( ^ω^)ブーンが機械と戦うようです

278: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 23:10:22.11 ID:vafhPJWa0
  
内藤の目の前に提示された選択肢は3つだ。

1 フサギコを残してツンと逃げる→おおむね良好
2 フサギコを助けるために300m離れたエア・スクーターから武器を取ってくる→時間切れ
3 皆で昇天→現実は非常である

あまりにもふざけている。二重丸をつけたくなる選択肢は一つとしてない。
理屈としては1しか選択できそうにない。ツンを守りたい気持ちは強い。
だが感情としては2あたりを選択したい。フサギコを残していくことはしたくない。

ミ.,,゚Д゚彡『何を迷ってんだゴルァ!!』
(#゚ω゚)「あんたこそ何言ってるのかわからんお!! あんたはボクを助けてくれるんじゃなかったのかお!!」
ミ.,,゚Д゚彡『あれは手が空いてればって話だろうが!! 今は手一杯だ、諦めろ!!』
(#゚ω゚)「だからって……置いてなんかいけるかお!!」

フサギコに話しかけられなかった理由。
それは、彼の弟であるギコを見捨てたという罪悪感から来るものだった。
ギコの最期とフサギコの今が重なる。もうあんな思いはごめんだった。

(#゚ω゚)「ボクは誰かを見捨てることなんてもう嫌なんだお!! だから、だからっ」
(#゚ω゚)「だから助けたい人は皆助けたいんだおーっっっっっっ!!」

内藤は今まで燻っていた気持ちを爆発させるように叫んだ。



281: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 23:22:24.68 ID:vafhPJWa0
  
(*‘ω‘ *)「ぽっぽ?」

くり、と首を傾げる仕草。
気づけば、いつの間にかぽっぽが内藤の目の前にいた。

(;゚ω゚)「ぽ、ぽっぽちゃん?」
ξ゚听)ξ「ちんぽっぽ!?」

内藤とツンの言葉が重なる。

(;゚ω゚)「ぽ、ぽっぽちゃんの名前はちんぽっぽちゃんなのかお?」
ξ゚听)ξ「そこに居るのは、ちんぽっぽ。普段は絶対に姿を見せない存在」
(*‘ω‘ *)「ぽっぽ!!」

自分の話になったちんぽっぽがピョンピョンと飛び跳ねる。
そして――そのままヘビ型機械に勢いよく体当たりをした。

――ゴインっ

にぶい音がしてちんぽっぽがはじき返される。
ぼてんと転がったちんぽっぽは、頭を押さえようとして短い手を頭に伸ばす。



284: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 23:32:57.20 ID:vafhPJWa0
  
(;゚ω゚)「な、なにやってるんだおちんぽっぽちゃん……」
ξ゚听)ξ「馬鹿ね、あれを見なさい!!」

ツンが指さした先。
先ほどまで禍々しく軋みを上げてフサギコを締め付けていたヘビ型が、機能を停止していた。

ミ;,,゚Д゚彡『な、なんだ?? いきなり動かなくなったぞゴルァ』

捉えられていたフサギコも何のことか判らず、呆然としている。

ミ.,,゚Д゚彡『いや、それよりも!! 時間がやばいぞ!!』
(;゚ω゚)「そ、そうだったお!! 時間は……」

フサギコと同時に時計を確認する。残り時間――わずかに3分。

( ゚ω゚)「そんな……せっかく助かったのに」
ミ.,,゚Д゚彡『くそ……時計が壊れてやがる。内藤、残り何分だ』

ぼやくフサギコに残り時間を告げて、同時に思いついた作戦を告げる。
ツンを乗せて、磁気嵐と地震の影響の外に連れて行く。
その後に、全力で島を離脱する。それが作戦。



287: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 23:40:32.00 ID:vafhPJWa0
  
ツンは残り時間の意味が理解できずにいるが、この作戦は決定的に破綻した部分がある。
今からでは真っ直ぐに島を離脱しようとしても、起爆時間までに間に合うことはないだろう。
磁気嵐の発生はそれよりも若干遅れるとはいえ、島全体を覆うことになる磁場異常は瞬時に現われる。
起爆した瞬間にエア・スクーターは飛べなくなり、後は磁気嵐に体と脳を犯されて死ぬ。
それが確定した作戦だった。

ミ.,,゚Д゚彡『内藤……それで本当にいいのか』
( ^ω^)『もちろんだお。ボクは助けたい人は皆助けたいんだお』
( ´ω`)『でも、ごめんだお……フサギコは……』
ミ.,,゚Д゚彡『そんなことは気にするな。バディを組んだときに、こうなることも覚悟の上だ』

