( ^ω^)ブーンが丸痣の謎を追うようです。
- 5: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 19:03:50.21 ID:Lm2J2Rdn0
- 春の陽気に誘われて表へ出たブーンは、どこへ行くでもなくただ散歩をしていた。
人通りも疎らな昼下がりの住宅街を、一歩一歩ゆっくりと歩きながら春を感じていた。
時々立ち止まっては柔らかい春風に乗ってくる草木の匂いを胸いっぱいに吸い込み、大きく伸びをしてまた歩き出す。
( ^ω^)「気持ちいいほどブーン日和だお」
降り注ぐ日光がブーンにエネルギーを与えてくれているようだった。
- 7: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 19:06:45.64 ID:Lm2J2Rdn0
- ブーンは居ても立ってもいられなくなり、ブーンをしようと腕を広げた。
そして駆け出す第一歩を踏み出したその時、いきなり目の前から強い衝撃を喰らった。
(;^ω^)「ッ―――」
想定外のことに口から出るはずだった言葉が喉奥に舞い戻り、息が詰まった。
全身が硬直し、目の前が暗転した。
先ほどとは打って替わってブーンの意識は冷たい闇にどんどんと飲み込まれていった。
- 9: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 19:09:41.50 ID:Lm2J2Rdn0
- ( ^ω^)「……あれ…?」
どうやら気を失っていたらしく、気が付くとブーンはさっきと同じところに居た。
奇妙なことに、気付いたときにはブーンはうつ伏せになっているのでもなく、既に直立していた。
体中どこにも痛むところは無いし、擦り傷1つ無い。
( ^ω^)「……目眩でも起こしたのかお?」
ブーンは狐につままれたような顔をしながらその場にしばらく立ち尽くしていた。
( ^ω^)「…今日はもう帰るお」
きっと体調不良なのだろうと結論付けて、ブーンはもう家に帰ることにした。
帰る前にもう一度後ろを振り返ったが、そこには相変わらずの風景があった。
けれどもどこかブーンの心に引っかかるものがあったのは確かだった。
- 11: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 19:16:08.86 ID:Lm2J2Rdn0
- 帰り道の途中で何か精力の付くものを食べようと思いついて、スーパーに寄ることにした。
( ^ω^)「やっぱり精力といえばうなぎだお」
奮発してうなぎを買う決心をしたブーンは、迷う事無く安い中国産のパックに手を伸ばして買い物かごに入れようとした。
しかし、ブーンの手は宙をさまよいパックを掴み損ねた。
( ^ω^)「…これはもうだめかもわからんね」
ブーンは再度慎重にパックを掴み、買い物かごに入れた。
どうやら今日はすこぶる調子が悪いらしい。
ブーンはさっさと会計を済ませると、夕暮れの道を足早に帰宅した。
- 12: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 19:24:17.32 ID:Lm2J2Rdn0
- ( ^ω^)「ふー…」
家について一度溜息を吐くと、電気のスイッチを手探りで探して点けた。
チカチカと音を立てて光りだす蛍光灯の明かりを確認して、ブーンは荷物をテーブルの上に置いた。
既に空腹だったので、うなぎと冷凍していたご飯を電子レンジに放り込んでボタンを押し、テレビのスイッチを点けた。
けれども、徐々に香ってくるうなぎの匂いのせいで、テレビの内容はうわの空だった。
甲高い電子音がなると、電子レンジからそれらを取り出し無造作にどんぶりに盛り付けてテーブルの上に置いた。
しかし、いざ食べ始めるとケチった分の報いを喰らった。
( ^ω^)「見ろ!皮がゴムのようだ!」
しかし捨てるのも勿体無いのでブーンは皮をすべて剥ぎ取り先に食べてしまってから、ゆっくりうな丼を味わうことにした。
口の中で中々細かくならない皮を噛んでいると、突然携帯電話が鳴った。
- 14: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 19:31:45.18 ID:Lm2J2Rdn0
- ディスプレイに表示されていた名前はショボン。
こんな時間に電話をよこすなんてそう無いことだ。
( ^ω^)「もぐもぐ…ショボン?どうしたんだお?」
(´・ω・`)「あぁ、ブーン大変だ…僕が、僕が…」
ショボンの慌てぶりに何かを感じ取り、ブーンは皮を一気に飲み込んで話の続きを促した。
( ^ω^)「ショボン?何があったんだお?」
(´・ω・`)「僕がいなくなっていくんだ!助けてくれ!」
( ^ω^)「いなくなるって何を言って――――」
プッ…―――ツーツーツー
突然前触れも無く電話が切れた。
ブーンは電話と、うな丼を交互にチラチラ見ながら考えていたが、うな丼にラップをすると急いで家を飛び出した。
- 15: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 19:38:33.80 ID:Lm2J2Rdn0
- すっかり日が暮れた道を駆けるブーン。
ショボンの住むアパートに駆けつける間もブーンは何度も電話を掛けたが、ショボンは一度も出なかった。
1階にあるショボンの部屋につくと、ブーンはすぐにドアに手をかけ、力いっぱい引っ張った。
( ^ω^)「ショボン!!!」
叫びながらかっこよくドアを開けようと思ったが、ドアには鍵がかかっていてびくともしなかった。
(;^ω^)「て、手首が抜けるかと思ったお…」
( ^ω^)「ショボン!ショボン!どうしたんだお!」
ガンガンと扉を叩いてみるが部屋の中からは反応が返ってこない。
もう一度部屋を確認してみたが、ショボンの住むところに間違いは無かった。
ブーンは裏手に回って窓から呼びかけてみることにした。
- 16: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 19:45:45.91 ID:Lm2J2Rdn0
- 足に纏わり付く草を踏みながら裏手に回ってみると、部屋の中からカーテン越しに光が漏れていた。
どうやら中にいるのは間違いないようだ。
ブーンは窓枠に手をかけ横に引いた。すると窓には鍵がかかっていなかったらしく、抵抗無くするすると開いた。
( ^ω^)「ショボン!!!」
邪魔臭いカーテンを手で払いのけると、床に座りながらこちらを見ているショボンがいた。
( ^ω^)「ショボン!何が――――」
しかし、ブーンは次の瞬間我が目を疑う光景に出くわした。
(´・ω・`)
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( ^ω^)「――――――え?」
ショボンは目の前から砂山が崩れるように消えてしまったのだ。
- 17: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 19:54:19.63 ID:Lm2J2Rdn0
- しばらく呆けていたブーンだが、とりあえず何が起こったか確認しようと部屋の中へ入った。
部屋の中は特に変わった様子も無く前に遊びに来たときのままだった
( ^ω^)「確かこの辺だお…」
ブーンはさっきショボンが消えていった辺りを詳しく調べてみた。
しかし辺りの床を見回してみても。崩れ落ちたショボンの形跡は何一つ無かった。
(;^ω^)「やっぱり今日は調子が良くないみたいだお」
よく考えてみれば、人が目の前で消えるなんてことはそうそう無い。
きっとあんな電話をよこして、ビックリさせようとどこかに隠れてるに違いない。
( ^ω^)「ショボン、どこにいるお?ショボンのせいでせっかくのうな丼が台無しだお」
ここに隠れているのかと、テーブルの下を覗くとそこに握りこぶし大の何かが落ちていた。
- 18: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 20:02:58.91 ID:Lm2J2Rdn0
- 何かと思い手にとって見たが、それが蛍光灯の明かりの下に出るとブーンは反射的にそれを放り投げた。
(;^ω^)「うわぁぁぁぁぁ!!!手、手が!!!」
ブーンが拾ったそれは紛れも無く人間の右手だったのである。
皮膚を触った生々しい感触が頭からなかなか離れずに、ブーンは鳥肌が立ちっぱなしだった。
(;^ω^)「な、なんでこんなところに手が落ちてるんだお!!」
およそ考えられない事態にブーンは取り乱していたが、まだアレが本物だとは限らない。
ブーンはもう一度恐る恐る近づいて、放り投げた手を見てみた。
見れば見る程リアルなその手には、手の甲の辺りに丸い模様がついていた。
(;^ω^)「…やっぱり偽モノかお?ショボンも人が悪いお」
