('A`)達は月に願い事をするようです
- 3: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 01:49:30.81 ID:IBuPyD4lO
月に願いを。
- 5: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 01:51:41.81 ID:IBuPyD4lO
- ζ(゚ー゚*ζ「ささ、どんな願い事でも良いわよ」
月は、笑顔でクーへと話掛ける。
じっと見つめていると、心を奪われそうな笑顔だ。
それに加算して、とても甘い言葉。
これらで人々を誘い、狂わせて来たのであろう。
クーも、そんな中の一人であった。
川 ゚ -゚)「…………」
クーは沈黙しながら、真直ぐに目の前に居る月を見つめていた。
左肩に携えている霜月の柄を、力強く握り締める。
―――これから月を倒す為に。
ζ(゚、゚*ζ「何で黙ってるのかしら?こんなに美味しい話なのに」
ζ(゚、゚*ζ「例えば、こんな願い事でも良いわよ」
月は地面で仲良さそうに眠っている、ドクオとブーンを指差した。
クーは月の指の先にいる二人を見て、胸が痛くなる。
見ていられなくなり視線を逸し、再び月へと顔を向けた。
そして沈黙を破って、強い口調でクーは月へと口を開いた。
- 7: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 01:52:55.65 ID:IBuPyD4lO
- 川 ゚ -゚)「『二人を生き返らせて欲しい』または『昔に戻して欲しい』か」
ζ(゚、゚*ζ「そうよ。クーちゃんって頭が良いのね」
川 ゚ -゚)「だが、再び同じ事を繰り返すだろう。お前はそういう奴だ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうそう!その通りよー。クーちゃんは天才かしら!」
月は満面の笑顔で、クーへと拍手をした。
全然嬉しくない、人を馬鹿にした拍手だ。
クーは月を睨み付けながら、霜月を構えようとした。
しかし、月の言葉がその動作を止めさせた。
ζ(゚、゚*ζ「クーちゃんは本当に面白いわ。少しお話しでもしてあげようかしら」
月は踵を返し、クーに背中を向け歩き出した。
川 ゚ -゚)(今なら隙だらけだ)
クーは霜月を肩から下ろし、月の背中へと、刃先を向ける。
そして、全速力で駆けようと足腰に力を込めた。
しかし月は、全て見通していた様だった。
月は背中を向けながら、クーへと喋り掛ける。
ζ( *ζ「無駄よー。何なら試してみる?」
- 8: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 01:55:08.87 ID:IBuPyD4lO
- 月はそう言うと、再びクーへと振り返った。
やはり月は満面の笑顔、絶対の自信も満ち溢れている。
月は右手で自分の胸を、トントンと軽く叩く。
ζ(^ー^*ζ「ここよー、ここを狙ってね。人間の最大の弱点よね」
川 - )「この―――『満月』」
人をどこまでも馬鹿にした口調に、クーは耐え切れなくなった。
クーは電光石火で駆け、月の心臓目掛け、貫こうと襲いかかった。
光輝く霜月の刃先が月の胸に触れる。
しかし―――霜月の刃先は月の胸で受け止められた。
傷一つ付ける事が出来ず、クーの左腕に痺れが走る。
川;゚ -゚)「なっ!?」
ζ(゚ー゚*ζ「それは私が楽しむ為に作った、お・も・ち・ゃ」
ζ(^ー^*ζ「月と人間の距離がどれ程あると思ってるの?あら、哲学的かしら」
月は胸に当てられている霜月の刀身を、右手で軽く握り締める。
すると霜月は、真っ二つに両断されてしまった。
月を倒す為の必須の武器が、無くなった。
川;゚ -゚)「そんな……」
クーは信じられない光景を目にし、逃げる様に後ろへと飛び退いた。
左手に握られている折れてしまった霜月を見て、クーは絶望の表情を浮かべる。
- 10: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 01:56:33.52 ID:IBuPyD4lO
- クーのそんな様子を見て、月は嘲る様に笑う。
とても嬉しそうに、クーへと月は喋り掛ける。
ζ(゚ー゚*ζ「良いわね、その表情。最高の映画を見てる気分だわ」
