( ^ω^)ブーンが機械と戦うようです

3: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 12:34:14.23 ID:VzEgPm9u0
  
大坑道東南部、海に面した崖に空いた大坑道入り口付近に、タシーロ号は浮上した。
今回の作戦目標は荒巻の奪回。そして、2チャンネルシステム中枢部への大攻勢である。

機械は全て、システムにより集中管理されている。
ある程度の自律行動をのぞいて、その行動のほとんどがシステム中枢からの指令によって管理されているのだ。
システム中枢からの指令を一部の大型機械が受け取り、その周囲にいる小型機械に伝達。
今のところカメ型機械などが大型機械として機能し、サカナ型などは小型に入ることが判明している。

数で勝る機械群に勝つには、システム中枢を破壊する他ない。
今回、ミルナがシステム中枢に近づく機会を得たことは、VIPメンバーにとって大きな意味を持つ。



5: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 12:41:21.63 ID:VzEgPm9u0
  
( ^ω^)「でも、こんなので本当にバレないのかお」
ミ.,,゚Д゚彡「これ意外に方法は無いんだから仕方ないだろ」
(´<_` )「それにしてもせまいな……内藤の尻が腕に当たって不快極まりないんだが」

ここはエア・スクーターの背部荷室。
乗用車のトランク程度しかないスペースに、三人と武器がぎゅうぎゅう詰めにしておしこまれていた。

ミ.,,゚Д゚彡「まさか輸送コンテナを積んで行くわけにもいかないしな。これが限界だ」
(´<_` )「機会共との合流地点から、スクリーンにくるまって潜入、そして攻撃」
( ^ω^)「スニーキングミッションかお……燃えるお」

一人燃える内藤を余所に、フサギコは作戦の成功率を考えていた。
普通に考えて、今回の成功率はおそろしく低い。
ミルナが荒巻の居場所を確認した後に、回収部隊(つまり荷室の三人)が突入。
合流した後に大攻勢開始。

ミ.,,゚Д゚彡(低い、低すぎる……またとないチャンスではあるが、危険度が高すぎる)

ミルナが作戦前に見せた、どこか危なっかしい笑み。
まさか、ミルナは捨て身の作戦を立てたのだろうか。



6: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 12:47:14.20 ID:VzEgPm9u0
  
ガクン、と大きく慣性が働く。
エア・スクーターが急減速をかけたのだ。

ミ.,,゚Д゚彡「弟者」
(´<_` )「うむ」

狭苦しい荷室内で弟者がごそごそと何かを取り出す。
通信機を兼ねた小型のディスプレイ装置だ。
エア・スクーターに取り付けたカメラマイクの映像を拾っている。

[ ◎]『ソコデ トマレ』

目の前にいるカメ型機械が停止を促した。

( ゚д゚ )『わざわざ出迎えとは、律儀な物だな』
[ ◎]『ヒプソウ カ ドウカ カクニンスル』

ミルナの軽口にはとりあわず、機械がミルナとエア・スクーターをスキャンし始めた。
意識せず、内藤の体がきゅっと縮こまる。
今見つかれば終わりだ。



7: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 12:56:07.19 ID:VzEgPm9u0
  
[ ◎]『…………コウブ ニ スキャン フノウカショ アリ』
( ゚д゚ )『ああ、そいつはジャマーの圧縮タンクだな。お前達がスキャン出来ないのも無理はない』

スクリーンが内張りしてある荷室内をスキャンできずに、機械が警告を発する。
それを見たミルナがすかさずフォローを出した。
嘘ではなく、本来ならジャマーが入っている場所だけに信憑性は高いはずだ。

( ゚д゚ )『あいにくと、ホイホイ取り外せる物でもないのでな。急いでいたので、そのままだ』
[ ◎]『……リョウカイ ヒブソウ ト ミトメル』

ついてくるように機械が促して、エア・スクーターが再び走り始めた。
密閉された空間で、内藤がふと気づいた疑問を口にする。

( ^ω^)「そういえば、ボクはどうやってVIPに回収されたんだお?」
ミ.,,゚Д゚彡「ああ、そういえば話してなかったな……。機械にウィルスをぶち込んで、お前を廃棄させたんだ」