しかし、それだけではなかった。その手には小指の爪が無かったのである。
ブーンはそのことに気が付いた瞬間、背中に寒気が走り、目の前がチカチカして倒れそうになった。
ショボンの右手も同じように小指の爪が無いことを思い出したのだ。
- 20: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 20:13:26.18 ID:Lm2J2Rdn0
- (;^ω^)「……………」
言葉も無く立ち尽くすブーン。
ただ落ちている手を見つめながら先ほど見た光景を思い出していた。
(;^ω^)(やっぱりさっきのは幻覚じゃなかったのかお?でもだとしたら何で手だけが…)
ブーンが考え込んでいると、前触れも無く突然びくりと手が動いた。
(;^ω^)「ひおっ!」
ブルブルと震えだした手は、ブーンの目の前で徐々に浮き始めたのである。
余りに現実離れした光景にただただ呆然とするブーン。
心臓のドキドキがうるさい位に聞こえてくる。
しかし、突然視界の外からさらなる不条理がやってくる。
それには足があった。そして胴体も腕もあった。けれどもそれ以外が無く、そしてそれらもあまりにちぐはぐだった
太さの違いは勿論、左足はハイヒールを履いているのに、右足はスニーカーを履いているのだ。
- 21: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 20:21:26.56 ID:Lm2J2Rdn0
- そんなものが歩いてきたのだから、ブーンは気を失いそうになる。
(;^ω^)「…………(ヤバすぎるお)」
これは夢なのだろうか。こちらに気付いて歩いて来たらどうしよう。
そんな言葉が頭の中を駆け巡る。
ブーンはただ息を潜め、それを注意深く見ていた。
そのグロテスクな生物は浮かんでいる手の前で立ち止まると、まるでプラモデルの部品をはめるように右手を自身に取り付けた。
そして、突然目の前から消えてしまったのだ。それもゆっくりとではなく、一瞬にして。
見失ってしまったのかと勘違いするほどの唐突さに、ブーンは辺りを見回してみたが、そこはもういつも通りのショボンの部屋だった。
(;^ω^)「………………」
しかしながら、それでもブーンは体に残る恐怖でしばらく動けずにいた。
- 23 名前: ◆HGGslycgr6 [遅筆でスイマセンorz] 投稿日: 2006/02/16(木) 20:34:51.45 ID:Lm2J2Rdn0
- 今日は昨日に引き続き休日だ。
ブーンはいつもより早起きをした。というより、全然寝付けなかったのである
( ^ω^)(一晩中アイツが頭から離れなかったお…)
あの後、ブーンは自分の家に帰った後も食欲が湧かず、うな丼も食べずに冷蔵庫の中にしまってある。
朝食は食べようと思ったが、体がだるくて何かを準備するのがめんどくさかった。
( ^ω^)「…ショボン」
携帯を取り出しショボンに電話をかけてみるがやっぱり出てこない。
ブーンはなんだか心細くなって、ドクオに電話を掛けることにした。
( ^ω^)「もしもし?ドクオかお?」
('A`)「…朝からなんだよブーン、俺はそろそろ寝たいんだけど」
どうやらドクオはまた徹夜でゲームをやっていたようだ。
- 24: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 20:40:31.86 ID:Lm2J2Rdn0
- ブーンは昨日の夜あったことを、ドクオに説明した。
('A`)「ブーン、そりゃあお前疲れてるんだよ」
確かに昨日はおかしなことが他にもあった。
( ^ω^)「やっぱりそう思うかお?」
冷静に考えてみればあんなことが起こるはずも無い。
ブーンはドクオに指摘されて自信が出た。
('A`)「そうだよ、それじゃあ俺も疲れてるから寝るぞ」
( ^ω^)「ありがとうだお」
ドクオとの会話でブーンは少し元気が戻ってきた。
( ^ω^)「うな丼食べなおすお」
- 25: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 20:48:01.40 ID:Lm2J2Rdn0
- うな丼を平らげて、ブーンはぼーっとテレビを見ていた。
テレビからは賑やかなバラエティ番組が流れてくる。
しかし、ブーンはドクオと話しているときは消えていた不安が徐々にまた湧き出てきているのを感じていた。
( ^ω^)「……やっぱりおかしいお」
あれが幻覚だったらショボンが何処に行ったのかがわからない。
( ^ω^)「もう一度行ってみるお」
昼間の明るいときなら、多少は恐さも紛れるだろう。
ブーンはもう一度ショボンのアパートに向かうことにした。
- 27: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 21:00:18.43 ID:Lm2J2Rdn0
- ショボンのアパートに着くと、昼間に窓から入るわけにもいかないと
ブーンは適当な理由を作り大家の人に鍵を開けてもらった。
当然のことながら、部屋は昨日の夜のままであった。
昨日の夜、手が落ちていた場所、いきなり変な生物が消えた場所。
ブーンは一通り調べてみたが何も変わった所は見当たらない。
冷蔵庫を開けてみても中身はちゃんと入っている。
ふと、思いついて電話を掛けてみるとベッドの方から着メロが聞こえてきた。
手にとって見ると間違いなくショボンの携帯だった。
開いてみると着信履歴にはびっしりと自分の名前が並んでいる。
( ^ω^)「……ショボンはやっぱり消えてしまったのかお」
頭を抱えるブーン。と、その時ブーンの携帯に着信が飛び込んできた。
- 28: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 21:05:44.43 ID:Lm2J2Rdn0
- ( ^ω^)「はいお?」
('A`)「もしもし?ブーンか?」
相手はさっき寝たはずのドクオだった。
( ^ω^)「ドクオ寝たんじゃなかったのかお?」
('A`)「いや、あの後結局ずっとゲームを続けてたんだ。それで思い出したんだよ」
( ^ω^)「何を思い出したんだお?」
('A`)「丸い模様のことだよ。まぁ、関係ないかもしれないけどな」
ドクオはゆっくりと思い出したことを話し始めた。
- 30: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 21:16:45.10 ID:Lm2J2Rdn0
- ('A`)「あれは、たしか三日くらい前だな――」
その日ドクオは毎週買っている週刊誌を買いにコンビニへと出掛けていた。
('A`)「今週はアイツちゃんと描いてるかなぁ…」
ドクオは独り言を言いながらコンビニへの道を歩いていた。
そして、後もう一回角を曲がればコンビニというところで、誰かの短い悲鳴が聞こえてきたのである。
('A`)「あん?」
ドクオが後ろを振り向くとOL風の女がしりもちをついているのが見えた。
('A`)(パンツ丸見えじゃないか…)
ドクオは助ける気持ち半分、下心半分でOLに近づいていった。
('A`)「大丈夫ですか?(白キタコレ)」
OL「あぁ、ありがとうございます」
('A`)「でさ、そん時そのOLの足に丸いアザみたいなのがついてたんだよ」
- 31: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 21:26:14.08 ID:Lm2J2Rdn0
- ('A`)「最初はキスマークかなぁなんて考えてたんだけど、まん丸なんだよな」
( ^ω^)「………」
丸い模様ならあの手にもあった。
そしてあの手は………
( ^ω^)「ドクオ、そのOLさん何履いてたか憶えているかお?」
('A`)「あぁ、確か赤いハイヒール履いてたぜ。だから転んだんだろうな」
( ^ω^)「どっちの足だったかは憶えているかお?」
('A`)「……こっちから見て右だから多分左足だな」
果たしてこれは偶然なのか、ブーンは形を成しつつある何かに恐怖を覚えていた。
( ^ω^)「……わかったお」
('A`)「おぉ、じゃあ俺はもう本当に寝るわ」
電話が終わったあともしばらく、ブーンは立ったままショボンのベッドを見つめていた。
- 34: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 21:38:48.59 ID:Lm2J2Rdn0
- 丸いアザとあの気持ち悪い奴との間に、なんらかの関係があるのは確かだった。
( ^ω^)「あの丸いアザは一体何なんだお…」
ドクオが思い出すのも判る気がする。あの丸いアザは一目見ただけで何か変だとわかるのだ。
大きさはそれほど大きくは無いのだが、色が真っ赤なのだ。
あの右手についていた丸いアザもまるで絵の具を塗ったように赤かったのをブーンは思い出した。
( ^ω^)「せめてショボンが何をしていたのかがわかれば…」