ζ(゚ー゚*ζ「良い気分!だから、何でも質問してみて。全部答えてあげるから」
月の甲高い声が、VIPタワーの屋上に響く。
クーは目の前に立っている、笑顔の魔王を呆然と見つめる。
頭の中は真っ白、何も考え付かない。
ζ(゚、゚*ζ「人間って愚かね。でもそこが面白いわー」
ζ(゚ー゚*ζ「さぁ、興が殺がれない内に質問してみてー」
クーは絶望の中で、どうでも良い質問をした。
頭の中は本当に真っ白、ふと思い浮かんだ事しか言葉に出来ない。
川 - )「月も仕事をするんだな。優勝者の前にしか姿を現さないと聞いたが」
- 12: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 01:58:13.41 ID:IBuPyD4lO
- ζ(゚、゚*ζ「頭が悪いハイン……いえ、渡辺は勝手にそう考えてたみたいね」
ζ(^ー^*ζ「そう、渡辺!私を殺す為に四六時中走り回ってる姿は、滑稽で面白かったわ」
川#゚ -゚)「お前!」
クーは月の言葉に、激怒した。
必死に何百年と生きて来た渡辺を、月は笑いながら馬鹿にした。
クーの背中を押してくれた渡辺を、馬鹿にした。
月に顔を向け、クーは鋭い視線で睨み付ける。
ζ(゚、゚*ζ「あら、絶望の次は怒り?ばっかみたい。でも楽しいわ」
川 - )「…………」
クーは、心を落ち着かせようと息を整えた。
そして、月を倒す為の手段を考える。
何か、何かある筈だ。そんなクーに追討ちをかける様に月は口を開く。
ζ(゚、゚*ζ「今回の映画、一番面白かったのはあそこね」
- 13: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 01:59:58.26 ID:IBuPyD4lO
- 川 ゚ -゚)「何だ……」
怒りを抑えながらクーは、月に向け質問を投げ掛ける。
すると、月はにんまりと笑いながら答えた。
ζ(^ー^*ζ「シューって娘が自ら命を絶った場面♪」
ζ(^ー^*ζ「勇者ですって。笑い過ぎてお腹が痛くなったわ」
川; - )「はぁっ…はぁっ……」
シューは自らの命を賭して、成長させてくれた。
明確な目標を掲げてくれた。
そんな優しくて心強かったシューを、月は馬鹿にする。
クーは眩暈を覚え、地面に両膝を付いた。
そして、地面へと俯せに倒れ込んだ。
川 ; -;)「……シューさん」
クーは地面を見つめ、涙を流した。
月は余りにも狡猾で強過ぎた。
姿形は人間だが、まるで魔王、化け物だ。
- 15: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:01:04.90 ID:IBuPyD4lO
- 倒れ伏しているクーへと、月は歩み寄る。
手足を楽しげに、大きく振りながら、クーへと近付く。
クーの側まで来た時、月はしゃがみ込んだ。
そして、クーの頭を撫でた。
ζ(゚、゚*ζ「よしよーし。クーちゃん頑張ったねぇー」
渡辺の真似をしながら、月はクーの頭を撫で続けた。
クーは微動だにせずに、ただ涙を流し続けている。
ζ(゚ー゚*ζ「んー、今回も良い映画だったわ」
ζ(゚ー゚*ζ「やっぱり範囲を狭くしたのは正解だったわー」
川 ; -;)「―――?」
その言葉に、クーはピクリと反応した。
今、月は何か妙な事を言った。
クーは力無く、小さな声で月へと呟いた。
川 ; -;)「……範囲を狭く?」
- 17: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:02:31.78 ID:IBuPyD4lO
- ζ(゚、゚*ζ「世界規模で、殺し合わせたら時間がかかるじゃない」
ζ(^ー^*ζ「そんなの面倒臭いわよ。私は短くて濃い映画が好き♪」
月は面倒臭がり屋で、短気な性格の様だ。
だから、モリタポ市のみに焦点を絞ったのだ。
川 - )(待て。今、こいつは何か馬鹿な事を言った)
クーは地面に倒れながら、考える。
頭の中に流れた一筋の光を、掴もうとした。
しかし、その一筋の光は、月の言葉により何処かに行ってしまった。
ζ(゚、゚*ζ「ドクオ君には期待してたんだけど、がっかりだわ」
川 - )(ドクオ……)
ζ(゚ー゚*ζ「でも、番狂わせも楽しいわよねー」
川 - )(……む?)
