( ^ω^)ブーンが機械と戦うようです

94: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 20:23:50.53 ID:VzEgPm9u0
  
――エピローグ

その後、システムはウィルスの浸食により、その機能のほとんどを停止した。
ただし、停止していない機能も存在した。
後で判ったことだが、地下の食料生産工場や人間の生命維持装置などは、早々にシステムから切り離されていたらしい。
それがシステムの緊急回避によるものなのか、元々意図されていたものなのかは判らなかった。

内藤は、気づくとすでに現実世界へと戻ってきていた。
フサギコがエア・スクーターで回収に向かう途中、システム中枢から遠く離れた場所に転がっていたらしい。
その体にはウィルスが浸食していた形跡があったが、すべてワクチンにより浸食は消えていた。

その後、フサギコは内藤を回収し、現実世界へと離脱した。
この時、内藤の体に若干付着していたウィルスが防壁の甘くなった田代砲中枢に感染。
ウィルスはすぐに除去されたが、開かれていたポートは遮断されてしまった。
おそらく田代砲に繋がる唯一のポートであったそれは永久に遮断され、田代砲は操縦不能の鉄の塊となった。

ジョルジュは内藤達が現実世界に帰って来てからしばらくして目を覚まし、自分の身に起った事の顛末を話した。
ブリッジで荒巻とシステムの密談を聞いた彼は、荒巻を止めようとしたのだそうだ。
最後まで説得しようとした彼だったが、荒巻は聞く耳をもたなかった。
そして、荒巻を迎えに来た機械に攻撃され、負傷したのだという。

VIPメンバーはそれからすぐに機能を停止したドームへと向かった。
ジョルジュは安静にしておくように言われたが、かたくなに同行を望んだ。

そして、メンバーはドームの中の一室で、システムに繋がれた荒巻の変わり果てた姿を発見する。



95: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 20:30:56.16 ID:VzEgPm9u0
  
/ ,' 3「う……む……」
( ゚∀゚)「おい、じーさん……大丈夫かよ」
/ ,' 3「ジョルジュ……か」

目を覚ました荒巻に、ジョルジュが声をかける。
しかし、その姿は大丈夫という言葉からはほど遠いものだった。
荒巻の頭には無数のプラグが差し込まれ、おそらくそれは脳まで達している。
一部のプラグの根本からは血が滲んでおり、内部には相当の出血があると思われた。

( ゚∀゚)「じーさん、どうして……」
/ ,' 3「ふ……ふふ。無駄にスキャナーとして活動していたもんじゃからな。こうでもしないと、システムに馴染めんのよ」
( ゚∀゚)「馬鹿野郎……そうまでして、夢の中の奴らに会いたかったのかよ」

ふぅ、と小さく、疲れたような溜息をつく荒巻。

/ ,' 3「言ったじゃろ。わしは、あの世界でしか積み上げたものがないのじゃと」
/ ,' 3「こちらの世界で積み上げるには、儂はもう年をとりすぎていたのじゃよ」
( ゚∀゚)「なんだよそれ……全部夢じゃねぇか、子供も孫も、全部。そんなもんのために……」
/ ,' 3「お前もいつか……子供を持てばわかることじゃ」

こほこほと咳き込む荒巻。
その顔は明確な死相が浮かんでいる。



97: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 20:42:18.87 ID:VzEgPm9u0
  
/ ,' 3「もう疲れた。そろそろ眠らせてくれんかの」
(;゚∀゚)「馬鹿野郎クソじじぃ!! まだアリナちゃんのおっぱいみてねーだろーが!!」
/ ,' 3「いいんじゃ。この世界では何も得られず積み上げられなかった。そろそろ向こうで息子達に会わせてくれ」
( ;A;)「くそ、くそ馬鹿が!! 向こうにいったって息子なんぞいねーよ!!」

システムの中にいたNPCは、全て電気回路が生み出した幻影だ。
たとえ天国があったとしても、彼らがそこにいることはない。

/ ,' 3「それでも、いいんじゃ。だから、息子達に会わせてくれ」
( ;A;)「だからいねーって言ってるだろ!! そんな偽もんより、こっちには俺がいるだろうが!!」

ジョルジュが泣きながら荒巻を乱暴に抱き起こす。
荒巻は力なく揺さぶられながら、ジョルジュを見上げた。

( ;A;)「俺はこっちで目が覚めて、ずーっとあんたのことを親父代わりだと思ってた」
( ;A;)「二人で馬鹿なこと言って、無駄口叩いて、そんで酒飲んでよっぱらって女の子追いかけて」
( ;A;)「本物の親父よりもずっと好きだった、あんたのことが……それなのに、あんたは偽もんがいいのかよ……」

涙で喉がつまり、何も言えなくなるジョルジュ。
そんなジョルジュを、荒巻は最期の力で優しく抱きしめた。

/ ,' 3「ふ……こんな、に、口の悪い息子は……いらんわい、馬鹿息子……が」

ぎゅっと、力強く抱きしめる。
そして、それを最期に荒巻の体から、ゆっくりと力が抜けていく。
泣きながら荒巻を抱きしめる息子を残して、荒巻は逝った。



99: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 20:49:01.01 ID:VzEgPm9u0
  
( ゚д゚ )「そうか……荒巻が」

ドームの応接室から脱出してメンバーと合流したミルナは、そこで全ての顛末を聞かされた。
田代砲の話になると、使用不可能になったのなら問題ないと端的に言い切った。
結局、彼が使用するつもりはなかったのだろうが、抑止力くらいには使用しようとしていたのかもしれない。
すべての真相は闇の中だ。

そして。それからが大変だった。
システムの中で眠る、今は夢を見ていない人々を起こして、回復させる作業が来る日も来る日も続く。

始めは数人、そして全てを説明し、作業に参加させる。
泣き始める人が殆どだった。それから怒り出す人、自暴自棄になる人、様々な人が居た。

だが、荒廃した大地を体験し、見た人は、やがてVIPの活動に加わった。
俄然やる気を出す人と、諦めた顔をして参加する人。
それぞれの違いはあったが、皆が何かの目的を得たことは間違いない。
人は生きることに貪欲で、そのためなら本来苦労を厭わない種族なのだ。
それを理解していなかったシステムは、過保護すぎたのかもしれない。

ミカンを食べたければ、爪が黄色くなるのはあたりまえのことなのだ。



101: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 20:55:50.09 ID:VzEgPm9u0
  
システムの中に眠っていた人は、どうやら数千人以上にも上るらしい。
その数が多いと見るか少ないと見るか。
それでも、これだけ荒廃した大地に、これだけの人間が残っていたことは喜ぶべき事なのだろうか。

復旧作業を進める中、ミルナは全ての人の指導者としていつしか働いていた。
全てを始めた責任感からか、それとも元から備わる性格なのか。
ともかく、彼はその生涯がつきるまで、人々を導くつもりのようだ。

ある日、彼はドームの格納庫に全員を集めて演説を始める。
立ち並ぶ人々の中には不安に身を寄せ合う姿が多く見られる。
中には小さな子供を抱いている女性もいる。

そうだ。それでいい。
ミルナはその姿をみて、嬉しく思った。
不安だろう、怖いだろう、現実は。
だが、身を寄せ合い、力を合わせていくことが、生きるということなのだ。

( ゚д゚ )「ようこそ、諸君。現実世界へ」

そして演説が始まる。



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