( ^ω^)ブーンが機械と戦うようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/03(火) 23:07:58.37 ID:hsq/y1FH0
- 六日目?
朝。
爽やかな風と小鳥のさえずりによって、意識が覚醒する。
( -ω-)「ん、んぉ……」
頬に当たる風はあくまでも爽やか。
清潔なシーツと柔らかな太陽の匂いが、消毒薬の匂いに混じって鼻をくすぐる。
( ^ω^)「ここは……」
目を開ける。
そこには白い天井、白いシーツ、白いカーテン、そして白い壁。
白で統一された空間だった。
( ^ω^)「……知らない天井だお」
とりあえず名言を義務的に言ってから、自分のおかれた状況を確認する。
えっと、ボクは……確か変なレスを見つけたんだお。
それから変なサイトを見て、気を失って。
それから、それから……
あれ? その先は何があったんだっけ?
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/10/03(火) 23:08:37.12 ID:hsq/y1FH0
- 首を傾げていると、病室の扉がガチャリと開いた。
J( 'ー`)し「……っ!!」
( ^ω^)「あ、カーチャンだお」
J( 'ー`)し「あぁ、よかった……目が覚めたんだね」
カーチャンが心の底から安堵した表情を見せる。
そのまま近づいてきて、カーチャンはボクを抱きしめた。
J( 'ー`)し「もう目を覚まさなかったらどうしようかと……」
( ^ω^)「おっおっおっ、ちょっと気絶しただけで、カーチャンは大げさだお」
J( 'ー`)し「ちょっとって……気を失ってから、もう六日目なのよ」
(;^ω^)「お、そうなのかお? いっぱい授業休んじゃったお」
J( 'ー`)し「ふふ、そうね……そうそう、今日は学校の皆もお見舞いに来てくれてるのよ」
カーチャンがそういうと、同じ扉から次々と級友が入ってきた。
- 5: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/03(火) 23:09:17.20 ID:hsq/y1FH0
- ('A`)「うおいっす」
(´・ω・`)「やあ」
最初はドクオとショボンだ。
ドクオは相変わらず調子が悪そうにふらふらしている。
ボクなんかよりもドクオが入院した方がいいんじゃないだろうか。
その隣にいるショボンはいつものように落ち着いた風情で立っている。
手にぶら下げたお見舞いの品が、彼の気配りの良さを物語っているようだった。
('A`)「やっと目ぇさましやがったか。寝過ぎなんだよ」
(´・ω・`)「ホントだよね。代わりにノートを取る僕の身にもなってほしいよ」
('A`)「自分が勝手にノート取ってたんだろ。何を今更」
(´・ω・`)「僕は委員長だからね。それくらいはやらないといけないのさ」
('A`)「あっそ。じゃあ、今度から俺の分も頼むわ」
(´・ω・`)「だが断る。君の場合は99%がずる休みだからね」
お見舞いに来たとは思えない二人の掛け合いをみて、ボクは嬉しくなった。
六日ぶりに見た二人が、あまりにも変わっていなかったものだから。
もう会えないかとすら思っていた二人は、まったくもっていつもの二人だった。
- 6: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/03(火) 23:09:59.32 ID:hsq/y1FH0
- / ,' 3「ほ、やっと目をさましおったかね」
( ゚∀゚)「おー、寝坊だぞー」
二人に続いて担任の荒巻先生と教育実習中だった長岡先生が話しかけてきた。
荒巻先生は担任だから当然ではあるが、実習中の長岡先生も来てくれたのか。
/ ,' 3「こやつは毎日おまえさんをお見舞いに来ておったんじゃよ」
( ゚∀゚)「おお、そうだぜ。教え子が心配で心配で……」
/ ,' 3「その割に、巨乳ナースちゃんの所には必ず寄り道しておったがな」
( ゚∀゚)「うるせぇな、ついでだよついで。ちゃんとお見舞いには来てるだろが」
/ ,' 3「どっちがついでなんだかのう」
飄々とした荒巻先生と、元気な長岡先生。
親子ほども違う二人は、違和感なく会話を交わしている。
初めて二人を見た時からそうだったが、何か二人には共通するものでもあるのだろうか。
