( 'A`)はアルバムを捲るようです

4: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:05:17.34 ID:6b8EZCf3O
例えば、今隣にいる君が、僕に向かい微笑む君が、溶けてなくなってしまうとしよう。

俺はそれを黙って見ている事が出来るのか、いや、そんなはずがない。

きっと、君の腕を掴み、『消えるな』っと大声で、精一杯の声で叫ぶだろう。

その間にも君はどんどん溶けていく。

君の体が半分になったとき、俺は痛い程の愛を叫ぶだろう。

たとえ君がこのまま消え去ったとしても。

そうして、君が腕だけになった時、俺も消えたいと願うだろう。

君と共に、いつまでも一緒に居たいと、例えそれが泡沫の夢であっても―――


('A`)はアルバムを捲るようです

番外編 

('A`)の長い夜のようです



5: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:06:33.94 ID:6b8EZCf3O
(ノA`)「ん、朝か」

カーテンの隙間から指し入る陽光に目を細める。

('A`)「昨日は……」

昨日は、渡辺と二人で逢瀬神社にいた。
いきなりの呼び出しに戸惑いはしたが、俺もアイツとは話したかったので、素直にホイホイでていった。

何年も会っていなくて、やっぱりお互いが成長してて、顔も変わって、背が伸びて、でもやっぱり、俺の初恋の人は美しかった。

今までは意識してなかった。いや、意識しないようにしてきた。

それがツーを助けられなかった俺への戒めだと思ってた。

でも、ツーが生きていて、また揃って写真を撮って、心の奥底に閉まっていたものが溢れだした。

―――渡辺

ツーと同じくらい俺の傍にいて、俺の世話をやいてくれた奴。

いつも笑っていて、ちょっとドジで、何故か時々鋭く、不思議な子だ。

俺、今でも渡辺のことが、好き、なのか?



6: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:07:34.55 ID:6b8EZCf3O

  ―――◆―――


( ^ω^)「やっぱり僕達が手伝うべきだと思うお」

ξ゚听)ξ「そんな簡単に言わないで、彼女の気持ちはともかく、ドクオの気持ちは分からないわよ」

( ゚∀゚)「そんな必要ねーよwwなんでも勢いが大切なんだよwww」

(´・ω・`)「………」

(*゚ー゚)「………」

ξ゚听)ξ「それに……」

(*゚∀゚)「いいじゃないかっ!!やるべ!!」

ξ;゚听)ξ「へっ!?ツーちゃん、良いの?」

(*^ω^)「おっ!ツーも乗り気かお!!こりゃやるしかないお!!!」

ξ#゚听)ξ「アンタは黙ってなさい!!!
……ツー、本当に良いの?」

(*゚∀゚)「当たり前っさ!!あんたらをくっ付けたのは他ならぬアタシだよ!!ドクオとナベちゃんくらい余裕さね」

ξ゚听)ξ「………」

(´・ω・`)「………」



7: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:10:02.01 ID:6b8EZCf3O
  ―――◆―――


('A`)「さてと……」

もともと実家に帰る予定だったから荷物もなにもない。

あと一日、どうやって過ごすかだが

('A`)「暇だな」

ブーンやジョルジュからのお誘いは来ないしどうしたもんか。

薄情な奴らだ。

('A`)「渡辺、なにしてんだろ」

思い浮かぶ彼女の顔。友人としても客観的に見ても間違いなく美しい容姿。黒目がちで潤んだ瞳。長すぎるお人形のような睫毛。控えめに膨らんだ唇。

('A`)「なーに考えてんだ、俺」

触れたい、知りたい。もっともっと一杯、渡部の事を知りたいと思う。

でも、それをどこか許せない自分がいて。

どうすれば良いのか分からない。

('A`)「やめだ、いくら考えてもわかんね」

妙なことを考えたもんだから、節介故郷に帰ってきて昂ぶっていた気持ちが醒めてしまった。



9: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:11:34.70 ID:6b8EZCf3O
('A`)「しゃーねーな。散歩にでも行くか」

泣いても笑っても最後の一日だ。この休暇もだいぶお偉いさんに無理をしてもらったものだ。

今度いつ来れるか、なんてわかったもんじゃないし。

出来るだけ綺麗な格好で行こう。

クローゼットから一着だけ持って帰ったグレーのジャケットを取り出す。

さぁ、いこうか。


  ―――◆―――

ξ゚听)ξ「ツー!貴方、本当に良いの!?」

(*゚∀゚)「ん?なにがだい?」

ξ#゚听)ξ「決まってるじゃない!!ドクオのことよ!!」

(*゚∀゚)「ん?ツン、忘れたのかい?ツー様は恋のキューピット免許皆伝だよ?」

ξ゚听)ξ「でも、ツーだって渡部ちゃんに負けないくらい……ドクオの事、好きなんでしょ?」



11: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:12:55.66 ID:6b8EZCf3O
(*゚∀゚)「なにいってるっさww私が?wドクオのこと?wwwツンも成長したねwww中々面白い冗談言うじゃないかwww」

ξ#゚听)ξ『誤魔化さないで!!!!!』


(*゚∀゚)「………」

ξ ― )ξ「そんなに、そんなに自分を誤魔化さないでよ……ツー」

(*゚ー゚)「………」



(´・ω・`)「………」


  ―――◆―――

いつも思う、この町は空気が綺麗だ。都会と呼ばれるようなところで生活していたから余計に感じる。

('A`)「んんっ……」

大きく空気を肺に送り込む。車が殆ど通らないこの町では不純な匂いが一切しない。

打ち寄せる波によって運ばれた潮の匂い。

帰ってくる子供のためにお母さんが作る昼食の匂い。

どれもが合わさり、この町の匂い、俺の大好きな匂いを作り出す。



12: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:14:06.06 ID:6b8EZCf3O
懐から煙草を取り出し火を点けた。

