( ^ω^)ブーンが機械と戦うようです

171: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 15:30:18.34 ID:glrn5BlZ0
  
四日目

いつもの衝撃と点灯で、内藤の意識は覚醒した。
しかし、明らかにおかしい。まだ消灯してから数時間しか経っていない筈だ。
艦内時計が極端に少ない。当然内藤の部屋にもないので確かなことはわからないのだが。
内藤の疑問は、艦内に響くミルナの声で氷解した。

( ゚д゚ )『全員起床!! 全員起床!! 起床した者は至急ブリッジに集合せよ!! 繰り返す……』

切迫した感じのミルナの声。
内藤の、この世界で最も長い一日が始まった。



172: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 15:34:43.95 ID:glrn5BlZ0
  
内藤がブリッジに着いたときには、既に内藤を除く全員が集合していた。

( ゚д゚ )「全員集合したな」

ミルナが椅子から腰を上げてVIPメンバーを見渡す。
操舵手の兄者とソナー係の弟者の姿が見えないが、おそらく持ち場についているのだろう。
艦の振動から、かなりの速度で航行していることが推測された。

( ゚д゚ )「荒巻。状況説明を」
/ ,' 3「了解」

ミルナの指示で、荒巻が片隅にあった黒板を持ち出してくる。
ただの鉄板に塗料を塗り、足をつけただけの粗末なものを苦労して動かし、ブリッジの中心に据える。

/ ,' 3「トレーダー港が襲撃された。襲撃したのは機械共じゃ」
( ^ω^)゚∀゚)゚Д゚彡「!!!!111!!!」

全員が息をのむ。馬鹿な。トレーダー族は中立種族。機械もそれを承知しているはず。
トレーダー達から提供されるレアメタルは磁場異常地域からしか産出されない。
機械にとって必要不可欠なそれは、トレーダー達にしか採掘することができない。
だからこその中立種族であり、その均衡あっての交易地である。
トレーダー港での人間対機械の休戦協定すら締結している状況で、何故。



173: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 15:39:20.39 ID:glrn5BlZ0
  
ミ.,,゚Д゚彡「機械の目的はなんですか」

いち早く冷静になったフサギコが口を開く。
彼は爆破のエキスパートであり……あのギコの兄だ。
内藤はギコに助けられたあの日以来、フサギコと口を交したことは数度しかない。
なんとなく彼に話しかけるのが憚られるというのが建前だが、本当の理由は違う。

( ゚д゚ )「目的は不明だ。一方的な襲撃だったらしい。およそ100機編隊が来襲したそうだ」
/ ,' 3「機械来襲の一方が入ったのがおよそ30分前。寝入りばなで、すでに多数の死者が出ているそうじゃ」

多数の死者が……。荒巻の言葉を聞いて、内藤の脳裏にツンの姿が思い浮かぶ。
金色の毛並みを血に濡らし、倒れ伏すツン。その目は既に光を失い、虚空を見つめている。

(;゚ω゚)「つ、ツンは!? ツンは無事なのかお!?」

思わず内藤は荒巻に聞き返していた。
興奮する内藤に対して、荒巻は首を振る。

/ ,' 3「まだ詳細は不明じゃ。だが、ツンちゃんはトレーダー族の巫女。生存の確率は高いじゃろう」
(;^ω^)「そ、そうなのかお……よかったお」

目に見えて安堵する内藤。それでも不安は消えないが、とりあえずは一安心だ。

/ ,' 3「では、これより詳細な状況説明と作戦説明に入る」

額の汗を拭う内藤、その横顔を、フサギコが無表情に見つめていることに、内藤は気がつかなかった。



174: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 15:43:28.89 ID:glrn5BlZ0
  
ミ.,,゚Д゚彡「機械の目的はなんですか」

いち早く冷静になったフサギコが口を開く。
彼は爆破のエキスパートであり……あのギコの兄だ。
内藤はギコに助けられたあの日以来、フサギコと口を交したことは数度しかない。
なんとなく彼に話しかけるのが憚られるというのが建前だが、本当の理由は違う。

( ゚д゚ )「目的は不明だ。一方的な襲撃だったらしい。およそ100機編隊が来襲したそうだ」
/ ,' 3「機械来襲の一方が入ったのがおよそ30分前。寝入りばなで、すでに多数の死者が出ているそうじゃ」

