('A`)達は月に願い事をするようです
- 3: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 01:50:50.90 ID:3E36x/YvO
- 目の前には、ほかほかのご飯。
私は目が見えない。
ご飯の色は白らしいが、白ってどんな色?
だから、願い事をしてしまった。
『美味しいご飯が食べたい』
途端、狂気に囚われた。
まぁ、まずはご飯を食べよう。
いただきます。
美味しい。
願いが叶った。
答えが分かった。
ご飯は、どんな物でも美味しい。
すると、隣に人の気配。
勿論驚いたが、一瞬で見抜いた。
この人は、頑張り屋さん。
そして、必死に何かを伝えようとしている。
悩んでいる人を助けるのは、人として当然の事だ。
その人から、全ての悩みを聞き終えた私は、思った。
けしからん!
私が、その腐った性根を叩き直してやろう!
だが、その前に―――。
おかわり。
- 5: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 01:52:34.97 ID:3E36x/YvO
- 从;'ー'从「クーちゃん、何その格好!?」
川 ゚ -゚)「気分が高揚して、走って川に飛び込んだ」
渡辺は、今来たばかりの、クーのびしょ濡れになった服を見て、酷く驚いている。
こんなに驚いている渡辺を見たのは、初めてかも知れないな、とクーは思った。
現在、クーと渡辺は小高い山の中腹にある、少し開けた場所に居た。
砂地に置かれた木造のベンチと、古びた小屋が、此処には建っている。
渡辺はベンチに座っており、クーは渡辺の目の前に立っている。
ゴソゴソとショルダーバッグを探りつつ、渡辺は焦りながら口を開いた。
从;'ー'从「荒療治過ぎたぁー?ちょっと待ってね、替えの服あげるねぇ」
川 ゚ -゚)「助かる。気持ち悪いし、人の視線が恥ずかしかった」
クーのその言葉に、渡辺のショルダーバッグを探っていた腕が、止まった。
そして、満面の笑みでクーへと言葉を掛ける。
从'ー'从「おめでとう、クーちゃん」
- 6: ◆0KmawXFKHQ :2007/08/18(土) 01:54:23.09 ID:3E36x/YvO
- クーは、無表情ながらも達成感を覚えた声で、渡辺へと口を開いた。
川 ゚ -゚)「すまんな、渡辺。気付くのが遅過ぎた」
川 - )「本当に渡辺は……背中を押してくれた……」
クーは俯き、段々と表情が、暗くなって行く。
そんな、クーへと優しく渡辺は話掛けた。
泣きそうな子供をあやす様に、優しく、優しく。
从'ー'从「頑張ったねぇ、クーちゃん。でも続きは皆揃ってからにしようねー」
クーは、俯いていた顔を上げ、渡辺を見つめた。
皆、昨日渡辺は皆待っていると言ったのだ。しかし、今此処には、クーと渡辺しか居ない。
当然の疑問をクーは口にした。
川 ゚ -゚)「皆って……私と渡辺しか居ない訳だが」
从'ー'从「ちょっと遅れてるのかなぁ?
