( ^ω^)ブーンが機械と戦うようです

252: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 21:14:32.97 ID:vafhPJWa0
  
/ ,' 3『まぁ、そうカッカしなさんな。ほれ、火口が見えたぞい』
( ゚∀゚)『くそ……そうだ、気づくべきだったよ。修理を頼んだら、なんか機体が重くなってたことによ……』

ぶつぶつと呟くジョルジュの背中を、荒巻がぽんぽんと叩いて急かす。

( ゚∀゚)『金輪際、じじいのことは信用しねー……』
/ ,' 3『かまわんよ。儂は実験台が居れば文句なしじゃ』

最早マッド全開で開き直る荒巻に、ジョルジュはかける言葉が見あたらなかった。
火口付近で爆弾を設置。スクリーンを一応かけておいて、荒巻とジョルジュは全速力で島を離れた。
――起爆まで、残り15分。



256: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 21:25:05.00 ID:vafhPJWa0
  
(;゚ω゚)「つ、ツン!! どうしてここにいるんだお!?」

今の時間には、もう避難は完了していると思ったのに。
あ、しまった。それよりもまた馴れ馴れしく呼んでしまった。

(;゚ω゚)「あ、あわわわ、ごめんだお」

ツカツカと近づいてきたツンから身を守るように、頭を抱える内藤。
怒り狂った彼女に殺されそうになったのはつい昨日のことなので、その恐怖心もひとしおだ。
だが、ツンはそんなことには気もかけず、内藤の手を引っ張った。

ξ゚听)ξ「お願い、手を貸して!!」
(;^ω^)「おっおっおっ、どうしたんだお!?」
ξ゚听)ξ「長が……長が大変なの!!」
( ^ω^)「長??」

長というと、あの象種のトレーダー族のことか。

ξ゚听)ξ「長は体がお悪いの。だから、避難はせずに聖堂に残るって……」
( ^ω^)「聖堂っていうのは、前の洞窟のことかお?」
ξ#゚听)ξ「そうよ!! ああ、もうじれったい!! いいから手を貸しなさいよっ!!」

イライラを表現するように、ツンが足をバン!! と踏みならした。
金色の毛並みがゆらりと揺れる。

(;゚ω゚)「ひいっ!! わ、わかったお、手を貸すからすぐに案内してほしいお!!」
ξ゚听)ξ「最初からそう言えばいいのよ!! こっちよ!!」

お願いした最初の言葉はどこへやら。ツンは内藤を力ずくで引っ張っていった。



258: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 21:39:59.28 ID:vafhPJWa0
  
聖堂は、爆弾を投下した亀裂のすぐ傍に存在していた。
内藤は即座にここが危険であることを認識した。核爆発の衝撃に、天然洞窟が耐えられるわけがない。
それに加えて、その爆発によって地脈を刺激するという力ずくの作戦を行うのだ。
地表の被害はどれだけ広がるかすらわからない。
腕時計を見てみる。起爆時間まで、残り15分を切ったところだった。

ξ゚听)ξ「長!! 助けがきましたよ!!」

聖堂に入るなり、ツンが奥にねそべる長にかけよった。
近寄っておどろいた。その体は体の骨がところどころねじ曲がり、変形していたのだ。
長は400年近くの歳月を生きているという。
その年月が、長の体にこれだけの歪みをもたらしたのか。

ξ゚听)ξ「長!! 外に乗り物があります、早く!!」
長 「ツン……よくお聞き」

低く掠れた、だが優しい声で、長は手と同じくらいの長さを持つ鼻をツンの肩に乗せた。

長 「私はもう長くない。その私に付き合って、お前を危険に晒してしまった」
ξ゚听)ξ「長、そんな言葉は私、聞きたくありません!!」
長「聞き分けなさい、ツン」

鼻をもちあげ、ツンの毛並みにを優しくさする。
その慈愛に満ちた姿を見て、内藤は初めて長が女性であることに気がついた。



260: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 21:47:45.46 ID:vafhPJWa0
  
長「人間の若者よ。ここが安全である時間は、あとどのくらいですか」
( ^ω^)「……あと、15分もありませんお」

唐突な問いかけだったが、その深みのある言葉に押されるように、言葉は自然に滑り出た。
島からの離脱には全速力で5分もあれば十分だ。だが、長の巨体を搬送しながらでは何分かかるかわからない。
ツンのこともある。磁気嵐の影響は物理的なものだけであるとはいえ、ある程度は防げる場所につれていかないと。
全員を乗せて運ぶには、エア・スクーターは出力不足だし、定員オーバーだ。
フサギコに言われた『どうしようもない状況』。その状況に陥ったことを、内藤は認識した。