多数の死者が……。荒巻の言葉を聞いて、内藤の脳裏にツンの姿が思い浮かぶ。
金色の毛並みを血に濡らし、倒れ伏すツン。その目は既に光を失い、虚空を見つめている。

(;゚ω゚)「つ、ツンは!? ツンは無事なのかお!?」

思わず内藤は荒巻に聞き返していた。
興奮する内藤に対して、荒巻は首を振る。

/ ,' 3「まだ詳細は不明じゃ。だが、ツンちゃんはトレーダー族の巫女。生存の確率は高いじゃろう」
(;^ω^)「そ、そうなのかお……よかったお」

目に見えて安堵する内藤。それでも不安は消えないが、とりあえずは一安心だ。

/ ,' 3「では、これより詳細な状況説明と作戦説明に入る」

額の汗を拭う内藤、その横顔を、フサギコが無表情に見つめていることに、内藤は気がつかなかった。



175: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 15:44:56.31 ID:glrn5BlZ0
  
トレーダー港のある場所は、かつて太平洋と呼ばれていた海洋のほぼ中心にあたる。
周囲を広大な海に囲まれたそこは、大昔に海底火山の噴火によって隆起した島だったらしい。
活発な地殻と火山活動により引き起こされる磁場異常と電磁嵐。
機械が正常に動作しないことの多かった場所は、自然と人工生命の実験場になった。
厳しい自然環境に対応する種を生存競争によって選別する。
百万回のシミュレーションよりも確実なデータを求めて、この実験場は開設された。
やがて実験を行う人間が機械により掃討、管理された時。
機械はレアメタルの提供を条件に、彼らの生存に必要な物資を提供することを約束した。
人間に対しての不信感が絶頂だったその時代に、その当てつけのように機械と契約する。
トレーダー族の祖先が取った行動を、誰が責めることができるだろうか。

かくして今の今まで守れていた奇妙な契約は整斉と実行され……今日、それは唐突に破られた。



176: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 15:46:16.88 ID:glrn5BlZ0
  
/ ,' 3「機械共を一カ所にまとめて、磁気嵐により殲滅する」

乱暴に言えばそれが作戦だった。作戦ともいえないほど乱暴であることに目をつぶれば。

/ ,' 3「あやつらは機械であるが故に、磁気嵐に対してだけは脆弱であるを得ない。そこを突く」
( ゚∀゚)「簡単にいうけど、そんなに都合良く磁気嵐が起きるもんなのか?」
/ ,' 3「もちろん、自然に起きるそれは規模も小さくタイミングもわからん」
ミ.,,゚Д゚彡「では、こちらから起こすのですか」
/ ,' 3「ふむ、さすがフサギコじゃな。その通り、こちらから磁気嵐を、特大のやつを起こすのじゃよ」

ニヤリと笑う荒巻。フサギコは無表情に話の続きに耳を傾ける。

/ ,' 3「あの島で起きる磁気嵐は、磁場異常地域と地殻変動、火山活動の三点によって起こされておる」
/ ,' 3「島の北部にある大火山と、島を東西に走る地脈。それを無理矢理刺激する」
( ゚∀゚)「理屈はわかったけど……刺激ってのは?」
/ ,' 3「核じゃよ」
(;゚∀゚)「んなっ!?」

今夜の献立のように、あまりにもさらりと言われたので聞き逃す所だった。
なに、何を使うって?核とか言わなかったか今。



177: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 15:47:02.86 ID:glrn5BlZ0
  
(;゚∀゚)「常々マッドだとは思ってたけど、そこまで飛んでるとは知らなかったぜ……」
/ ,' 3「なにげに失礼なやつじゃな」

荒巻が不愉快そうに眉根を寄せる。
しかし、ジョルジュの反応も当然だ。核といえば核爆弾。それがもたらす被害は人間のすめない災禍をもたらす。

/ ,' 3「だからこその核、それでいてのトレーダー族じゃろが」
( ゚∀゚)「あ、ああ。なるほどな」

トレーダー族はすべからく特殊な体質を保持している。
その最たるものが放射線に対する圧倒的な耐性だ。
何しろ彼らはタシーロ号の燃料である燃料棒を生成し、それを機械なしで搬送できる。
ちょっとの放射線ぐらいなら、せいぜいが軽い火ぶくれぐらいで済んでしまうだろう。
それを見越してのことだろうが、あまりにも乱暴と言えば乱暴だ。

/ ,' 3「これが終われば、しばらくは防護服での上陸になるじゃろうが……いたしかたあるまいて」
( ゚∀゚)「あんなゴワゴワしたものを着たままじゃジェシカちゃんのおっぱいの感触もわかんねーよ」

ぶつぶつとジョルジュが呟くが、当のジェシカにそもそも触らせる気があるかどうか。
その問題はさりげなくスルーしているあたり、ジョルジュのぼやきは不安からくるものなのだろう。



178: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 15:47:41.32 ID:glrn5BlZ0
  