('A`)y━・~「ふぅ」

起き始めの一口に眩暈を感じた。

俺がこの町を出た理由。それはこの美しい景色だ。

朝の散歩を楽しむ人達や犬を連れジョギングする人達。
海の上をカモメが飄々と飛び、海岸では釣り人と魚達との真剣勝負が繰り広げられている。

こんなに、こんなに美しすぎる景色が、いつも俺にツーを思い出させた。

だから町を出た。

出来るだけ、人との繋がりを感じない、都会に。

ツーが居なくなって、この町は色をかえた。

ブーンが、ジョルジュが、ショボンが、ツンが、そして渡部が、少しでも、少しでもこの町が明るく見えるように、俺に色をくれた。

でも、俺は割り切ることが出来なくて、そして町を出た。

だけど

('A`)y━・~「本当に、帰ってきたんだよな」

ツーが帰ってきた。アイツは大切な家族を失ってしまったけど、モナーさんを失ってしまったけど、それでも無力過ぎた俺達に、笑顔をくれた。

俺に、最後の色をくれた。



13: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:15:46.48 ID:6b8EZCf3O
ツーが帰ってきた瞬間に、この町は色を取り戻した。

('A`)「ありがとう」

―――でも

だからこそ、渡部に想いを伝えられずにいた。

いや、自分の気持ちを確かめる事さえしなかった。

七人は、六人になった。

でも生きていてくれて、六人はまた七人になった。

そして二人が結ばれて、七人は五人になった。


―――怖いのか?

('A`)「あぁ、怖いさ」

ずっと七人だと思ってた。信じて疑わなかった。でもあの日、俺達は六人になった。単純に七分の一が減ったわけじゃない。

俺達の心には、大きな大きな絶望が残った。

('A`)「怖いに決まってんだろうが」

五人になった今、これ以上仲間が消えていくなんて考えたくもない。

もう沢山なんだ。せっかく帰ってきてくれたのに、また失うのは、嫌なんだ。



14: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:17:14.50 ID:6b8EZCf3O
俺は、まだ七人で居たい。
  ―――◆―――

(`・ω・´)「お嬢さん、恋のお悩みかな?」

(´・ω・`)「また出たなこの野郎」

(*゚ー゚)「………」

(;`・ω・´)(ちょっ、これツーちゃんだよね?)

(;´・ω・`)(だから言っただろ!今はそっとしとけって!!)

カランカランッ


( ФωФ)「ちはー」

(;^ω^)「ちょっwwwお義父さんwこんな真っ昼間から何してるんですかおwww」

( ФωФ)「いや、ずっと働き詰めで有給消化してなかったんでな。この機会に使っとこうかと思って早引きしたんだよ、泥棒猫」

(;^ω^)「マジかお、というか泥棒猫はやめてほしいですお」

(;´・ω・`)(ああー、またややこしいのが来た)

(`・ω・´)(ああ、俺が呼んだんだ)

(´・ω・`)(おまえとはいつか決着をつけようと思ってた)



15: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:20:18.69 ID:6b8EZCf3O
( ФωФ)「そうそう、仕事場の夏祭りでこれが余っててな、もしかしてっと思って貰ってきたんだが」

(;^ω^)「こいつはやべーお」

(;´・ω・`)「なんて量なんだ」

( ゚∀゚)「んじゃ早速ry」

(´・ω・`)「氏ね」

( メ)∀;)「冗談なのにぃ〜」

( ^ω^)「でも……これは……」

(´・ω・`)「うん、使えるかも」

(`・ω・´)ФωФ)←蚊帳の外にされてちょっと寂しいおっさん達


  ―――◆―――


気付けばまたここに来ていた。

('A`)「バーボンハウス」

中では、なにやら騒がしい音がしている。
ブーンやジョルジュあたりがまた昼間っから酒を飲んで暴れてるんだろう。



16: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:21:00.83 ID:6b8EZCf3O

もう一度深呼吸する。

やっぱり、ここの空気は美味しかった。

('A`)「こんにちは……ってお前ら何やってんの?」

(;^ω^)「ここここここんにちははははは」

(:゚∀゚)「おおおおいいいっ、ドクオ。もっとととはやくおきないきゃきゃきゃきゃ、だめじゃななないか」

('A`)「とりあえず吃りすぎて何言ってんのかわかんね」

(´・ω・`)「ようこそ、バーボンハウスへ」

('A`)ノ「おう」

ここに来るのは三度目だがよく毎日毎日、俺達の暴れた後を掃除してるなぁっと感心した。

ξ゚听)ξ「おっす」

('A`)「おう」

(*゚∀゚)「…………」

('A`)「ん?ツーもいたのか。どうした?なにかあったのか?」

明らかにツーの様子がおかしかった。いつもなら(といっても再会してまだ三日だが)捨て犬が餌貰うみたいに尻尾ふりながら飛び付いてくるだろうに。



17: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:22:14.50 ID:6b8EZCf3O


(;*゚∀゚)「なななななry」

('A`)「お前もかよ」


(;^ω^)(なまじ相手の心が分かるってのも考えものだお)

ξ;゚听)ξ(お互い天然だから質が悪いわね)

(:゚∀゚)(一瞬でわかっちまったじゃねーか)

ん?なんだか慌ただしいなぁ。

('A`)「あれ?シャキンさんもロマネスクさんもいたんですか、こんにちは」

( ФωФ)「……こんにちは」

(`・ω・´)「こんにちは」

('A`)「今日は二人ともお仕事お休みなんですか?」

( ФωФ)「まぁ、そうだ」

(`・ω・´)「俺はまだ町を回らないといけない」



18: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:25:28.19 ID:6b8EZCf3O
ツーが帰ってきてから三日。しかし、変化は確実にあった。

その一つがこの二人だ。

ロマネスクさんは仕事一辺倒な人だったが、では帰りに一杯引っ掛けていくようになった。

今日も来ているので三日連続だ。

ショボンの話術はロマネスクさんの哀しみ、ツンを手放す寂しいさを癒すのに一役かっているらしい。

そしてシャキンさん。

今までもここには来ていたらしいのだが、同年代の方は少なく、何時も隅で一人ビールを飲んでいるか、ショボンと話すくらいだったらしい。

同年代の人が居ても、シャキンさんは職業柄故に、余りフランクに接することが出来ないらしい。

なんでも余りに親しくなると、医者と患者としての立場で向き合った時に色々と支障があるようだ。

だがロマネスクさんが来てくれることで多少なりとも状況は改善されたらしい。

二人とも、家族のために仕事に生きていたのだ。

話題も多く、今ではこうやって隣同士で話をする仲になった。

ショボンの築いたこの店、バーボンハウスは、この町に住む人達にとっての拠り所、謂わば止まり木の様になっている。

それは、ここに来てまだ浅い俺にも十分に感じ取れる事だった。

差し詰め、俺達は止まり木に止まる鳥、電灯に群がる夜光虫といったところか。



19: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:26:58.15 ID:6b8EZCf3O
('A`)「それで、どうしてお前等はそんなに挙動不審なんだ?」