でもシューちゃんに頼んであるから大丈夫ぅー」
- 8: ◆0KmawXFKHQ :2007/08/18(土) 01:55:55.22 ID:3E36x/YvO
- 川 ゚ -゚)「シューって誰だ?」
クーの質問に渡辺は、シューという人物を自慢する様に、胸を張った。
渡辺は、声を弾ませながら喋る。
从*'ー'从「シューちゃんって娘はね!凄いんだよ!」
从*'ー'从「シューちゃんは月極になって数秒で、自分で答えを見つけたんだよぉ!」
川;゚ -゚)「まじか」
胸を突かれた思いに、クーはなった。
クーが何日も掛かった答えに、数秒で辿り着いた人物。
何者だろうか、クーは興味を抱いた。
川 ゚ -゚)「凄いな……」
从'ー'从「うん、凄い。だから全部シューちゃんに打ち明けちゃったぁ」
そう言うと、渡辺は再びショルダーバッグを探りだした。
ビデオテープ、服、一体渡辺のショルダーバッグの中身は、どうなっているのだろう。
- 10: トリミス ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 01:57:45.06 ID:3E36x/YvO
- 渡辺が服を探している間、クーは目を瞑って思考する。
クーは狂気に囚われながら、人を何十人も殺した。
自分勝手な願い事の為に、何十人も殺してしまった。
罪の意識が、クーの背中に重く伸し掛かる。
川 - )(この後、警察に自首しよう。死刑で良い。それ程の事を私はした)
クーは、閉じた瞼の中に熱い物を感じた。
今まで殺した月極達の、最期の声が脳に過ぎる。
それは、悲鳴であったり、命乞いであったり、願い事であった。
川 - )(……私は愚か者だな。すまない)
贖罪の決意を固めていると、呑気な声がクーの耳に入った。
从*'ー'从「あったぁー!クーちゃんに似合うと思うよぉー」
突然の声に、クーは目を開く。
いつの間にかベンチから立ち上がり、渡辺が服の肩口を持って、広げられている服。
それは、薄いピンク色で彩られていて、優しいデザインのワンピースだった。
胸元には小さく、高級ブランドのロゴマークが刺繍されている。
- 13: トリミス ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 01:59:14.85 ID:3E36x/YvO
- 川 ゚ -゚)「……待て。そんな物、貰えん」
从'ー'从「クーちゃんには似合う。私は確信している」
川 ゚ -゚)「卑怯者め。私は、渡辺のその口調に弱い」
从*'ー'从「えへへぇー。良いでしょ、この技ぁー」
クーは、渡辺が丁寧に折畳んだ、ワンピースを受け取る。
受け取った時に、クーの指と渡辺の指が、少し触れ合った。
川 ゚ -゚)「……渡辺は、心はヘンテコじゃ無かったな」
从'ー'从「……クーちゃんも、心がヘンテコじゃなくなったね」
訪れる、玉響の静けさ。
目と目が合う。
珈琲の色の目と、黄色い目。
風が舞い、二人の髪を揺らす。
あの日の言葉と、心を揺らす。
从'ー'从「お友達になってくれないかなぁー」
川 ゚ -゚)「私も渡辺と友達になりたい」
- 14: トリミス ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:01:14.86 ID:3E36x/YvO
- 瞬間、『ぷっ』と二人は同時に笑い出した。
笑いながら互いに言葉を交わす二人。
川 ゚ー゚)「だが、前みたいに武器は向けるなよ」
从*'ー'从「あれは、ほらぁ!出会いは衝撃的な方が良いじゃない!」
川 ゚ー゚)「意味が分からん。前言撤回したくなって来た」
一頻り笑った後、二人は握手をした。
手が暖かい、相手の想いが流れ込んで来る。
孤独だったクーに、友達が出来た瞬間だった。
数十秒握っていた手を放し、クーは着替える為に小屋へと歩き出した。
渡辺に背を向けながら、クーは呟く。
川 )「……友達とか、あの時以来だな」
クーが小屋の中に入ったのを確認すると、渡辺は密かに呟いた。
从'―'从「その友達はドクオ君だよ。
軌道修正しようとしたけど、駄目だった。
月が仕掛けたトラップは強かった。
でも、クーちゃんへと繋ぐ事が出来た。
これは、話が上手なシューちゃんが教えてくれる」
- 16: トリミス ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:03:28.56 ID:3E36x/YvO
- 程無くして、クーが着替えを終え、小屋の中から姿を見せた。
渡辺は、自分の方に歩いて来るクーを、笑顔で見つめている。
クーの格好、それは今までの安物の服では無い。
流行の服ですら、軽く凌駕している物であった。
そんなクーの格好を見て、渡辺は嬉しそうに叫んだ。
从*'ー'从「クーちゃん!お姫様みたいだよぉー!」
