ。
あなたに彼女の夢の手助けをしてほしいからです」
俺がそういうと、シャキンさんは不敵な笑みを浮かべながら俺を見上げた。
(`・ω・´)「続けたまえ」
('A`)「クーさんは世界をバイクで駆け巡るという夢をもっています。
しかし、それは実現が非常に難しい夢です。
でも、あなたなら何とかできるのではないかと思いここに連れてきました。
ただ、あなたとクーさんがそんな関係とは予想だにしていませんでしたがね」
(`・ω・´)「……なるほどね。 あいつめ、そんな夢を持っていたとは……」
そう言ってシャキンさんはうつむいた。
一瞬垣間見えたその表情が少し寂しそうに見えたのは俺の気のせいだろうか?
- 47: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:13:40.51 ID:CUor4Esb0
- (`・ω・´)「で、僕に何をしろと?」
('A`)「だから、クーさんの夢の実現のために協力してほしいんです」
(`・ω・´)「………おかしなことを言うね。 僕にそんな義理はないが?」
('A`)「クーさんにバイクの魅力を教えたのはあなただそうですね。
それなら、クーさんの夢についてあなたにも少なからず責任があると思いますが?」
するとシャキンさんは、「カラン」とグラスを鳴らす。
乾いたその音がバーに響き渡り、彼は言葉をつむぐ。
(`・ω・´)「君は何か勘違いしていないかい?
僕はただのしがないバーのマスターだよ?
僕にはそんなたいそうな夢を実現させる力はない。」
('A`)「………そうですか」
(`・ω・´)「僕に出来ることといえば、テキーラを出して話を聞くことくらいさ。
期待に添えなくてすまないね」
- 48: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:14:39.73 ID:CUor4Esb0
- その言葉を聞いた俺は、黙って裏口へと向かう。
俺が裏口の扉に手をかけたとき、シャキンさんの声が背中越しに聞こえてきた。
(`・ω・´)「君とクーは、いったいどういう関係なんだい?」
('A`)「自動車学校の教官とその教習生、ただそれだけですよ」
(`・ω・´)「では、君が彼女の夢を応援する理由は?」
シャキンさんの言葉が胸に突き刺さる。
俺は、なぜ彼女の夢をそんなに応援しているのだろうか?
俺が彼女のことに憧れているから?
俺が彼女に気に入られたいから?
そんな利己的なものも理由の一つなのは間違いない。
しかし、俺の口から出てきたのは最も根源的な理由だった。
- 50: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:16:24.39 ID:CUor4Esb0
- ('A`)「……俺には何もないからです」
(`・ω・´)「何も………ない?」
('A`)「ええ。 目指すべき目標も、追う価値のある夢も何もないからです。」
(`・ω・´)「ならせめて、憧れる人の夢だけでも叶えたい。
叶えて、自分がその夢を共有したつもりになりたい、とでも言うのかい?」
('A`)「………そんなところです」
ちっ……そこまでお見通しかよ。
まったく、この人にはかなわないなぁ。
そんなことを思いながら、俺は裏口の扉を開けた。
- 51: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:17:33.87 ID:CUor4Esb0
- 扉を開けると、そこに怪訝な表情をしたツンがいた。
ξ゚听)ξ「ね、ねぇどういうことなの? 私にもわかるように説明しなさいよ!」
('A`)「悪い……今はそんな気分じゃないんだ」
ξ゚听)ξ「………」
沈黙するツンのそばを取りすぎて、俺は深夜の街に出た。
今日はクリスマス。キリストの誕生日。
深夜の街はそれを祝福するかのようにきらびやかだ。
そんな街の中へ、真冬の木枯らしに吹かれながら俺の姿は消えていった。
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