( ^ω^)ブーンが機械と戦うようです

224: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 19:00:52.66 ID:vafhPJWa0
  
トレーダー港の沖合1qに潜水艦タシーロ号は浮上した。
浮上と同時に、体力のジャマーが散布される。
太陽光をキラキラと反射するジャマーの舞い散る中、三機のエア・スクーターが勢いよく発艦した。
ジョルジュ・荒巻バディは火山口へ。
流石兄弟はトレーダーの誘導とおとりとして。
そしてフサギコ・内藤バディは最も難しい地脈への爆弾設置に向けて。
三機のエア・スクーターを送り出したタシーロ号は再び潜行。深海近くで全ての動力を落として待機する。
次にタシーロ号が浮上するのは1時間30分後。それまで通信は不可能だ。
爆弾の爆発は時限式。作戦開始から1時間後にセットされたそれは、すでにカウントダウンが始まっている。
発見され、解除されることを防ぐため、安全キーは存在しない。
後戻りの出来ない作戦に、三組六名のVIPメンバーは突入した。



226: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 19:11:26.55 ID:vafhPJWa0
  
ミ.,,゚Д゚彡『設置予定場所はここから北北東10q、大きな亀裂が走っている場所だ』

失踪するエア・スクーターを狩りながら、フサギコが指向性通信で内藤に呼びかける。

ミ.,,゚Д゚彡『出来るだけ手早く済ませるぞ。そうすれば、俺たちも誘導と救出にまわれる』
( ^ω^)「了解だお!!」

内藤には爆弾設置の知識など存在しない。
それでもフサギコが説明するのは、そうすることによって意思を同調させる目的からだ。
もっと簡単に言えば、それはフサギコが内藤を信頼した証でもある。

ミ.,,゚Д゚彡『とはいえ、そこまでは磁場異常地帯が続いている地域だ。簡単にはいかない』
( ^ω^)「どういうことかお?」
ミ.,,゚Д゚彡『このエア・スクーターも機械共も、基本はリフターによって浮遊しているのは知っているな』

ばっちり初耳だったが、内藤はあえて頷いた。

ミ.,,゚Д゚彡『……知らないなら知らないと言え』
(;^ω^)「うぐっ」

ばっさり切り捨てられて、内藤は小さく知りませんでしたおと返した。



227: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 19:26:10.79 ID:vafhPJWa0
  
ミ.,,゚Д゚彡『リフターってのは、簡単に言えば鉄板に強い電気を流せば浮遊するって代物だ』
ミ.,,゚Д゚彡『原理はよく知らんが、こいつは周囲に強い磁力を発するものがあると、うまく働かなくなる』

例えば、電気コイルや磁力をもった岩なんかがそうだとフサギコは続けた。磁気嵐はその最たるものだという。
他にも強い電磁波にも弱いらしく、核爆発の際に発揮される強い電磁波は間違いなく機械をやることができるそうだ。

( ^ω^)「じゃあ、そのままこれを爆発させればいいんじゃないのかお?」
ミ.,,゚Д゚彡『やっぱり馬鹿だな、お前は』
(;^ω^)「自覚はしてるから、あんまり言わないで欲しいお……」
ミ.,,゚Д゚彡『まったく。そんなものを地表でそのまま爆発させたら、ここら一体が更地になるだろうが』

核兵器の四大効果。爆風、熱線、放射線、そして電磁波。
いくらトレーダーが放射線に強いとはいえ、全てをやいて吹き散らすその他の効果に耐性があるわけがない。

ミ.,,゚Д゚彡『だからこそ、磁気嵐を発生させて巻き込むって言う回りくどい方法を取るんだよ。おっと!!』

3Dマップに目を落としたフサギコが、急に方向転換を繰り返した。
どうやら磁場異常地帯に入ったらしい。危険地域に飛び込みそうになったのを回避したのだろう。

ミ.,,゚Д゚彡『しっかり掴まっていろ!! 落ちても助けることはできないからな!!』

磁場異常地帯は人間の体にも悪影響を及ぼす。
それ以前に、地表から5m、時速100qほどのエア・スクーターから落ちれば即死は間違いない。
だが、そんなことよりも。

(,,゚Д゚)『しっかり掴まってろよ!! 落ちても助けてる暇はねーぞゴルァ!!』

数日前に聞いたギコの声が思い浮かぶ。ああ、やはりこの人はギコの兄弟なのだと、内藤は改めて強く感じた。



232: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 19:38:30.03 ID:vafhPJWa0
  