川 ゚ -゚)「お世辞はいらん」
内心、照れているのだろうか、クーは渡辺から少し目を逸す。
クーが渡辺の元に辿り着いた時、草木をかけわける音がした。
クーは驚き、音がした方向を見る。
そこには、知らない黒尽くめの女性と、良く知っている男子の姿があった。
女性は男性を小脇に抱え、手を振った。
渡辺とクーは、同時に大きな声を出した。
从;'ー'从「遅かったね!シューちゃん!」
川 ゚ -゚)「ブーン!生きてたのか!」
- 18: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:06:16.89 ID:3E36x/YvO
- (;^ω^)「クー!?シュー姉さん降ろしてくれお!!」
ブーンはシューの小脇から逃げ出す様に、身体をジタバタと動かす。
シューは面倒臭そうに、ブーンを放した。
途端、ブーンはクーへと向かい、全速力で走り出す。
川 ゚ -゚)「良かった……本当に良かった」
そんなクーの呟きを無視するかの様に、ブーンは走って来る。
一向に速度を落とす気配が無いブーン。
そんなブーンを見て、クーは嫌な予感がした。
川 ゚ -゚)「いや、待て」
ブーンはクーの眼前まで走り、その勢いのまま抱き付いた。
そして、地面へとクーとブーンは倒れ込んだ。
抱き付いたまま、涙を流しながら、ブーンはクーへと話掛ける。
( ;ω;)「クーが生きていてくれて、良かったお!」
川 ゚ -゚)「お前も答えを見つけたのか。しかし放せ、気持ち悪い」
- 19: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:08:40.72 ID:3E36x/YvO
- その言葉で、ブーンは身体が固まった。
クラスメイトの女子を押し倒し、力一杯抱き締めている。
レイプ犯と言われても、反論出来ない光景だ。
( ^ω^)「すまんこ」
ブーンは、クーから身体を放して立ち上がる。
そして、クーの手を取り身体を起こして上げた。
その光景を見ている、渡辺とシューは、微笑んでいる。
从*'ー'从「まるで王子様とお姫様みたいだねぇ―!」
lw´‐ _‐ノv「見えないがきっと、きもい光景」
シューは、クーとブーンを尻目に渡辺へと近付いて行く。
渡辺はシューへと視線を移し、言葉を投掛けた。
从'ー'从「遅かったねぇー!何かあったのぉ!?」
シューは直ぐには返答せず、渡辺の近くに立ってから口を開いた。
- 21: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:10:40.74 ID:3E36x/YvO
- lw´‐ _‐ノv「月極の能力を使わないブーン君は体力がまるで無い。山道でへばった」
lw´‐ _‐ノv「あと、ブーン君の自殺を止めるのに手間取った」
从;'ー'从「やっぱりちょっと急ぎ過ぎたかぁー」
lw´‐ _‐ノv「渡辺さんはヤブ医者。あまり、カウンセラーには向いていない」
渡辺はうなだれ、シューは淡々と愚痴を零している。
その二人に気付き、クーとブーンは声を出した。
クーは興味深そうに、シューへと口を開く。
ブーンは指を射しながら、叫んだ。
川 ゚ -゚)「……貴女がシューさんか。」
从;'ー'从「危ない人って……」
lw´‐ _‐ノv「渡辺さんは人付き合いが下手。私が説明しよう」
从;'ー'从「お願いぃぃー……」
- 22: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:12:43.56 ID:3E36x/YvO
- シューはそう言うと、ベンチへと腰を降ろした。
ブーンとクーは、シューの目の前に立っている。
渡辺は、地面に胡座をかき、砂で山を作って遊んでいる。
そんな三人を前にして、シューはゆっくりと真面目な口調で語り始めた。
lw´‐ _‐ノv「私の名前はシュー。ブーン君の従姉」
lw´‐ _‐ノv「そこのおかしい娘は渡辺さん」
『おかしい娘』と呼ばれ、腹を立てたのか、渡辺は砂の山を崩した。
そしてもう一度、頬を膨らませながら、砂で遊び始めた。
lw´‐ _‐ノv「答えを見つけ、正気へと戻れた君達なら分かるだろうが、
正気へと戻る切っ掛けを与えてくれたのが、渡辺さんだ」
川 ゚ -゚)「その通りだ。もっと強引に教えてくれても良かったかと思うが」
( ^ω^)「あの手紙かお……」
クーは疑問を口にし、ブーンは納得の表情を浮かべた。
シューは二人の言葉を聞き、そして再び口を開く。
- 23: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:15:09.27 ID:3E36x/YvO
- lw´‐ _‐ノv「クーちゃん。
疲れて眠っている時に、強引に起こされたらどう思う?
