('A`)ドクオは惚れ薬を浴びてしまうようです
- 229: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 20:47:23.61 ID:Q8swVThz0
ξ;゚听)ξ「……そんな、嘘よ」
ツンの顔から、血の気が引いていく。
从 ゚∀从「嘘じゃない。ほら、君にも惚れ薬センサーを近づければ反応――」
ξ#゚听)ξ「嘘よ!!」
ばし、とハインの腕を跳ね除ける。
その剣幕は、今までに無いほど怒りに満ちていた。
ξ#゚听)ξ「私のドクオへの気持ちが、その惚れ薬の効果で出来たものだっていうの!?
そんなの嘘だよ! 私は本気でドクオのことが好き! 大好き!
人の気持ちに、変な言いがかりつけないでよっ!」
ツンは怒りに満ちた、しかし悲しそうな声で叫んだ。
- 240: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 20:49:23.44 ID:Q8swVThz0
ξ゚听)ξ「ドクオも信じてくれるよね? 私の気持ちは、本物だって……」
(;'A`)「それは……」
答えることができない。
ハインの説明は、明らかに的を得ているし、今までの事も納得がいく。
ξ゚听)ξ「ドクオ……?」
ツンが、すがるように俺を見つめる。
でも、俺は……。
('A`)「……ごめん、わからない」
ξ;凵G)ξ「っ!」
俺がそう答えると、ツンの目から涙が溢れ始めた。
- 141: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 20:51:47.26 ID:Q8swVThz0
(;^ω^)「ツン、落ち着くお」
ξ;凵G)ξ「私に触らないで!」
差し伸べるブーンの手を、ツンが払いのける。
そして、ツンは教室から出て行ってしまった。
(;'A`)「ツン!!」
(;^ω^)「ツン――――!!」
俺とブーンは、ツンを追いかけ教室を飛び出した。
( ゚∀゚)「お、おい! 待てって!」
从;゚∀从「こ、こりゃちょっとやばいかも! 俺っち段取りをミスったか!?」
ハインとジョルジュもそう叫び、俺達の後ろから付いてきた。
( ∵)「……はっ! み、皆どこへいくのだ!? 待ちなさい!」
- 149: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 20:53:53.34 ID:Q8swVThz0
- ※
(;'A`)「はぁ、はぁ――――」
(;^ω^)「ふっ――ふっ――」
俺とブーンは階段を一段抜かしで駆け上がり、ツンの後を追う。
息が切れ、心臓が破裂しそうなほど悲鳴を上げ、汗が滝のように流れる。
それでも、俺達は止まらない。
(;'A`)「ぶ、ブーン」
(;^ω^)「な、何だお?」
走りながら、俺は隣のブーンに話しかける。
(;'A`)「俺、お前に謝りたいことがあるんだ」
(;^ω^)「お?」
俺達は走る。
ツンはどんどん上の階へと進んでいく。
- 158: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 20:55:40.89 ID:Q8swVThz0
(;'A`)「俺、ツンから告白されて――ングッ、浮かれてた」
(;^ω^)「ハッハッ――…」
(;'A`)「お前の気持ちとか、三人の関係とか――何も考えてなくて
ただ、流されるままにツンと一緒に過ごしたんだ」
(;^ω^)「ドクオ……」
(;'A`)「そして――俺は、ツンの事を好きだっていう自分に気付いたんだ」
それが、俺の本当の気持ち。
今まで見てみぬ振りをしてきた、本当の気持ちだ。
- 176: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 20:58:16.65 ID:Q8swVThz0
('A`)「ブーンの気持ちを裏切って、抜け駆けしちまった。
……本当に、すまん」
(;^ω^)「ドクオ……」
少しずつ、ブーンとの差が離れていく。
当然か。ブーンは昔から脚力が強かった。
そして、ツンとの絆も、俺より強かった。
( ^ω^)「何言ってるんだお。謝るのは僕の方だお!!」
('A`)「……え?」
不意に、俺の手をブーンが掴み、引っ張りあげる。
- 184: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 20:59:42.26 ID:Q8swVThz0
(;^ω^)「僕は、二人が付き合うって知った時、友達として祝ってあげるべきだった……。
けど! 僕は嫉妬してラブラブな二人を見て苛立っちゃったんだお!」
ブーンは俺を引っ張りながら、叫ぶ。
( ^ω^)「挙句の果てに、ドクオに当たって……酷いこと、言っちゃったお」
('A`)「……」
( ^ω^)「本当に、ごめんだお。謝っても、許してもらえないと思うお……」
俺は足に力を込める。
(#'A`)「おおおおおおっ!」
火事場の底力というのだろうか。
俺は階段を一気に駆け上がり、速度をあげブーンに並ぶ。
- 197: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:01:27.50 ID:Q8swVThz0
(;^ω^)「ドクオ!?」
(#'A`)「俺ららしくねえよブーン! こんなしみったれた会話!」
俺はありったけの声量で叫ぶ。
(#'A`)「元はと言えば、惚れ薬なんか浴びちまった俺が悪い!