指向性通信のみで会話を終了し、ツンに顔を向ける。

( ^ω^)「ツン。ボクは、ボクの助けたい人を全員助けたいんだお」
( ^ω^)「だから、今から一緒にエア・バイクに乗って……」

くいくい、と。
話を遮るように、内藤の袖がひかれた。

(*‘ω‘ *)「ちんぽっぽ!!」

そこには短い手で胸を叩くちんぽっぽの姿。
内藤とフサギコはわけがわからず、ツンはちんぽっぽに何かを期待するかのような目を向けていた。



290: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/09/30(土) 23:49:56.04 ID:vafhPJWa0
  
――兄者・弟者バディ

(´<_` )「そろそろだな、兄者」
( ´_ゝ`)「そろそろだ、弟者」

そろそろ、エア・バイクのバッテリーがなくなる。
ジャマーも使いつつだましだましこの辺りを周回していたが、もういいだろう。
起爆時間までもあとわずか。いまここでやられても、そのあと機械共も磁気嵐の餌食だ。

(´<_` )「兄者、この次も兄者でいてくれるか」
( ´_ゝ`)「もちろんだ。お前の兄は、俺だけだし、俺の弟はお前しかいない」
(´<_` )「兄者……」
( ´_ゝ`)「弟者……」

起爆までのカウントが秒単位に切り替わる。
エア・スクーターが徐々に速度と高度をおとし始めた、その時。

(*‘ω‘ *)「ちんぽっぽおぉぉぉぉぉぉ!!」

大きな放物線を描いて、小さな生き物が二人に激突してきた。
ぱすん、と音をたてて、その瞬間にエア・スクーターが停止する。

(´<_` )「な、なんだ!! 何がとんで来た!?」
( ´_ゝ`)「あ、兄者!! あれを見ろ!!」

そこには、猛烈な勢いで機械の群れに体当たりを繰り返す小さな生き物の姿があった。
バレーボールほどの大きさの生き物は、体当たりをしては跳ね返されて、また果敢に体当たりをしていく。
奇妙な事に、あの生き物に体当たりをされた機械は次々と機能を停止しくようだった。



294: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/01(日) 00:13:28.53 ID:pE19Khno0
  
(´<_`;)「わけがわからん……」
(;´_ゝ`)「とにかく、我々を守ってくれていることだけは確かなようだが」

弟者の言葉通り、その生き物は二人に近づく機械を優先的に止めているようだった。
二人が呆然とその行動を眺めていると、遠くから地響きが伝わってきた。

(´<_`;)「はじまったか!!」
(;´_ゝ`)「く、おおぉぉぉぉ!!」

猛烈な不快感が脳を揺らす。磁場異常が脳に走る信号を乱れさせているのだ。
混濁していく意識。強まる不快感。それが、唐突に和らいだ。

(´<_`;)「な、なんだ?」
(;´_ゝ`)「見ろ弟者!!」

兄者の指さす方向。
あの小さな生き物が、二人に寄り添うようにして毛を逆立てていた。

(*‘ω‘ *)「ぽっぽっぽおおぉぉぉぉぉぉ!!」

どうやら生き物の周囲だけ、磁場異常が中和されているらしい。
その証拠に、その範囲外にいる機械達は次々と浮遊能力を失い、地面に墜落していく。
やがて遠くから磁気嵐と思しき渦が近づいてきた。
それを確認して、二人は不快感に耐えきれずに昏倒した。
後には毛を逆立て続ける生き物――電磁場操作型トレーダー、ちんぽっぽ種のみが残った。



296: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/01(日) 00:31:31.06 ID:pE19Khno0
  
(*‘ω‘ *)「ぽっぽっぽおおぉぉぉぉぉぉ!!」
( ^ω^)「す、すごいお、ちんぽっぽちゃん」

内藤の目の前にいるちんぽっぽも、同じように毛を逆立て続けていた。
あの後、ちんぽっぽは地震の影響の及ばない高原までエア・スクーターを誘導。
その場で驚くことに『分裂』した。
少し小さくなったものの、見た目は分裂前と全く同じちんぽっぽ。
二人はまったく同じ動作で頷き合うと、一方は高く高く飛び跳ねて、やがて見えなくなった。
おそらく内藤の言う「助けたい人」を助けに行ったのだろう。
そして片方のちんぽっぽはその場に残り、起爆によって引き起こされた磁場異常と磁気嵐を中和しつづけていた。

( ^ω^)「一体、ちんぽっぽちゃんは何者なのかお?」
ξ゚听)ξ「彼らのことは私達にもよくわからない。普段は絶対に姿を見せないの」

ただ、たまに姿を現しては、磁場異常地帯を中和したり、逆に増やしたり。
磁気嵐から農作物やトレーダー族を守ったりすることが確認されているのみなのだという。
一種の妖精のような存在として認知されていると、ツンは話を続けた。