- 18: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:04:37.51 ID:IBuPyD4lO
- クーの頭の中に再び、一筋の光が舞う。
何だ、この妙な感じは?
不規則に舞う一筋の光をクーは掴み切れず、何処かに行ってしまった。
川 - )「…………」
クーは月が撫でている手を払い除け、立ち上がった。
涙を腕で拭き、月には目もくれず夜空を眺めて、考え込む。
手を払い除けられた月は、愚痴を零している。
ζ(゚、゚*ζ「あら、哀しいわねぇ」
川 ゚ -゚)(哀しい?)
ζ(゚ー゚*ζ「でも、クーちゃんは面白い。面白過ぎるわ」
川 ゚ -゚)(面白い?)
次々とクーの頭の中に、出現する一筋の光。
その幾つかをクーは掴んだ。
それは朧気だが、確かなヒント。
- 21: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:06:53.26 ID:IBuPyD4lO
- 川 ゚ -゚)「これは……
クーは無意識に呟いた。
その様子を見た月は立ち上がり、笑顔で口を開いた。
ζ(゚ー゚*ζ「なになに?映画より面白い事が思い付いたの?教えてー」
クーは、月の方へ身体を向けた。
そして、月の顔をじっと見つめる。
月は何か期待しているのか、両手を口に当て、頬が少し紅潮していた。
川 ゚ -゚)「いや、願い事を叶えて貰おうかと」
ζ(゚ー゚*ζ「おっけい!渡辺みたいにつまらない物は駄目よー」
クーと月の間に、風が吹き抜ける。
クーは沈黙し、月は目を輝かせている。
ほんの少しの静寂の後、クーは願い事を口にした。
川 ゚ -゚)「『お前に死んで貰いたい』」
- 23: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:08:50.78 ID:IBuPyD4lO
- クーの願い事に、月は少し驚いた。
しかし月は笑顔を崩さず、クーに答える。
ζ(゚ー゚*ζ「おおっ!?面白い答え!でも残念!」
ζ(^ー^*ζ「流石にその願い事は封じてあるわよ。
私が死んだら楽しめなくなるもの」
川 ゚ -゚)(逃げに回っている。意外と臆病か)
月はクーの面白い願い事に、両腕の肘を曲げ、胸の前に置いて恍惚の表情を浮かべている。
クーは、その様子をじっと見つめている。
川 ゚ -゚)(ふーむ、これはどう見ても)
クーが考えていると、月は両腕をバッと広げた。
そして満開の笑顔で、クーへと高い声色で喋り掛けた。
ζ(^ー^*ζ「凄い凄い!!今度は最高のオチの映画が見られそう!!」
ζ(^ー^*ζ「クーちゃんなら、私を満足させてくれるよね♪」
- 26: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:11:16.49 ID:IBuPyD4lO
- 川 ゚ -゚)(もう一個、確かめてみるか)
クーは左腕を思い切り振り被り―――月の顔面をぶん殴った。
やはり、クーの左腕に痺れが走る。
笑顔が徐々に消え去って行く、月の顔。
ζ( *ζ「……なぁに?これ?」
川 ゚ -゚)「いや、急に癇癪が来たので」
わなわなと、月の両肩が震え出した。
月の全身から、怒気が溢れ出る。
ζ( *ζ「人間如きが―――」
月が右手人差し指を、クーの胸元へと近付ける。
ζ( #ζ「私に触れるな!!」
月の右手人差し指の先が、クーの胸元に触れた。