(´・ω・`)「いや、ちょっとね」

('A`)「ショボンには聞いてねぇ」

ショボンに物を訊ねると毎回のらりくらりと躱されてしまう。

('A`)「なぁ、ブーンや。なにかあるのかい?」

(;^ω^)「おっ、なにもないお」

どうやら俺には話せない事らしい。

まぁ、良い。

あまり興味が無いし、当人たちが言おうとしないのを無理矢理聞き出す趣味もない―――ってな大人の建前は置いといて。


別にこいつらが何かを企んでいても、それが絶対、俺にとってマイナスになることはない。

素直にまだそう思える自分が、少し誇らしかった。


('A`)「まぁ、なにかやるなら一枚噛ませろよ」

(;^ω^)(いやいや、貴方当事者ですおw)

(:゚∀゚)(一枚ってレベルじゃねーぞww)



20: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:28:26.37 ID:6b8EZCf3O
('A`)「まぁ、明日で俺は向こうに帰るし、今日は皆に会いたかったから来たんだがな……」

それでも、のけ者にされるのは少し寂しい。


(;^ω^)(ちょwwwおちこんでらっしゃるwwwwww)

ξ;゚听)ξ(笑い事じゃないわよ)

良いんだ、良いんだ。俺だってずっとこいつらと離れて暮らしてたんだ。成人式にも出なかったし。

俺には言えないことがあったってちっとも不思議じゃない。

('A`)「俺、いくわ」

カランコロン

大人になるって寂しい事なんだ、改めて痛感した。

飲食店に来て何も注文せずに帰るという荒技を繰り出したことにも俺は気付かないまま、再び、散歩という孤独の旅に出た。


  ―――◆―――


(;^ω^)「やべーお、あれは落ち込むってレベルじゃなかったお」

(:゚∀゚)「ちょ、誰かなんとかしてくれよ」

ξ;゚听)ξ「仕方ないじゃない、サプライズでした方が盛り上がるだろうし」



21: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:29:40.22 ID:6b8EZCf3O
(;´・ω・`)「あれはもう、僕は孤独の旅に出ます、って感じだったよ」

(`・ω・´)「つまりドクオ君を励ませば良いんだろ?

よーし、パパ頑張っちゃうぞ」

(´・ω・`)「お前は黙ってろ」

( ФωФ)「良いんじゃないか、大人になると言うことは、出会い別れを積み重ねるということだ。
君たちもずっとこのままじゃいられない。それは皆分かってるんだろう?」

(*゚∀゚)「……」

( ^ω^)「……」

( ゚∀゚)「……」

(´・ω・`)「……」

ξ゚听)ξ「……私達は良いのよ。ブーンもジョルジュもショボンもツーも、なべちゃんだって。
皆この町で働いて、皆この町で生きて、この町で死ぬんだもの」

( ^ω^)「……でも、ドクオは違うんですお」

(´・ω・`)「彼は、これからまた僕達から離れていく。僕らに不安はなくても、それは単なる想いの一方通行なんです」

ξ゚听)ξ「だから、今日は絶対に成功させる」

( ^ω^)「それが僕達が今、してやれる唯一の事だお」



22: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:31:35.64 ID:6b8EZCf3O
(´・ω・`)「それに、このまま離れていく、なんて思いながら帰すなんて事は出来ない」

( ゚∀゚)「ああ!」

(*゚∀゚)「……その為に、ここはあるんだからさっ!」

(´・ω・`)「……ツー、ありがとう」

ξ゚听)ξ「じゃあ、やるわね?」

(*゚∀゚)「うん、大丈夫」

(´・ω・`)「……よし、じゃあ作戦開始だ」


  ―――◆―――


気が付けばまたここに来ていた。

('A`)「……なんかに憑かれてんのか?」

昨日、渡部と来た場所。逢瀬神社。

大きな神社でもなければ、とりわけ名物なんて呼ばれる物もない。



23: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:33:13.60 ID:6b8EZCf3O
ただでっかい御神木とベンチがあるだけの、どこにでもある平凡な神社。

だが、わざわざここまで県外から足を運ぶ人が堪えないのは

('A`)「現つの狭間か……」

あの世とこの世の境界線。それがここにはあるのだと言う。

ここに来る人たちの理由の大半がそれだ。

死んだ肉親に逢いたい、先立った彼女に逢いたい、そんな幻想を夢見る人たちが、藁にも縋る思いでここに来る。

当然、そういう話も色々とあるわけで、実際に会ってしまうと向こうに逝くかどうか訊ねられるとか、まぁつまり、色んな曰く付きの神社でもあるのだ。

('A`)「……ん?」

よく見れば先客がいた。ベンチに腰掛け、本を読んでいる。

しかし、彼の服装は明らかに浮いていた。

('A`)「どーも」

( ´∀`)「やぁ、こんにちはモナ」

こんな田舎町には場違いすぎるスーツを着込んでいる彼の隣に俺は腰掛けた。

('A`)「地元の方ですか?」

( ´∀`)「いいえ、違いますモナ」



24: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:34:32.75 ID:6b8EZCf3O
そりゃそうだろう。明らかにこの服装はおかしい。ということは

('A`)「あの噂ですか?」

( ´∀`)「ええ、そうですモナ」

やはり、この人も例の噂を聞き付けてやってきたようだ。

('A`)「ということは……」

これ以上言うのは憚られた。もし言いたくないのなら、ここでこの話題を流すだろう。

しかし、俺にも少し、ここに来る人たちの気持ちに興味があった。

( ´∀`)「娘にね、逢いたいんですモナ」

('A`)「そう、ですか」

彼は悲しみなど微塵も見せない。おそらく娘さんを失ったのだろう。

( ´∀`)「やんちゃな子でね、いっつも泥だらけだったんですモナ」

('A`)「活発な子だったんですね」

( ´∀`)「ええ、活発というかお転婆というか、悪く言えばガサツな子でしたモナ」

ふと、俺の知り合いの顔が浮かぶ。いつも走り回っていて、落ち着きが無く、誰よりも優しいあの子。



25: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:35:52.61 ID:6b8EZCf3O
('A`)「良いんじゃないですか。ガサツでもお転婆でも。俺はそういう元気な子、好きですけど」