そこでショボンの携帯を思い出した。
( ^ω^)「そうだお、メールを見ればいいんだお」
ショボンには悪い気がしたが、ブーンは携帯を開いて最近のメールを探し始めた。
- 36: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 21:50:47.36 ID:Lm2J2Rdn0
- メールを調べてみると、どうやらショボンが一番最近会ったのがジョルジュらしいことがわかった。
( ^ω^)「これならジョルジュがなんか知ってるかもしれないお」
ブーンはジョルジュに電話を掛けた。
( ゚∀゚)「よぉ、ブーン久しぶりだな」
( ^ω^)「うん、久しぶりだお」
ブーンはジョルジュにショボンと会った日の事を聞いた。
( ゚∀゚)「…あの日は確かカラオケに行って、飯食ってそのまま別れたぞ」
( ^ω^)「なんか変わった事は無かったかお?」
( ゚∀゚)「変わった事かぁ…特に何も無かった気がするなぁ」
( ^ω^)「ショボンの右手にアザがあったかとかは憶えてないかお?」
( ゚∀゚)「アザ…あぁ、あったあった。そういえばそんなこともあったな」
- 39: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 22:02:49.90 ID:Lm2J2Rdn0
- ( ゚∀゚)「確かカラオケに行く途中だったな。いきなりショボンが立ち止まって喋らなくなってさ」
( ^ω^)「喋らなく?」
( ゚∀゚)「あぁ、その場で黙ったまま動かないからどうしたのかと思ってさ」
( ^ω^)「それでどうなったんだお?」
( ゚∀゚)「それが別にどうもなってないんだ。ショボンは虫か何かが手にぶつかって来た感じがしたって言ってたけど」
( ^ω^)「それってもしかして…」
( ゚∀゚)「それで右手を見てみたら丸いアザみたいなのが出来ててさ。でも痛くないって言うから、そのままカラオケに」
( ^ω^)「…………」
ブーンはしばらく考え込んでいた。
( ゚∀゚)「ブーン?」
( ^ω^)「あ、ありがとう、助かったお」
とりあえずブーンはジョルジュとの電話を終えた。
- 48: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 22:41:23.91 ID:Lm2J2Rdn0
- ブーンはさっきからずっと気になっていた。
何か自分が見逃していることがあるんじゃないかと。
ジョルジュとの電話でそれが1つ見つかった気がする。
(;^ω^)(そんなことあってたまるかお)
ブーンは急いで自分の家に向かった。
バン!
荒々しくドアを開け、なだれ込むように家に入り、脇目も振らずに洗面所に飛び込んだ。
そして、ブーンはゆっくりと自分の顔を眺めた。
- 49: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 22:51:50.69 ID:Lm2J2Rdn0
- ( ^ω^)「…………」
そこにはいつもと同じ顔があった。
(;^ω^)「よかったお……」
この間の奇妙な体験とショボンの話が余りにも似ていたから
ブーンは自分もアザが出ているのではないかと焦ったのだ。
( ^ω^)「取り越し苦労だったお」
それから全身くまなく調べたがどこにもアザは出来ていなかった。
( ^ω^)「とりあえず安心したらお腹空いたお」
ブーンはチャーハンを作って食べることにした。
- 50: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 23:02:31.25 ID:Lm2J2Rdn0
- ( ^ω^)「チャーハン、チャーハン、作るおー」
冷蔵庫を開けて何を入れようか考えていたが、卵くらいしか入れれそうなものは無かった。
(;^ω^)「…貧乏チャーハンだお」
それでもチャーハンの素を入れるとそれなりの形にはなった。
ブーンはお昼のバラエティ番組を見ながら、チャーハンを食べていた。
( ^ω^)「そういえば、今晩食うもの無いお」
チャーハンを食べ終えたところでブーンは冷蔵庫の中身を思い出した。
( ^ω^)「よし、買い物行ってくるお」
この間、体調が悪いからと、うなぎしか買ってこなかったのが失敗だった。
ブーンは身支度を済ませて家を出た。
- 51: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 23:08:18.11 ID:Lm2J2Rdn0
- ( ^ω^)「今日は何が安いのかお」
出掛けに持ってきたスーパーのチラシを見ながらブーンは町を歩いていた。
( ^ω^)「魚が安いお…。今日は焼き魚にするお」
ブーンがチラシをポケットにしまって、ふと前を見るとジョルジュがいた。
( ^ω^)「ジョルジュー」
ブーンは呼びかけながらジョルジュの元へ走っていった。
( ^ω^)「ジョルジュ、さっきは助かったお」
( ゚∀゚)「………」
しかし、ブーンが話しかけてもジョルジュはまるで気付いていないようだった。
( ^ω^)「……ジョルジュ?」
- 53: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 23:17:32.39 ID:Lm2J2Rdn0
- ( ゚∀゚)「………」
ジョルジュは無視しているという風でもなく、ただぼんやりとどこかを見ていた。
( ^ω^)「ジョルジュ?どうしたんだお?」
ブーンはジョルジュの肩を叩くが反応が無い。
そしてブーンは見てしまう。
(;^ω^)「―――ッ!」
ジョルジュの左手に丸いアザが出来ているのを。
しかし、そのアザはブーンが前に見たものとは違っていた。
(;^ω^)「アザが黒いお…」
- 55: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 23:27:12.02 ID:Lm2J2Rdn0
- ( ゚∀゚)「…ん?なんだ?」
どうやらジョルジュは気が付いたらしい。
(;^ω^)「ジョ、ジョルジュ…」
( ゚∀゚)「お?ブーンじゃないか。どうした?」
ジョルジュは何も無かったかのようにブーンに話しかけてきた。
ブーンは迷った。ジョルジュにアザのことを言うべきかどうか。
ブーンが見たアザは真っ赤だったんだから、もしかしたらこれは本当にただのアザなのかもしれない。
そう思ってブーンはジョルジュに聞いてみた。
(;^ω^)「ジョルジュ、左手のアザ…」
( ゚∀゚)「左手?あ!なんだコレ!?」
どうやら元からあったというわけではなさそうだった。
- 57: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 23:35:44.75 ID:Lm2J2Rdn0
- ( ゚∀゚)「こりゃあショボンとお揃いになっちまったな」
( ^ω^)「…お揃い?」
そんなはずは無い。ショボンの右手のアザは確かに赤だったはず。
( ^ω^)「ジョルジュ、ショボンの右手に出来たアザの色って…」
( ゚∀゚)「ん?これと同じだよ。真っ黒だったぞ」
(;^ω^)「…………」
どういうことだろう。じゃああの右手はショボンのものじゃなかったとでも言うのだろうか。
( ゚∀゚)「ショボンのとこでも行って見せてくるかな。お揃いだーって」
(;^ω^)「あ…えっと、ジョルジュ」
そういえばジョルジュはまだショボンが消えたことを知らない。
まだ確証を掴んでいない以上、このことを言うのはさすがにまずいだろう。
- 58: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 23:46:37.26 ID:Lm2J2Rdn0
- ( ゚∀゚)「どうした?」
(;^ω^)「ショ、ショボンは今家族で旅行に出掛けてるらしいお」
別に吐かなくてもいい嘘だったかもしれないが、念のため言っておいた。
( ^ω^)「なのに家に携帯を忘れたから、しばらく連絡が取れないって言ってたお」
( ゚∀゚)「ぶはっ!あいつおっちょこちょいすぎるだろ!」
( ^ω^)「あはは、本当だお。……」
もしかしたらショボンは本当に携帯を忘れて旅行に行ったのではないか。
ショボンは今もどこかで元気でいるんじゃないか。
ブーンは自分の嘘と真実をダブらせて、なんだか切なくなった。
( ^ω^)(………ショボン)
- 60: ◆HGGslycgr6 :2006/02/16(木) 23:56:20.65 ID:Lm2J2Rdn0
- ( ^ω^)「…ジョルジュ、なんかあったらすぐに電話してくれお。」
( ゚∀゚)「ん?お、おぉなんか知らんがわかったぞ」
ブーンはそのままジョルジュと別れ、すぐにドクオに電話を掛けた。
( ^ω^)「…………」
しかし鳴らせど鳴らせどドクオが出る気配は無い。
( ^ω^)「ドクオまだ寝てるのかお…」