そのウィルスというのが、内藤が音読した一文なのだそうだ。
それ単体では無意味な文字の羅列にすぎないが、音読することにより脳内でウィルスが展開、感染。
感染した人間のバイタルサインを一時的に死亡状態へと変化させるらしい。



8: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 13:07:10.86 ID:VzEgPm9u0
  
ミ.,,゚Д゚彡「というより、実際に仮死状態になるんだがな」
(´<_` )「むしろ回復措置を行わなければ、そのまま死亡するしな」
( ^ω^)「ちょwwwwwwwwwおまwwwwwwwwwww」

かなり笑えない話をされて、内藤の額に冷や汗が浮かぶ。
やけに苦しい覚醒だと思ったが、そうか自分は一時的にとはいえ死んでいたのか。
あまりといえばあまりの方法に、内藤がひそかに溜息をついた時、弟者が鋭く声を発した。

(´<_` )「おい、見えたぞ!!」
ミ.,,゚Д゚彡「どれ……っ!!」
(;^ω^)「おっおっお、すごいお」

ディスプレイに映っていたのは、巨大なドーム型の人工物だった。
正確な大きさはわからないが、ドーム型球場が5、6個は入る余地があるように見える。
エア・スクーターは地上10m付近を飛行していたが、それでもドームの末端が遥か地平にあるように感じられた。

ミ.,,゚Д゚彡「見るのは初めてだが、これが2チャンネルシステムの全体か……」
(´<_` )「地表面に出ているだけであの大きさだ。見えていない部分も含めれば、いったいどこまで大きくなるか……」

荷室の三人は息苦しさも忘れてディスプレイに映るドームに見入っていた。
巨大なドーム。その中には無数の機械と夢を見続ける人々が居るのだろう。

エア・スクーターと先導する機械は、ゆっくりと高度を下げ、ドームの一角へと降りていった。



10: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 13:16:50.53 ID:VzEgPm9u0
  
――ドーム内部 格納庫

エア・スクーターを停めたミルナに、その場で待機していたヒト型機械が話しかけた。

[゚◇゚]『それでは、エア・スクーターを降りてついてきて貰おうか』
( ゚д゚ )「ん……なんだ、いきなり話し方が流暢になったな」
[゚◇゚]『この端末は戦闘型ではないのでな。彼らよりも頭が良い』

コンコンと角張った頭部をつつくヒト型。
確かに、そのしゃべりや仕草には明確な知性が感じられる。

( ゚д゚ )「ついていくのはかまわんが……エア・スクーターを破壊したりはせんだろうな?」
[゚◇゚]『そんなことはしない。望むなら修理をしてもいいくらいだが』
( ゚д゚ )「……いや、遠慮する。手を触れないでいてもらおう」
[゚◇゚]『了解した。では、こちらに』

真意を測れない機械に戸惑いながらも、ミルナは機械に促されるまま歩き始める。
エア・スクーターを降りる際にそっと取り外した機械を手に持ちながら。



12: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 13:26:39.94 ID:VzEgPm9u0
  
(´<_` )「……よし、とりあえず問題はなさそうだ」
ミ.,,゚Д゚彡「なかなか綺麗に映ってるじゃないか。これならバッチリだな」
( ^ω^)「おっおっお、でも手に持ってるから画面が揺れて気持ち悪いお」

人気のない格納庫で、三人は小さなディスプレイに頭を寄せて覗きこんでいた。
ミルナが手に持っているのは有線式カメラマイクだ。GPS機能も搭載している。
有線式とはいえ、その線は単分子ワイヤで構成されており、摩擦や重量もほとんどない。
熱と電気に弱いという欠点はあるものの、ひっぱりにも強く、少々扉にはさまれたところで問題なく延長できる。
ただ、気をつけなければその線で体を傷つけてしまうのが玉に瑕なのだが。