( ´∀`)「モナモナw」

何故か彼は、俺の言葉に大声を出して笑った。

( ´∀`)「失礼モナw貴方にそう言われるとなんだか嬉しくて」

('A`)「はぁ」

よく分からない人だ。でも、彼の垂れ下がった眉はどこか優しげで、不快な気持ちには全くならなかった。

( ´∀`)「ずっとね、待ってるんですモナ。娘が来るのをね。
色々と謝りたい事があるんですモナ」

('A`)「……よく分からないんですが、あまり自分を責めるのも良くないと思いますよ」

そう言うと、また彼は笑った。

( ´∀`)「いやはや、君にそれを言われるとはw」

('A`)「どうしてです?」

―――それはね


僕はずっと君のことを見てきたからだモナ



26 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/09/28(日) 23:36:22.49 ID:6b8EZCf3O

('A`)「えっ?」

( ´∀`)「それでは、今日はこの辺りで。また機会があれば逢いましょうモナ」

('A`)「娘さんは、いいんですか?」

( ´∀`)「ええ、多分もう今日は来ないでしょう。それに……」


―――君と逢えましたから


('A`)「あれ?」

―――また逢えたらね、ドクオ君


いつまでも俺の耳に反芻する言葉を確かめ、俺は呆然とする。

もしかして俺

('A`)「見ちまった……のか?」



28: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:38:05.87 ID:6b8EZCf3O

  ―――◆―――

( ゚∀゚)ノ「おっ!いたいた!おーい!!渡部!!」

从'ー'从ノ「わーい、ジョルジュ君だぁ」

( ゚∀゚)「なにしてんだよ、今日はドクオがこっちにいられる最後の日なんだぜ」

('、`*川「このアホの言うとおり!!アンタ、このままだと本当に結婚できないよ」

( ゚∀゚)「なんだ、いやがったのか、化け物」

('、`*川「レディに向かって化け物とはなんだ、アホ」

从;'ー'从「ふえぇ、ちょっと、二人とも落ち着いて」

( ゚∀゚)('、`*川『お前は黙ってろ』

从;'ー'从「……はい」

( ゚∀゚)「たく、この年増ババアが。いつまでそんな若い格好してんだ」

('、`*川「いいじゃーん、似合うんだから」

( ゚∀゚)(正論過ぎて言い返せねぇ)

('、`*川「まぁこんなバカはほっといて。綾香、アンタいつまで良い子ちゃんやってるつもりよ」

从'ー'从「えっ、私は別に……」



29 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2008/09/28(日) 23:38:57.90 ID:6b8EZCf3O
('、`*川「アンタ、ツーに気を使ってんでしょ」

从'ー'从「……だって、ツーちゃん、何年もドクオ君と会ってなかったから。せめて三日くらい」

('、`*川「何言ってんのよ!アンタ、そんな消極的だからまだ処女なのよ」

从//ー/从「あわわ、関係ないでしょ!?」

( ゚∀゚)(なん……だと…っ)

('、`*川「関係大有りよ!別に息子なんてほしきゃないけど、孫は欲しいの!!」
从'ー'从「だって、ツーちゃんも……」

( ゚∀゚)(完全に話に付いていけねぇ)

('、`*川「だってじゃないの!!ツーだって子供じゃないの!それくらい理解してるわ!!!」

从'ー'从「………」

('、`*川「恋はね、戦争なの、Love is Warなのよ!!」

从'ー'从「……でも」

('、`*川「それに……アンタ、なに勝った気になってるの?」

从;'ー'从「うっ……」

('、`*川「気持ちを隠すのは美徳じゃないわ、愛への冒涜よ」

从'ー'从「……」



30: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:40:47.05 ID:6b8EZCf3O
('、`*川「お前はただ臆病なだけ。ドクオにふられるのも、それで今の皆との距離が変わるのも、みんなみんな恐れてる」

从'ー'从「……」

('、`*川「私の娘に生まれたかぎり、中途半端は許さない」


  ―――◆―――


神社を出る頃にはもう日が暮れかけていた。

随分長い間話していたようだ。いや、この表現であっているのかどうかは分からないが。

神社の階段を降りると、誰かが遠くから手を振っていた。誰かはすぐに分かった。

('A`)ノ「よー、どうした?ツー」

(*゚∀゚)ノシ「やっほおおおぉぉぉおおいいいいい!!!!」

よくわからんが、昼間よりは元のツーに近いようだ。

('A`)「よくここが分かったな」

(*゚∀゚)「あったぼーよ!アンタの考えてることなんてなんでもお見通しさねっ!!」

('A`)「そっか……そうだよな」



31: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:42:55.38 ID:6b8EZCf3O
色んな事が変わってしまった。俺の記憶にあるこの町も、そのままの姿ではなかった。

ブーンもジョルジュもショボンもツンもツーも渡部も、みんなみんな変わっていく。

大人という脱け殻に、不本意ながらも、ゆっくりと、だが着実に近づいていく。

(*゚∀゚)「ん?どうしたんだい?」

でも、絶対に変わらないこともあるんだ。俺達はそんな小さな奇蹟に繋げられている。

(*゚∀゚)「なんか顔に付いてるかい?」

('A`)「いや、本当に帰ってきたんだなと思って」

ツーは、笑った。

(*゚∀゚)「あたりまえっさね!本当はもっと早く連絡したかったんだけど、なにかと忙しくてねっ!!ママにも付きっきりだったし」

('A`)「そうか」


―――でも


('A`)「本当に、よく帰ってきたな。ツー」

わしゃわしゃと頭を撫でてやる。

(*//∀/)「ちょっと!?ドクオ!!恥ずかしいから!!」



33: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:50:33.50 ID:6b8EZCf3O
('A`)「おっ、すまね」

