( ^ω^)ブーンが機械と戦うようです

67: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/29(金) 23:32:55.88 ID:KuIhiy8Z0
  
二日目

ミルナに説明を受けた日は、そのまま部屋に戻された。
水は脱脂綿に含ませたものを吸うように言われた。食事代わりなのか、水は甘かった。
複数の脱脂綿を渡され、ゆっくり寝るようにと言われた内藤は、再び毛布に寝転がった。
油臭い毛布は不快だったが、それも気にならないぐらいに頭を空っぽにして眠れるのはありがたかった。
電気を消すスイッチが見あたらなかったが、しばらくすると荒巻が消灯することを告げに来た。
しばらくして電気は自然と消えた。

翌日、内藤は最初の時と同じく、激しい振動と光で起こされた。
どうやらどこかの装置によって電力が供給される際に衝撃が走るらしい。
時計も窓もないために正確な時間がわからないが、常識的に考えれば電気のついている時が活動時間だろう。
内藤は水密扉をギリギリと回し、部屋を出た。



69: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/29(金) 23:40:52.88 ID:KuIhiy8Z0
  
/ ,' 3「おや、おはよう」

昨日説明を受けた部屋に向かう途中で、荒巻に出会った。

/ ,' 3「もう起きたのかね。さすが健康優良児といったところかな」

穏やかに笑う荒巻。そんなつもりは無いのだろうが、今の内藤はやせ細り、まるで病人だ。
おまけに髪の毛もないし、後で気づいたが眉毛も薄くなっている。
鏡がなくて本当によかった。自分で見ても、あまり気持ちの良い風貌ではないだろう。

( ^ω^)「おはようですお。今は朝なのですかお?」
/ ,' 3「便宜上、今の時間を朝と言うことにしとるが……実際の所はどうかわからんね」

12時間ごとに照明を点灯→消灯しているのだそうだ。
時計もあるにはあるが、あまり必要ではないので必要な時を除いて普段は気にしないという。

( ^ω^)「そういえば、ここってどこなんですかお?」
/ ,' 3「ああ、そんな丁寧な言葉はいらんよ。タメ語でいいさ」
( ^ω^)「わかったお……荒巻さん」
/ ,' 3「んー、まだ痒いが、いいか。ここはどこかとな?」

穏やかな荒巻だが、その言動の端々には若さ……というより、子供っぽさが見える。
ここはどこかという内藤の問いに応える様は、まるで秘密を見せびらかす子供そのものだ。

/ ,' 3「いいじゃろ、ちょっとついてきなされ」



70: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/29(金) 23:48:23.88 ID:KuIhiy8Z0
  
( ^ω^)「これは……なんですかお?」

内藤の目の前には、よくわからない機械やら模型やらが散らばっていた。
機械はわかる。だが、模型はどういうことか。

/ ,' 3「儂は何かを作るとき、形から入るたちでな。最初にこうして模型を作るんじゃ」
( ^ω^)「なるほど把握」

見れば翼のついたウォーターバイクみたいなものや潜水艦のような模型がたくさん並んでいる。
実物の大きさは判らないが、明らかに銃の類のものや用途不明の機械類がいっぱいだった。

/ ,' 3「ほれ、そこにあるのがそうじゃよ」

言って、潜水艦に似た模型を指さした。

/ ,' 3「儂らVIPの拠点、タシーロ号じゃ」
( ^ω^)「タシーロ号……」
/ ,' 3「こいつは潜水艦じゃが、推進装置は超電磁推進、センサー類も高性能ときた」

どう見てもゴテゴテした潜水艦に二つの皿をつけたような不格好な姿なのだが。
きっと内藤にはわからない高性能なりの理由があるのだろう。

/ ,' 3「ちなみに、今は深海じゃ」
( ^ω^)「位置はどのあたりなのかお?」
/ ,' 3「ふむ、それを説明するのはちと難しいの……」

荒巻が困った顔をすると同時に、どこかにあるスピーカーからミルナの声が流れた。

( ゚д゚ )『内藤、荒巻。至急ブリッジへ。繰り返す、内藤……』



71: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/29(金) 23:56:52.12 ID:KuIhiy8Z0
  