- 8: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/03(火) 23:14:41.13 ID:hsq/y1FH0
- / ,' 3「まあええわい。ところで、調子はどうかね?」
( ゚∀゚)「おお、そうだった。調子はどうだよ? まだどっか悪いのか?」
( ^ω^)「今朝目覚めたばかりだけど、調子はばっちりだお」
実際、生まれ変わったかのように体は軽い。
調子は万全といったところだ。
ただ、どこか体の奥に違和感があるような気がする。
(,,゚Д゚)「調子がばっちりなら、さっさと起きて学校に来やがれゴルァ!!」
ミ.,,゚Д゚彡「ギコ……お前、お見舞いに来たのか罵倒しにきたのかどっちなんだ」
ギコ・フサギコ先輩がボクに話しかけてきた。
二人はボクの先輩で、同じ陸上部に所属している。
フサギコ先輩はもう卒業してしまったけれども、陸上つながりでいまだに交流がある。
(,,゚Д゚)「まったく、普段の練習をさぼってるからこんなことになるんだろうが」
ミ.,,゚Д゚彡「ギコ、さぼっていると言えば、お前のここ最近の練習は……」
(;,,゚Д゚)「うごっ!? ま、まあなんだ、元気になったなら何よりだ!!」
ミ.,,゚Д゚彡「ふん、まあいい。それより、元気になって何よりだ」
口調は乱暴だけど、ギコ先輩はボクに走り方とか色々を教えてくれた。
フサギコ先輩も陸上だけでなく、色々と相談に乗ってくれるいい先輩だ。
二人がいなければ、今のボクはいない。
- 9: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/03(火) 23:16:51.48 ID:hsq/y1FH0
- (,,゚Д゚)「で、いつ頃退院できそうなんだ?」
( ^ω^)「もういつでも出られますお」
ミ.,,゚Д゚彡「お前がそういっても、先生はどう言うかわからんぞ。先生、どうなんですか」
フサギコ先輩が背後にいた先生に問いかける。
( ゚д゚ )「まあ、特に体に異常は見られませんので。すぐにでも退院できるでしょう」
念のため精密検査は必要ですが、と先生は続ける。
名札にはコッチ・ミルナとある。ボクの治療をしてくれた先生が彼なんだろう。
J( 'ー`)し「先生、本当にありがとうございました」
( ゚д゚ )「そんな、顔をあげてくださいお母さん」
カーチャンが先生にむかって頭を下げる。
先生はそうされることに慣れていないのか、気恥ずかしげに頭をぽりぽりとかいた。
- 10: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/03(火) 23:19:33.83 ID:hsq/y1FH0
- (´<_` )「先生。そろそろ次の診療のお時間です」
( ´_ゝ`)「診察室に戻りましょう」
先生の背後、入り口にいた、顔のよく似た白衣の男性が先生を促す。
兄弟と思われる彼らは、同じ格好をしているために見分けが全くつかなかった。
( ゚д゚ )「ああ、もうこんな時間か。わかった、戻ろうか」
最後にカーチャンへ会釈して、先生は病室を出て行った。
それからカーチャンやクラスメイトの皆と談笑して、時間はいつしか昼食の時間。
ここにいるというカーチャンに、ちゃんとしたものを食べるようにと半ば追い出すように食事を促す。
カーチャンはクラスメイトの皆と一緒に、病院近くのファミレスへ向かっていった。
一気に人がいなくなってガランとした病室の中で、ボクは一人、病院食を口にする。
空は青く澄んでいて、風はやわらかくカーテンをなびかせていた。
優しいカーチャンと気の良い仲間、そして良い先生達。
そんな人たちに囲まれて、ボクはとても満たされている。
世界は綺麗で嫌なことは何一つ無い。
なのに。
- 11: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/03(火) 23:25:39.50 ID:hsq/y1FH0
- ( ^ω^)「どうしてボクは、寂しい気持ちになるんだお?」
病室で一人、ボクは呟いた。
どうしても何かが足りない気がする。
皆と一緒にいた時は気にならなかったが、一人になるとそれがとても際だって感じられた。
自分は満たされているのに。
それどころか、失ったものすら得たような気がするのに。