懐かしい、ツーと俺はいつも一緒だった。

日曜も、祝日も、登校も、授業中も、放課後も。とりわけツーと俺は仲が良かった。

ツーに振り回されている、そう周りの多くは思っていたようだ。

まぁ、全くもってその通りだ。

だが、俺にとってツーと過ごす時間は特別だった。

いつも、俺を振り回すのだが、どこかそれを楽しむような自分が居て。

この町を好きになれたのも、大切な掛け替えの無い友達が出来たのも、全部ツーのお陰だ。


('A`)「そういえばさ、俺達、お互いを見つけるのが得意だったよな」

(*゚∀゚)「そうさねぇ、なんか分かっちゃうんだよな」

('A`)「あぁ、だから、俺達にとってかくれんぼは無用の産物だったな」

(*゚∀゚)「あひゃひゃw隠れてもすぐ見つかっちゃうしねwww」



34: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:52:04.25 ID:6b8EZCf3O
いつだって、何故かはわからないが、俺達は通じ合えていた。何故かお互いの気持ちが分かった。

ツーの考えてる事、俺の考えてる事。

('A`)「お前が今どんな気持ちか、当ててみようか」

(*゚∀゚)「おうwばっちこーいww」

期待半分、怯え半分。

('A`)「いいや、やっぱやめとく」

(*゚∀゚)「なんだい?怖気づいたのかい?」

('A`)「いや、まぁ、よくわかんねーや」

―――アタシは分かるよ


(*゚ー゚)「ドクオの、今の気持ち」


('A`)「そうか」

(*゚ー゚)「ごめんね」

('A`)「謝るんじゃねーよ、ってかなんで謝ってんの?」

(*゚ー゚)「うん、ただ、ごめんなさい」



35: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/28(日) 23:52:49.31 ID:6b8EZCf3O

  ―――◆―――


(´・ω・`)「掃除は?」

( ^ω^)「おk」

(´・ω・`)「渡部は?」

( ゚∀゚)「おk」

(´・ω・`)「ドクオは?」

(*゚∀゚)「おk」

(´・ω・`)「心の準備は?」

ξ゚听)ξ「おk」

( ^ω^)( ゚∀゚)(*゚∀゚)ξ゚听)ξ『『お酒の準備は?』』

(´・ω・`)「イインダヨー」

( ^ω^)( ゚∀゚)(*゚∀゚)ξ゚听)ξ(´・ω・`)『『グリーンダヨ!!!!!!』』



40: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:02:36.05 ID:VeDuMtYeO

  ―――◆―――


例えるなら流木、俺達は時という名の流れに逆らうことが出来ず、ただあるがままに流される木片。

この先、どれだけ酷い渦が巻いていようとも、どれだけ切り立った滝が待ち受けていようとも、それに逆らうことは出来ない。

俺達はそんな中で生きるしかない。

だからこそ、今を真剣に生きようとしている。

俺も、お前も、お前らもな。

  ―――◆―――

('A`)「んで、今日もまたばか騒ぎか?」

(*^ω^)「いいじゃないかおwドクオはとりあえず明日で帰っちゃうんだし」

(*゚∀゚)「新しい思い出は多いほうが良いっさね!!」



41: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:03:21.97 ID:VeDuMtYeO
それにしても

⊂二二( ^ω^)二⊃「ブーン!!!!」

ξ#゚听)ξ「ちょっと!ブーン、屋内でブーンは禁止って言ってるでしょ!!」

(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」

( ゚∀゚)ο彡°「おっぱいおっぱい」

(*゚∀゚)ο彡°「おっぱいおっぱい」

从*'ー'从「……うぅ、どうしよう」

('、`*川「アンタ、まだ悩んでんの!?」

(`・ω・´)「HAHAHAHAry」

( ФωФ)「NANANANAry」

(’e’)「あばばばばry」

('A`)「なんでこんなにいんだよ」

バーボンハウスの大きさから考えても明らかに店員オーバーだ。

―――しかも

('A`)「親父、なにやってんだよ」



42: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:04:25.77 ID:VeDuMtYeO

(’e’)「いやwwwツンちゃんに是非って誘われちゃってwwwwww」

ξ゚听)ξ「最後の夜にお父さんがいないなんて寂しいわよ」

('A`)「いや、そうだけど」

最後じゃないし、また来るし、こんな送別会みたいなことしてくれなくても良かったのに。

でも嬉しいのも事実。

('A`)「皆、ありがとう」

( ゚∀゚)「いいってことよー。ドクオ、いつでもまた来いよ」

('A`)「あぁ」

それにしても

('A`)「ショボン、こりゃちょっと狭すぎねぇか?」

(´・ω・`)「ん?ああ、問題ないよ。今日は外で飲むからね」

('A`)「はっ?」

(´・ω・`)「よし、それじゃそろそろ行こうか。皆、荷物持ったかい?うん、じゃあ行こうか」

ブーンやジョルジュ、ショボンやロマネスクさんまで両手一杯に荷物を持つ。



44: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:05:38.80 ID:VeDuMtYeO
('A`)「ビアガーデン?」

(´・ω・`)「みたいなものだよ」

ツーまでもが荷物を抱えているので

('A`)「持とうか?」

と訊ねた。

(*゚∀゚)「いいよ、アンタが今日の主役なんだから。うちらが全部準備するっさ」

('A`)「そうか」

どうやら俺には何もさせてくれないらしい。

皆が黙々と準備を進める中、手持ちぶさたな俺は気まずげに周りに視線を送る。

すると、俺と同じように気まずそうな顔をして立っている奴を見つけた。

('A`)「渡部」

从'ー'从「あっ、ドクオ君」

('A`)「ん?お前も仲間外れか?」

从'ー'从「うん、ツンちゃんを手伝おうと思ったんだけど」

('A`)「……そっか」



46: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:07:18.26 ID:VeDuMtYeO
ツーの言葉が甦る。今日の主役、俺と渡部が?なんだか嫌な予感がする。

