( ^ω^)ブーンが機械と戦うようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/29(金) 21:12:39.12 ID:KuIhiy8Z0
  
6日目

内藤は手に持ったコントローラーを握りしめた。
コントローラーがぬるぬると滑るのは、決して汗のせいだけではない。
ここは地下300m、直径50m超。巨大な下水道跡。
旧時代に作られた遺物は、本来の存在理由を失い、虚ろな音を響かせる。
その大穴の中に空いた亀裂に身を潜り込ませながら、内藤はじっと身を潜ませる。

(  )『……とう……な……とう』

無線機がかすかな声を発した。
頭蓋振動式などという高等な技術ではない。スピーカーから音声を垂れ流すローテク物。

(゚Д゚)『内藤。こちらミルナ。ポイントA1通過』
(;^ω^)「了解だお! こちらは準備おkだお!」
(゚Д゚)『作戦変更無し、後は頼んだ』

無指向性の無線は必ず傍受されている。
そのことを考慮したのだろう。必要最低限の事項をやり取りのみで、無線は切れた。
同時に、腹の底をえぐるようなジェット音が段々と近づいてくる。
ミルナの乗るエア・スクーター(浮遊式のバイク)は特注品だ。
リフターで頼りなく浮遊するだけのそれとは違い、ジェットエンジンを搭載。
ジェット稼働、可変式ウイング展開時は、小型の戦闘機となって疾走する。
もっとも、増加した重量が仇となって、普段は地上数十pしか浮遊できないのだが。



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/29(金) 21:13:21.53 ID:KuIhiy8Z0
  
( ^ω^)(見えた!)

エア・スクーターの発するライトが、長大な地下坑を走ってくる。
そしてその後ろの闇の中。スクーターに牽引されるように張り付いてくる目が3つ。
赤。そして青が2つ。
SF小説にもよくある、モノアイというやつだ。
ご丁寧にも色つきで光っているそれは、まるで出来の悪い三流映画。

――――キィィィィィィィィィィッゴォンッ!!!!!!

エア・スクーターに引きずられ、引き裂かれた空気の壁が叫び声を上げる。
同時に、内藤はコントローラーのボタン(たった一つだけのボタンを)押し込んだ。
それと同時に、内藤が身を押しつけていた壁が振動を始める。

――ズ……ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ

しかし、振動はなかなか一定の大きさを超えようとしない。
内藤は瞬時に悟った。計算違い。やはり予想した崩落を起こすことは出来なかった。
悟ると同時に、内藤は亀裂から飛び出しスクリーンを脱ぎ捨てた。
スクリーンを脱いだ内藤は、エア・スクーターに乗るミルナよりも格好の獲物。
反応は迅速だった。一瞬で状況を認識した追跡者はミルナから内藤にターゲットを変更。
即座に減速、走り去ろうとする内藤を追うために、方向転換をし……
その数秒が追跡者の運命を決めた。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/29(金) 21:13:55.52 ID:KuIhiy8Z0
  
――ギン! バキン! バギン!!

崩落をギリギリで防いでいた無数の鋼材が、派手な音をたててぶち折れた。
想像を超える重量をもつ土砂が追跡者の頭上から降り注ぐ。
だが、その成果を内藤は確認せず、背を向けて足を回転させた。
崩落範囲はおよそ100m、内藤の背後から迫るように計算されている。
100mだ。いくら内藤の足が速いとはいえ、崩落に巻き込まれずにすむ保証は全くない。
背後に響く死に直結する音を聞きつつ、内藤は祈った。
神に?仏に?内藤はそんなものを信じちゃいない。ただひたすら、自分に。
動け、動け、もっともっと速く強く!

ゴンッ

首の後ろあたりから聞こえた鈍い音に、内藤は足をぐらつかせた。
それが頭部を直撃した破片だったことを認識する前に、内藤の意識は薄れていく。
体は意識の手の内からやすやすと逃げ出し、数歩たたらを踏んだ後、前のめりに倒れこむ。
崩落はすぐそこまでせまっていた。



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