だから、ツンが元に戻ったらそこから勝負すりゃいいじゃねえか!」
(;^ω^)「……!」
(#'A`)「今日から俺とお前は、親友であり恋のライバル。それでいいじゃねえか!
ドロドロした感情なんて、俺達の間にはいらねぇ――――!!」
- 201: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:02:23.17 ID:Q8swVThz0
自分自身に気合を入れ、全ての力を足にこめる。
俺の速度は少しずつブーンとの差を縮め、わずかにブーンを抜かした。
(#'A`)「俺はツンのことが好きだぞこの野郎――――!!」
俺は叫んだ。
(#^ω^)「僕の方が、もっとツンのこと好きだお――――!!」
ブーンも叫んだ。
互いに、階段で抜かし抜かれつの攻防を展開し――――
(#^ω^)(#'A`)「ツン!!」
たどり着いたのは、屋上だった。
- 221: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:04:42.05 ID:Q8swVThz0
ξ゚听)ξ「……」
ひゅぅ、と風が吹き、ツンの髪が靡く。
ツンは屋上の柵に手をかけ、街を見下ろしていた。
('A`)「ツン……」
俺は息を切らしながら、声を掛ける。
ξ゚听)ξ「誰も来ないで!」
(;'A`)「……ツン」
- 225: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:05:48.35 ID:Q8swVThz0
ξ゚听)ξ「ドクオ……どうして、私の事信じられないの?」
('A`)「え?」
ツンがぽつりと、悲しそうに言う。
ξ;凵G)ξ「私は私だよ? 惚れ薬なんて知らない。私はドクオの事が好き。
……ねぇ、それじゃ駄目なの? ドクオも私の事好きっていってくれたじゃない。
あれは嘘だったの?」
('A`)「違う。嘘なんかじゃない」
ξ;凵G)ξ「だったら、どうして――――」
涙でくしゃくしゃになったツンを見て、つい流されそうになる。
だけど、駄目なんだ。
俺は、もう迷わないって決めたんだ。
- 233: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:07:13.10 ID:Q8swVThz0
('A`)「俺は、ツンの気持ちはすげぇ嬉しいよ! けど、けどさ……
もし、惚れ薬の効力でそうなってるんなら、それは……偽りだ」
ガシャン、と後ろからドアの開閉音が聞こえた。
从;゚∀从「ぜぇ、ぜぇ……追いついた」
(;゚∀゚)「間に合ったか。おk、全員の生存確認」
( ∵)「よくわからんが、ROMっとこう」
- 238: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:08:30.11 ID:Q8swVThz0
ξ;凵G)ξ「偽りなんかじゃ……ないもん」
('A`)「だったら、惚れ薬の効力を消してもらっても大丈夫だろ!?