怒り狂っている時に強引に止められたら、どうなる?」
川 ゚ -゚)「…………」
その問いにクーは沈黙する。
答えは分かっているが、口には出さない。
渡辺は狂気から正気へと戻す為に、わざと曖昧な言葉を口にして来たのだ。
ゆっくりと、優しく、背中を押すように。
lw´‐ _‐ノv「『狂気』……ブーン君には教えたが、
これは月に因ってもたらされた物では無い。
『願い事を叶えて貰える』そんな甘言で、人々は自ら狂った。
そして、殺し合いという愚かな行為が始まった」
生温い風が吹く。
まるでクーとブーンが犯した罪を、運ぶかの様に。
沈黙が辺りを包み込む。
その沈黙を、ブーンの声が切裂いた。
- 24: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:18:38.73 ID:3E36x/YvO
- ( ^ω^)「でも、何で僕達だけなんだお?他の月極達も止められた筈だお?」
lw´‐ _‐ノv「それはね」
シューが喋ろうとした時、渡辺の声が遮った。
胡座をかきながら、渡辺は小さな声を出す。
渡辺の目の前には、砂で作られた兎が完成していた。
从'ー'从「貴方達だけは狂気に囚われながらも、必死に答えを導き出そうとしていた」
从'ー'从「そして月が手塩にかけて仕掛けたトラップ、ドクオ君に最も近い」
ドクオという名前を聞いて、クーとブーンは肩を落とした。
凡そ一ヶ月前に、クーとブーンはドクオを狂わせてしまった。
あの時、あんな事を言わなければ……。
クーとブーンは暗い表情を落とす。
そんな二人に、今度はシューが話掛けた。
lw´‐ _‐ノv「仕方が無い。人間とは七つの大罪、四苦八苦を大小持っている。
そこに付け込まれると人間という物は非常に脆い」
- 27: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:20:24.01 ID:3E36x/YvO
- 七つの大罪。
暴食。
色欲。
強欲。
嫉妬。
憤怒。
怠惰。
傲慢。
四苦八苦。
生。
老。
病。
死。
愛別離苦。
怨憎会苦。
求不得苦。
五陰盛苦。
月は、人として当然持っている物に付け込み、狂わせた。
そんな人々を月は眺め、弄び、嘲り笑っている。
- 28: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:22:17.47 ID:3E36x/YvO
- ( ´ω`)「おっ……」
川 - )「…………」
未だ暗い表情をしているブーンとクーに、シューは見つめている。
そして、明るい声で二人へと話掛けた。
lw*´‐ _‐ノv「難しい話は置いとく。次は貴方達の番。
貴方達が望んだ『願い事』と、その理由。
そして導き出した答えを大きな声で叫んで」
シューは閉じられている目を、ブーンに向ける。
まずはブーンから、という意味なのだろう。
( ^ω^)「僕の願い事は『本当の友達が欲しい』だお」
( ^ω^)「僕は驕り、友達を演じて来たお……友達を蔑ろにして来たお……」
そして、一つ深呼吸してブーンは叫んだ。
( ^ω^)「だけど見つけたお!僕の本当の友達は―――」
(#^ω^)「ドクオだお!小学校から一緒に過ごして来たドクオだお!」
lw*´‐ _‐ノv「米の次くらいに美味しい答え」
- 30: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:25:11.39 ID:3E36x/YvO
- 真面目な口調から、元の口調へと変わったシューは、にっこりと微笑む。
そのまま、シューはクーへと顔を向けた。
lw*´‐ _‐ノv「次はクーちゃんの番」
クーは、しっかりとシューを見つめ、腹に力を込めた。
そして、力強く語り始める。
川 ゚ -゚)「私の願い事は『神になる事』だ」
川 ゚ -゚)「周囲に虐げられ、屑同然に扱われた」
クーもブーンと同じく、一つ深呼吸し、答えを口にした。
川 ゚ -゚)「周囲の奴等を見返す為に、自分を変える努力をすれば良い」
川 ゚ -゚)「そして、頑張って勉強して総理大臣にでもなれば良い!」
lw*´‐ _‐ノv「ビッグな夢。若さ溢れる答え。私はそういうの好き」