途端、凄まじい衝撃波と共に、クーは後方へと弾き飛ばされた。
- 28: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:13:12.33 ID:IBuPyD4lO
- クーは地面に身体を思い切り、叩き付けられた。
勢いは止まらず、身体を地面に擦り切らせながら、遥か後方へと飛ばされて行く。
事故防止柵に背中を叩き付けられて、やっと勢いは止まった。
事故防止柵は、穴が開きそうなぐらい歪んでいる。
川メ゚ -゚)(流石、転落事故防止柵)
川メ゚ -゚)(そして、今度は怒り、か)
倒れ込みながら遠くを見ると、月が怒りの表情でクーを見つめている。
すると、月の姿が掻き消えた。
気が付けば、月はクーの側に立ち、嘲笑しながら見下ろしていた。
川メ゚ -゚)「速いな」
ζ(゚ー゚*ζ「何のつもりかしら?楽しかったから良いけどー」
川メ゚ -゚)(今度は、嘘)
川メ゚ -゚)「さて、そろそろ願い事を考えさせてくれ」
ζ(^ー^*ζ「楽しい物を頼むわねー。期待してるから」
- 31: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:15:09.29 ID:IBuPyD4lO
- クーは知った。
月は魔王ではない事を。
普通の人間と相違無い。
月と人間、ただそれだけの違い。
先程からクーは確かめていた。
『人間』を形成する根幹の部分を。
月は歪んでいるが喜んでいた。
月は激情に流され怒った。
月は狂った哀しみを持っている。
月は嘲り笑いながら楽しんで来た。
喜怒哀楽。
人間の完成だ。
歪んではいるが、月は人間だ。
相手が人間ならば、勝機はある。
- 32: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:16:59.36 ID:IBuPyD4lO
- 喜怒哀楽から出来ている人間。
若しくは人間が先に在り、喜怒哀楽が作られて行くのかもしれない。
しかし、どちらにしても色々な性格がある。
臆病。
嘘付き。
面倒臭がり。
賢しい。
短気。
高慢。
卑怯。
傲慢。
狡猾。
そして、言っていた。
『人間とは七つの大罪、四苦八苦を大小持っている』
『そこに付け込まれると人間という物は非常に脆い』
月も人間であり、幾つか弱みを持っていたのだ。
さぁ、どう付け込もうか。
もう、武器は無い。
そして、月は反則的に強い。
- 34: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:18:56.62 ID:IBuPyD4lO
- こうも、言っていた。
『これが月の犯した重大なミス』
『ミスを大いに利用してあげたら良い』
『飼い犬に手を噛まれるみたいなぁー?』
月の犯した重大なミス?
……面倒臭がりの月なら、有り得るかもしれない。
ちょっと、質問してみようか。
正解なら、足を掬ってやろう。
そして月が今までして来た様に―――弱みに付け込んでやる。
OK、天才渡辺。
全力で駆けるぞ。
- 37: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:21:23.51 ID:IBuPyD4lO
- 川メ゚ -゚)「うーん、なかなか決まらん」
ζ(^ー^*ζ「良い願い事を期待してるわー」
ふん。
馬鹿ヅラして笑いやがって。
こんな奴に、私達は悩まされて居たのか?