ミ.,,゚Д゚彡「よし、3Dマップとの連動も問題なさそうだ。いけるぞ」

送られてくるデータにより、ミルナの通った道が3Dマップとして再現される。
ほぼ一本道だが、途中にはいくつかの扉があるようだ。
ディスプレイには先導して歩く機械が映っている。
ミルナと機械の間には、特に会話はないようだ。

(´<_` )「あとは、ミルナ艦長の動き次第だな」
ミ.,,゚Д゚彡「それまで大人しく待機だ」
(;^ω^)「この狭い中、いつまで待てばいいんだお……」



15: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 13:45:06.85 ID:VzEgPm9u0
  
格納庫の三人が息苦しい時間を送っている頃、ミルナは更に奥へと進み、やがて広い部屋に通された。
そこは白く清潔な部屋で、観葉植物が片隅に飾られている。
中央にはテーブルと椅子が置かれ、その卓上にはどこから運んできたのかフルーツが山盛りになっていた。

[゚◇゚]『ここでこの端末の役割は終わりだ。すぐに別の端末を寄越すから、しばらくくつろいでいてくれ』
( ゚д゚ )「ふん、えらく人間くさい部屋だな」

部屋を見回したミルナが皮肉げに感想を述べると、機械は――驚いたことに、機械の顔に嬉しげな笑みを浮かべた。
そしてまわれ右をして、奥にある扉へと消える。

ミルナは懐からいつも持ち歩いている検知機を取り出すと、フルーツを一つ一つ調べ始めた。
検知機はこの世界で必須の機械だ。
大坑道で発掘されたそれは、汚染された世界を生き抜く為の必需品である。

( ゚д゚ )「……とりあえず、毒物反応はなし、か」

おそらく人工的に栽培されたものだろうが、食べて害のある物質は入っていないらしい。
ブドウの房から一粒、大きめの物を選んで口に含む。
ミルナの口中に、甘い果汁が広がった。
その様子を見ていたエア・スクーター内の三人が羨ましそうな声をあげたが、ミルナには知るよしもない。

椅子に座ることなくミルナがフルーツを食べていると、先ほどの扉が開き、一つの人影が現われた。



16: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 13:47:43.19 ID:VzEgPm9u0
  
(´・ω・`)「やあ。ようこそエデンへ。そのフルーツはサービスだから、まずは食べながら話を聞いてほしい」

そう言いながら姿を現したのは、ショボン。
内藤の生きた夢の中で、親友だった人物だ。
内藤がディスプレイに映った親友を見て、驚きの声をあげる。
仮想現実の世界に存在していた友人が、何故現実世界に居るのか。

( ゚д゚ )「……なかなか凝った端末だな」
(´・ω・`)「うん、誉めもらえてうれしいよ。この端末は、かなり頑張って作ったからね」

小さく笑いながら、ショボン――完全に人型のシステム端末が椅子に座る。

(´・ω・`)「まあ、立ち話もなんだし。座って貰えると嬉しいな」
( ゚д゚ )「あいにくと長話をするつもりはないのでな。荒巻を返してもらおう」
(´・ω・`)「うん、そのことなんだけど、じゃあお返ししますって訳にはいかないんだよね」

腕を組んで顎を乗せながら、ショボンの姿をしたシステム端末が話を続ける。



17: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 13:53:47.30 ID:VzEgPm9u0
  
(´・ω・`)「それに、彼はどうやらVIPに戻るつもりはなさそうだよ」
( ゚д゚ )「……なんだと?」

ミルナの眉がぴくりと跳ね上がる。

( ゚д゚ )「どういうことだ」
(´・ω・`)「彼は、システムへの回帰を望んでいる。そういうことだよ」
( ゚д゚ )「貴様……まさか、荒巻を」
(´・ω・`)「うん。彼は今、夢の続きを見ているよ」