一方の、ジョルジュ・荒巻バディは、大火山の麓で、機械に遭遇してしまっていた。
機械は三体。いずれも機動性に優れたサカナ型だ。
装甲は大したことがないためにライフルでも破壊可能だが、流線型の装甲は弾丸をそらしてしまう。

/ ,' 3『まったく、おまえさんの頼みを聞いてやったらこのざまじゃ』
(#゚∀゚)『だーかーら、ジェシカちゃんを探しに行ったのは関係ないだろ!!』

確かに、機械に遭遇したのはこの付近にたどり着いてからなので、港に立ち寄ったことは問題ない。
それに――

(#゚∀゚)『それにあんただってアリナちゃん探してただろーがよ!?』
/ ,' 3『まあ、アリナちゃんの美しい足なら機械共に掴まることはないだろうが、心配でのぉ』

アリナというのは荒巻がご執心のウサギ種の娘だ。
若干ウサギに近い風貌と、それを裏切らない脚力は折り紙付。
なんといっても、言い寄る荒巻は初日に蹴られて5mほど水平に吹っ飛んでいる経験を持つ。

/ ,' 3『まあ、どちらの責任かはとりあえず追及すまいて』
( ゚∀゚)『そう言いながらも、きっちりこっちの責任にしようとしてね? まあいいや、作戦は?』

マスクをつけたまま怒鳴ったせいでどっと疲れたジョルジュは、それでも休まずに回避運動を行っている。
VIPメンバー随一のエア・スクーター乗り。バーチャルに居た頃は暴走族の頭をやっていたのは伊達ではない。



236: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 19:51:46.26 ID:vafhPJWa0
  
/ ,' 3『3Dマップによれば、この先に磁場異常地帯がある。そこにつっこんでまくしかあるまい』
( ゚∀゚)『……ついに惚けたか、じーさん』
/ ,' 3『返す返すも失礼な奴じゃな。まだ惚けるにははやいわい。ほれ、下も元気に……』
(#゚∀゚)『その汚らしいもんを押しつけたら、問答無用で放り出すぞ』
/ ,' 3『むぅ……冗談の通じないやつじゃの』

ジョルジュは若干の貞操の危機を感じながら話を促すと、荒巻は次の指示をジョルジュに与えた。

1 最高速まで引っ張れ
2 最高速のまま磁場異常地帯につっこめ
3 後は風に乗れ

(#゚∀゚)『だから、それのどこが作戦なんだよ!!』
/ ,' 3『若いもんは短気じゃのう。これだから困る』
( ゚∀゚)『さっきは自分だってまだ若いとか言ってた癖によぉ……』
/ ,' 3『そんな昔のことは忘れたわい。で、乗るのか反るのかどっちじゃ?』

ずっとマスクを着けて話すのは疲れるんじゃよ、とぼやく荒巻。
その飄々とした態度は、ジョルジュの中で信頼に足るものだと判断された。

( ゚∀゚)『仕方ねぇ……じゃあいっちょ、機械相手にチキンレースと行くか!!』

スロットルを限界まで上げて、エア・スクーターを最高速度まであげる。
過剰供給された電力つくる小さな雷の飛沫を散らしながら、エア・スクーターは磁場異常地帯にまっすぐにつっこんでいった。



238: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 20:07:11.03 ID:vafhPJWa0
  
(´<_` )「兄者」
( ´_ゝ`)「なんだ弟者」
(´<_` )「とりあえず作戦通りだな」
( ´_ゝ`)「ああ、作戦通りだ」
(´<_` )「うまくいったな」
( ´_ゝ`)「いきすぎるぐらいにな」

他のバディから数q離れた高原地帯。
磁場異常地帯や磁気嵐の発生場所に避難するトレーダー族を誘導し、時には襲いかかる機械を引きつけながら。
流石兄弟は作戦実行ポイントに早々と到着しようとしていた。
爆弾の起爆時間まで、残り30分はある。
いつも綿密に計画を立てて、二人の連携で任務を整斉と遂行してきた二人がどうしたことか?
その答えはエア・スクーターの背後を振り返ればすぐに判明する。