- 31: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:27:01.26 ID:3E36x/YvO
- 息を荒げているクーとブーン。
しかし、二人は爽快感を感じていた。
簡単な答え。
すぐ側にあるが故に、気付か無い。
すぐ側にあるが故に、気付け無い。
クーとブーンは、そんな答えに辿り着いた。
川 ゚ -゚)「一人暮らしを始めるのも良いな」
( ^ω^)「クーも友達だお」
川 ゚ -゚)「あそー、へぇー」
(;^ω^)「ちょ!おま!」
川 ゚ -゚)「冗談だ」
楽しそうに、会話をしているクーとブーン。
そんな二人の会話を、シューはにこやかな表情で聞いている。
渡辺は、砂で二匹目の兎を作っている。
- 32: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:28:56.91 ID:3E36x/YvO
- シューは小さな声で、誰に聞かせるでも無く、呟く。
クーとブーンに向けてなのか、それとも唯の独り言なのか。
lw´‐ _‐ノv「難しい問題の答えを出せたら、やったーってなる」
lw´‐ _‐ノv「喉に引っ掛かる様な意地悪な問題なら尚更」
シューの呟きに、クーとブーンは会話を止め、振り向いた。
そして合点したかの様に、二人は頷いた。
川 ゚ -゚)「確かに気持ち良かったな。川に飛び込んだくらいだし」
(;^ω^)「僕なんか風を掴もうとしたお。変人だお」
川 ゚ -゚)「いや、ブーンは元々変人だ」
(;^ω^)「あのー、クーさん?もしかして僕の事嫌いかお?」
川 ゚ -゚)「大好きだぞ?言動とか行動とか気持ち悪いが」
(;^ω^)「ねぇ、クーさん?今、僕凄い鬱なんだけどお」
- 34: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:31:09.55 ID:3E36x/YvO
- 再び始まる、クーとブーンの楽しげな会話。
まるで、今までの狂気が嘘の様だ。
二人の会話を聞きながら、シューは思う。
lw´‐ _‐ノv(もう少し早くこうなっていれば……これから起こる事態を……)
lw´‐ _‐ノv(…………)
lw´‐ _‐ノv「貴方達、面白い話を聞かせてあげよう」
騒いでいたクーとブーンが、再びシューへと振り向く。
シューは軽く両腕を広げ、語り出した。
lw´‐ _‐ノv「私は目が見えない。だから想像で物事を捉える」
lw´‐ _‐ノv「今、私達の置かれている状況を、一冊の小説として想像してみよう」
( ^ω^)「小説かお?」
lw´‐ _‐ノv「そ、小説。私達はどんな世界観の中に居る?」
ブーンは腕を組んで考え込む。
シューは本当に突飛だ。
自分達を小説として捉える?ブーンには良く分からなかった。
- 39: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:34:39.45 ID:3E36x/YvO
- ブーンが考え込んでいると、隣からクーの声がした。
川 ゚ -゚)「戦闘物の小説だな。テーマは『狂気』」
( ^ω^)「そういう事かお。把握」
クーの言葉でブーンはやっと理解した。
『この世界を小説に例える』
ブーンは、頭をフル回転させて考える。
そして、やっと口を開く事が出来た。
(;^ω^)「しかも、中学生が書いた青臭い小説みたいだお」
シューは笑顔でうんうん、と頷く。
そして、軽く広げていた両腕を大きく広げた。
lw´‐ _‐ノv「そう、その調子。次はもっと視野を広げてみよう」
lw´‐ _‐ノv「私達はどんな役割?作者はどんな人物?」
- 40: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:36:57.74 ID:3E36x/YvO
- ( ^ω^)「作者の方は簡単だお」
(;^ω^)「きっと、薬でもキメながら書いてるお」
シューは『ふーむ』と広げていた両腕をもどし、右手を顎に当てた。
そして、否定の言葉を口にした。
lw´‐ _‐ノv「薬をしてたら書かないと思うし、書けないとも思う。
よしんば書けたとしても文にならないだろう」