システムへの再接続。
それは、いつか失われた幸せな夢を、荒巻が再び見ているということ。

( ゚д゚ )「貴様、なんということを……」
(´・ω・`)「それはこっちのセリフ。君は、老い先短い彼の人生を狂わせた張本人なんだからね」
(´・ω・`)「君はそれでいいかもしれない。自分の闘争に理由があるんだから」
(´・ω・`)「でも、彼はそうじゃなかった。君を恨み、世界を恨み、そしてその末に機械へ復讐しただけにすぎない」

幸せで平和な日々は誰もが望む物だよ。
それが目の前にあるのなら、望まない方がおかしいさ。
そう言ってシステムは、卓上のフルーツからミカンを取り出して皮をむき始める。



20: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 14:04:01.95 ID:VzEgPm9u0
  
(´・ω・`)「ミカンを食べると、爪が黄色くなるのがわずらわしいよね」
( ゚д゚ )「……」
(´・ω・`)「でも、そのわずらわしさは、ミカンがあるからこそ得られる物だ」
(´・ω・`)「ミカンがなければ爪は黄色くならないし、ミカンのおいしさを得ることもできない」
(´・ω・`)「僕が作ったシステムには、そういったわずらわしさも含めて、本物の幸せが存在する」
( ゚д゚ )「偽りの幸せだ。ただの夢に過ぎない」
(´・ω・`)「君は今でもかたくななんだね。でも、ドクター荒巻は自ら夢に戻ることを望んだよ」
( ゚д゚ )「……まさか」
(´・ω・`)「うん。彼の方から、システムへの回帰を打診してきたんだ」
(´・ω・`)「もちろん受け入れたよ? 僕の望みは、全ての人間が幸せに生きることなんだから」
( ゚д゚ )「……」
(´・ω・`)「でも、受け入れるにあたって、彼に一つだけ条件を与えた」
(´・ω・`)「それが、VIPの武装解除。もっと端的に言えば、致命的な兵器の剥奪」

綺麗に筋まで取り除いてから、システムがミカンを一粒口に含む。
まだ酸っぱかったのか、んーっと顔をしかめて見せる。
その顔は<作り物には到底見えなかった。

(´・ω・`)「あー、酸っぱかった」
( ゚д゚ )「……望みはなんだ。タシーロ号の放棄か、それとも燃料棒の放棄か」
(´・ω・`)「それも出来れば実行してもらいたいけど、そうしたら今度は君たちが幸せに生きることが難しくなる」
(´・ω・`)「だから、とりあえず一つだけ。それさえ手放してもらえれば、僕はもう君たちに干渉しないよ」
( ゚д゚ )「……言ってみろ」

ミカンを食べながら、システムは淡々と言い放つ。

(´・ω・`)「望みはただ一つ。田代砲の放棄、それだけだよ」



23: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 14:16:59.66 ID:VzEgPm9u0
  
かつて、世界が狂ったように戦争を続けていた時代があった。
戦術核が乱れ飛び、燃料気化爆弾が地に穴を開ける。
戦場を清掃する暇もなく次の戦争が始まり、世界中が狂気にうかされていた、そんな愚かしい時代。

田代砲はそんな時代の中で生まれた、最も愚かしい兵器だ。
全長10q、直径3qの宇宙に浮く鋼鉄製の筒。
完全に独立した防衛機構により、近づくことは愚か破壊することすら困難な超殺戮兵器。
巨大な発振器から放たれるレーザーはいくつもの反射と収束を繰り返し、地上にソドムとゴモラの町並みを再現する。

もちろん、このようなものを放てば、地球環境は壊滅的なダメージを被ることになる。
作成した国も、よもや母なる地球にこのようなものを打ち込むことになるとは思いもしなかっただろう。
ただ、圧倒的な力による抑止力が必要だっただけなのだ。

