( ^ω^)ブーンが丸痣の謎を追うようです。

150: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 22:28:01.17 ID:vpjj6J9N0
(    )「俺だってそうさ」

今度は反対側から声が聞こえてきた。

( ゚∀゚)「なぁ、ブーンどうしてもっと早く教えてくれなかったんだ」

(;^ω^)「ジョルジュ…」

今度は左手にジョルジュの顔が浮き出ていた。

( ゚∀゚)「せめてアザが出てきた時に教えてくれれば、もっと時間があったんだ」

( ゚∀゚)「なのに、あんな直前に言われてな。俺何も出来ないまま消えちまったよ」

(;^ω^)「ご、ごめんお…」

ブーンは謝ることしか出来なかった。

一体何がどうなっているのか。

ブーンは両手の友人に責め立てられている。

段々とブーンの心は後悔の念で一杯になっていった。



151: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 22:34:33.91 ID:vpjj6J9N0
勿論全部の責任がブーンにあるわけではない。

それでもブーンは精一杯の謝罪をしようと思った。

(;^ω^)「ごめんお、ショボン、ジョルジュ。でも…」

ブーンは一呼吸置いてもう一度話し始めた。

(;^ω^) 『でもぼくは……ッ!』

口から出た声は明らかに自分の物ではなかった。

(;^ω^) 『なんだお!これどうなってるお!』

そこまで喋ってブーンは気付いた。

(;^ω^) 『この声は…ドクオだお…』

('A`)「そうだよ。俺だよ」

口が勝手にパクパクと動いた。



189: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 11:49:35.88 ID:AM5/zhTo0
('A`)「お前のせいで俺まで余計な目にあっちまったんだよ」

(;^ω^)(ド、ドクオも何かあったのかお!?)

ブーンの声はもう出なくなっていた。

('A`)「きっとジョルジュもお前に関わんなきゃ消えずに済んだんだぜ。参るよな」

(;^ω^)(ぼ、僕は関係ないお!)

('A`)「じゃあなんでこんなにお前の知り合いが消えてるんだよ」

(;^ω^)(違う…僕は…僕は……)

違う、足だって胴体だって別の人のものだ。

これだってただの偶然に過ぎないはず。

それなのにブーンは友人を目の前にして、どうしてもそれが言えなかった。



191: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 12:00:49.04 ID:AM5/zhTo0
(´・ω・`)「最低だね」

( ゚∀゚)「最低だな」

('A`)「ありえねーよ」

サラウンドで聞こえてくる友人達の罵倒。

ブーンはもうどうして良いかわからなくなってしまった

( ^ω^)(僕は…一体今まで何をしてきたんだお…)

心が虚しくなっていく。

( ^ω^)(……本当になんだったんだお)

落ち込むブーン、とその目の前に突然見慣れた景色が広がった。

すっかり日が沈んだ後の静かな田園風景。

( ^ω^)(ここは…僕の実家…)



192: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 12:10:52.97 ID:AM5/zhTo0
ブーンが大学に入るまで暮らしていた小さな一戸建て。

ブーンは無意識にチャイムを押していた。

『はーい、今行きまーす』

家の中から声が聞こえてきた。

( ^ω^)(カーチャンの声だお!)

カーチャンなら僕を理解してくれるだろうか。

カーチャンなら僕を優しく抱きしめてくれるだろうか。

ブーンの胸は自然と期待に膨らんだ。

ガチャリと開くドア。

その隙間から確かに見えたカーチャンの顔。

( ^ω^)「カーチャン!!!」

しかし次の瞬間目の前のカーチャンは消えて、ブーンの目にはいつもの自分の部屋が映っていた。



193: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 12:21:40.51 ID:AM5/zhTo0
( ^ω^)「…カーチャン?」

静かな部屋にブーンの弱弱しい声が消えていった。

( ^ω^)「…夢…かお」

すっかり暗くなった部屋の中、ブーンは一人泣き出した。

あれは夢だったんだ、そう思っても三人のあの顔が、声が、ブーンの頭から離れない。

ポタポタと流れ落ちる涙、その雫が膝を十分に濡らした時、ブーンは思い出した。

ブーンの夢の中でジョルジュ、ショボンと共にドクオが出てきていたことを

( ;ω;)「……ドクオ!」

不吉な予感がした。ただの夢なのに、ブーンは気になって仕方がなかった。

(;^ω^)「ドクオ!」

ブーンはすぐさま家を飛び出した。



194: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 12:29:41.50 ID:AM5/zhTo0
暗い住宅街を駆け抜けるブーン。