(;´_ゝ`)(´<_`;)「ところでこれ、どうしようか」

表情がよく見えるようにとマスクを外した状態で、二人は顔を見合わせた。
これというのは、流石兄弟を追尾する大量の機械群のことだ。
その数が50機を超えていることは間違いない。
途中から数えるのが困難になって、数えるのをやめたのが確か50機だった。
非難が完全に完了したのか、機械達はめぼしい獲物を発見することが出来ずに流石兄弟をひたすら追跡してくる。
人と違い声をあげることもなく静かに追跡する機械と高原を疾走するエア・スクーター。
周囲の風景と相まって、その異常な光景はいっそ平和なドライブ風景にすら見える。
だが、いずれバッテリーが無くなることを考えれば、いつまでもこのままではいられまい。
ただでさえ磁気嵐に巻き込まれれば自分たちの命は吹き散らされてしまうのだから。



240: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 20:17:35.58 ID:vafhPJWa0
  
( ´_ゝ`)「おぅけい、ときに落ち着け兄者」
(´<_` )「兄者、それは俺のセリフだ。ときに落ち着け」
( ´_ゝ`)「そうは言っても、どうする」
(´<_` )「そうだな……やはりここは誰かが生け贄になるとか」
( ´_ゝ`)「そんな……ダメだ弟者!! 自己犠牲なんて!!」
(´<_` )「さりげなく俺を生け贄に確定する辺り、流石だな兄者」

テンポ良く言い合いながらも、二人は既に覚悟を決めていた。
バッテリーとジャマーの続く限り。出来れば磁気嵐が発生するまで、ここで囮を引き受ける。
打つ手がないのなら、せめて最善の効果を。

( ´_ゝ`)「まったく。不出来な弟を持つと最後まで苦労させられるな」
(´<_` )「その言葉、そっくりそのまま兄者にかえすとしよう」
( ´_ゝ`)「口の悪さはだれに似たのだろうな」
(´<_` )「おそらく生まれたときから隣にいる誰かさんだろう」
( ´_ゝ`)「まあ、それでも」
(´<_` )「やっぱり」
( ´_ゝ`)(´<_` )「「流石だよな俺ら」」

――起爆時間まで、残り20分



243: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 20:31:11.84 ID:vafhPJWa0
  
ミ.,,゚Д゚彡『くそ、思ったよりも時間がかかったか』

フサギコ・内藤バディが目標地点に到着した時、カウントは既に20分を切っていた。
もうギリギリのタイミングだ。すぐにでも設置をすませて、この場を離れなければならない。

ミ.,,゚Д゚彡『よし、設置するぞ!! 内藤手伝え!!』
( ^ω^)「了解したお!!」

エア・スクーターの後部に固定していた爆弾を急いで取り外す。

ミ.,,゚Д゚彡『よぉーし!! 設置!! せぇーのぉーでっ!!』
( ^ω^)「ぃよいしょお!!」

目の前に広がる幅10mほどの亀裂。
その中に、核爆弾を無造作に投げ込む。

ミ.,,゚Д゚彡『設置完了!!』
(:^ω^)「核爆弾を放り込んで設置完了って、無茶苦茶だお……」

途中で爆発することはないにしろ、損壊する危険性などはないのだろうか。
もっとも、あのカプセルは大昔の大戦時に航空機からばらまかれ、地中に埋まり込むことを目的としたものらしいのだが。
とにかく、これで設置は完了した。あとは磁気嵐から逃れるだけだ。

急いでその場を離れようとしたフサギコと内藤。その背中に、鋭い声がかかる。

ξ゚听)ξ「内藤!!」



245: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 20:47:11.05 ID:vafhPJWa0
  
時間は少しさかのぼって、起爆まで残り30分。北東部のジョルジュ・荒巻バディ。

( ゚∀゚)『つっこむぞ!! カウント3!!』

目の前にあるのは、幅100mを越える火山裾野の磁場異常地帯。

( ゚∀゚)『2!! 1!! ゼロ!!』

磁場異常地帯に、エア・スクーターが。それに続いて、追跡してきたサカナ型3機もつっこんだ。
途端にリフターから迸っていた雷の飛沫が好き放題に飛び散り、浮力がみるみる失われていく。
機械の方も同じく、浮力を失った流線型の体は投擲された槍のように放物線を描き始めた。