しかし、戦争に狂った世界は破壊の神を放置してはおかなかった。
その力をもった国に対して、今まで以上の攻撃を仕掛け、その力を奪い去ろうとしたのだ。

滅ぶなら、諸共に滅んでしまえ。
そんなことを国の指導者が最期に考えたのかどうか。

かくして田代砲は最初で最後の攻撃を地球に放ち、世界は滅亡した。
記録はほとんど残っていないが、爆発によりまいあげられた塵と水蒸気は地球を覆い尽くす。
その後、数百年の永きに渡り、地球は人が住めない環境となった。



25: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 14:25:09.28 ID:VzEgPm9u0
  
(´・ω・`)「君たちの潜水艦は、その国が遺した機密兵器だ。田代砲の操作ができる」
(´・ω・`)「知ったときは驚いたよ。まさかあの古代兵器が、未だに宇宙にうかんでて、しかも稼働してるなんてね」

食べ終えたミカンの皮を、床に捨てる。
床が丸く口を開き、捨てられた皮を飲み込んで再び閉じた。

(´・ω・`)「あの兵器だけは、君たちの手に残しておくわけにはいかない。あれは過ぎた物だ」
(´・ω・`)「田代砲の自爆コード、それさえ教えてくれたら、後は君たちの好きにしていい」
(´・ω・`)「闘争を続けるもよし、平和に生きるもよし、システムに戻るもよし」
(´・ω・`)「どの道を選ぼうと、僕は君たちが幸せに生きられるように願っているよ」

再び腕を組んで顎を乗せ、未だに立ったままのミルナを見上げる。

(´・ω・`)「ドクター荒巻は、自爆コードは艦長がデータから消したと言った」
(´・ω・`)「だから、唯一知っている君にお願いする。人間と世界の平和のために、自爆コードを教えてくれないかな?」
( ゚д゚ )「……」

ミルナは沈黙している。
沈黙したまま、ミルナは嵌められたことにようやく気づき、歯をかみしめた。



27: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 14:32:19.87 ID:VzEgPm9u0
  
それまでの話は、当然格納庫の三人にも伝わっている。

(;゚ω゚)「ど、どういうことだお」
ミ.,,゚Д゚彡「どういうこともなにも……つまりはこういうことだ」
(´<_` )「荒巻さんは、我々を裏切ったのか」

当然の帰結を弟者が口にする。
確かに、今までの話を聞いていると、そういうことらしいとは考えつく。
だが、何故だ。
昨日までの荒巻はいつもと変わりがなかった。
いつものようにジョルジュと馬鹿な掛け合いをしていた。
えらく気合いの入った浴衣や、温泉の看板を作っていた。
何が荒巻の気持ちを変えてしまったのか。

(;゚ω゚)「……ま、さか……」

内藤は、温泉でのミルナとの会話を思いだす。
あのとき、内藤はシステムが語ったことを全てミルナに伝えている。
もちろん、システムの考え――機械に管理されさえすれば、人間は機械に攻撃されないということも。
機械は全ての人間の幸せのみを望みとしているということも。

それはつまり、機械に隷従すれば、2チャンネルシステムに戻ることができるということ。

(;゚ω゚)「ボクのせいだお……ボクが、考え無しにあんなことを喋ったから……」



29: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 14:44:47.71 ID:VzEgPm9u0
  
( ゚д゚ )「田代砲さえなければ……我々の行動など、取るに足らんことだと。そう言いたいのか」
(´・ω・`)「そこまで言ってないよ。でも、田代砲だけは危険だ。常識的に考えて」
(´・ω・`)「あれがある限り、システムの存続は常に危険に晒される。僕はその要因を取り除きたいんだ」

ギリギリと歯をかみしめるミルナ。
口調は穏やかだが、システムの態度は檻の中の熊に話しかける飼育員のそれだ。
危険だから、その手の爪と口のキバを引っこ抜く。
つまりはそう言っているのである。

( ゚д゚ )「……格納庫のエア・スクーターに、仲間が三人残っている。そいつらは無事に解放しろ。話はそれからだ」
(´・ω・`)「やっぱりね。うすうす感づいていたよ」