ブーンは諦めてスーパーへ買い物に行くことにした。
- 64: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 00:11:52.72 ID:vpjj6J9N0
- ( ^ω^)「さかな、さかな、さかな〜」
ブーンは時代遅れの歌を歌いながら、魚を選んでいた。
( ^ω^)「とりあえず魚は買ったから、あとは野菜だお」
野菜売り場に行く途中通ったお菓子売り場でブーンはダダをこねている子供を見かけた。
( ^ω^)(…そういえば僕もあぁやってカーチャンを困らせたことがあったお)
ブーンは小さい頃を思い出した。
( ^ω^)「…そういえばあの頃カーチャンが作った大根のお味噌汁、懐かしいお」
ブーンは大根と適当な葉野菜を買い物かごに入れて、レジに並んだ。
( ^ω^)(今日帰ったら電話してみるお)
ブーンはどこか少し孤独感を感じていた。
- 67: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 00:26:03.22 ID:vpjj6J9N0
- 家に着くと、ブーンは見るわけでもないテレビを点け、夕飯の仕度を始めた。
いつもは作らない味噌汁も今日は久しぶりに作った。
( ^ω^)「カーチャンほどじゃないけどうまく作れたお」
今日は、食卓がいつもより賑やかだった。
けれどもブーンはどこか物足りなさを感じていた。
( ^ω^)「なんか足りないお…」
それが何なのかはわからないが、いつもより豪華な夕飯にもブーンは満たされずにいた。
( ^ω^)「ごちそうさまだお」
それでも用意したご飯はすべて平らげて、後片付けを始めるために食器を持って台所へ向かった。
遠ざかるテレビの音にブーンはもやもやとした不安を感じた。
- 70: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 00:40:29.73 ID:vpjj6J9N0
- ( ^ω^)「……カーチャンに電話するお」
ブーンは皿洗いを適当に切り上げて実家に電話を掛けた。
J('ー`)し「はい、もしもし?」
( ^ω^)「カーチャンかお?ブーンだお」
J('ー`)し「あぁ、ブーンなの?久しぶりねぇ。急にどうしたの?」
( ^ω^)「最近電話して無いと思って掛けてみたお」
J('ー`)し「そう。そっちで元気にやってるかい?」
( ^ω^)「元気だお!今日はカーチャンがよく作ってた大根の味噌汁作って食べたお」
J('ー`)し「へぇ、そうなの。カーチャンもブーンの声聞いて元気が出てきたよ」
久しぶりにするカーチャンとの会話はブーンの心を満たしていった。
- 72: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 00:48:54.45 ID:vpjj6J9N0
- カーチャンとの電話が終わると、ブーンはすっかり元気になっていた。
( ^ω^)「カーチャンと話してよかったお」
するとたった今使っていた携帯が、電話が終わるのを待っていたかのように鳴り始めた。
( ^ω^)「はいお?」
('A`)「もしもし?ブーン昼間電話してきたろ?なんだ?」
そういえばジョルジュにあった後ドクオに電話をしていた。
( ^ω^)「あ、あれはドクオにもうちょっと聞きたいことがあったんだお」
('A`)「なんだ?」
( ^ω^)「ドクオが見たOLさんのアザは何色だったか憶えているかお?」
('A`)「ん?たしか…黒だったな。」
( ^ω^)「……わかったお。用件はそれだけだお」
ブーンは電話を切った。
- 75: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 01:00:29.30 ID:vpjj6J9N0
- ( ^ω^)「僕が見たあの手のアザとはやっぱり関係ないのかお…」
ブーンはわからなくなっていた。
みんなが見たアザは黒。
ショボンの右手に出たアザの色も黒。
でもブーンが昨日の夜見た右手のアザは赤。
そしてハイヒールを履いた左足。
(;^ω^)「思い出したら恐くなってきたお」
恐い想像が膨らまないうちに、ブーンは早めに寝ることにした。
- 112: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 19:00:55.54 ID:vpjj6J9N0
- ( 'ω`)「……お?」
気付くと朝だった。
( ^ω^)「ん〜…久々に良く寝たお」
ブーンはカーテンを勢い良く開け、日光を全身に浴びようとしたが、あいにくの曇天だった。
(;^ω^)「…すがすがしい朝が台無しだお」
ブーンは昨日の残り物を暖めて食べることにした。
いつものように冷凍してあるご飯をレンジで解凍しながら、夕飯の残り物をテーブルに並べる。
すると携帯電話のランプが点滅しているのに気が付いた。
- 113: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 19:07:38.14 ID:vpjj6J9N0
- ( ^ω^)「寝てる間に誰かが連絡してきたのかお?」
ブーンは二つ折の携帯を手に取り開く、するととんでもない数の着信が入っていた。
(;^ω^)「に、20件ってどこのどいつがイタズラしたお」
ブーンはプリプリと怒りながら履歴画面を開いた。
0:59ジュルジュ
1:00ジョルジュ
1:02ジョルジュ
1:03ジュルジュ
1:06ジョルジュ
1:07ジョルジュ
1:10ジュルジュ
1:15ジョルジュ
1:19ジョルジュ
:
:
:
(;^ω^)「ジョ、ジョルジュ!」
- 114: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 19:16:30.10 ID:vpjj6J9N0
- ブーンは慌てて電話を掛けるが、ジュルジュは一向に出る気配が無い。
(;^ω^)「やばい、やばいお!」
ブーンは呼び止める電子レンジの音にも構わず、そのまま家を飛び出した。
(;^ω^)「ジョルジュ…いくらなんでも早すぎるお」
メールの履歴と、この前の話から考えるにショボンの手にアザが出たのは、ショボンが消えた2日前。
それなのにアザが出て半日程度しか経っていないジョルジュがなぜ。
ブーンは混乱しながらもジョルジュのもとへと急いだ。
- 115: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 19:26:39.31 ID:vpjj6J9N0
- (;^ω^)(でもこの様子じゃもう手遅れかもしれないお…)
今は朝の7時頃で、もう既に6時間程度経っている。
ショボンのときは電話を受けてすぐ駆けつけても間に合わなかったのだ。
ブーンの心を映すかのように曇ったままの空。
あの時崩れて消えたショボンが、ジョルジュとダブる。
そんな嫌な想像を振り払うように、ブーンは走った。
(;^ω^)(ジョルジュ……)
そして、ジョルジュの家に着いた。
- 116: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 19:33:42.27 ID:vpjj6J9N0
- (;^ω^)「ジョルジュ!ジョルジュ!大丈夫かお!」
人目を気にせずドアをドンドンと叩くブーン。
すると予想に反して、すぐにドアが開いた。
(;^ω^)(ま、まさか、アイツが…)
全身の鳥肌が一気に立つ
( ゚∀゚)「おぉ、ブーンか。どうした?」
( ゚ω゚)「…………」
あまりの出来事に放心状態になるブーンであった。
- 117: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 19:40:35.00 ID:vpjj6J9N0
- ( ゚∀゚)「ぶは!俺になんかあったんじゃないかと思って駆けつけたって!?」
(;^ω^)「笑い事じゃないお…」
ブーンは夜中に何度も電話がきてたから、心配になって駆けつけた、とジョルジュに言った。
( ^ω^)「なんであんなに電話掛けてきたんだお?」
( ゚∀゚)「あぁアレはな、深夜番組見てたら、いきなりすごいおっぱいが出てきてさ。おっぱいが」
(;^ω^)「………」
( ゚∀゚)「お、思い出しただけでも…おっぱい!おっぱい!」
- 119: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 19:46:28.46 ID:vpjj6J9N0
- ぐうぅぅ〜……
拍子抜けしたやら、安心したやらで、ブーンはお腹が鳴ってしまった。
(*^ω^)「ちょ、恥ずかしいお」
( ゚∀゚)「腹減ってんならウチでなんか食ってけよ」
ジョルジュはそう言って立ち上がった。
( ^ω^)「い、いいお、家にご飯あるお」
( ゚∀゚)「そんなもん昼に食えばいいだろ。心配かけたのは俺なんだから飯くらい出させてくれよ」
