( ^ω^)ブーンが機械と戦うようです
- 71: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 18:43:40.57 ID:VzEgPm9u0
- J( 'ー`)し「ご飯よー……って、どうしたの、ブーン?」
(;^ω^)「……」
J( 'ー`)し「なんだい、そんなオモチャ持って。早くそんな汚い服着替えて、降りてらっしゃい」
優しくカーチャンが微笑む。その姿は記憶に残るカーチャンの笑顔そのものだ。
( ^ω^)「カーチャン……」
J( 'ー`)し「なんだい、ブーン。今夜のご飯はカレーライスよ」
笑うカーチャン。開けられた扉からは、カレーライスの良い匂いが漂ってくる。
( ^ω^)「カーチャンのこと、ボクは大好きだお」
J( 'ー`)し「なんだい、いきなり。恥ずかしい子だね……っあ!?」
――パンっ
目の前のカーチャンに向けて、発砲。
願い違わず、その銃弾はカーチャンの顔に着弾し、半分ほどを破壊して貫通した。
壁に勢いよく髪の毛とピンク色の肉片が飛び散る。
J( ':;,.「……」
頭に空いた空洞から勢いよく血を吹き出して、カーチャンの体はブルブルと痙攣しながら後ろに倒れ込んだ。
究極的にリアルな描写。いや、もしかしたらここはリアルそのもの。
( ;ω;)「あ、ああ……カーチャン……ごめん、ごめんだお……」
これは夢、これはヴァーチャル。なんど自分に言い聞かせても、カレーライスと血の臭いは内藤を責め立てる。
やがてこみ上げてきた胃液と共に、内藤は盛大に胃の中身を床にぶちまけた。
暗転。
- 74: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 18:49:04.65 ID:VzEgPm9u0
- ('A`)「おーい、ブーン。大丈夫か?」
気づけば、ドクオが内藤のそばにしゃがみ込んで心配していた。
顔を上げる。
そこは夕暮れに染まる学校の教室だった。
('A`)「どしたんだよ、もう帰ったんじゃなかったのか? 一人でコスプレプレイでもしてたのか?」
( ;ω;)「ど、ドクオ……」
震えながら、内藤は自分の体を抱きしめる。
そうしないとふるえはおさまりそうになかった。
('A`)「おいおい、本当に大丈夫かよ……お? なんがコレ?」
言いながら、内藤の側に落ちていた拳銃を拾い上げる。
('A`)「へー、見たことない形だな。お前ってガンオタだったっけ?」
ガンオタって言っても、ガンダムじゃねーぞ。
そんなことを言いながら、ドクオはカーチャンの頭を吹っ飛ばしたばかりの拳銃を手の中でもてあそぶ。
- 76: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 18:56:20.49 ID:VzEgPm9u0
- ('A`)「おおー、ちゃんと動くんだな、コレ。よくできてんなー」
('∀`)「へへ、バーン!! なんちゃって」
内藤に向けて、ドクオがふざけて銃を撃つ真似をする。
瞬間、内藤の脳内に頭を半壊させたカーチャンの姿がフラッシュバックした。
( ゚ω゚)「やめるお!!」
思わずその手を振り払う内藤。
(;'A`)「え? うわっ!!」
――パンっ
勢いよく振り払われた銃は、その口をドクオに向けて銃弾を発射した。
下腹部に当たった銃弾は、ドクオの腸を引き裂いてミンチにする。
(;'A`)「ぎゃあああああ!! あ、あが、ばばば……」
腹を押さえて悶絶するドクオ。
着弾のショックからか、青白い顔は更に青ざめて見える。
- 77: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 19:02:08.68 ID:VzEgPm9u0