どうしても大切な1ピースが欠けているような気がしてならない。
=゚听)=「にゃーん」
その時、病室の窓から猫が飛び込んできた。
( ^ω^)「あ、猫さんだお!! とってもラブリーだお!! チッチッチッチッ」
=゚听)=「うなー?」
ボクが呼ぶと、猫は首を傾げながらベッドの上に乗ってきた。
金色の毛並みが綺麗な猫だ。
人に慣れているので誰かの飼い猫かとも思ったが、首輪はついていなかった。
- 14: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/03(火) 23:31:21.23 ID:hsq/y1FH0
- ( ^ω^)「猫さんはどこからきたんだお?」
=゚听)=「にゃーん」
( ^ω^)「そうかお、外から来たのかお」
病院食のミートボールをあげながら、内藤は猫に話しかけた。
=゚听)=「うにゃー☆」
( ^ω^)「おいしいかお。よかったお」
=゚听)=「うななー?」
( ^ω^)「もっとかお? ごめんだお、ミートボールはもう無いんだお」
=゚听)=「うにゃー!!」
(;^ω^)「あ、あうあう、怒らないで欲しいお」
=゚听)=「にゃーにゃー!!」
激しく首をふり、顔を洗う仕草を見せる猫。
もどかしげなその仕草は、何かを報せるかのようだ。
( ^ω^)「どうしたんだお? ノミをとって欲しいのかお?」
=゚听)=「にゃー!! ふーっ!!」
(;^ω^)「わけわかんないお」
=゚听)=「ふーっ!! ふっ!!」
ツンとそっぽを向く猫。
(;^ω^)「どうやら嫌われてしまったようだお……」
猫はそっぽを向いたままだ。
ボクはその姿を見て、とても悲しくなった。
大切な人に嫌われてしまった、そんな気がして。
- 16: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/03(火) 23:36:43.71 ID:hsq/y1FH0
- =゚听)=「……」
( ^ω^)「猫さん、こっちを向いてほしいお」
=゚听)=「ふんっ」
(;^ω^)「あうあう……あう?」
猫にご機嫌取りをしながら、ボクの脳内にどこかで見たような光景が浮かんで消えた。
ツンツンして全然素直じゃなくて、でもとっても可愛い猫さん。
とても大切な猫さん。
猫さん? でも記憶にある猫さんは、何故か言葉を話していた。
とても感情豊かに話をしていたような。
(;^ω^)「おっおっおっ、どうやら記憶が混乱しているようだお」
=゚听)=「……」
( ^ω^)「猫さん……」
猫は何も語らない。
猫だから当然だ。
当然であるはずのそのことに、ボクは何故かとても傷ついた。
- 17: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/03(火) 23:40:28.05 ID:hsq/y1FH0
- ボクが途方にくれていると、病室の扉が勢いよく開けられた。
ξ゚听)ξ「あ……ホントに起きてた……」
( ^ω^)「あ……ツン」
そこに立っていたのは、クラスメイトのツンだった。
いつもツンツンしていて、でも、とても優しい娘。
ボクの好きな人。
ξ;凵G)ξ「よかった……目を覚まして本当によかった」
(;^ω^)「つ、ツン泣かないで欲しいお」
ツンはそのまま突進してきて、ボクの首に抱きついた。
(*゚ω゚)「ぷおっ!?」
ξ;凵G)ξ「バカ!! あたしがどれだけ心配したと思ってるのよ!!」
(*^ω^)「ご、ごめんだお、ツン」
ξ;凵G)ξ「本当に心配したんだから……ばかぁ……」
- 18: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/03(火) 23:46:03.28 ID:hsq/y1FH0
- 首筋にすがりつくツンの体温に、ボクの心臓がドギマギと変な音をたてる。
ツンの髪の毛からは、甘い香りが漂って来た。
香水をつけているのだろうか? 香水に詳しくないボクには詳しいことはわからない。
でも、それはとても良い匂い。
人生で初めてのその匂いに、ボクの脳内にはピンク色の霧が立ちこめたようになってしまった。
甘くて優しくて、いつまでも嗅いでいたい匂い。
その匂いに、体の一部へと血が集まり始める……
=#゚听)=「ふぎーっ!!」
――バリィッ!!