( ゚д゚ )「3Dマップをフサギコ、ジョルジュ、そして兄者に預ける」

説明を荒巻から受けて、ミルナが口を開いた。

( ゚д゚ )「それぞれフサギコと内藤、ジョルジュと荒巻、兄者と弟者でバディを組め」
( ゚∀゚)「りょーかい」
/ ,' 3「人使いの荒いことじゃな」
ミ.,,゚Д゚彡「了解」
(;^ω^)「り、了解だお」

フサギコとバディを組むことになった内藤は、重苦しい気持ちになった。
ただでさえ不安な任務、それを関係の芳しくないフサギコと組むことになったのだ。
願わくばぎくしゃくした関係がこちらの一方的な勘違いによるものであればと願わずにはいられない。

( ゚д゚ )「兄者、あとどれぐらいで港に到着する」
( ´_ゝ`)『今のままの速度でいけば十分以内には湾内に進入できる』
( ゚д゚ )「島の10q沖の地点で超電磁推進を切れ。そこからは通常進行。3qからは惰性航行」
( ´_ゝ`)『了解した』

操舵手の兄者へ指令を下した後、ミルナは各バディに装備の点検を命じた。

( ゚д゚ )「必要最低限、しかし十分な装備を用意しろ。食事と水は二日分。3Dマップは出発時に配布する。以上、解散」



179: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 15:48:15.89 ID:glrn5BlZ0
  
三組のバディは船底にある格納庫に集まった。
作戦に使用する燃料棒は保管期限がギリギリとなった自壊寸前のものは避け、昨日仕入れたばかりのもの。
作戦後はしばらく行動不能に陥る危険性もあるが、トレーダー族が全滅すれば補給の道はない。
オールオアナッシング。分かり易すぎる理屈だった。

( ´_ゝ`)「よし、これで準備は万端だな」
(´<_` )「一番に準備が終わるなんて、流石だよな俺ら」

兄弟ゆえの阿吽の呼吸で、一番早く兄者・弟者バディが準備を済ませて階上に消える。

/ ,' 3「よし、これでいいじゃろ……多分」
(;゚∀゚)「おい、多分ってなんだよ多分って。俺がわかんねーからって手抜いてないだろうな」

続いてジョルジュ・荒巻バディが準備を済ませて上がる。
二組は食料やその他の装備品を準備に行ったのだろう。

ミ.,,゚Д゚彡(;^ω^)「……」

その二組に遅れること数分、内藤が足をひっぱったため、フサギコ・内藤バディの準備は遅れて完了した。
作業中、二人の間に必要事項以外の会話は一切なかった。



183: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 16:10:29.16 ID:vafhPJWa0
  
(;^ω^)(やっぱり重苦しい関係は気のせいじゃなかったようだお……)

これからの作戦に暗澹とした気持ちになりながら、内藤は階段を上るフサギコに続く。
と、階段の途中で、フサギコが立ち止まった。

ミ.,,゚Д゚彡「内藤」
(;^ω^)「は、はいですお」

能動的に話しかけられたのは初めてだ。
緊張しながら内藤は応えた。

ミ.,,゚Д゚彡「作戦の前に、一つ言っておく事と聞いておくことがある」
(;^ω^)「なんですかお」
ミ.,,゚Д゚彡「俺はお前が嫌いだ」
(;^ω^)「おっ……」

いきなりの攻撃に、内藤の体がぐらりと揺れる。
攻撃は続いて行われた。

ミ.,,゚Д゚彡「弟が……ギコが死んだとき。俺はお前を恨んだ」
ミ.,,゚Д゚彡「艦長の指示があったことは知っている。それでも、俺はお前が許せない」

鳩尾をえぐるような言葉。
その全てがあまりにも当然の感情故に、内藤は逃れる術が思いつかない。



184: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 16:10:59.29 ID:vafhPJWa0
  
ミ.,,゚Д゚彡「そして、聞きたいことだ。お前は先ほど、ツンの安否を確認したな」
(;^ω^)「あ、あれは思わず……」
ミ.,,゚Д゚彡「そんなことは関係ない。お前はツンの安否を。ツンだけの安否を確認した」
(;゚ω゚)「ッ!!」
ミ.,,゚Д゚彡「ツンでなければよかったのか。お前はツンさえ無事なら、満足なのか」

単純にそうだ、と応えるには、その質問はあまりにも重すぎる。
ツンさえ無事なら満足。それは自分のエゴであり、他のものを切り捨てる行為だ。
否、と応えるのもまた然り。多数のために少数を切り捨てるそれは、命を数字で数える独裁者の行為と同義である。

ミ.,,゚Д゚彡「俺が言いたいこと、聞きたいことはそれだけだ。作戦までに、答えを聞かせろ」

言い残して、フサギコは階段を上り始めた。
内藤はその場に立ちつくしていた。足は一向に階段を上ろうとはしなかった。



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