まぁ考えても仕方ない。

('A`)「んじゃ、俺達も行くか」

从*'ー'从「うん!!」

  ―――◆―――


ビアガーデンの会場は浜辺だった。

整然と並べられた真っ白な椅子と机。その上にそこはかとなく、ぎっしり並べられた料理からショボンの優しさが伝わってくる。

(´・ω・`)「まぁ、ちょっと時期はずれだけどね」

自然と耳に入る潮騒がなんとも言えない雰囲気を作り出している。

('A`)「いいや、最高だよ」

このために皆準備をしてくれてたのか、改めて考えると胸が熱くなる。

( ゚∀゚)「机洗ったのはオレ」

( ^ω^)「皆に連絡したのはボク」

ξ゚听)ξ「料理は私とショボン」

('A`)「……あぁ、みんなありがとう、な」



47: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:08:15.39 ID:VeDuMtYeO
二十六になった。しかし、俺が成長したな、っと思えるところなんてこれっぽっちもなかった。こいつらから見て、俺は変わったのだろうか。少しくらい成長したのだろうか。

これから先、俺達はどんどん変わっていくだろう。

ブーンもジョルジュもショボンもツンも渡部も、それにツーだって。

でも、変わらない、変えられないこともあるんだと、俺は分かった。

例え七人が何人になっても、俺達はいつも一緒で、いつも七人なんだ。

それが、俺にとっての全てで、何にも代えがたい宝物なんだ。

皆が笑い、同じ料理に舌鼓を打ち、同じ時間を共有する。

凡庸なように見えて、非凡な俺達の時間。

( ゚∀゚)(おい、ショボン。そろそろやるか?)

(´・ω・`)(うん、料理も無くなってきたし、皆良い感じに酔ってきたし、頃合いかな)

( ^ω^)(渡部には何も言わなくていいのかお?)

(´・ω・`)(いいんじゃないかな)


( ゚∀゚)「うっし!じゃあいってくるわ!!!」



49: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:09:24.23 ID:VeDuMtYeO
こんなに大人数でいても、やはり会話が途切れることもあって。

でも、全く気まずくはなく、俺はただ笑顔で皆の顔を眺めていた。

潮騒の音だけがやけに大きく聞こえる。

優しい静寂を破ったのはブーンだった。

( ^ω^)「ドクオ、ボク達は変わっていくお」

('A`)「どうしたんだよ、いきなり」

(´・ω・`)「でも、変わらない物だってある」

すぐにショボンが答えた。何か打ち合わせがあったのだろう、だから俺はただ聞いた。



51: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:10:13.88 ID:VeDuMtYeO
ξ゚听)ξ「私だって、ブーンだって、ショボンもジョルジュもツーもナベちゃんも」

(*゚∀゚)「皆、嫌でも変わっちゃうのさ」

( ^ω^)「でも、だからこそ」

(´・ω・`)「僕達は」

ξ゚听)ξ「ここに誓うわ」

(*゚∀゚)「私達が暮らしたこの町に」

( ^ω^)「僕たちの作った思い出に」

(´・ω・`)「今一度、僕達の絆を誓おう」

ξ゚听)ξ「私がどれだけ変わっても」

( ^ω^)「ボクがどれだけ変わっても」

(*゚∀゚)「アタシがどれだけ変わっても」

(´・ω・`)「また、何度でも、バーボンハウスで酒を飲もう」


熱い涙が頬を伝う。
言葉に出来ずに、唇を噛む。
心には、こんなに熱い感情が溢れているのに、伝える事が出来ない。



52: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:11:20.71 ID:VeDuMtYeO



( ^ω^)「渡部は、どうだお?」

从;ー;从「うん……誓うよ、これから皆がどれだけ変わっても、私は皆大好きだから……」

『オレも!!オレも!!』

と、大きな声が聞こえた。


(´・ω・`)「ジョルジュも、誓うってさ」

ξ゚ー゚)ξ「ドクオは?」


(*゚∀゚)「ドクオも、誓ってくれるかい?」



決まってる。

('A`)「俺は、皆とは違う。この町でこれからも一緒ってわけにもいかない」

―――だから

('A`)「多分、俺が一番変わる。くたびれて、すり減って、皆が知ってる俺じゃなくなるかもしれない」

皆は俺の言葉を静かに聞いていてくれた。



53: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:12:43.07 ID:VeDuMtYeO
('A`)「びっくりするぐらい変わって、もしかしたら俺だと気付かないかもしれない。
すっげぇ嫌な奴になってるかもしれない」


―――それでも

('A`)「俺が変わっても、それでも良いといってくれるなら」


―――誓おう

('A`)「俺達は……ずっと、親友だ」


花火が上がった。大きな大きな一輪の花、長月の空に咲く大輪の花。

( ;∀;)「うおおおっっ!!!」

どうやらジョルジュが上げてくれたらしい。

('A`)「さんきゅ、ジョルジュ」

( ;∀;)「ドクオぉ!!もう良いじゃん!この町にいろよ!!ツーも帰ってきたんだしさっ!!!また七人で遊ぼうぜ!!!!」

('A`)「おいおい……」

ジョルジュがここまで取り乱すのは初めてだ。俺が県外の大学に進学するときでさえ一人笑ってたジョルジュが、今、泣き叫んでいる。



54: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:14:26.72 ID:VeDuMtYeO
(´・ω・`)「ジョルジュ、野暮だよ」

そんなジョルジュを優しく、諭すように話すショボン。

( ;∀;)「ううっ……」

(´・ω・`)「僕達は変わる、でも変わらないんだ。わかるだろ?」

( ;∀;)「……うん」

(´・ω・`)「なら、なにも問題はないんだ」

ショボンは優しくジョルジュの手を引き、バーボンハウスに返していった。

ブーンもツンと手を繋ぎ、二人で歩いていた。

シャキンさん、ロマネスクさん、ペニサスさん、親父はツーに引っ張られるようにして歩いていた。


そして、砂浜には

('A`)「渡部」

俺と渡部だけが残された。

从'ー'从「あはは、ジョルジュ君に私の言いたいこと盗られちゃったよ……」

俺は彼女の隣に、そっと腰を下ろした。



55: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:15:07.63 ID:VeDuMtYeO

('A`)「俺、お前のことが好きだったんだ」

从'ー'从「……」

('A`)「ずっと、ずっと自分の気持ちを隠してた」

ずっと嘘を吐いてきた。渡部をそういうふうに見ないようにしてきた。

从'ー'从「ツーちゃんの事、気にしてたもんね」

('A`)「いや、それだけじゃない」

怖かった。七人の関係が壊れるんじゃないかって。俺がこの気持ちを口にしたら、今まで築いてきた思い出が消えてしまうのではないか。

そう、怖かったんだ。

('A`)「俺はさ、怖かったんだよ……」

从*'ー'从「ふふっw私と同じだぁww」

('A`)「でもさ、ツーが帰ってきて、三日だけこの町に帰ってきて、気付いたんだ」

横目でちらりと渡部の顔を見る。

初恋の人は、本当に、本当に、綺麗だった。

('A`)「俺達は変わらない、本当の意味で。だから、俺も嘘つきでいるのは今日で終わりにしようと思う。」



56: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:16:34.02 ID:VeDuMtYeO
从'ー'从「それって……」