( ^ω^)「……じゃあ、作者はどんな風に書いてるんだお?」
lw´‐ _‐ノv「珈琲でも飲みながら、書いてると思う。
珈琲が持つ色々な味覚を、文章で表現しているんじゃないかな」
(;^ω^)「良く分からんお」
ブーンは頭を抱えた。
考えれば考える程、頭が痛くなる。
更に頭痛を酷くさせる様に、隣からクーの声。
- 42: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:38:56.54 ID:3E36x/YvO
- 川 ゚ -゚)「私達の役割は戦闘を盛り上げる為の駒だな」
川 - )「……不遇なキャラを登場させ、小説に味を付ける」
その言葉にシューは頷き、肯定の言葉を漏らした。
lw´‐ _‐ノv「うん、その通り。クーちゃんは頭が良い。誰かと違って」
シューはチラリとブーンを見遣る。
ブーンは、その意味に気付いていない様だ。
頭を抱え、唯呆然としている。
相当ブーンは、頭が悪いらしい。
クーはブーンに、冷ややかな視線を送った。
( ^ω^)「?」
そんなブーンを無視し、シューは言葉を続ける。
lw´‐ _‐ノv「戦闘物と言ったけど、推理物として捉えるのも面白い」
川 ゚ -゚)「?」
lw´‐ _‐ノv「この小説は戦闘物であり、推理物。少しサイケデリック風味」
- 44: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:42:42.59 ID:3E36x/YvO
- lw´‐ _‐ノv「何が私達をこんな風にした?境遇?狂気?それとも自ら?」
lw´‐ _‐ノv「全部違う。推理物なら犯人が居る。動機も持っている」
川 ゚ -゚)( ^ω^)「…………」
クーとブーンは黙り込む。
シューは、何を伝えたいのだろうか。
クーは頭を悩ませ、ブーンは頭痛が一層酷くなる。
lw´‐ _‐ノv「犯人が居るなら捕まえなきゃね」
その時、叫び声と共に地面を踏み荒らす音がした。
クーとブーンは驚き、音がした方向へと勢いよく振り向いた。
すると、二人の目に信じられない光景が、飛び込んで来た。
从 ― 从「…………」
砂で作っていた兎を、渡辺がボロボロに踏み潰していた。
渡辺からは、怒り、憎悪、悲しみ等が入り交じった感情が滲み出ている。
- 45: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:45:16.72 ID:3E36x/YvO
- 从 ― 从「俺は絶対に許さねぇ!もう繰り返させねぇ!!」
川;゚ -゚)「渡辺?渡辺だよな?」
渡辺の異様な変化に、クーは戸惑った。
クーの目の前に居るのは、渡辺じゃない気がする。
渡辺であって渡辺では無い、そんな違和感をクーは覚えた。
川 ゚ -゚)「渡辺!」
从 ― 从「ッ!?」
从 ー 从「……あはは。シューちゃん、後はよろしくねぇー」
从 ー 从「あと、嫌な役回りさせてごめんねぇー」
lw´‐ _‐ノv「……自分で決めた事だからおっけ」
シューが返事をすると、渡辺は一瞬にして何処かへと消えた。
その場にクーは、呆然と立ち尽くした。
- 47: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:48:15.32 ID:3E36x/YvO
- lw´‐ _‐ノv「夜も、もう近い。小屋で残りを話そう」
(;^ω^)「おっ!クーも入るお」
川 ゚ -゚)「渡辺……」
クーは心此所に在らずといった足取りで、小屋へと向かう。
渡辺は、一体どうしてしまったのだろうか。
クーは今まで見た事の無い、渡辺の怒りの表情に心配になった。
そんなクーに向け、シューは静かに語りかける。
lw´‐ _‐ノv「犯人は月。動機は人が狂気に囚われ、殺し合うのを嘲り笑う為」
(;^ω^)「……狂ってるお」
lw´‐ _‐ノv「そして、渡辺さんは何百年も昔にあった、月極同士の争いの」
『―――優勝者』
- 48: ◆iFirHT6FV. :2007/08/18(土) 02:50:57.46 ID:3E36x/YvO
- 第八月話
『真相真理』
終わり。
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