( ^ω^)ブーンと鬼のツンξ゚听)ξ のようです

198: 終章 ◆HGGslycgr6 :2007/07/29(日) 23:58:33.39 ID:pvNpc7Oh0
 遠くから鳥の地鳴きが聞こえた。気付けばどうやら眠っていたらしい。僕は手許に広げたままの
本を閉じ、本棚へと仕舞った。何度見たか分からない夢は、自然と溜め息へその姿を変えた。

 あれからもう何年が経っただろうか。必死に駆けてきた僕は、しかし未だに立ち止まることなく
研究に没頭していた。
 かつて彼がそうしてきた様に、今僕もこうして資料を集めては一日中物思いに耽るばかりだ。
ああは為るまいと思っていたのだが、今となっては彼の気持ちが痛いほどよく解った。

 「さて、と……そろそろご飯の時間だお」

 独り言ち、体に染み入る様な入相(いりあい)の鐘を聞きながら、僕は書庫を後にしようと戸に
手を伸ばす。すると力を込めずして不意に扉が開かれ、眼前に夕陽(せきよう)を帯びた小さな
人影が現れた。


※地鳴き=平常の鳥の鳴き声 ※入相の鐘=夕暮れに突く鐘の音



200: 終章 ◆HGGslycgr6 :2007/07/29(日) 23:59:46.51 ID:pvNpc7Oh0
 「おとーさん、ご飯」
 「……わかった、今行くお」

 人影は斜陽を背に、しかしその顔はまるで旭陽(きょくよう)の様に輝いていた。そうだ、彼女には
未だこれからの未来がある。受けるべき幸福がある。叶えるべき夢がある。そして育むべき愛がある。
だから僕はこの身の限り尽瘁(じんすい)しよう。

 「おとーさんどうしたの? 背中の羽、下がってるよ?」
 「……なんでもないお。さ、お母さんが怒る前に早く行くお」

 次は、この子の為に――



−終−



※旭陽=朝日 ※尽瘁=自分を省みず全力を尽くすこと



戻るあとがき