('A`)「うん」

心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。

そっか、俺。緊張してるんだな。

('A`)「渡部、いや、綾香。俺、お前のことが―――大好きだ」

これが、俺の、今の俺の、精一杯の四文字だ。

从'ー'从「ドクオくん、私ね、今までずっと言えなかったことがあったんだ。うん、一杯、一杯あった」

俺は黙って彼女の言葉を受け取る。

从'ー'从「どうして名前で呼んでくれないの、とか。うん、そんな小さなことが一杯あった」

('A`)「あぁ」

从'ー'从「でもね、言えなかったの。遠慮してたわけじゃないよ。ただ、その時はそれが一番良いんだって思ってた」

('A`)「………」

从'ー'从「けど、間違ってた。私達の関係はそんなことでは崩れないんだって、やっと分かった」



59: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:17:22.66 ID:VeDuMtYeO


―――だからね


从'ー'从「私も、一番、貴方に言いたかったことを言うね」







『ドクオ、大好き……』





また花火が上がった。今度は何発も。何輪もの花が夜空を彩る。

―――俺達を祝福してくれているかのように――――



61: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:18:14.44 ID:VeDuMtYeO

  ―――◆―――

( ゚∀゚)「たまや〜〜〜!!!」

( ^ω^)「よかったお、これで全部まるっと上手くいったお」

(´・ω・`)「あぁ、そうだと良いんだけどね……」

ξ゚听)ξ(あらっ?ツーがいないわ)

ξ゚听)ξ「お父さん、ツー知らない?」

( ФωФ)「あぁ、ツーちゃんならさっき出ていったぞ」

ξ゚听)ξ「!!ありがと」

ξ゚听)ξ(ツー、貴方、大丈夫だって、大丈夫だって言ったよね……)


カランコロンッ


『うっ……う……っう…………』


ξ゚听)ξ「ツー!?貴方、泣いてるの?」

(*つー;)「うっ!?ううん、なんでもないのっ!!」



62: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:19:13.13 ID:VeDuMtYeO

ξ゚听)ξ「ツー……」

(*つ∀;)「ちょっと寂しくなっちゃって」

ξ゚ー゚)ξ「ツー、泣かないで。そんなに寂しそうに泣いちゃ駄目よ」

(*つ∀;)「………」

ξ゚ー゚)ξ「泣くなら、私の胸の中で泣いて」

ξ゚ー゚)ξ(つ∀;*)『うわーん!!!』

ξ゚ー゚)ξ「よしよし」(つ∀;*)

ξ゚ー゚)ξ(つ∀;*)『ドクオがっ!ドクオがっ!』

ξ゚ー゚)ξ「……一つ、聞いても良い?」(つ∀;*)

ξ゚ー゚)ξ(つ∀;*)『うん……』

ξ゚ー゚)ξ「どうしてドクオに気持ちを伝えなかったの?」(つ∀;*)


―――だって

(*;∀;)「わかっちゃうんだよ!ドクオがなにを考えてるのか!!ドクオが誰を本当に好きなのか!!
知りたくないのに!全然、そんなのっ!これっぽっちも知りたくなかったのに!!
わかっちゃうんだよぉ!!!!」



64: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:21:14.58 ID:VeDuMtYeO

ξつー;)ξ「ツー、貴方って、本当に優しいのね」

ξつー;)ξ「きっと、すぐに良いことがあるわ」(つ∀;*)『ソウカナァ……』


  ―――◆―――


その日の深夜、俺に一本の電話が掛かってきた。

ξつ;)ξ「どうしよう!!ねぇ!ドクオ!!」

(;'A`)「どうしたんだ!?一体何があった!?」

ξつ;)ξ「一緒にお休みなさいって言ったのに。もう泣いてなかったのに……」


『ツーが、居なくなったの』

それだけ聞くと俺はツンに

「大丈夫だ」と伝え、親父のコートを借りて外に出た。

どうしちゃったんだよ、ツー。一体どこに行ったんだ。

一抹の不安が俺の中に過った。



66: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:22:13.23 ID:VeDuMtYeO
('A`)「ブーン!!見つかったか!?」

(;^ω^)「いないおっ!どこにも見当たらないお!!」

( ゚∀゚)「こっちもだ!ファミレスとかコンビニとか近場で深夜までやってそうなところは全部見た」

(#'A`)「畜生!!どこだ!?ツー!!」

今までは、俺が見つけてやれたのに。居なくなったって、すぐに俺がツーを見つけたのに。

(#'A`)「仕方ねぇ!!もう一度探すぞっ!寝てるオヤジ共も叩き起こせ!!見つけるまで俺も帰れねぇ!!!!」

(#^ω^)「わかったお!!」

(#゚∀゚)「全く、アイツは!!」


  ―――◆―――


どこだろう、ここは。心の記憶を深く探ってもわからない。

(*゚∀゚)「神社か?」

賽銭箱や絵巻から辛うじて神社であるということが分かった。

ただ、何もない、寂れた神社だった。

あるのは神木とベンチ。



69: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:25:14.95 ID:VeDuMtYeO
―――あれは