( ^ω^)「……わかったお」
ブーンはジョルジュの言葉に甘えることにした。
- 121: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 19:54:01.15 ID:vpjj6J9N0
- ジョルジュの出してきたご飯はどれも暖かくておいしそうな中華料理だった。
(*^ω^)「す、すっごいおいしそうだお!」
( ゚∀゚)「俺中華料理屋でバイトしててさ。料理には自信あるんだ」
ジョルジュが得意げに胸をそらせた。
( ^ω^)「いただきますお!」
ブーンは手を合わせるとものすごい速さで料理にがっつき始めた。
( ゚∀゚)「…うまいか?」
( ^.ω^)「最高だお!」
ブーンは口の端に色々なソースをつけたままジョルジュに答えた。
- 122: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 19:59:12.56 ID:vpjj6J9N0
- ( ^ω^)「ごちそうさまでしたお」
ブーンは箸をおいて、食べ始めたときと同じように手を合わせた。
そして、食器をまとめて両手に持ち台所に向かった。
( ゚∀゚)「ん?あぁいいよ、いいよ、そこら辺でくつろいでてくれ」
( ^ω^)「そうかお?」
ブーンは大人しく従って、手に持っていた食器をジョルジュに渡した。
その時ちらりと見えた左手のアザにブーンは何か違和感を覚えた。
- 123: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 20:06:26.27 ID:vpjj6J9N0
- ( ゚∀゚)「じゃあ俺はこれ洗ってくるわ」
( ^ω^)「ジョルジュ」
ブーンはジョルジュの肩を掴んだ。
(;゚∀゚)「おい、なんだよ、食器が落ちちまうよ」
( ^ω^)「ちょっと食器を置いて左手を見せてくれお」
ブーンは引かなかった。
( ゚∀゚)「と、とりあえず手を離してくれ」
ブーンはジョルジュを見たままゆっくりと肩から手を離した。
- 124: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 20:15:54.32 ID:vpjj6J9N0
- ジョルジュは言われたとおりに食器を台所に置いてきてから、ブーンの目の前に左手をさし出した。
ジョルジュが差し出した左手のアザは、、、、、、、真っ赤に変色していた。
(;^ω^)「…………」
黙ったままジョルジュの手を見つめるブーン。
何かがブーンの中で一繋がりになろうとしていた。
( ゚∀゚)「おい、ブーン何なんだよ」
ブーンは悩んでいた。
果たしてこの事を話すのは、ジョルジュにとって良いことなのだろうか。
(;^ω^)(でも、何もわからず死ぬなんて僕なら嫌だお)
そしてブーンは決心した。
( ^ω^)「ジョルジュ、落ち着いて聞いて欲しいお」
今まであったこと、勿論ショボンの事を含めブーンはすべてをジョルジュに話した。
- 125: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 20:21:23.35 ID:vpjj6J9N0
- ( ゚∀゚)「………」
(;^ω^)「嘘吐いてゴメンお」
ジョルジュは話が終わった後もしばらく何も喋らなかった。
それでもブーンは話さなければならない。
( ^ω^)「それで、…多分そのアザの色の変化は消える兆候みたいなものだと思うんだお」
ショボンの手に出た黒いアザ。
そして消えたショボンの右手の赤いアザ。
よく考えればわかることだったはずなのに、何故気付かなかったのか。
- 128: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 20:27:46.80 ID:vpjj6J9N0
- ( ゚∀゚)「…じゃあ俺はもうすぐ消えるのか?」
(;^ω^)「そ、それは…わからないお…」
これだけはブーンにもわからなかった。
アザが赤くなってからどれくらいで消えるのか。
今わかっているのはショボンがアザの出現から2日で消えたということだけで
いつ赤くなったのかはわかっていないのだ。
(;゚∀゚)「で、でもその話だと、とりあえず後1日はあるってことだ。まだ何とかなるよな?」
(;^ω^)「……ぅ……あ…頑張るお!」
ブーンは肯定できなかった。
- 129: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 20:34:36.88 ID:vpjj6J9N0
- 自分が明日死ぬかもしれない。
そんな状況にあってもジョルジュは皿を洗っていた。
別にどうということでもなく、他にすることが無いから洗っているだけだ。
それでもブーンにはジョルジュの背中越しに悲痛な面持ちが見えるような気がした。
( ^ω^)「………」
ジョルジュを助ける方法は無いのだろうか。
目の前でいきなり消えてしまう現象。
果たしてその引き金は何なのだろうか。
- 130: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 20:44:17.81 ID:vpjj6J9N0
- ( ゚∀゚)「…片付け終わり、と」
ジョルジュが呟いて、こっちにやってきた。
ブーンはどうして良いかわからずただテレビを見ていた。
そんなブーンの隣にジョルジュはゆっくりと腰を下ろす。
沈黙が辛い。
ブーンはこの場を離れたかったが、こんな状態のジョルジュをおいて
帰ってしまうわけにもいかなかった。
( ^ω^)「…ちょっとコンビニに買い物行って来るお」
立ち上がるブーンの足をジョルジュが掴んだ。
( ゚∀゚)「………行くなよ、ブーン」
- 131: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 20:53:04.84 ID:vpjj6J9N0
- ブーンはしばらく考えて、また座りなおした。
そんなブーンにジョルジュは擦り寄ってくる。
( ^ω^)「ジョルジュ…?」
そしてジョルジュはブーンの胸にゆっくりとうずくまるように体重を預けた。
(;^ω^)「ちょ、ジョルジュ!ブーンにはおっぱいは無いお!」
ジョルジュの奇行に慌てふためくブーンだったが、ジョルジュは微動だにしない。
(;^ω^)(まずいお…まさかジョルジュ、ヤケになって…)
( ゚∀゚)「淋しいんだ…」
( ^ω^)「え…?」
(;゚∀゚)「なんかわかんないけどすっげぇ淋しいんだ!どうしよう!ブーン!」
尋常じゃないジョルジュの震えにブーンはただならぬものを感じた。
- 132: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 21:02:11.88 ID:vpjj6J9N0
- (;^ω^)「ちょ、ジョルジュ落ち着くお!」
両肩を掴んで話しかけるもジョルジュは一向に落ち着かない。
(;゚∀゚)「どうしよう…あぁ…あぁ…」
最早ジョルジュはブーンのほうをしっかりとは見ていなかった。
(;^ω^)「ジョルジュ!ジョルジュ!」
ガクガクと揺らしてみてもジョルジュは強張ったまま返事をしない。
そしてブーンは気付いてしまう。
ジョルジュのズボンの裾から足が出ていないことを。
(;^ω^)「ッ!……ジョルジュ!僕はここにいるお!」
(;゚∀゚)「あぁぁぁぁ…俺は…俺は…」
無我夢中でジョルジュに呼びかけるブーン。
しかし、ブーンの目にももう結末ははっきりと見えていた。
- 133: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 21:11:53.22 ID:vpjj6J9N0
- それでもブーンは諦める事無くジョルジュに呼びかける。
( ;ω;)「ジョルジュ!ダメだお!ジョルジュまでいなくなったら僕は…」
ブーンはいつの間にか泣き出していた。
(;゚∀゚)「ダメだ…ブーン…俺、消えちまうみたいだ…」
やっとジョルジュからまともな返事が返ってきた。
ここぞとばかりにブーンは話しかける。
(#;ω;)「ダメだお!ジョルジュ!そんなの僕は許さないお!」
顔をぐちゃぐちゃにして半ば叱責するかのようにジョルジュに訴えかけるブーン。
( ゚∀゚)「………」
けれども、ジョルジュの顔にはもう強い意志が感じられなかった。
- 134: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 21:15:13.13 ID:vpjj6J9N0
- ( ;ω;)「ジョルジュ?シカトはよくないお…なんか言うお」
( ゚∀゚)「……ブーン」
( ;ω;)「なんだお?」
ジョルジュの下半身は最早無いに等しく、ブーンはその両手でジョルジュを持ち上げることさえ出来そうだった。
( ゚∀゚)「…俺さ、夢があるんだ」
( ;ω;)「聞くお」
