('A`)がコンビニ店員になったようです

93: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:58:53.66 ID:CUor4Esb0
  
 
 ―――――――('A`)「2。」―――――――


午前6時。
通常10分前にやってくるはずのパートのマダムが、今日に限って遅れてやってきた。
彼女に引継ぎを済ませるころには、時計の針は15分をさしていた。


「あらあら、今日は遅れてごめんなさいね〜」

('A`;)「あ、いえ……気にしないでください」

「それにしても、えらく慌てているわね。もしかしてこれからデート?」

('A`;)「そそそそそ、そんなことありますん」

「またまた〜w 前の公園にきれいな女性が一人で待っていたわよw」

('A`;)「ほ、本当ですか!? 失礼します!!」


俺は急いでコンビニをあとにした。


「ふっ……これが若さか」



94: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 03:59:54.18 ID:CUor4Esb0
  
公園の入り口には見慣れなたバイクが止まっている。
6時を15分もオーバーしてしまった俺は急いで公園の中に入る。


('A`;)「遅れてすみません!」

川 ゚ -゚)「うむ。 くるしゅうない」


この人、時々変なんだよな。まあいいけど。
そんなことより、話とやらが気になる。


川 ゚ -゚)「じゃあ行こうか。 バイクはあるか?」

('A`;)「ええ、ありますけど……どこに行くんですか?」

川 ゚ -゚)「いいところだ」


いいところ?
まさか……いや、ダメです! 付き合ってもいないのに…
それにおれはまだ童貞なんですよ!? 心の準備っていうものが……



95: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 04:00:46.07 ID:CUor4Esb0
  
数十分後、俺たちは郊外の山の頂上にいた。


('A`)「(なーんだ。 いいところってここかよ……)」

川 ゚ -゚)「なかなかいい景色だろう? 私の気に入っている場所のひとつだ」

('A`)「あー、きれいですね…」


淡い期待の外れた俺は生半可な返事を返す。
期待はずれだったけどまあいいか。 景色もきれいだし。



96: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 04:01:25.16 ID:CUor4Esb0
  
川 ゚ -゚)「それで、話というのはな」


そうそう、そうです。それです。
すっかり忘れていたけど、本題はそれです。


川 ゚ -゚)「ありがとう」

('A`)「はい?」

川 ゚ -゚)「それを君に言いたかった。
    君の紹介状のおかげで夢がかないそうだよ。 本当にありがとうな」

('A`)「……違うんです…」

川 ゚ -゚)「ん?」

('A`)「紹介状を用意したのは、俺じゃないんです。
   用意したのは…」



98: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 04:02:51.48 ID:CUor4Esb0
  
その先を言いかけたとき、彼女は俺の口の前に手を出して俺を制する。


川 ゚ -゚)「わかっている……言うな」

('A`)「………」

川 ゚ -゚)「私が感謝したいのはそのことじゃない」


ん? どういうことだ?



99: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 04:04:01.60 ID:CUor4Esb0
  
川 ゚ -゚)「私が感謝したいのは、君が背中を押してくれたことに対してだ。
    あのときの君の言葉が無ければ、私は意固地になって紹介状を受け取らなかっただろう」

('A`)「……お礼を言われるほどのことではないですよ」

川 ゚ー゚)「ふふ。 そう言うな」


もう昇りきってしまった朝日を眺めながら、彼女は微笑む。


川 ゚ -゚)「出会いとは不思議なものだな。
    どこでどんな出会いがあるかわからない」

('A`)「………」

川 ゚ -゚)「仕方なく勤めた自動車教習所でこんな出会いがあるとは思わなかったよ。
    人間、何かしら続けてみるものだな」



101: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 04:05:31.11 ID:CUor4Esb0
  
川 ゚ -゚)「それが自分の希望するものでなくても、
    続けていれば人との出会いがそこには生まれる。
    人とうまくなじめない、私のような無愛想な人間でもな。
   
    それはどうでもいいものであったり、むしろ悪い出会いであったりするかもしれん。
    それでも、ごくまれに今回のような素晴らしい出会いがある。」

('A`)「……出会い、ですか」

川 ゚ -゚)「うむ」


彼女は俺のほうを向きなおすと、スッと手を差し出す。


川 ゚ー゚)「3月の終わりに、私は夢をかなえに出発する。
    ありがとう。君に出会えてよかった」


差し出された彼女の手を見つめながら、俺は考える。
クーさんの言う素晴らしい出会いとやらが、俺にも訪れるのだろうか、と。



103: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 04:06:34.12 ID:CUor4Esb0
  
('A`)「………俺は、馬鹿にはなれない人間です」

川 ゚ -゚)「??」

('A`)「大学の同級生が楽しそうにバカ騒ぎしていても、俺はそれに溶け込めませんでした。
  人付き合いだってうまくありません。
  この一年で新たに知り合った人は、あなたとシャキンさんくらいです。

  やりたいことなんて何もない。ただ……なんとなく大学に通っているだけでした。
  だから、それが苦しくて大学を休学しました。
  そして、休学の期限も今月で切れます」

川 ゚ -゚)「………」

('A`)「俺、迷っているんです。
  あんな苦しい思いをする大学になんて戻りたくない。
  だけど、このままでもきっと何も始まらない。
  それなら俺、どうしたらいいんですかね………」



105: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 04:08:09.67 ID:CUor4Esb0
  
川 ゚ -゚)「……私も同じさ」

('A`)「!?」

川 ゚ -゚)「私も人の輪に溶け込めなかった。
    生来の無愛想さが災いして、よほどのことがない限り誰も話しかけてこない。
    そんな私は、いつも一人だった……」


そう言って、彼女は寂しそうな笑みを浮かべてうつむいた。
ああ、そうか。そんな過去があるから、彼女の笑みは常に寂しそうなんだ。

しかし次の瞬間、顔を上げた彼女の笑みには寂しさは微塵も感じられなかった。


川 ゚ー゚)「だけど、そんな私にも素晴らしい出会いはあったよ。
    それはシャキンとの出会いであり、そして、君との出会いだ」



106: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/10/01(日) 04:10:07.13 ID:CUor4Esb0
  
川 ゚ー゚)「君は、こんな私の夢を素敵だと言ってくれた。
    こんな私の背中を押してくれた。そんな君に素晴らしい出会いがないはずがない。
    それは大学では訪れないかもしれない。
    しかし、その先の長い人生の中で必ず訪れるはずだ。私が保証する」

('A`)「………」

川 ゚ー゚)「その先のことを考えて、大学に行ってみてはどうかね?
    つらいことのほうが多いだろう。しかし、その先には必ず何かあるはずだ」


そう言って、彼女は再び手を差し出す。
俺は………その手を握り返した。


('∀`)「出発の日が決まった教えてください。俺、必ず見送りに行きますから!」

川 ゚ー゚)「ああ。 そのつもりだ」


晴れ渡った東の空に浮かぶ朝日が、そんな俺たちを強く照らす。

今日は、暑くなりそうだ。



戻る次のページ