(*゚∀゚)「お父……さん……」

( ´∀`)ノ「やっほーモナ」

あぁ、なんだこれ。夢か。そうだ、きっと夢だ。今頃本当の私はツンの隣で寝息をたてているだろう。

( ´∀`)「マジモナ」
(*゚∀゚)「マジかよwww」

( ´∀`)「さて、バカ娘。久しぶりモナ」

(*゚∀゚)「なんだよ、馬鹿親父。成仏しろよ、塩撒くぞこら」

( ´∀`)「成仏はしてるモナ。今日はちょっと遊びに来ただけモナ」

(*゚∀゚)「そーかい」

( ´∀`)「おや、元気ないモナ?」

(*゚∀゚)「ったくよく喋る夢っさ、別に普通だよ!!」

( ´∀`)「だから夢じゃない、まぁいいモナ。それで、どうモナ?お前が愛してやまないこの町に帰ってきて」

(*゚∀゚)「……うん、やっぱりこの町は最高だよ」

( ´∀`)「ドクオ君がいなくてもかモナ?」

言葉に詰まる。



70: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:26:24.62 ID:VeDuMtYeO

―――でも

(*゚∀゚)「うん、それでも。この町はあったかいよ」

( ´∀`)「そうかモナw良かったモナww」

(*゚∀゚)「お父さん、ごめんね」

探してあげられなくて、アタシだけ助かって、本当にごめんなさい。

(*つ∀;)「アタシ、一杯、一杯探したんだけど、お父さん、全然見つからなくて……」

( ´∀`)つ(;∀;*)『良いんだモナ。ツーが助かってくれただけで、僕は良かったモナ』

―――それに

( ´∀`)「謝るのは僕の方モナ。ツー、お前をこんな素敵な町から連れ出そうとして本当に悪かったモナ。ごめんなさいモナ」

(*つ∀;)「いいよ、アタシも自分の意志で決めたんだもん」

( ´∀`)「ツー、今幸せモナ?」

考えるまでもない。

(*゚∀゚)「世界一の幸せ者っさ!!」

( ´∀`)「そうかモナ。と言う事は僕も世界一の幸せ者の娘を持った、世界一のお父さんモナwww」

(*゚ー゚)「うん……そうだね」



72: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:27:26.66 ID:VeDuMtYeO
( ´∀`)「それじゃ、僕は逝くモナ」

(*゚ー゚)「もう?」

( ´∀`)「そう悲しい顔するなモナ。お父さんはずっとツーの事を見てるモナ。こっちもなかなか良いところモナ。
最近デレさんと友達になったモナ」

(*゚ー゚)「ツンのお母さんと?」

( ´∀`)「モナモナw」

(*゚ー゚)「幸せそうだったでしょ?」

( ´∀`)「あぁ、早く孫が見たいってここ最近ずっと言ってるモナww」

(*゚ー゚)「ごめんね、お父さん」

( ´∀`)「何を謝ってるモナ?ちょっと先に延びただけモナ。期待して待ってるモナ」

(*゚ー゚)「……うん」

( ´∀`)ノシ「それじゃバイバイモナ」

(*゚∀゚)ノシ「バイバイ」


手を振ると、もうお父さんの姿は消えていた。



74: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:28:14.02 ID:VeDuMtYeO

(*゚∀゚)「なんだったんだ?今の……まぁいっか!!」

早く見つけてくんないかなぁ。突然ツンの家飛び出したから、帰りずらいんだよねぇ。

『ツー!!!』

おっ、やっとお迎えが来たみたいだ。

(*゚∀゚)「今日は随分手間取ったねぇ、ドクry」

(´・ω・`)「ふふっwごめんね。ドクオじゃないんだ」

そこにいたのは、ドクオではなくショボンだった。

(*゚∀゚)「ショボン!?どうして分かったんだいっ!?」

(´・ω・`)「うーん、なんでだろね。何故か分かっちゃったんだ」

そっか、ドクオ負けちゃったか。

(´・ω・`)「ツーは散歩かい?」

(*ノ∀;)「えっ?」

(´・ω・`)「駄目じゃないか、ちゃんとツンに言わなきゃ」

(*;∀;)「………うん」



75: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:29:11.73 ID:VeDuMtYeO




(´・ω・`)「よし、じゃあ冷えてきたし、なにかご馳走しようかな」

(*つ∀;)「……もう閉店だろ?」

(´・ω・`)「ああ、今日から二十四時間営業なんだ」


―――ツー限定でね


ショボンは悪戯っぽくアタシにウインクした。



( ´∀`)「初孫……僕も早くみたいモナ」



76: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:30:11.58 ID:VeDuMtYeO

  ―――◆―――

('A`)「見送りなんて、してくんなくても良かったのに」

ξ゚ー゚)ξ「良いじゃん、皆、ドクオが好きなんだから」

( ^ω^)「一番はツンだお!!」

( ゚∀゚)「まぁどうせ店も暇だしな」

(´・ω・`)「僕も、今日は臨時休業」

(*゚∀゚)「おいっ!ビロード、拗ねんなよぉ」

(#><)「いいえ!!今日という今日は許しません!!なんたって僕をのけ者にして……」

从;'ー'从「ごめんね、先生」

('A`)「すまんな、先生」

(#><)「キィー!!!もう絶対許してあげないんですっ!!!」

(*゚∀゚)「いいから、さっさと撮れよ。泣き虫が」

('A`)「いいや、今日は先生も入るんだ。八人で撮ろう」

( ><)「………ちゃんとマメに連絡してくるんですよ?渡部さんを悲しませたら駄目ですよ?」

('A`)「……はい、先生」



78: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:30:59.74 ID:VeDuMtYeO



(´・ω・`)「すいません、写真お願いして良いですか?」


『あっ、はい。良いですよ』





『じゃあとりまーす』

( ><)「いいんだよー!?!?!?」






( ><)( ゚∀゚)(´・ω・`)(*゚∀゚)('A`)从'ー'从( ^ω^)ξ゚ー゚)ξ『グリーンダヨ!!!!!!』



   『パシャッ』



79: ◆IgPB3k.W/o :2008/09/29(月) 00:31:26.89 ID:VeDuMtYeO

そして、アルバムに、また新たな一枚が加わった。

誰かが言う、“奇蹟”だと。

だが、これは決して“奇蹟”などではない。

これは、お互いがお互いを信頼し、全てを許し合った七人の歩んだ“軌跡”なのである。



('A`)はアルバムを捲るようです

番外編

('A`)の長い夜のようです

これにて終了



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