(;゚∀゚)『う、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

ダメだ。出来るだけ上昇しながらつっこんだが、やはり飛距離は足りないようだ。
ぐんぐんと近づく地面を見ながらジョルジュは考えた。
火口に設置する予定の爆弾も、ここまで近づけば少しは効果があるだろう。
それにしても、あの地面は痛そうだ。あっちの世界ではバイクでよく転けたが、あれの何倍ぐらいだろうか。
ああ、やっぱりジェシカちゃんの写真もってこなくてよかった。こんな目に合わせられないもんな。
地面が近づくにつれて、磁場の影響が強くなっていく。
それにともなって、頭の中に縦波が生まれたように意識がどんどんと混濁し始めた。
くそ、こんなところでじじいと心中とはな。死ぬときはジェシカちゃんの胸の中って決めてたのによ……
子供の頃から負けまいと突っ張っていたジョルジュ。彼の人生は、常に身にまとわりつく自分の存在への不安感との戦いだった。
刺激的な事に挑戦し、空虚なアイデンティティを埋めようと戦い続けてきた彼。
だが、ついにその鋼の精神も、生存への炎を消そうとしたまさにその時。

/ ,' 3『ぽちっとな』

ふざけているのか真面目なのか。相変わらずよく判らないその声が、ジョルジュの意識を覚醒させた。



247: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 20:56:55.00 ID:vafhPJWa0
  
――ズバンッ!!

衝撃と共に、エア・スクーターの後部が破裂した。
いや、正確には装甲板を弾き飛ばして何かが飛び出してきたのだ。
平たく風を切るように設計されたそれは――

( ゚∀゚)『つば……さ?』

霞む目を必死にこじ開けて、ジョルジュはその正体を確認した。
翼だ。飛行機についているような可変翼が、エア・スクーターの後部から生えている。
同時に、落下するばかりだったエア・スクーターが落下を停止。滑るように滑空を始める。
その背後で、ついに地面に接触した3機の機械が爆発する。

/ ,' 3『もいっちょ、ぽちっとな』

――ズドゥンッ!!

先ほどの衝撃など比べものにならないほどの衝撃と音がジョルジュの体を貫いた。
同時に暴力的な加速、加速、加速。
一瞬で高度を30mほど稼いで、磁場異常地帯を突破。
その推力を稼いだのは

( ゚∀゚)『ジェットだあぁぁぁあ!?』

エア・スクーターの最下部が内から破壊され、その中からジェットノズルが顔を出している。
ごうごうと炎を吹き出すそれが、爆発的な推進力の答えだった。



249: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 21:08:13.33 ID:vafhPJWa0
  
/ ,' 3『いやー、絶妙のタイミングじゃったのう』
(;゚∀゚)『……』
/ ,' 3『こんなこともあろうかと、こっそり試作品のジェット装置を組み込んでおいてよかったわい』
(;゚∀゚)『いや、ちょっと待てよ』
/ ,' 3『よーし、あと数秒でジェット燃料は切れてしまうからの、操縦はしっかりな』
(#゚∀゚)『だからちょっと待てっつってんだろーがぁぁぁぁ!!』
/ ,' 3『おお、切れよった切れよった』

エア・スクーターのジェット推進が停止し、通常の速度がやっと戻ってきた。
怖い怖いとおどけて答える荒巻に、ジョルジュはショックから回復した反動で怒鳴りつける。

(#゚∀゚)『じじい!! てめぇ本当に正しくクソじじいか!!』
/ ,' 3『もはや日本語ですらないが、骨の髄まで失礼なやつじゃのおまえさんは』
(#゚∀゚)『ばっ……かやろう!! 俺の愛車に変なもんつけやがって!!』
/ ,' 3『変なもんとは失礼な。れっきとしたジェット推進の試作品じゃよ』
(#゚∀゚)『うるせぇ!! だったらこっそりつけるな!! 事前にちゃんと言えよ!!』
/ ,' 3『最初に教えたなら、お前さん面白がってすぐにつかっちまうじゃろうが』

10秒もジェットは持たないから貴重品なんじゃよ。そう言って荒巻はのほほんと答える。
それにしたって、あのタイミングは明らかに狙っていたものだ。
わざわざギリギリのラインまでひっぱって、ジョルジュの反応を楽しんでいたに違いない。
頼りにはなるが、そういった性根は信じられないほどねじ曲がっているのが荒巻という人間だ。



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