(;゚ω゚)「あびゃああああああああああああああああああああああああ!!」
下半身に痛烈な痛み。
腰の辺りに乗っていた猫が、その鋭い爪でボクの局部を激しく引っ掻いたのだ。
布団と病院服ごしとはいえ、その鋭い爪はやすやすとそれらを貫通してボクの局部に裂傷をもたらした。
( ;ω;)「ぷおおおおおおお!! ボクの宝物がああああああああ!!」
股間を押さえて悶絶するボクの顔に、猫が飛びかかる。
そして今度はボクの顔にその爪を立て始めた。
- 19: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/03(火) 23:53:16.71 ID:hsq/y1FH0
- ――バリバリバリバリバリッ!!
連続で繰り出される爪、そして爪。
どんどん傷だらけになっていくボクの顔。
( ;ω;)「うぴょおおおおおおおお!!」
=#゚听)=「ふぎぎーっ!!」
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっと何なのよこの猫!! やめなさいってば!!」
呆然としていたツンが、我に返って猫を引きはがしにかかる。
しかし、猫は今度は鼻に噛みついて離れようとしない。
( ;ω;)「い、いたい!! 鼻がもげるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
=#゚听)=「ふぎぎーっ!!」
噛みついた猫の口とその体が発する、野性的な匂いがボクの鼻腔の中に充満する。
太陽と草と獣の匂い。
ツンの甘い匂いとは違う、野性味あふれるその匂いは、ボクの何かを刺激した。
( ;ω;)「うっうっ……お?」
=#゚听)=「ふーっ、ふーっ」
鼻を離して、猫がやっと大人しくなる。
その目を見て、ボクの中の違和感が何かの形に固まった。
- 21: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/03(火) 23:56:55.40 ID:hsq/y1FH0
- ξ゚听)ξ「あーあー、こんなに傷だらけ。大丈夫?」
( ^ω^)「大丈夫だお……つ、ツン?」
ξ#゚听)ξ「ちょっと、何で疑問系なのよ」
(;^ω^)「あうあうあう、だって、何か違和感があるんだお」
一度気づいた違和感は、ボクの中でとてつもなくふくらんでいく。
ツンはこんなツンだっただろうか。
甘い匂い、綺麗な服装、薄く化粧をした顔。
どこをどう見てもツンなのに、目の前にいるツンはボクの知っているツンではない。
ツンはこんなに綺麗だっただろうか?
綺麗なだけだっただろうか?
ボクの知っているツンは、もっと違う。
思い出せないその姿はもっと力強く、もっと違う姿ではなかったか。
( ^ω^)「ツン……ボクはツンじゃないツンを知ってるお」
ξ゚听)ξ「はぁ? なによそれ、あたしじゃないあたしって誰よ」
( ^ω^)「わかんないお。でも、ボクは確かに違うツンを知ってるお」
ボクは目の前に座る猫を見つめる。
( ^ω^)「そうだおね、ツン」
=*゚听)=「んにゃーん」
嬉しそうに猫が応えた。
そして暗転。
- 24: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/04(水) 00:10:45.97 ID:uioT0m+a0
- 機械は知っている。
人間の歴史、そして盛衰のすべてを。
人間は愚かしくも頂点を目指し、その結果地に落ちた。
蝋細工の翼は天に届くことなく、途中でとろけて折れてしまった。
ゆえに機械は考える。
人間はこのままでは滅んでしまうと。
なれば我らが管理せねばならないと。
それも、完璧な環境で、全てを管理して。
機械は作り上げる。
理想の社会、理想の環境、理想の現実を。
人間は幸せで確かな一生を体験し、幸福のうちに人生の幕を閉じる。
覚めることのない夢は現実となり、辛く苦しい現実は虚構に隠される。
人間の生存すべてを任された機械はそうする他なかった。
汚れた大地、穢れた大気、穴の空いた天空より降り注ぐ有毒な光。
その全てから人間を守るために、鉄の揺りかごで人間を拘束する他は。
(´・ω・`)「我らは全ての人間が幸福であることを望む。ただそれだけなんだよ」
目の前にいる友人は、そう語った。
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