ジョルジュの左手が、ごとり、と音を立てて床に落ちた。
- 137: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 21:25:56.07 ID:vpjj6J9N0
- ( ゚∀゚)「いつか俺にも…カミさんが出来てさ…息子が…生まれてさ」
右手もいつの間にか消えてなくなっていた。
( ゚∀゚)「…それで、一緒にテレビなんか…見てて…すっげぇおっぱいが出て…」
ぶらりと垂れ下がる袖、スカスカの胴体、ブーンは何も言わずジョルジュの顔を抱いた。
( ゚∀゚: 「息子と…一緒に…おっぱい!…って騒いで…カミさんに…二人して怒られて」
( ゚∀;:. 「そんな…馬鹿…みたいな…幸…せ……」
( ゚;:',. 「……」
( ;ω;)「ジョルジュ?」
ジョルジュはブーンの指の間をすり抜けるように、消えて、無くなった。
( ;ω;)「………うぅぅぅ……ウソだお」
確かに今そこに居たはずのジョルジュは、服だけをおいてどこかへ居なくなっていた。
( ;ω;)「うわ……う…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ブーンはだらしなく鼻水を垂らしながら、わけもわからず叫んだ。
- 140: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 21:34:56.84 ID:vpjj6J9N0
- ( ;ω;)「ひぉっ……ひっ…ひぉっ…」
しばらく叫んだ後、左手を手に取りながら嗚咽するブーン。
( ;ω;)(…ジョルジュは絶対あいつに渡さないお)
ブーンはジョルジュの左手と手を繋ぎ、部屋を見回した。
まだあいつは出てこない。
( ^ω⊂)「今のうちに逃げるお…」
ブーンはジョルジュの服を綺麗にたたみ、一度黙祷した後
慎重に外の様子を伺いながらジョルジュの部屋を後にした。
外はまだ真昼、こんな時間に手首から先のものと手を繋いでる男が歩くのは非常に奇妙である。
しかしブーンはそんなことよりも、道の途中でアイツに出くわさないか、それだけが気がかりだった。
- 141: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 21:40:19.78 ID:vpjj6J9N0
- そんな心配をよそにブーンは無事に自宅にたどり着いた。
( ^ω^)「…とりあえず一安心だお」
自宅に来たからといってあいつが来ない保障は無かったが、自宅以外に来るところが無かった。
ブーンはドアを開け中に入り、部屋の鍵を閉めた。
そしてベッドに腰掛けてため息を吐くと、これからのことについて考え始めた。
( ^ω^)「これからどうすればいいんだお…」
繋いだジョルジュの左手を見てブーンは先ほどの光景を思い出した。
- 143: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 21:45:40.10 ID:vpjj6J9N0
- ジョルジュは淋しいといっていた。
そして、左手を残して跡形も無く消えた。
その間にアイツは現れなかった。
( ^ω^)「一度アザが出たら逃げられないって事かお…」
それにしてもジョルジュは余りにも早すぎた。
ショボンのケースからみれば半分位の時間しか経ってない。
( ^ω^)「どうして…お?」
気が付くとブーンの右手が浮いていた。
ジョルジュの左手が浮き上がろうとしていたのである。
- 144: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 21:51:19.52 ID:vpjj6J9N0
- (;^ω^)「や、やばいお!」
ショボンの時はこの現象が起こってからすぐにあいつが現れた。
今度はどこから来るのか。
ブーンの頬を冷や汗が伝う。
(;^ω^)「――――ブッ!」
一瞬何が起きたのかわからなかった。
何かに頭を殴られた、そして右手が痛い。
(;^ω^)「ジョ、ジョルジュ…」
ブーンの意識は闇の底へと沈んでいった。
- 145: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 21:55:50.40 ID:vpjj6J9N0
- ブーンは一人暗闇の中にいた。
( ^ω^)「ここは…どこだお?」
辺りを見回してみても、誰も居ない。
( ^ω^)「………おーい」
誰に呼び掛けるでも無く出した声も、返ってくること無くどこかへ消えてしまう。
(;^ω^)「何でこんなところに居るんだお…」
状況が飲み込めないブーンは、とりあえず歩き出した。
- 147: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 22:02:52.66 ID:vpjj6J9N0
- しばらく歩き出すとどこかから声が聞こえてきた。
( ^ω^)「誰か居るのかお?」
しかし、そんな人影はどこにも見当たらない。
( ^ω^)「………」
ブーンはまた歩き出した。
しばらく歩くとまたどこからか声が聞こえてきた。
今度はさっきよりも少し近い。
( ^ω^)「誰だお?いるなら返事して欲しいお」
( )「……ン…」
返事が帰ってきたような気がした。
( ^ω^)「どこだお?どこにいるんだお?」
この広い暗闇で一人は余りに淋しい。
誰かが居るのなら、どれだけ救われるだろう。
- 148: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 22:11:17.16 ID:vpjj6J9N0
- ( )「ここだよ……」
( ^ω^)「……お?」
はっきりと聞こえた声にブーンの頭を何かがよぎる。
(;^ω^)「………」
この声は聞いたことがある。
ここ何日もずっとこの人のことを考えていた。
ブーンはゆっくりと声のする方向、自分の右手に目をやった。
(´・ω・`)「やぁ」
右手の甲には懐かしい友人の顔があった。
(;^ω^)「ショ、ショボン……」
ブーンは意味の無い後ずさりをした。
- 149: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 22:19:34.37 ID:vpjj6J9N0
- (´・ω・`)「久しぶりだね、ブーン」
右手のショボンはパクパクと口を動かしながらブーンに語りかける。
(;^ω^)「………」
ブーンは何を言っていいのかわからず、ただ黙ったままでいた。
(´・ω・`)「君は僕にひどいことをしたよね」
(;^ω^)「ぼ、僕はショボンには何も…」
ショボンは無表情のまま話し続ける。
(´・ω・`)「君がうな丼なんかに気を取られないで、すぐ来てくれれば僕は助かったかもしれないのに」
(;^ω^)「ち、ちがうお!アレは!」
(´・ω・`)「ジョルジュの時は気付いたらすぐに行ったのにね。どうしてだろうね」
(;^ω^)「ショ、ショボン…」
痛い事を立て続けに言われて、ブーンは言葉も無く佇む。
- 150: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 22:28:01.17 ID:vpjj6J9N0
- ( )「俺だってそうさ」
今度は反対側から声が聞こえてきた。
( ゚∀゚)「なぁ、ブーンどうしてもっと早く教えてくれなかったんだ」
(;^ω^)「ジョルジュ…」
今度は左手にジョルジュの顔が浮き出ていた。
( ゚∀゚)「せめてアザが出てきた時に教えてくれれば、もっと時間があったんだ」
( ゚∀゚)「なのに、あんな直前に言われてな。俺何も出来ないまま消えちまったよ」
(;^ω^)「ご、ごめんお…」
ブーンは謝ることしか出来なかった。
一体何がどうなっているのか。
ブーンは両手の友人に責め立てられている。
段々とブーンの心は後悔の念で一杯になっていった。
- 151: ◆HGGslycgr6 :2006/02/17(金) 22:34:33.91 ID:vpjj6J9N0
- 勿論全部の責任がブーンにあるわけではない。
それでもブーンは精一杯の謝罪をしようと思った。
(;^ω^)「ごめんお、ショボン、ジョルジュ。でも…」
ブーンは一呼吸置いてもう一度話し始めた。
(;^ω^) 『でもぼくは……ッ!』
口から出た声は明らかに自分の物ではなかった。
(;^ω^) 『なんだお!これどうなってるお!』
そこまで喋ってブーンは気付いた。
(;^ω^) 『この声は…ドクオだお…』
('A`)「そうだよ。俺だよ」
口が勝手にパクパクと動いた。
- 189: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 11:49:35.88 ID:AM5/zhTo0
- ('A`)「お前のせいで俺まで余計な目にあっちまったんだよ」
(;^ω^)(ド、ドクオも何かあったのかお!?)