ブーンは走りながらも考える。

( ^ω^)(僕は今正しい事をしてるのかお…)

もしかしたら今のこの行動もドクオにとっては迷惑なのかもしれない。

頭は悩んでいたが体はひたすら走っていた。

ブーンはこの時ドクオのために走っていると思っていた。

しかしその源は罵倒されても友を気遣うという、そんな格好のいいものではなく。

ブーンは自分のために、ただ自分の孤独をどうにかするために走っていた。



195: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 12:39:46.46 ID:AM5/zhTo0
ドクオの家は電気が点いていた。

ブーンはためらう事無くチャイムを押す。

しかし、反応がない。

ブーンは何度も繰り返しチャイムを押すも、ドクオが出てくる気配がない。

(;^ω^)「……そんなはずないお」

ドクオが居なくなるはずがない。

ブーンはドアに手をかけた。

ドクオは『盗られるものなんかない』と、いつも鍵をかけないのだ。

( ^ω^)「ドクオ…入るお」

ブーンはゆっくりと部屋の中に足を踏み入れた。



196: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 12:48:59.25 ID:AM5/zhTo0
( ^ω^)「…ドクオ?いるのかお?」

散らかった部屋をゆっくりとすすむブーン。

菓子袋やカップ麺の容器がそこらに転がっていて非常に汚い。

(;^ω^)「ちょっとひどすぎるお…」

ブーンは変なものを踏まないように慎重に足元を見ながら歩いた。

慎重に歩いているんだが、何故か距離をうまくつかめずにいろんなものにぶつかってしまう。

( ^ω^)「おっと、っと、っと…て!」

今度は足元ばかりに気を取られて何かに頭をぶつけた。

(;^ω^)「あてて…ドクオこりゃなんでも酷すぎるお」

ブーンがそういって顔を上げたそこに、ドクオの顔があった。



198: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 12:58:50.75 ID:AM5/zhTo0
( ^ω^)「ドク……」

顔はあったのだが、体が無い。

口はあったのだが、目玉が無い。

ドクオの無惨な顔が空中に浮いていたのである。

( ^ω^)「ドクオ……?」

ブーンはすぐに状況を理解した。

これで三度目なのだから。

しかし、溢れ出す感情は止まらなかった。

( ;ω;)「ドクオォォォォォォォォ!」

この涙はドクオとの別れの悲しみか

それとも仲の良い友達が皆消えて一人になってしまった悲しみか

どちらにしても、ブーンの涙は止まらなかった。



201: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 13:08:53.56 ID:AM5/zhTo0
今日は果たしてどれだけ泣いただろうか。

きっと一生分は泣いただろう。目の周りも腫れあがっている。

隠し切れない虚脱感から、ブーンは散らかった床に座り込んだ。

このまま待っていればアイツが来ることはわかっていた。

アイツに会うのは避けたいと思っていたが、今はどうでもよくなっていた。

それにひとつ確かめたいことがあった。

( ^ω^)(ジョルジュ…)

ジョルジュの左手はどうなったのか。

まるでドクオをエサに使っているようで気が引けたが、どうしようもない。



203: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 13:17:47.52 ID:AM5/zhTo0
ブーンがしばらくぼーっとドクオの顔を眺めていると、視界の端から急にアイツが現れた。

( ^ω^)(…来たお)

前見たとおりの足、胴体、腕

そして小指の爪が無い右手に、、、、昼まで手を繋いでいた左手があった。

( ^ω^)(……やっぱりダメだったかお)

一縷の望みも絶たれたような、そんな気分になった。

目の前のソイツはゆっくりとドクオの顔に近づいて、合体した。

酷くアンバランスなその外見からはこれ以上無い嫌悪感を覚える。

( ^ω^)(ダメだお…)

ブーンは必死にその感情を押さえ込んだ。

( ^ω^)(友達の体を、気持ち悪いなんて思っちゃダメだお…)