ブリッジというのは、昨日ミルナから話を受けた部屋だった。
内藤と荒巻がブリッジに入ると、ミルナは無線機らしきものに向かって了解と返してマイクを置いた。

/ ,' 3「どうされましたかな?」
( ゚д゚ )「ジョルジュ隊が攻撃を受けている。大坑道東辺りだそうだ」
/ ,' 3「ふむ……困りましたな。こちらの修理も終わらぬうちに」
( ゚д゚ )「ジョルジュ隊は攻撃を実行した後だ。被害はこちらの比ではない」

自分にはわからない話で深刻そうな顔を見せる二人。
おいて行かれる形になった内藤は、とりあえず話を聞いていることにした。

( ゚д゚ )「追跡してきているのはカメ型とサカナ型だそうだ。それぞれ一匹づつ」
/ ,' 3「サカナはともかく、カメは驚異的ですな」
( ゚д゚ )「今のところはジャマーによって凌いでいるが、追いつかれるのは時間の問題だろう」
/ ,' 3「では、誘導を頼んでいつも通りに……」

ミルナは頷くとブリッジにあるマイクを再び手に取った。



72: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 00:08:42.05 ID:edE1sUAB0
  
( ^ω^)「何かあったのかお?」

二人の話がとりあえず一段落したと感じた内藤は、荒巻に話しかけた。

/ ,' 3「VIPの仲間が機械の襲撃を受けたんじゃよ」
( ^ω^)「VIPって仲間がたくさんいるのかお?」
/ ,' 3「もちろんじゃとも。今は操舵手とソナー係、そして儂と艦長しか乗艦しとらんがな」

艦長というのはミルナのことだろう。荒巻は色々作るので科学者かと思ったが、医者なのだそうだ。
曰く、「機械も人も診るのは大して変わらん」だそうだ。

( ゚д゚ )「大坑道東南部に先回りして、トラップを仕掛けるぞ」

無線を置いたミルナがこちらに話しかけた。

( ゚д゚ )「誘導は指示した。あとは速やかに現場に向かう」
/ ,' 3「では、エア・スクーターでいいですかな。実行はギコに任せましょう」

知らない名前が出た。先ほどの操舵手とソナー係のどちらかだろうか。



74: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 00:19:59.56 ID:edE1sUAB0
  
( ゚д゚ )「とりあえず、内藤は我々の行動を見ておけ」

ミルナの一言で内藤は見学が決定した。潜水艦タシーロ号は浮上しつつ、大坑道入り口を目指す。
道すがら内藤は荒巻から様々な説明を受けた。
大坑道というのは、人類が大都市の基盤として建設した巨大な下水道跡だそうだ。
大小様々な穴により、およそ100qに渡って広大な地下道が構成されている。
下水はもちろん、上水やガス、電気、その他様々なライフラインも通っていたらしい。
もっとも、今はほとんどの機能を失い、虚ろに空いたただの穴となっているのだが。

/ ,' 3「我々人類がいつ機械に支配されたのか、明確な時期はわかっておらん」
/ ,' 3「しかし、おそらく数百年の長きにわたり、機械は人類を支配していたようじゃ」
( ゚д゚ )「奴らは我々をカプセルに閉じこめ、眠りの中で人生を腐らせた」
/ ,' 3「奴らの目的は人間の完全な管理。人類の解放を打診した回答は、もちろん拒否じゃったよ」

人類が絶頂にあった時代。その時代の科学力は、内藤が生きていた世界よりも遙かに進んだものだったらしい。
内藤の見せられていた世界が20世紀を基準にしていたのは、技術力の現実流出を防ぐためだろうとのこと。
内藤の成績は良くも悪くもなく、その様な心配は不要だろうと感じられたが。



76: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 00:30:14.80 ID:edE1sUAB0
  