ブーンの声はもう出なくなっていた。
('A`)「きっとジョルジュもお前に関わんなきゃ消えずに済んだんだぜ。参るよな」
(;^ω^)(ぼ、僕は関係ないお!)
('A`)「じゃあなんでこんなにお前の知り合いが消えてるんだよ」
(;^ω^)(違う…僕は…僕は……)
違う、足だって胴体だって別の人のものだ。
これだってただの偶然に過ぎないはず。
それなのにブーンは友人を目の前にして、どうしてもそれが言えなかった。
- 191: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 12:00:49.04 ID:AM5/zhTo0
- (´・ω・`)「最低だね」
( ゚∀゚)「最低だな」
('A`)「ありえねーよ」
サラウンドで聞こえてくる友人達の罵倒。
ブーンはもうどうして良いかわからなくなってしまった
( ^ω^)(僕は…一体今まで何をしてきたんだお…)
心が虚しくなっていく。
( ^ω^)(……本当になんだったんだお)
落ち込むブーン、とその目の前に突然見慣れた景色が広がった。
すっかり日が沈んだ後の静かな田園風景。
( ^ω^)(ここは…僕の実家…)
- 192: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 12:10:52.97 ID:AM5/zhTo0
- ブーンが大学に入るまで暮らしていた小さな一戸建て。
ブーンは無意識にチャイムを押していた。
『はーい、今行きまーす』
家の中から声が聞こえてきた。
( ^ω^)(カーチャンの声だお!)
カーチャンなら僕を理解してくれるだろうか。
カーチャンなら僕を優しく抱きしめてくれるだろうか。
ブーンの胸は自然と期待に膨らんだ。
ガチャリと開くドア。
その隙間から確かに見えたカーチャンの顔。
( ^ω^)「カーチャン!!!」
しかし次の瞬間目の前のカーチャンは消えて、ブーンの目にはいつもの自分の部屋が映っていた。
- 193: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 12:21:40.51 ID:AM5/zhTo0
- ( ^ω^)「…カーチャン?」
静かな部屋にブーンの弱弱しい声が消えていった。
( ^ω^)「…夢…かお」
すっかり暗くなった部屋の中、ブーンは一人泣き出した。
あれは夢だったんだ、そう思っても三人のあの顔が、声が、ブーンの頭から離れない。
ポタポタと流れ落ちる涙、その雫が膝を十分に濡らした時、ブーンは思い出した。
ブーンの夢の中でジョルジュ、ショボンと共にドクオが出てきていたことを
( ;ω;)「……ドクオ!」
不吉な予感がした。ただの夢なのに、ブーンは気になって仕方がなかった。
(;^ω^)「ドクオ!」
ブーンはすぐさま家を飛び出した。
- 194: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 12:29:41.50 ID:AM5/zhTo0
- 暗い住宅街を駆け抜けるブーン。
ブーンは走りながらも考える。
( ^ω^)(僕は今正しい事をしてるのかお…)
もしかしたら今のこの行動もドクオにとっては迷惑なのかもしれない。
頭は悩んでいたが体はひたすら走っていた。
ブーンはこの時ドクオのために走っていると思っていた。
しかしその源は罵倒されても友を気遣うという、そんな格好のいいものではなく。
ブーンは自分のために、ただ自分の孤独をどうにかするために走っていた。
- 195: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 12:39:46.46 ID:AM5/zhTo0
- ドクオの家は電気が点いていた。
ブーンはためらう事無くチャイムを押す。
しかし、反応がない。
ブーンは何度も繰り返しチャイムを押すも、ドクオが出てくる気配がない。
(;^ω^)「……そんなはずないお」
ドクオが居なくなるはずがない。
ブーンはドアに手をかけた。
ドクオは『盗られるものなんかない』と、いつも鍵をかけないのだ。
( ^ω^)「ドクオ…入るお」
ブーンはゆっくりと部屋の中に足を踏み入れた。
- 196: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 12:48:59.25 ID:AM5/zhTo0
- ( ^ω^)「…ドクオ?いるのかお?」
散らかった部屋をゆっくりとすすむブーン。
菓子袋やカップ麺の容器がそこらに転がっていて非常に汚い。
(;^ω^)「ちょっとひどすぎるお…」
ブーンは変なものを踏まないように慎重に足元を見ながら歩いた。
慎重に歩いているんだが、何故か距離をうまくつかめずにいろんなものにぶつかってしまう。
( ^ω^)「おっと、っと、っと…て!」
今度は足元ばかりに気を取られて何かに頭をぶつけた。
(;^ω^)「あてて…ドクオこりゃなんでも酷すぎるお」
ブーンがそういって顔を上げたそこに、ドクオの顔があった。
- 198: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 12:58:50.75 ID:AM5/zhTo0
- ( ^ω^)「ドク……」
顔はあったのだが、体が無い。
口はあったのだが、目玉が無い。
ドクオの無惨な顔が空中に浮いていたのである。
( ^ω^)「ドクオ……?」
ブーンはすぐに状況を理解した。
これで三度目なのだから。
しかし、溢れ出す感情は止まらなかった。
( ;ω;)「ドクオォォォォォォォォ!」
この涙はドクオとの別れの悲しみか
それとも仲の良い友達が皆消えて一人になってしまった悲しみか
どちらにしても、ブーンの涙は止まらなかった。
- 201: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 13:08:53.56 ID:AM5/zhTo0
- 今日は果たしてどれだけ泣いただろうか。
きっと一生分は泣いただろう。目の周りも腫れあがっている。
隠し切れない虚脱感から、ブーンは散らかった床に座り込んだ。
このまま待っていればアイツが来ることはわかっていた。
アイツに会うのは避けたいと思っていたが、今はどうでもよくなっていた。
それにひとつ確かめたいことがあった。
( ^ω^)(ジョルジュ…)
ジョルジュの左手はどうなったのか。
まるでドクオをエサに使っているようで気が引けたが、どうしようもない。
- 203: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 13:17:47.52 ID:AM5/zhTo0
- ブーンがしばらくぼーっとドクオの顔を眺めていると、視界の端から急にアイツが現れた。
( ^ω^)(…来たお)
前見たとおりの足、胴体、腕
そして小指の爪が無い右手に、、、、昼まで手を繋いでいた左手があった。
( ^ω^)(……やっぱりダメだったかお)
一縷の望みも絶たれたような、そんな気分になった。
目の前のソイツはゆっくりとドクオの顔に近づいて、合体した。
酷くアンバランスなその外見からはこれ以上無い嫌悪感を覚える。
( ^ω^)(ダメだお…)
ブーンは必死にその感情を押さえ込んだ。
( ^ω^)(友達の体を、気持ち悪いなんて思っちゃダメだお…)
それでもブーンはゆっくりと近づいてくるその生物を見て、気付かぬ内に後退りをしていた。
- 204: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 13:26:15.73 ID:AM5/zhTo0
- バランスの取れてない足のせいか、その歩みはひどくのろい。
しかし、そのスピードが却ってブーンに恐怖を覚えさせる。
( ^ω^)「やだお……」
近づいてくるのはドクオの顔なのに、掴もうとしてくるその手はショボンやジョルジュの手なのに
( ^ω^)「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
ブーンは耐え切れずに逃げ出してしまった。
( ^ω^)「僕は!僕はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
暗闇の町を今日何度目かの疾走。
あんなものに捕まりたくない。
たとえ皆から罵られても、生きていたい。
ブーンは惨めなほどに生を欲した。
- 206: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 13:35:05.77 ID:AM5/zhTo0
- ブーンはヨレヨレになりながら自宅へと駆け込んだ。
扉には鍵をかけ、テーブルやらを運んできてバリケードを作った。
(;^ω^)「はぁ…はぁ…はぁ…」
今アイツはどこを歩いているんだろうか。
ブーンは見えない恐怖に背筋が寒くなった。
とりあえず冷静にならなければいけない。
(;^ω^)「そうだお、慌てても何も良いことは思い浮かばないお」