- (;'A`)「い、いてぇ、いてぇよ……たすけてくれよ、ブーン」
段々と声に力が無くなっていくドクオ。
そんなドクオを見て、内藤は何も出来ずにいた。
( ;ω;)「ど、ドクオ……大丈夫だお、これは夢なんだお、だからドクオはいないし、痛いのもないんだお」
(;'A`)「ブーン……いてぇ、いてぇよ……」
支離滅裂な内藤の言葉も、もはやドクオには聞こえていない。
('A`)「いてぇよぉ……しにたく、ねぇ……かーちゃん……」
ドクオの体から力が抜けていき、やがて止まる。
腸をはみ出さて、ドクオは死んだ。
夕暮れの中、空気と反応して鮮紅色となった血が、内藤の足下に流れてくる。
( ;ω;)「ひ、ひぃっ!!」
思わず血の流れから身を離す内藤。
その行動に嫌悪感を覚え、とりかえしのないことをした罪悪感にうちふるえ、死んだ友を思い。
内藤はその場にうずくまり、頭を抱えた。
夕焼けが遠ざかる。
- 79: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 19:09:08.23 ID:VzEgPm9u0
- 暗闇に、内藤は一人取り残されていた。
カーチャンが死んだ。ドクオも死んだ。
みじめに、むごたらしく、救いようのない姿で。
やがて、遠くから足音が聞こえてくる。
ξ゚听)ξ「ブーン」
ツンだ。
学校の制服に身を包んだツン、猫耳のついていない、『ブーンの同級生のツン』がそこにいた。
ξ゚听)ξ「あなたが殺した人たちは、本当に死んだわ」
ξ゚听)ξ「確かに彼らはプログラムのNPCかもしれない。でも、実際に痛みを与えられて死んだの」
ξ゚听)ξ「システムは単なる紙芝居じゃないわ。人じゃないだけで、彼らには痛みも喜びもあるの」
頭を抱える内藤に、ツンが優しく語りかける。
ξ゚听)ξ「ねぇブーン、あなたが、あなた達がしようとしているのは、そういうことよ」
ξ゚听)ξ「どこかで誰かの大切な人が死ぬ。突然、むごたらしく、惨めに、救いようのない形で」
ξ゚听)ξ「彼らに命はないけれども、あなたたちがしようとしているのは、大量虐殺に他ならないわ」
内藤は顔をあげない。
顔を上げようにも、ツンに、偽りとはいえ好きな人に合わせる顔がない。
- 80: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 19:18:17.79 ID:VzEgPm9u0
- ふわり、と優しい暖かみが内藤を覆う。
ξ゚听)ξ「でもね、ブーン。私はそんなあなたを許すよ?」
ξ゚听)ξ「今はまだ、ここが夢にしか見えないかもしれない」
ξ゚听)ξ「でも、夢だっていいじゃない。あんな風に現実で大切な人を失うよりは」
ξ゚听)ξ「もしも現実で、あんな風にあたしが死んだら。あなたは耐えられる?」
内藤は首を振る。
ツンのあんな姿は、死んでも見たくない。
ξ゚听)ξ「だよね。だって、ブーンは優しいもの」
あくまでも優しく、ツンは語りかける。
ξ゚听)ξ「だから、ね? あたしと一緒に、ここにいようよ。ここならそんな辛いこともないよ」
ξ゚听)ξ「あの二人だって、ちゃんと戻ってくる。カレーライスも食べられるし、学校で話すこともできる」
(´・ω・`)「それに、週刊ステップを読むこともできるし、授業中に居眠りすることもできる」
('A`)「俺の秘蔵AVだって貸してやるぜ?」
J( 'ー`)し「カーチャンはブーンが居てくれればいいのよ。また好きなもの作ってあげようね」
ツンの姿が次々と切り替わり、内藤の近しい人たちへと姿を変える。
それは失われた現実。いや、夢。それとも現実?