およそ20分後。どの程度の深さと距離を進んだかは判らないが、タシーロ号は大坑道入り口に到着した。
海面にその背を表したタシーロ号は、離発着ハッチを解放。
エア・スクーターにソナー係のギコと……何故か内藤を乗せて出発した。

(,,゚Д゚)「しっかり掴まってろよ!! 落ちても助けてる暇はねーぞゴルァ!!」
(;゚ω゚)「いいいいいいいいい言われなくても掴まってるおおおおおおお!!」

エア・スクーターは、端的に言えば『浮遊するウォーターバイク』といった感じだ。
原理はよくわからない。荒巻に聞いたが、説明はまったく判らなかった。
リフターとかなんとか言っていた気がする。
エア・スクーターの速度はそれほどではないが、直接顔に当たる風と十数mの高度は恐怖だ。

(,,゚Д゚)「よーし、大坑道に入るぞ!!」
(;^ω^)「で、でかいお……」

それは断崖絶壁にぽっかりと口を開けていた。
おそらく、この入り口は意図されて出来たものではないだろう。
何らかの要因……例えば地震などによって崩れた場所から、坑道の一部が顔を出したようだ。
黒く全てを飲み込むかのような穴の中には、今でも生きている照明がちらほらと瞬いている。
小さな駆動音と風切り音を伴って、エア・スクーターは大坑道に進入した。



77: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 00:39:47.48 ID:edE1sUAB0
  
大坑道。その正体は、過去のライフラインである。
上下水道と電気、ガス、水道、果てはリニア輸送線まで、様々な物を供給していた。
都市に生きる人々は、やがてそれらを自動的に管理し、統括する存在を欲するようになる。
それが機械。物言わぬ奴隷。効率的な判断を絶対とし、オートメーション化する。
やがて怠惰になった人は、全てを機械に任せて自分たちは楽園を享受するようになった。
機械は足りない機械を作り、機械を作るためのラインを自分たちで作る。
大坑道は、そうして自動的に広がっていった。

(,,゚Д゚)「そして、ある日機械達は気づいたんだ。人間は管理するべきだと」

そう言って、ギコの話は締めくくられた。
ここは大坑道東南部。少しだけ周囲より狭くなったそこは、過去に電気ケーブルが走っていた場所らしい。
地面には朽ちたケーブルが横たわり、所々が腐食している。



80: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 00:51:44.85 ID:edE1sUAB0
  
今、ギコは亀裂に爆弾を仕掛けている所だ。
数カ所に渡って仕掛けられたそれは、爆発によって坑道を崩落させ、全てを押しつぶすため。
とはいえ、数百年にわたって残る強度を持つ坑道は、生半可な爆発では崩落しない。
こうやって爆発させても、せいぜい100mも崩落場所は続かない。

(,,゚Д゚)「ジョルジュや艦長なら、もっと上手く仕掛けられんだけどな」
( ^ω^)「それはなんだお?」

爆弾に巻き付けている銀色の布を指さして、内藤が聞いた。

(,,゚Д゚)「ああ、こりゃスクリーンつってな。機械のスキャンを阻害するもんだ」
( ^ω^)「そうしないと発見されるのかお?」
(,,゚Д゚)「そうだ。以前は無くても平気だったが、奴ら学習しやがった」

今ではスクリーンを巻かないと、こちらの作戦を察知されてしまうのだという。
スクリーンは現在では製造が出来ないため、たまに大坑道で発掘されるものしか存在しない。
こうして消耗品として使用するには、あまりにも惜しいものだった。

(,,゚Д゚)「最初は銃が通用しなくなった。その次はバズーカ。そして今度は爆弾だ」
(,,゚Д゚)「今じゃもう、こうやって爆弾による崩落で奴らを潰すしかない。爆弾を秘匿してな」

そう言って、ギコは何かに祈るように短く目を閉じた。
通用しなくなるのは、いつも攻撃を加えてから判明するのだろう。
なら、通用しない攻撃を仕掛けた者はどうなる? 答えはあまりにも簡単に予想できた。
ギコがどのくらいVIPで戦っているかはわからない。
しかし、通用しなかった場合の結果を見たことが一度や二度ではないことは読み取れた。



