('A`)ドクオが初めての夏を過ごすようです
- 61:前編はまとめられてませんorz :2007/07/31(火) 20:22:07.76 ID:eaHy32leO
- 家を飛び出し、ガムシャラに走る。
無情にも降り続く雨。
('A`)「……」
家からだいぶ離れた辺りで、俺は走るのを止める。
もう10年か……。
まだ7、8年くらいだと思っていたのに……。
もう10年か……。
('A`)「……」
宛ての無い道を歩く。
あの男……ギコは
俺やじぃちゃん、弟者おじさんから……
親父とおふくろを……
奪った……。
- 63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 20:23:36.27 ID:eaHy32leO
- どれ程、歩いただろうか。
『ドクオ!』
不意に後ろから俺の名前を呼ぶ声。
川 ゚ -゚)「ドクオ!どうしたんだ、こんな雨の中!」
それはクーだった。
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 20:25:46.44 ID:eaHy32leO
- 川 ゚ -゚)「このタオルを使ってくれ」
俺はクーの家に上げてもらった。
クーが差し出したタオルを受け取って、濡れた体を拭く。
川 ゚ -゚)「あんな雨の中、一体どうしたんだ」
('A`)「……」
俺は……話した。
両親の死。
それからの事。
ギコの事。
全てを話した。
川 ゚ -゚)「……」
クーは俺の話を黙って、俺を真っ直ぐな目で見つめながら聞いてくれた。
川 ゚ -゚)「そうか……そんな事が」
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 20:27:34.39 ID:eaHy32leO
- ('A`)「俺は……あの男を絶対に許さない」
川 ゚ -゚)「……」
クーは立ち上がると、窓に向かって歩き出す。
そして外を見つめながら、話始める。
川 ゚ -゚)「昨日、ドクオは言っていたな」
川 ゚ -゚)「何故、この町の良い所を……って」
('A`)「……」
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 20:30:19.15 ID:eaHy32leO
- 川 ゚ -゚)「あの道路を作った事は果たして悪い事だったのか?」
……悪い事?
川 ゚ -゚)「以前は車2台も満足に通れない道だった」
川 ゚ -゚)「そんな道だから事故もあった」
……事故。
川 ゚ -゚)「そこで町のお偉いさん達がな、舗装された道路を作ろうって」
川 ゚ -゚)「もちろん、邪魔な木々は切り倒されたよ」
クーは静かな口調で、淡々と語って行く。
川 ゚ -゚)「確かに自然を大切にするのは良い事だ」
……良い事。
川 ゚ -゚)「だが、そのお偉いさん達も住民が安全に暮らせるようにと考えた結果だった」
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 20:31:58.60 ID:eaHy32leO
- 川 ゚ -゚)「人は変わる。変わろうとする」
川 ゚ -゚)「人が変われば自然と町並みも変わって行く」
川 ゚ -゚)「その人の考え方一つで、良い事も悪い事も変わってくる」
そう話すとクーは俺を見る。俺を見つめながら話す。
川 ゚ -゚)「ギコと言う男は、刑務所の中で何を思っただろう」
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 20:33:46.96 ID:eaHy32leO
- ('A`)「何を……」
……罪悪感
昔、コンビニでポケモンカードを万引きしたことがあった。
欲しかったから、そんな単純な理由で。
それが両親にバレた。
親父とおふくろ、俺の3人はひたすら、コンビニの店長に頭を下げた。
家に戻った親父は俺を叱ることなく、
『ドクオ、万引きは悪いことだ』
『だが、やってしまったことは仕方がないさ』
『人は誰だって間違いを犯すことはある』
『これからは、良い事を覚えていこう』
と怒鳴り付ける訳でも無く、優しく善と悪を教えてくれた。
('A`)「……親父」
- 75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 20:35:53.32 ID:eaHy32leO
- 親父の話を聞いて、自分は悪い事をしてしまったのだと気付いた。
罪悪感から涙が止まらなかった。
泣き続ける俺をおふくろは優しく抱きしめて、