それでもブーンはゆっくりと近づいてくるその生物を見て、気付かぬ内に後退りをしていた。



204: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 13:26:15.73 ID:AM5/zhTo0
バランスの取れてない足のせいか、その歩みはひどくのろい。

しかし、そのスピードが却ってブーンに恐怖を覚えさせる。

( ^ω^)「やだお……」

近づいてくるのはドクオの顔なのに、掴もうとしてくるその手はショボンやジョルジュの手なのに

( ^ω^)「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

ブーンは耐え切れずに逃げ出してしまった。

( ^ω^)「僕は!僕はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

暗闇の町を今日何度目かの疾走。

あんなものに捕まりたくない。

たとえ皆から罵られても、生きていたい。

ブーンは惨めなほどに生を欲した。



206: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 13:35:05.77 ID:AM5/zhTo0
ブーンはヨレヨレになりながら自宅へと駆け込んだ。

扉には鍵をかけ、テーブルやらを運んできてバリケードを作った。

(;^ω^)「はぁ…はぁ…はぁ…」

今アイツはどこを歩いているんだろうか。

ブーンは見えない恐怖に背筋が寒くなった。

とりあえず冷静にならなければいけない。

(;^ω^)「そうだお、慌てても何も良いことは思い浮かばないお」

ブーンはとりあえず洗面所で顔を洗うことにした。

( ^ω^)「ふおー、気持ちいいお」

泣きっぱなしだったせいか、顔がさっぱりして気持ちいい。

鏡を見るとやっぱり目の周りが赤く腫れていた。

( ^ω^)「うわ、こりゃひどいお」



208: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 13:44:45.20 ID:AM5/zhTo0
良く確かめようと鏡に近づくブーン。

そしてブーンは見てはいけないものを見てしまう。

( ^ω^)「……う…うう」

あまりの衝撃に言葉がうまく出ない。

( ^ω^)「…ウソだお」

そういいながらも目の前の光景から目が離せない。

( ^ω^)「あぁぁぁぁぁ……」


ブーンの右目に赤い丸痣が浮き上がっていた。


( ^ω^)「ぅぁ……ぁぁぁあああああああああ!」



209: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 13:53:55.85 ID:AM5/zhTo0
いつ、一体どこで、なんで僕が、どうして今まで

一気にブーンの脳内はパンクする。

死にたくないと逃げ出してきたのに、ふたを開けてみればこんな結末。

ブーンは絶望した。

この赤アザが出てしまってはもうどうにもならないのだ。

( ^ω^)「…………」

でも、これで皆に許してもらえるかもしれない。

ブーンはそんなことを考えると、ふと心が落ち着いたような気がした。

そしてブーンに突然襲い掛かる途轍もない孤独感。

(;^ω^)「…これはやばいお」



210: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:01:22.43 ID:AM5/zhTo0
ブーンは急いで電話を取り出した。

ショボンはこんな気持ちだったのだろうか。

しかしブーンに電話を掛ける友人はもう居ない。

( ^ω^)「あ…カーチャンだお」

とっさに思いついたのは、カーチャンだった。

この寂しさを紛らわしたい。

その思いでブーンはカーチャンに電話を掛けた。



212: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:07:44.54 ID:AM5/zhTo0
J('ー`)し「もしもし?」

( ^ω^)「カーチャン、ブーンだお」

ブーンは明るく振舞うように努めた。

J('ー`)し「あぁ、ブーンかい。どうしたの?昨日話したばっかりなのに」

( ^ω^)「今日もカーチャンの声が聞きたくなったんだお」

J('ー`)し「へぇ…なんだか気持ち悪いねぇ」

(;^ω^)「カ、カーチャン、そりゃないお!」

J('ー`)し「ふふ、冗談だって」

カーチャンとの会話は暖かかったが、もうブーンの寂しさは埋まりそうに無かった。

ふと奇妙な感覚に下を見るとやはり足先が消えている。

もうすぐ自分が消えてしまう。

何か特別なことを言おうとブーンは思うが、何も思いつかない



214: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:13:33.71 ID:AM5/zhTo0
( ^ω^)「カーチャンは僕が…」