82: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 01:04:06.56 ID:edE1sUAB0
  
次々と学習する機械に対して、今はもう初手の奇襲しか手はないのだそうだ。
どんどんと学習する機械に対して、どんどんジリ貧となるVIP。
未来をかけるには、あまりにも分が悪すぎる。だというのに、何故戦うのだろう。
率直に疑問に思った内藤は、ギコに聞いてみた。

(,,゚Д゚)「言いたくねぇ」

手を休めずに発せられた、そっけない一言。それが彼の返答だ。

(,,゚Д゚)「不幸自慢は好きじゃない、誰かに理由を転嫁するのはもっと嫌いだ」

そう言って、ギコは沈黙する。これでこの話は終わりだと、全身で語っていた。
そこから先に踏み込めるのは、多分その理由となった人だけなのだろう。
そしておそらく、その人はもうこの世にいない。

( ´ω`)「ごめんだお……」
(,,゚Д゚)「うるせぇ、謝るな!! ……よし、作業終了!! ジョルジュに連絡入れるぞゴルァ!!」

ばつが悪そうに、ことさらぶっきらぼうに応える。
八つ当たりのような言い方に、自分で自分が許せなくなったのだろう。
顔を合わせたのはつい1時間ほど前だが、内藤はギコのまっすぐな性格を好ましく思った。
きっといい友人になれる。そう、ドクオやショボンのような……。
今はもういない、最初から存在すらしていなかったと聞かされた友人を思い出す。
機械に作られた友人でも、それでも彼らは自分にとっていい友人だった。それだけは間違いなかった。



84: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 01:18:37.53 ID:edE1sUAB0
  
作業終了から数分後。
ギコから無線を受けたジョルジュ隊が、トラップの仕掛けられた坑道に侵入してきた。
直線距離にして1qほどの直線を、ジョルジュ隊のエア・スクーターが疾走してくる。
内藤はその様を、丁度反対にある坑道の終わりの角から双眼鏡で確認した。

(,,゚Д゚)『俺のいる場所をおとりにする』

ギコはそう言った。自分の爆破技術の未熟を考慮しての言葉だった。
彼はあえてスクリーンを被らず、崩落予想範囲の中心にある横穴に潜んでいる。
正確な崩落範囲を想定できないため、自分が横穴に潜み、あえて発見されることが目的だ。
ギコを発見した機械はその場にとどまるだろう。足止めした後に崩落攻撃を実行する。
横穴は強度的に問題ないはずだが、かなり危険な作戦だと言えた。
内藤は危険性を指摘したが、新入りの言葉にベテランの彼の意思は揺るぐそぶりを見せなかった。

( ^ω^)(せめて、観察と報告はしっかりするお)
亀裂にうずくまり、スクリーンを被った内藤は、双眼鏡と無線機を握りしめた。
横穴にいるギコには、機械の位置が把握できない。そこで、機械の様子を内藤が逐次報告するのだ。
爆破のタイミングにも関わる、重大な任務である。それを任せてくれたギコに全力で応えたい。



85: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 01:27:13.13 ID:edE1sUAB0
  
エア・スクーターが近づいてくる。機械との距離は、およそ300mといった所か。
こまめに後部から噴射している霧状の物質は、荒巻が説明していたジャマーというやつだろう。
一時的に機械のスキャンを混乱させ、距離を稼ぐというものだ。
近づきつつある機械をたまにそれで牽制し、距離をとる。そのタイミングはかなり手慣れていた。

――ヒイィィィィィィィィィィィィィィィィイイイン!!

内藤のいる地点まで残り200mほどの時点をジョルジュ隊が通過。
と同時に、今まで小さく噴射していたジャマーを、計3機のエア・スクーターが一斉に噴射した。
その量は今までの数倍で、大きな塊となって機械の鼻面に残される。
機械は混乱したかのように、一瞬そこで減速した。
そして、細長い機械が回頭する。場所は、ギコのいる横穴だ。

( ^ω^)「ギコ!!」

機械達がギコを認識した。内藤はギコの名前を呼ぶ。
事前の打ち合わせで、それが合図となっていた。

ズンッ!!!!!