ハイン、惚れ薬の効力は消せるんだろ?」
俺は後ろで座っているハインに声を掛ける。
从 ゚∀从「当然っしょ。その薬は……ほれ、ここにある」
ハインが錠剤を取り出す。
それを見て、俺も安心した。
- 243: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:09:18.13 ID:Q8swVThz0
('A`)「俺は、惚れ薬とかそういうまどろっこしい効力に頼りたくないんだ。
それに……親友とのけじめをつけるためにも」
ξ;凵G)ξ「……でも」
('A`)「ツン、頼む。俺は……!」
最後は言葉にならなかった。
もう、これ以上に何も言うことはない。
('A`)「頼む……」
ξ;凵G)ξ「……わかった」
ツンがゆっくりと、首を縦に振った。
- 248: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:10:02.56 ID:Q8swVThz0
ツンはゆっくりと屋上の柵を登り、こちら側に降りようとする。
――――瞬間、強い風が吹いた。
ξ゚听)ξ「きゃっ!」
ツンのバランスが崩れる。
(;'A`)「ツン!!」
ゆっくりと、その光景がスローモーションで再生される。
ツンの体が、向こう側へと傾いていく。
从;゚∀从「おまっ――――!」
(;゚∀゚)「お、おおおおおいいいい!!!」
( ∵)「ひ、ひぃぃぃ!」
ツンが、救いを求めるように手を伸ばす。
- 253: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:10:59.09 ID:Q8swVThz0
ξ;゚听)ξ「いや、いや……!」
(#'A`)「ツン!!」
思考より先に体が動いた。
間に合え、間に合ってくれ。
地面を全力で蹴り、ツンの手に向かい、俺も手を伸ばす。
- 259: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:11:43.88 ID:Q8swVThz0
駄目だ、間に合わない……!
ちくしょ――――
ξ;凵G)ξ「ブ――――ンッ!!!」
(#^ω^)「ツ――――ン!!!」
- 263: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:12:39.73 ID:Q8swVThz0
('A`)「あ……」
神速の如く走ってきたブーンの手が、ツンの手をしっかりと握り締めた。
ξ;凵G)ξ「うあああああぁぁぁん!!」
( ;ω;)「大丈夫だお! もう大丈夫だお、ツン!」
ブーンは泣きじゃくるツンの頭を撫でながら、抱きしめる。
ξ;凵G)ξ「うっ……ヒクッ……! なんで、あんたなのよっ!」
( ;ω;)「ごめんお、ツン。でも、僕もツンのこと好きなんだお」
ξ;凵G)ξ「ヒクッ……バカじゃないの? わ、私は……あんたなんて大嫌いなんだから……」
( ;ω;)「それでもいいお。僕は、ツンのことが好きだお」
- 267: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:13:17.06 ID:Q8swVThz0
- 泣きながら、抱きしめあう二人を見て、俺はその場に座り込む。
('A`)「……」
その光景を、ただただ見つめ、思うことは一つ。
よかった。
心の底からと言えば嘘になるが、それでも、俺はそう思った。
从 ゚∀从「おい、ドクオ……いいのか?」
('A`)「え?」
いつのまにか、ハインが俺の隣に立っていた。
从 ゚∀从「お前、あの子……ツンのこと好きなんだろ?」
('A`)「ああ……。けど、俺よりももっとあいつのこと好きな奴がいるんだ。
……適わないよ、ほんと」
- 271: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:14:07.85 ID:Q8swVThz0
結局、どんなに効力の強い薬だって、本当の愛には適わない。
人の気持ちは、それほど強い物なんだ。
('A`)「……」
从 ゚∀从「なーに辛気臭い顔してんだよ!」
('A`)「痛っ!」
ハインが俺の肩をばし、っと叩く。
从 ゚∀从「お前の気持ちはまだまだ衰えてねぇんだろ?