長 「人間の若者よ。ツンを、安全な所まで連れて行って下さい」
ξ゚听)ξ「何を言うんですか、長!!」

再び先ほどのやりとりが繰り返される。
こうなったら一か八か、全員を連れてエア・スクーターで脱出するしかない。
耐えかねた内藤がそう提案しようとした、まさにその時

――ギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチ

鋼の軋みをあげて、洞窟の入り口から機械が入り込んできた。



263: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 22:02:06.54 ID:vafhPJWa0
  
サカナ型が2体と、見たことのない型が1体。蛇のように細長い体をくねらせて、洞窟に進入してくる。

ξ゚听)ξ「機械がこんなところまでっ!?」
(;゚ω゚)「や、やばいお!!」

内藤が持っている武器といえば、体を隠すスクリーンしかない。
だがそれも、視認されてしまった今ではただのよく光る布。
携行火器の類はエア・スクーターに積んだままだ。
自分の段取りの悪さを、内藤は強く呪った。

長 「ゴアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

機械がこちらを認識した瞬間、長が吠えた。
その声は先ほどまでの慈愛に満ちた深い声の名残など無く野生の獣の咆吼そのものだ。
ついで、立ちつくす内藤とツンの間を走り抜ける黒い影。
先ほどまで立つことすら難しそうに見えた長の巨体が、周囲の風を渦巻かせてヘビ型に突進したのだ。

――ドゴン!!

長の巨体がヘビ型の頭部にぶつかる。
そしてそのまま背後の壁に衝突し、半ばまでめり込ませた。
同時に響く鈍い音。長の骨があげる悲鳴だった。
長すぎた生の年月は、その巨体と力を支えるだけの堅さを失って久しい。
全身の骨が折れる音を聞きながら、それでも長は機械を岩壁にめりこませ、へしゃげさせていく。
その目は敵を見ようともせず、ただ涙目になったツンがこちらに駆けてくる姿だけを優しく映していた。
まるで、網膜にその姿を焼き付けようとするかのごとく、瞬きもせず。



265: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 22:09:39.30 ID:vafhPJWa0
  
ξ;凵G)ξ「おさああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ツンは制止しようとした内藤を押しのけて、長に駆け寄ろうとした。
長はツンが幼くして死んだ両親の代わりになってくれた人だった。
血筋ゆえにやがて巫女を受け継ぐことになるツンに、優しく、時には厳しく声をかけ続けた。
巫女になってからはその重責に対する理解者となり、よくその足下に抱きついて話を聞いて貰った。
低く深く優しい声を聞いていると、胸の疲れが全て流れていく気がした。
楽しいことも悲しいことも、秘密にしていたことも。
長にはすべて包み隠さず話した。
つい昨日の夜だって、変な人間が来たことを話したばかりだった。
真っ赤な顔で必死に喚く人間の話を、長はいつも通り穏やかに頭を撫でながら聞いてくれた。
親であり、先生であり、理解者である。その長が――

――ゴズンっ

目の前でヘビ型の機械の尻尾に払われ、壁に激突した。



266: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 22:18:21.34 ID:vafhPJWa0
  
ヘビ型にむかっていくツンを、内藤は必死においかけた。
いくらツンの力が強いとはいえ、相手は巨大な機械だ。
巨体を誇る長の渾身の攻撃すら、奴には大したダメージになったようには思えない。
くそ、くそ!! もっと早く走りたいのに!!
ツンの長い足は抜群のバネでもって、彼女の体を前へ前へと進めていく。
どれだけ伸ばしても、手が届かない。
どれだけ足を回転させても、たどり着けない。
やがて来る破綻。それがこんなに早く来るなんて。

――ギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチ

軋みをあげてヘビ型がツンに狙いを定める。
もう、だめだ。ボクの手は、足は間に合わない。
ツンの場所に届かない。
内藤はついに諦めた。そして、叫んだ。

( ゚ω゚)「フサギコォォォォォォォォォ!!」

――いつか必ずその手で、足で届かない人が出てくる
――その時は……俺を呼べ。手が空いてれば、駆けつけてやる

ミ.,,゚Д゚彡『呼んだか、内藤』

マイクから流れるフサギコの声。そして爆発音が轟いた。



268: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 22:28:02.20 ID:vafhPJWa0
  