もういい、もう疲れた。
どちらが現実でどちらが夢でも、もういいじゃないか。
どうせ頭の中に入ればどちらでも同じ事だ。
内藤は頷いた。
- 81: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 19:27:07.77 ID:VzEgPm9u0
- (,,゚Д゚)「ばっかやろう!! 内藤、目を覚ませゴルアァァァ!!」
突如として、二人だけの世界に怒声が飛び込んできた。
( ゚ω゚)「ギコ!?」
(´・ω・`)「ばかな!? 何だあれは!?」
バチバチと体から火花を飛び散らせながら、ギコがそこに立っていた。
ショボンの姿をとったシステムが、目をむいて驚愕している。
(,,゚Д゚)「んだよ、そんなに驚くことか? ここは電気で作られた世界だろ」
(,,゚Д゚)「人の脳も電気信号で動いてるんだ。だったら、その電気がちょびっと残ってたって、不思議じゃねぇ」
(´・ω・`)「ありえない……電気的な信号は微弱なもの、第一そんなものに個性が残るなんて……」
(,,゚Д゚)「なんだかしらねぇが、機械に串刺しにされてたのがよかったのかもな。まぁ、なんでもいいや」
ギコがニヤリと笑う。
- 82: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 19:32:59.81 ID:VzEgPm9u0
- (,,゚Д゚)「内藤、おまえまだそんなふぬけたこといってんのか」
( ;ω;)「で、でも……」
(,,゚Д゚)「あー、うっとおしいから泣くんじゃねぇ。時間もないから、手短に教えてやらぁ」
(,,゚Д゚)「そこのしょぼくれた顔のやつの言うことは魅力的かもしれんが、よく考えろ」
(,,゚Д゚)「特にお前の惚れた女のことだ。そいつはこっちに居るのか?」
(´・ω・`)「居るとも。現実よりも、ずっとリアルで完璧な形でね」
(,,゚Д゚)「うるせぇバカ黙れ。お前には話しかけてねぇ」
(´・ω・`)「……」
システムを黙らせて、ギコは続ける。
(,,゚Д゚)「こっちに居る奴は替えがきく、とってもすばらしい便利なもんなんだろう」
(,,゚Д゚)「でもな、外にいるお前の女は『替えがきかない』んだ。そこんとこよく考えろ」
言い終わると同時に、飛び散っていた火花がだんだんと弱々しいものとなっていく。
(,,゚Д゚)「お、もう時間か。なかなか早いな」
(´・ω・`)「ちょっとびっくりしたけど、消えゆく電気信号の君には荷が勝ちすぎたみたいだね」
冷静さを取り戻したシステムがギコに言う。
(,,゚Д゚)「どうかな? 確かに俺はあんまり役にたたない奴だったけどよ」
(,,゚Д゚)「……今度は、しっかり役にたったようだぜ」
がんばれよ、内藤。
そう言い残してギコは跡形もなく消えた。
内藤がゆっくりと立ち上がった。
- 83: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 19:41:11.90 ID:VzEgPm9u0
- ( ω )「ギコ……」
(´・ω・`)「うん、ちょっとびっくりしたけど、あっという間に消えてしまったみたいだね」
( ω )「……」
システムが内藤に話しかける。
(´・ω・`)「ブーン、まさかあんな言葉に心を動かすのかい?」
(´・ω・`)「彼の言葉を大事にしたいのはわかるけど、外に出れば大切な人のみじめな死に様を見るかも知れないんだよ」
再び、内藤の脳裏にドクオとカーチャンの死体がフラッシュバックする。
だが、内藤は止まらない。
( ω )「ボクは……ギコの言葉を大切にするわけじゃないお」
( ω )「ボクは自分の大切な人を大切にするんだお」
( ω )「ここにいれば、大切な人を失うことはないかもしれない」
( ゚ω゚)「でも!! ここにいたら、外で巫女を頑張っているツンがあんな姿になるかもしれないのを守れないんだお!!」
ここにいるツンは替えがきく。
でも、外にいるツンには替えがきかない。
そして内藤が守りたいのは自分の幸せでもなんでもなく、ただツンの平和な日常を守りたいのだ。
だからこそ内藤は戦っている。
( ゚ω゚)「ボクは!! どこにいてもツンを守る!! だけど、この中にいたら守れないんだお!!」
一際高らかに叫んで、内藤は胸にぶら下がる手榴弾を取り外した。
そして目の前にいるシステムに叩き付ける。
爆発。そして、内部に納められていたウィルスにより浸食が始まった。
- 87: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 19:51:50.22 ID:VzEgPm9u0
- (;´_ゝ`)『フサギコ!!』
ミ.,,゚Д゚彡「なんだゴルァ!! 今いっぱいいっぱいで話聞いてる余裕なんかねーぞ!!」
襲い来る防衛プログラムに倫理兵器を打ち続けながら、フサギコが怒鳴り返す。
既に倫理兵器は6種類中4種類が学習され、残りは2種類だ。
(;´_ゝ`)『違う、ウィルスだ!! 猛烈な勢いで広がっている!!』