『反省してるんだよね』
『辛い時は一緒だよ』
『でも嬉しい時も一緒だからね』
『これからは嬉しい時を一緒に過ごしましょう』
と優しく俺をなぐさめてくれた。
('A`)「……おふくろ」
- 78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 20:37:23.84 ID:eaHy32leO
- ('A`)「……」
(;A;)「うっ……うっ……」
(;A;)「うわー!!!」
俺は泣いた。大声を上げて泣いた。
ギコに会ってから、今まで我慢していた涙が一気に溢れてくる。
それは怒りでも悲しみでも無く、両親から受けた優しさを思い出したから。
- 84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 20:40:54.85 ID:eaHy32leO
- 川 - )「なぜ辛いなら辛いと言わない……」
川 ; -;)「私や……皆がいるじゃないか!」
気付けばクーも泣いていた。
クーは俺を優しく抱きしめる。
川 ; -;)「さっき、話をするドクオの顔は憎しみでいっぱいだった」
川 ; -;)「ドクオが変わってしまったと思った」
(;A;)「でも……俺……」
川 ; -;)「わかってる……ギコを許せない気持ちは、わかってる」
- 85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 20:42:06.02 ID:eaHy32leO
- 川 ; -;)「ギコの犯した罪も消えない、でも……」
川 ; -;)「ドクオには恨みなんかで変わって欲しくない!」
- 87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 20:44:41.55 ID:eaHy32leO
- いつからだろう。
両親を失った悲しみが、ギコへの憎しみに変わって行ったのは……。
両親との思い出が薄れて行き、次第にギコへの憎悪が溜って行ったのは……。
川 ; -;)「話さなければ判らない事だってある」
俺は……ギコの話も聞かずに、頭ごなしに怒鳴り付けていた。
(;A;)「クー……ありがとう……」
川 ; ー;)「良いんだ……」
クーの言葉が俺を救ってくれた。
俺は、もうちょっとで変わってしまう所だった。
両親が愛してくれた……自分から。
- 90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 20:47:19.34 ID:eaHy32leO
- (´<_` )「それじゃあ私は、バス停まで彼を送ってくるよ」
/ ,' 3「あぁ、気を付けてな」
(,,゚Д゚)「……」
家の前で3人の男達が話をしている。
じぃちゃんと弟者おじさんと……ギコ。
(´<_` )「……ドクオ君!」
/ ,' 3「ドクオ……」
(,,゚Д゚)「!?」
3人が俺に気付いたようだ。
(,,゚Д゚)「……」
ギコが俺の元へ駆け寄って来る。
そして俺の足元で
両膝と両手を付いて
頭を下げる。
- 93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 20:50:20.58 ID:eaHy32leO
- (,,゚Д゚)「ドクオ君……申し訳ありませんでした!」
(,,゚Д゚)「一生をかけても、償い切れない罪を……私は犯してしまいました」
ギコが頭を地面に擦り付ける。
(,,゚Д゚)「私の犯した罪は、決して許されるものではありません」
(,,゚Д゚)「それでも……何度でも貴方に謝ります」
(,,゚Д゚)「本当に……申し訳ありませんでした……」
ギコはスーツを泥で汚しながら、土下座のポーズのまま俺に謝り続ける。
俺は……。
- 97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/31(火) 20:52:37.39 ID:eaHy32leO
- ('A`)「俺は……アンタを許すことは出来ない」
('A`)「それだけは変わらない……」
(,,゚Д゚)「……はい」
('A`)「……それでもアンタが謝り続けるんなら」
('A`)「……年に一回は、こーやって俺に謝りに来い」
(,,;Д;)「……はい」
気付けば雨は止み、雲の間からは太陽が顔を覗かせていた。
('A`)「……」
今年の盆も
親父とおふくろの墓参りに行かなきゃな……。
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