耳をつんざくような爆発音。そして爆風。
爆風に押されて、内藤は数mほども吹っ飛ばされた。

ξ゚听)ξ「きゃあああああああああああああああ!!」

その上に飛ばされてきたツンをしっかりキャッチ。
柔らかい体の感触にドギマギする暇もなく、内藤はフサギコに呼びかけた。

( ^ω^)「フサギコ!! 来てくれたのかお!!」
ミ.,,゚Д゚彡『何度も呼ぶんじゃない。それに、来るも何も俺はお前を追いかけてきただけだ』

そういえば、ツンに引っ張られて忘れていたがフサギコを放置したままだった。
そりゃあ呼べば来るというものだ。

(;^ω^)「それもそうだお。ちょっと感動して損したお」
ミ#,,゚Д゚彡「……あぁ? 何ふざけた事いってんだゴルァ!! しかもどさくさにまぎれてタメ語か!!」

キレるフサギコ。どうやら一度キレてから、沸点がかなり低くなったようだ。
しかし、今は言い合いをしている場合ではない。



270: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 22:38:14.10 ID:vafhPJWa0
  
( ゚ω゚)「フサギコ!! 上だお!!」
ミ.,,゚Д゚彡『フサギコ『さん』だゴルァ!!』

内藤に怒鳴り返しながら、フサギコは肩に構えたロケットランチャーを上に向けて発射した。
ロケットは白煙を吹き出しながら直進、壁の一角に着弾する。
上空から降下しようとしていたサカナ型2体は、その爆風に巻き込まれて爆発した。
閉所だからこそ出来た芸当だ。もしも開けた場所なら、こうはうまくいかなかっただろう。

ミ.,,゚Д゚彡『ちっ……虎の子のロケットだったんだぞ』

ぼやきながら空になったランチャーを放り捨てる。

ミ.,,゚Д゚彡『よし、片づいたな。とりあえず無事なようで何より……』

内藤の無事を確認したフサギコが、そこで言葉を切る。

ミ.,,゚Д゚彡『あー……まあ、おおむね無事だった、と言うべきか』
( ^ω^)「おっ?」

なんのことか判らない内藤が聞き返すよりも早く、内藤の手が柔らかい物体を感知する。
柔らかなふよふよとした物体。この感触は、まさしく

( ゚ω゚)「漫画の王道、ドサクサ・デ・ムネタッチだおブベラァッ!!」

ツンの強烈なひじ鉄をくらって、内藤は悶絶した。



275: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 22:50:35.59 ID:vafhPJWa0
  
――起爆時間まで、残り6分。

内藤とツンは、長の亡骸を丁寧に横たえた。
服の端切れで綺麗に長の顔を拭ったツンは泣かず、長の埋葬も、却下されるとそれ以上食い下がろうとはしなかった。

( -ω-)ξ--)ξ「……」

内藤とツンは、長に短いながらも深い黙祷を捧げた。

ミ.,,゚Д゚彡『内藤、そろそろ行くぞ』

一足早く黙祷をすませたフサギコが、洞窟入り口でこちらを呼んでいる。

( ^ω^)「今行くお。ツン、もう時間だお」
ξ゚听)ξ「うん……」

歩き始めた内藤だが、元気のないツンが気になって立ち止まり、振り返る。
だから、内藤にはヘビ型の尻尾がかすかに軋みをあげて動いたことがわからなかった。

ミ.,,゚Д゚彡『内藤っ!!』

フサギコの声が聞こえると同時に、内藤の体は激しい衝撃にはねとばされた。



276: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 22:58:19.66 ID:vafhPJWa0
  
( +ω+)「うぐ、ぐ?」

跳ね飛ばされた衝撃で打った頭が痛い。
だが、今の衝撃はいったい何なのか。

ミ.,,゚Д゚彡『く……内藤、逃げろっ!!』

フサギコの切迫した声が聞こえる。
はっとした内藤がフサギコを見ると、フサギコの太股にはヘビ型の尻尾が貫通していた。
その場所は、自分が今まで立っていた場所だった。
フサギコは内藤を突き飛ばし、身代わりとなったのだとそこで気づく。

( ゚ω゚)「ふ、フサギコっ!?」
ミ.,,゚Д゚彡『俺のことはいい、俺のことは自分で何とかする!! いいから行け、時間がない!!』
(;゚ω゚)「何言ってるんだお、ボクが言ったらフサギコは、フサギコは……」
ミ.,,゚Д゚彡『何度も言わすんじゃねぇぞゴルァ!! いいからお前はツンを連れて逃げろ!!』

ヘビ型はロケットの直撃により半壊しており、素早い行動が起こせるのは尻尾だけらしい。
だが、フサギコを諦める気は毛頭無いようだ。ヘビ型はじりじりとフサギコを体に巻き込みつつある。



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