ξ゚听)ξ「言葉は通じているみたいだけど、意図的に彼らとコンタクトを取れた者は私達の中にも希にしかいない」
ξ゚听)ξ「人間の中では……内藤、アンタが初めてよ」
(*^ω^)「おっおっおっ、ボクが人類初なのかおwww照れるお」

やっぱり優しく話しかけたのがよかったんだお。そう続ける内藤。
だが、それだけでちんぽっぽが内藤を認めるとは思えない。
単純に喜ぶ内藤を見て、ツンは内藤の持つ資質を一つ、発見することができた気がした。



298: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/01(日) 00:38:40.01 ID:pE19Khno0
  
作戦開始から1時間30分後。
潜水艦タシーロ号は、予定されたポイントに浮上した。
予想した通り、島全体を覆っていた磁気嵐と磁場異常は去り、島は平穏を取り戻していた。

唯一島から離脱していたジョルジュ・荒巻バディは島を捜索し、広原地帯で倒れている流石兄弟を回収。
その後に、森の側で何かに向かって手を振る内藤、フサギコ、そしてツンを発見した。

流石兄弟とフサギコ・内藤バディのエア・スクーターは、磁気嵐に飲み込まれて使い物にならなくなった。
だが、ミルナはそれらの損耗を気にせずに、帰ってきた六名に対して最大限の労いの言葉をかけた。

今回の地上の物的被害はかなりの物だが、もともと自然回帰を旨とするトレーダー族には大した被害ではないだろう。
燃料棒の再補給はトレーダー族の施設再開まで延期され、タシーロ号は二日続けて同じ港に接岸することになった。
上陸の際に、ミルナはしばらく停泊することを宣言。メンバーには次回招集までの休暇が与えられた。

長を失ったトレーダー族の悲しみは深かったが、せめてもの救いは巫女が無事だったことだろう。
巫女を守ったことはツンの口から全体に伝えられ、トレーダー族はVIPメンバーを賓客としてもてなすことを約束した。

ちなみにこの話を聞いたジョルジュは、株が上がったことをこれ幸いにと、休暇にはいると同時にジェシカにアタック。
その成果を聞くことはできなかったが、ジョルジュの部屋には笑顔のジェシカが写った写真が追加された。

ついでに、この話を聞いた荒巻もアリナにアタックしたようだが、これは見事に玉砕。
今度の記録は斜め45度方向に10mの飛距離を記録したことを、ここに記しておく。

そしてツンと内藤はというと――



299: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/01(日) 00:44:37.77 ID:pE19Khno0
  
ツンと内藤は、長の墓参りに来ていた。
長の墓は、生前の遺言通り、島で最も大きな木の根本に作られた。
墓標はない。大木そのものが彼女の墓標そのものだからだ。
眠った後は、静かに一族の暮らしを見守りたいという彼女の遺志は、ここに果たされた。

( -ω-)ξ--)ξ「………………」

さわさわと葉擦れの微かな音に包まれながら、二人は並んで長に黙祷を捧げていた。
内藤は合掌の形だが、ツンは指を組み合わせる形だ。
だが、形は問題ではない。大切なのは個人を偲び、想う気持ちだからだ。

ξ゚听)ξ「……ありがとう」
( -ω^)「んお?」

先に黙祷を終えたツンが、内藤に声をかけた。
木漏れ日がツンの横顔を優しく照らしている。

ξ゚听)ξ「あの時、内藤がいてくれてよかった。私だけじゃどうにもならなかったもの」
( ^ω^)「ボクは助けたい人を皆助けたかったんだお。ツンを助けられて良かったお」
ξ゚听)ξ「あなたはそうかもしれない。でも、私は……」
( ^ω^)「おっ?」

ツンは小さく首を振り、独占はエゴよね、と呟いた。
内藤はただ首を傾げるだけだ。
首を傾げる内藤とその背後を見て、ツンは思わず吹き出した。
内藤のその背後、木の陰にちんぽっぽが隠れて、内藤の真似をして首を傾げていたのだ。



300: 機械 ◆DIF7VGYZpU :2006/10/01(日) 00:50:45.82 ID:pE19Khno0
  
( ^ω^)「な、なんだお??」
ξ゚听)ξ「なーんでもないわよ、馬鹿」

馬鹿は酷いおーとか抗議する内藤を余所に、ツンは目の前の大木を見上げた。

――長。私達はかつて我々の祖先を迫害した者達の子孫に助けられました。
だから、ってわけじゃないですけど。もう、許してもいいですよね。だって、私はもう――

ξ゚听)ξ「ねー、内藤」
( ^ω^)「なんだお?」
ξ゚听)ξ「私はもう、許してるからね」

何でもないことのようにツンが言う。
内藤はその言葉を聞いて、嬉しそうに笑った。



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