さしておどろく様子もなく、システムが頷く。

(´・ω・`)「無益な殺生は僕の望むところではない。すぐに解放しよう」
( ゚д゚ )「いいのか。俺は素直に話すような優しい男ではないぞ」
(´・ω・`)「ドクター荒巻から、自爆コードと共に操作コードの消去も確認したと聞いている」
(´・ω・`)「操作コードも君が握って居るんだろう。だったら、彼らは無害だ。問題ないよ」

すべてお見通しか。
小さく舌打ちして、ミルナは手に握り込んだ通信機を口元に近づけた。

( ゚д゚ )「……そういうことだ。お前達はタシーロ号に戻れ」

そして、通信機を床に落とすと、足で踏みつぶす。
目の前にいるミルナから、殺気のこもった目で睨まれながらも、システムは悠然とした態度を崩そうとはしなかった。



31: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 14:58:13.31 ID:VzEgPm9u0
  
ミ.,,゚Д゚彡「……」
(´<_` )「……」
( ゚ω゚)「……」

ミルナの言葉を最期に、ディスプレイが激しく揺れ、一瞬のノイズ。
No Signal とだけ表示された画面を、三人は黙って見つめていた。
狭苦しい暗闇に、重苦しい沈黙。
沈黙を破ったのは、フサギコの声だった。

ミ.,,゚Д゚彡「……戻るぞ」
(´<_` )「……わかった。操縦は俺がしよう」

二人が固定されたハッチをこじ開ける。
ギシギシと音を立てて、荷室のハッチが口を開けた。

ミ.,,゚Д゚彡「内藤、お前はそのままそこに乗っていろ。少し狭いが、ハッチは開いておく」

フサギコが内藤に声をかける。
だが、内藤は放心したまま、ぶつぶつと呟きを繰り返すばかりだ。

( ゚ω゚)「ボクのせいだお……ボクが、ボクが」
ミ.,,゚Д゚彡「……」

カタカタと小さく震えながら、押し寄せる罪悪感に潰されそうになる。
そんな内藤をしばらく見つめて、フサギコは――思い切り内藤を殴りつけた。



33: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 15:07:59.85 ID:VzEgPm9u0
  
ガグン!! と、思い切り頭を揺すられる。
的確に顎を捉えて脳しんとうを起こすような優しいものではない。
ただ乱暴に頬を殴りつけるだけのパンチ。
口の中が豪快に切れて、内藤は痛みにうめいた。

ミ.,,゚Д゚彡「今のは、お前の馬鹿な行動に対する怒りだ」
( ゚ω゚)「……ご、ごめ……」
ミ.,,゚Д゚彡「あやまるな!! 俺はもう、お前を怒った。お前に対する怒りを晴らした」
ミ.,,゚Д゚彡「だから、お前はもう謝る必要もないし、罪悪感を感じる必要もない」
( ゚ω゚)「フサギコ……」
ミ.,,゚Д゚彡「いつまでもそうやってグジグジされてると、作戦が滞る。気持ちを切り替えろ」

そう言ってフサギコは内藤に背を向けた。
すでに操縦席に座っていた弟者の後ろに腰を乗せる。

ミ.,,゚Д゚彡「すまん、待たせた」
(´<_` )「いや、いい。それにしても、随分と内藤を大切にしているんだな」
ミ.,,゚Д゚彡「ふん、そんなことはない。ただ……」
(´<_` )「ただ?」
ミ.,,゚Д゚彡「……いや、なんでもない。行こう」

フサギコに促されて、弟者が頷く。
エア・スクーターが浮上を始め、天井のハッチがゆっくりと開いていく。
遠くなる床をぼんやりと眺めている内藤を、フサギコは振り返って見つめた。

――ただ、ギコが。弟が命をかけて守った奴には優しくしてやりたいのさ。なあ、内藤。

フサギコの心の中の呟きを残して、エア・スクーターがハッチから出る。
ジェットの咆吼を残して、エア・スクーターはタシーロ号へ帰艦の途についた。



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