もし消えたら、と言おうとして言葉を飲み込んだ。

カーチャンに余計な心配を掛けてはいけない。

J('ー`)し「なに?」

( ^ω^)「僕が、反抗期の頃どうだったかお?」

苦し紛れに出た質問だった。

J('ー`)し「反抗期ねぇ…そりゃあ色々大変だったわ」

目の高さが低くなった。

下半身が消えたのだろう。

( ^ω^)「たとえば?」

J('ー`)し「そうね…良かれと思ってした事もブーンには嫌な思いをさせているってわかった時とか」

覚えがあった。

でもそれは心からの拒絶ではなかったはずだ。



217: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:17:10.27 ID:AM5/zhTo0
( ^ω^)「カーチャン、それは多分違うお」

ブーンはこの誤解だけは解いておきたいと思った。

( ^ω^)「僕はその時カーチャンにいろいろ言ったかもしれないけど、それは本心じゃないお」

自分で話していてブーンは心が楽になっていくのを感じた。

( ^ω^)「カーチャンが心配してくれてるっていうのはいつも、僕うれしかったお」

J('ー`)し「……そう」

これを伝えられただけでも満足かもしれない。

そしてあっちで待ってる友人にも同じ事を言ってもらえたら、と

ブーンはそう思った。



218: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:20:40.40 ID:AM5/zhTo0
ブーンは手が消えて電話を落としてしまう前に電話を床に置いた。

J('ー`)し「そういえば最近風邪が流行っているけど、ブーンは大丈夫かい?」

風邪どころの話じゃない、とブーンは聞こえないように軽く笑った。

( ^ω^)「僕は風邪なんかひかないお」

J('ー`)し「そうね、ブーンは昔から風邪ひかなかったものね」

両手が消えた。

それでもブーンはうつ伏せになって電話を続けた。



220: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:25:12.92 ID:AM5/zhTo0
J('ー`)し「そうだ、今度の連休には帰ってくるんでしょう?」

そういえばそんなことを話した覚えがあった。

( ^ω^)「でももしかしたら補習が入るかもしれないお」

全くのウソだったが、絶対に帰るとは言えなかった。

J('ー`)し「ブーン、また遊んでばっかりいるんでしょ」

(;^ω^)「ご、ごめんお」

首から下が無くなった。

J('ー`)し「ブーンの好きなもの用意して待ってるから、頑張って勉強するんだよ」

自分はもう帰ることは無いのに、こんなことを言ってくるカーチャン。

ブーンはもう無いはずの心が締め付けられた。



221: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:29:39.80 ID:AM5/zhTo0
( ^ω^)「………」

J('ー`)し「どうしたの?ブーン」

顔の感触がなくなってきていた。

( ^ω^: 「カーチャン、ありがとうだお」

ブーンは最後に精一杯の感謝をした。

J('ー`)し「何よ、ご飯くらいいつだって作ってあげるわよ」

最後は決して泣くまい、とブーンは必死にこらえた。

けれども涙は止まらない。

カーチャンの料理が食べたい。

それでもブーンは必死に鼻声になるのを我慢した。



222: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:35:14.33 ID:AM5/zhTo0
( ;ω;:; 「ありがとうだお…僕ちゃんと勉強するお」

J('ー`)し「そうよ、しっかり頑張りなさい」

そろそろ口の辺りが怪しくなってきた。

( ;ω;:. 「あ、誰か来たお!じゃあカーチャンまた後で――――」

すべてを言い終わる前にブーンの口は消滅した。

J('ー`)し「ブーン?…電話も切らないで、あの子はそそっかしいね…」

( ;;:',.  「………」

ブーンはその意識が途切れるその瞬間まで電話の声を必死に聞いた。

そして、部屋には涙に濡れる赤い眼球だけが残った。



224: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:38:49.81 ID:AM5/zhTo0
J('ー`)し「まったく…」

カーチャンは不平を口にしながらも、2日連続で息子の声が聞けてうれしかった。

J('ー`)し「何を作ったらブーンが喜ぶかしら…」

ブーンの喜ぶ顔を想像してカーチャンは口元が緩んだ。

カーチャンはあれこれと作るものを考えながら、連休前にそろえるものを考えていた。

J('ー`)し「ハンバーグにコロッケ…とりあえずひき肉は冷蔵庫にあったから…」

すると突然家のチャイムが鳴った。

こんな時間に回覧板でも回ってきたのだろうか。

J('ー`)し「はーい、今行きまーす」

パタパタとカーチャンは薄暗い玄関の方へと歩いていった。





−終−



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