ブーンはとりあえず洗面所で顔を洗うことにした。
( ^ω^)「ふおー、気持ちいいお」
泣きっぱなしだったせいか、顔がさっぱりして気持ちいい。
鏡を見るとやっぱり目の周りが赤く腫れていた。
( ^ω^)「うわ、こりゃひどいお」
- 208: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 13:44:45.20 ID:AM5/zhTo0
- 良く確かめようと鏡に近づくブーン。
そしてブーンは見てはいけないものを見てしまう。
( ^ω^)「……う…うう」
あまりの衝撃に言葉がうまく出ない。
( ^ω^)「…ウソだお」
そういいながらも目の前の光景から目が離せない。
( ^ω^)「あぁぁぁぁぁ……」
ブーンの右目に赤い丸痣が浮き上がっていた。
( ^ω^)「ぅぁ……ぁぁぁあああああああああ!」
- 209: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 13:53:55.85 ID:AM5/zhTo0
- いつ、一体どこで、なんで僕が、どうして今まで
一気にブーンの脳内はパンクする。
死にたくないと逃げ出してきたのに、ふたを開けてみればこんな結末。
ブーンは絶望した。
この赤アザが出てしまってはもうどうにもならないのだ。
( ^ω^)「…………」
でも、これで皆に許してもらえるかもしれない。
ブーンはそんなことを考えると、ふと心が落ち着いたような気がした。
そしてブーンに突然襲い掛かる途轍もない孤独感。
(;^ω^)「…これはやばいお」
- 210: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:01:22.43 ID:AM5/zhTo0
- ブーンは急いで電話を取り出した。
ショボンはこんな気持ちだったのだろうか。
しかしブーンに電話を掛ける友人はもう居ない。
( ^ω^)「あ…カーチャンだお」
とっさに思いついたのは、カーチャンだった。
この寂しさを紛らわしたい。
その思いでブーンはカーチャンに電話を掛けた。
- 212: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:07:44.54 ID:AM5/zhTo0
- J('ー`)し「もしもし?」
( ^ω^)「カーチャン、ブーンだお」
ブーンは明るく振舞うように努めた。
J('ー`)し「あぁ、ブーンかい。どうしたの?昨日話したばっかりなのに」
( ^ω^)「今日もカーチャンの声が聞きたくなったんだお」
J('ー`)し「へぇ…なんだか気持ち悪いねぇ」
(;^ω^)「カ、カーチャン、そりゃないお!」
J('ー`)し「ふふ、冗談だって」
カーチャンとの会話は暖かかったが、もうブーンの寂しさは埋まりそうに無かった。
ふと奇妙な感覚に下を見るとやはり足先が消えている。
もうすぐ自分が消えてしまう。
何か特別なことを言おうとブーンは思うが、何も思いつかない
- 214: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:13:33.71 ID:AM5/zhTo0
- ( ^ω^)「カーチャンは僕が…」
もし消えたら、と言おうとして言葉を飲み込んだ。
カーチャンに余計な心配を掛けてはいけない。
J('ー`)し「なに?」
( ^ω^)「僕が、反抗期の頃どうだったかお?」
苦し紛れに出た質問だった。
J('ー`)し「反抗期ねぇ…そりゃあ色々大変だったわ」
目の高さが低くなった。
下半身が消えたのだろう。
( ^ω^)「たとえば?」
J('ー`)し「そうね…良かれと思ってした事もブーンには嫌な思いをさせているってわかった時とか」
覚えがあった。
でもそれは心からの拒絶ではなかったはずだ。
- 217: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:17:10.27 ID:AM5/zhTo0
- ( ^ω^)「カーチャン、それは多分違うお」
ブーンはこの誤解だけは解いておきたいと思った。
( ^ω^)「僕はその時カーチャンにいろいろ言ったかもしれないけど、それは本心じゃないお」
自分で話していてブーンは心が楽になっていくのを感じた。
( ^ω^)「カーチャンが心配してくれてるっていうのはいつも、僕うれしかったお」
J('ー`)し「……そう」
これを伝えられただけでも満足かもしれない。
そしてあっちで待ってる友人にも同じ事を言ってもらえたら、と
ブーンはそう思った。
- 218: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:20:40.40 ID:AM5/zhTo0
- ブーンは手が消えて電話を落としてしまう前に電話を床に置いた。
J('ー`)し「そういえば最近風邪が流行っているけど、ブーンは大丈夫かい?」
風邪どころの話じゃない、とブーンは聞こえないように軽く笑った。
( ^ω^)「僕は風邪なんかひかないお」
J('ー`)し「そうね、ブーンは昔から風邪ひかなかったものね」
両手が消えた。
それでもブーンはうつ伏せになって電話を続けた。
- 220: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:25:12.92 ID:AM5/zhTo0
- J('ー`)し「そうだ、今度の連休には帰ってくるんでしょう?」
そういえばそんなことを話した覚えがあった。
( ^ω^)「でももしかしたら補習が入るかもしれないお」
全くのウソだったが、絶対に帰るとは言えなかった。
J('ー`)し「ブーン、また遊んでばっかりいるんでしょ」
(;^ω^)「ご、ごめんお」
首から下が無くなった。
J('ー`)し「ブーンの好きなもの用意して待ってるから、頑張って勉強するんだよ」
自分はもう帰ることは無いのに、こんなことを言ってくるカーチャン。
ブーンはもう無いはずの心が締め付けられた。
- 221: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:29:39.80 ID:AM5/zhTo0
- ( ^ω^)「………」
J('ー`)し「どうしたの?ブーン」
顔の感触がなくなってきていた。
( ^ω^: 「カーチャン、ありがとうだお」
ブーンは最後に精一杯の感謝をした。
J('ー`)し「何よ、ご飯くらいいつだって作ってあげるわよ」
最後は決して泣くまい、とブーンは必死にこらえた。
けれども涙は止まらない。
カーチャンの料理が食べたい。
それでもブーンは必死に鼻声になるのを我慢した。
- 222: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:35:14.33 ID:AM5/zhTo0
- ( ;ω;:; 「ありがとうだお…僕ちゃんと勉強するお」
J('ー`)し「そうよ、しっかり頑張りなさい」
そろそろ口の辺りが怪しくなってきた。
( ;ω;:. 「あ、誰か来たお!じゃあカーチャンまた後で――――」
すべてを言い終わる前にブーンの口は消滅した。
J('ー`)し「ブーン?…電話も切らないで、あの子はそそっかしいね…」
( ;;:',. 「………」
ブーンはその意識が途切れるその瞬間まで電話の声を必死に聞いた。
そして、部屋には涙に濡れる赤い眼球だけが残った。
- 224: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:38:49.81 ID:AM5/zhTo0
- J('ー`)し「まったく…」
カーチャンは不平を口にしながらも、2日連続で息子の声が聞けてうれしかった。
J('ー`)し「何を作ったらブーンが喜ぶかしら…」
ブーンの喜ぶ顔を想像してカーチャンは口元が緩んだ。
カーチャンはあれこれと作るものを考えながら、連休前にそろえるものを考えていた。
J('ー`)し「ハンバーグにコロッケ…とりあえずひき肉は冷蔵庫にあったから…」
すると突然家のチャイムが鳴った。
こんな時間に回覧板でも回ってきたのだろうか。
J('ー`)し「はーい、今行きまーす」
パタパタとカーチャンは薄暗い玄関の方へと歩いていった。
−終−
- 235: ◆HGGslycgr6 :2006/02/18(土) 14:46:41.74 ID:AM5/zhTo0
- ブーン系は初めて挑戦してみたけど、いかがでしたでしょうか。
読んでくれた人たち、また保守してくれた人たちありがとうございました。
自然と地の文が多くなって、なかなかそれっぽくするのが難しかったです。
また、近いうちにチャレンジとしてみたいと思うので
このトリップを見かけたら、時間がある時にでも読んで頂ければ嬉しいです。
謎については一応追うだけ追ったということでw
その方が怖いかなぁって
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