間髪おかず、坑道が大きく身震いした。



86: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 01:37:29.74 ID:edE1sUAB0
  
坑道が崩落する。しかし、その規模は予想よりも遙かに小さかった。
機械は即座にその場を離れ、崩落から身をかわす。
失敗したか!?そう内藤が思った瞬間、再度爆発音。爆発は二段階にわけてセットされていたらしい。
丁度機械がよけた場所に土砂が降り注ぎ、機械達はすべて土砂の中に消えた。

( ^ω^)「やったお!! 成功だお!!」

未熟なんてとんでもない。計算され尽くした作戦だった。

(,,゚Д゚)『内藤……』
( ^ω^)「ギコ、お疲れさまだお!! お見事だったお!!」
(,,゚Д゚)『いや……マズったみたいだ。やっぱ俺じゃ役不足か』

何だって? そう内藤が聞き返すより早く、崩落した土砂が吹き上がるように押し上げられる。
カメ型。そう呼ばれていた機械が、無数のアームをへし折られながらも、土砂をのけて現れた。



87: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 01:47:19.29 ID:edE1sUAB0
  
カメ型と呼ばれた機械は、浮遊せずに頼りなくギコのいる横穴に向かって進んでいく。
崩落の影響で、横穴の入り口は広がってしまっていた。とはいえ、あの広さなら機械も入れない筈だ。
だが、カメ型の一部がバクリと開き、中から小型の機械が飛び出した。
サカナ型に似た、小さな機械。あれなら横穴に入れてしまう。

(;゚ω゚)「ギコ!! 危ないお!! 逃げるお!!」
(,,゚Д゚)『……無理だ。もう逃げられんさ。退路まで間違って崩落させちまったからな』

それに、とギコは続ける。

(,,゚Д゚)『走ってなんとかなる相手じゃない。お前は隠れてろ』
(;゚ω゚)「で、でも……」
(,,゚Д゚)『スクリーンをきっちりまいとけ。それなら見つかんねぇ』

分かり易すぎるギコの言葉。
自己犠牲。その言葉を思いつくことができるほどには、内藤はギコを理解していた。

(,,゚Д゚)『もう喋るな。助けが来るまで、お前はそこにいろ』

そして、ギコが横穴から飛び出す。
遠すぎてよく見えないが、ギコは何かを抱えているようだ。
小さなサカナ型の機械が、ギコに向かって殺到する。



88: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 01:58:42.11 ID:edE1sUAB0
  
(,,゚Д゚)「――――!!」

ギコが何かを叫んでいる。遠く離れた内藤には、その言葉が聞こえない。
せめてその言葉を聞きたいのに、聞くことが出来ない。
小型のサカナ型機械がギコに食らいつく。槍のように、次々とそれがギコの体に突き刺さっていく。
目をそらしたい。でも、そらすことはできない。
内藤はギコの姿を、じっと見つめ続けた。
ギコは体を無数の機械に貫かれながらも、カメ型に近づいていく。

――ッドン!!

突如、ギコの体が爆裂した。自爆。そうとしか見えないし、考えられない。
持っていた予備の爆弾を爆破したのだろう。爆風が遠く離れた内藤の顔にまで届くほどの爆発。
思わず目を閉じた内藤が次にギコのいた場所を見た時、そこにはカメ型の機械の残骸のみが残っていた。

( ;ω;)「……ギ……コ……」

恐怖と情けなさと、自分は助かったという安心感と。それを受け入れられない複雑な気持ち。
それらがない交ぜになって、内藤は嗚咽を漏らした。
通用しない攻撃を仕掛けた者の末路。学習する機械。その話をしたギコの、小さな黙祷に似た表情。
これが戦いか。あんなに気持ちのいい人があっさりと消える、これが。
戻ってきたジョルジュ隊に回収されるまで、スクリーンにくるまって。
ただひたすら内藤は嗚咽を漏らしているだけだった。それしかできなかった。



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