だったら、逆転ホームランを狙えばいいじゃねえか」
ハインが指を立てながら言う。
从 ゚∀从b「野球も恋愛も九回裏までだぜ! ってH2で言ってた」
- 276: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:15:07.84 ID:Q8swVThz0
('A`)「……そうだな」
俺は腰を上げ、大きく伸びをする。
('A`)「ありがとな、ハイン」
从 ゚∀从「あん?」
('A`)「いや、色々迷惑かけちゃってさ」
从 ゚∀从「阿呆が。事の発端は、俺っちの管理能力不足だ。
もう二度と惚れ薬を持ち運ばないよ!」
そう言うと、俺とハインは目を合わせ、声をあげて笑った。
- 280: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:16:45.59 ID:Q8swVThz0
『エピローグ』
あの珍事件から一ヶ月の月日が流れた。
ツンと俺はハインの持ってきた薬を飲み、ようやく惚れ薬の魔力から開放された。
そして、俺達は何事もなかったかのように、朝の通学路をいつものメンバーで歩いている。
(;^ω^)「うおおおおおwww小テストやばいおwwww」
ξ゚听)ξ「また? ったく、少しは学習しなさいよ」
相変わらずブーンは勉強をしないし、それを世話するのはツンだ。
('A`)「ま、勉強してこなかったツケだな」
( ;ω;)「ふおおおおお!! ドクオ、助けてくれお――!」
('A`)「無理。だって俺、自分が平均点取るので精一杯だもん」
ξ#゚听)ξノ「威張れることじゃないでしょ!」
(;'A`)「ちょwww鞄振り回すなwww」
- 289: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:17:47.74 ID:Q8swVThz0
いつものように騒ぎながら、俺達は歩く。
以前と比べて少し変わったことといえば、ブーンとツンの距離が少し縮まったくらいか。
「うおおおおおおおおぉぉぉ――――」
( ^ω^)「お? あの声は……」
ξ゚听)ξ「ちょっとドクオ、あんたまた忘れたの?」
(;'A`)「やべ、忘れてた」
――――そう言えば、朝起こす約束をしていたんだった。
- 295: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:19:28.41 ID:Q8swVThz0
从#゚∀从「ドクオ――――!! お前、朝は起こしてくれるっつったろ――!」
('A`)「悪い、忘れてた」
从#゚∀从「うがぁぁぁぁ!? ごほっがはぁっ!!」
獣のようにハインが吼える。
こいつの名は知っての通り、ハイン。
先週からうちの学校に通うことになった同級生である。
……天才科学者らしいが、とてもそうは見えない。
('A`)「ほれ、お茶だ」
从 ゚∀从「んぐっ……ふう、うめぇ」
('A`)「……」
从 ゚∀从「……」
从#゚∀从「うがああああああ!!!!」
('A`)「獣かお前は!」
- 313: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:24:37.36 ID:Q8swVThz0
ξ゚听)ξ「ったく、相変わらず仲がいいんだか悪いんだか……」
( ^ω^)「だお」
老夫婦のように、ため息を吐きながら俺達を見つめる二人。
(;'A`)「いいからこいつを止めてくれ―――ー!!」
从#゚∀从「うがああああああぁぁぁ!!!」
まるで獣のように俺を追い回すハイン。
俺は全力でその獣から逃げ回っている。
( ゚∀゚)「お、今日も朝から元気だなお前ら」
「ううむ……何故ドクオ君の周りには美女が……くそ、理解できない」
( ゚∀゚)「おめーはハゲてっからだっつーの!」
「痛っ! ジョルジュ……。貴様とは決着をつけるまいと思っていたが―――」
( ゚∀゚)「あん? やんのかハゲ!?」
「ハゲ、またハゲって言ったな!!! ぬおおおおおお!!」
- 334: 1 ◆tkiF6VoKRk :2007/10/08(月) 21:31:22.30 ID:Q8swVThz0
騒がしい朝の通学路。
俺の周りは変な奴らばかりだが、嫌いじゃない。
いや、むしろ俺にとっては最高の仲間達だ。
(#゚∀゚)「おら、どうした!? ハゲハゲはげはげ!!」
「ぬあああ!! 許さん、許さぬぞぉぉぉ!!!」
( ∵)「見ない振り見ない振り……」
今日も俺達は――――
( ^ω^)「そういえば、どうしてハインさんはこっちの学校に?」
ξ゚听)ξ「さあ……。なんでも、逆逆転ホームランするに値する人を見つけた、とか」
いつものように――――
从#゚∀从「覚悟しろ! ドクオ――――!!」
(;'A`)「うわっ! よせってアァァァァァ!!!」
――――妙に騒がしい、平和な朝を過ごしていた。
('A`)ドクオが惚れ薬を浴びてしまうようです
終わり
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