(´<_` )「内藤か、内藤がやったのか」
ミ.,,゚Д゚彡「そうか……なかなかやるじゃねえか内藤!!」
フサギコと弟者が喜んだ声をあげる。
それと同時に、周囲の防衛プログラムが次々と機能を停止し、消滅していく。
ミ.,,゚Д゚彡「どうやらすでにウィルスが浸食してきているようだな」
( ´_ゝ`)『ああ。内藤のやつ、なにをどうやったか知らんがシステムのかなり深いところでウィルスをばらまいたらしい』
ミ.,,゚Д゚彡「よし、そうとわかれば撤収だ!! 内藤はどこにいる!?」
(;´_ゝ`)『そ、それが……未だにシステム中枢にいるようだ』
ミ.,,゚Д゚彡「なんだと!?」
(;´_ゝ`)『ウィルスの浸食で妨害がとけたのか、先ほど内藤のトレースに成功した。あいつはシステム中枢だ』
ミ.,,゚Д゚彡「あのバカ……死ぬ気か!!」
- 89: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 19:58:51.91 ID:VzEgPm9u0
- 大きく舌打ちすると、フサギコは用済みとなった倫理兵器をデリート。
変わりに増加装甲を呼び出して身に纏う。
(´<_` )「フサギコ、何をする気だ」
ミ.,,゚Д゚彡「内藤を回収に行く」
(;´_ゝ`)『無茶だ!! ウィルスが浸食しまくって、構造体全体が崩れそうなんだぞ!!』
ミ.,,゚Д゚彡「増加装甲を来てれば、直接浸食するまでの時間がかせげる。ある程度の浸食なら防壁で切り取られる」
(´<_`;)「その防壁がもたない場合はどうする」
ミ.,,゚Д゚彡「そこまで考える余裕はない。弟者、お前は帰れ。少しでも防壁の強さをあげたい」
目の前に仮想のエア・スクーターを呼び出して、フサギコは弟者に言い放つ。
もはやシステムはその機能をほとんど失っているらしい。自由に改変してツールを呼び出せる。
ミ.,,゚Д゚彡「兄者、念のため、俺と内藤の強制切断の準備をしておいてくれ」
( ´_ゝ`)『……わかった』
(´<_` )「兄者!!」
( ´_ゝ`)『ただし、強制切断は俺のタイミングでやらせてもらうからな』
ミ.,,゚Д゚彡「ありがとう。感謝する」
大きく腕を振り、フサギコエア・スクーターを発進させた。
- 90: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 20:07:12.16 ID:VzEgPm9u0
- (´・ω・`)「君は馬鹿だよ」
( ^ω^)「そうかもしれないお。ぶっちゃけ後先考えてなかったお」
ぜいぜいと肩で息をしながら、内藤は倒れていた。
ウィルスは既に内藤へと感染しており、浸食は始まっている。
システム――ショボンの方も同じだ。
( ^ω^)「でも、これでツンは巫女を続けられるお」
(´・ω・`)「多くの人の幸せを犠牲にしてね」
( ^ω^)「それでも、ボクはツンが守りたかったんだお。ボクが死んでごめんなさいしとくお」
(´・ω・`)「死んだらごめんも言えないじゃないか」
半壊した体でショボンが呟く。
(´・ω・`)「それに、君が側にいて守ってあげないと、ツンがどうなるかわからないよ?」
( ^ω^)「それは心配だお。でも、ツンならきっと大丈夫だお」
(´・ω・`)「……やれやれ。君はもう少し賢くなる必要がありそうだ」
どっこいしょといいながら、大儀そうに身を起こすショボン。
(´・ω・`)「いいかい、これから行動する時は、もう少し残される人の気持ちも考えて行動した方が良いよ」
( ^ω^)「次があったら、そうするお」
(´・ω・`)「どうだか。ま、その言葉信じるよ」
ショボンの手が、内藤に触れる。
そしてあたり一体の構造体が崩壊した。
- 91: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/07(土) 20:11:58.62 ID:VzEgPm9u0
- ――現実世界 ドーム内応接室
(´・ω・`)「ミルナ艦長。一つ聞いていいかな」
( ゚д゚ )「……なんだ」
相変わらずミカンを剥きながら、システムが背を向けたままのミルナに語りかける。
(´・ω・`)「もし人間を解放したとして、彼らの食料はどうするんだい? 生活する場所は?」
( ゚д゚ )「そんなもの、二本の足と手があればいくらでも獲得することができる」
(´・ω・`)「それが出来る人はね。できない人もいるじゃないか」
( ゚д゚ )「問題ない。それは人間が助け合っていけばいい。現実世界で、彼らはもう一人じゃないのだからな」
(´・ω・`)「そうかい」
ふう、と溜息をつく。
(´・ω・`)「おめでとう。君たちの勝ちだ」
( ゚д゚ )「……なに?」
ミルナがシステムに目をやる。
システムはすでに機能を停止し、力なくうなだれていた。
その手から剥きかけのミカンが、ころりと転がり落ちた。
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