悔しくて涙が出そうだ。
……っと、その前に質問だ。
川メ゚ -゚)「ところで願い事って言霊で?」
ζ(゚、゚*ζ「何で知ってるの?」
ζ(゚、゚*ζ「私自身が人間に叶えてあげるとか面倒臭いし、愚かしいわ」
ああ、良かった。
お前の高慢さや面倒臭がりも、そこまで来たら表彰物だ。
とゆうか素の性格が出てるぞ。
もう少し、自分を見つめ直した方が良い。
川メ゚ -゚)「そうか、願い事が決まった」
ζ(゚ー゚*ζ「本当!?良いオチを見せてね!!」
- 38: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:23:28.63 ID:IBuPyD4lO
- 川メ゚ -゚)「よっこらセンチメートル」
私は立ち上がり、月に顔を向けた。
身体を動かすと痛い。
あちこち傷だらけだ。
しかしこの言葉、勇気が湧くな。
ζ(゚、゚*ζ「なぁに?その掛け声?」
川メ゚ -゚)「勇気が湧く呪文だ」
ζ(゚、゚*ζ「ふーん、よく分からないわー」
川メ゚ -゚)「あそー、へぇー」
ζ(゚、゚*ζ「…………」
月さえも黙らせるこの言葉。
もっと言いたかった……。
もっとドクオとブーンに……。
もっと渡辺とシューさんに……。
- 41: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:25:45.04 ID:IBuPyD4lO
- 川メ゚ -゚)「では、願い事を叶えて貰おう」
ζ(^ー^*ζ「はいはーい!つまらない物は駄目よー」
つまらないかもしれない……。
もう、誰にも会えなくなる……。
ドクオ、愛してたぞ。
ブーン、友達になってくれてありがとう。
シューさん、面白かった。もっと喋りたかった。
渡辺、お疲れ様。これからはゆっくりしてくれ。
春には皆で花見をしたい。
夏には皆で海に行きたい。
秋には皆で紅葉を見に行きたい。
冬には皆でスキーに行きたい。
春夏秋冬、皆と一緒に居たい。
皆とな……。
……私は、罪を背負ってこの世界から、さようならだ。
本当は嫌だけど、これが私の贖罪だ。
- 43: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:28:56.11 ID:IBuPyD4lO
- 川メ゚ー゚)「ふんふんふーん、ふふふふふーん♪」
ζ(゚ー゚*ζ「鼻歌?」
川メ゚ー゚)「鼻歌だな」
鼻歌を奏でる。
頑張る為に。
努力をする為に。
負けない為に。
流されない為に。
逃げない為に。
さて、行くか。
もう戻れんが、これで良い。
馬鹿な話は馬鹿な話で終わりだ。
ドクオ、ブーン、渡辺、シューさん。
私はこれから―――。
川メ゚ー゚)「私の願い事はな」
ζ(^ー^*ζ「うんうん!!」
さぁ、心を込めて駆けるぞ。
川メ゚ー゚)『―――――だ!』
ζ(゚、゚;ζ「え―――」
- 45: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:31:04.39 ID:IBuPyD4lO
月に願い事をした。
- 49: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:33:55.24 ID:IBuPyD4lO
- 車道を改造車が走っている。
スピードは凄く―――遅い。
(,,゚Д゚)「んだよ、おめえら寝ちまったのかよ」
(* ー )( ∀ )(*-∀-)( -∀-)「Zzz……」
(,,゚Д゚)「ちっ!」
運転手のギコは、舌打ちをした。
夜中に、喋り相手がいないのは、寂しい物である。
ギコが遥か前方を見ると、綺麗な満月。
(,,゚Д゚)「月に願いをってか?」
(,,゚Д゚)「いらねぇよ!そんなもん!」
(,,゚Д゚)「自分の願いは、自分で切り開いていくもんだ!」
『五人で一生楽しく生きる』
(,,゚Д゚)「やってやるぜ!」
ギコは勢いに任せてアクセルを―――軽く踏んだ。
(;,゚Д゚)「安全運転、安全運転……」
- 53: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:36:06.41 ID:IBuPyD4lO
- ペニサスはリビングのソファーに座り、俯いている。
時刻は夜中の3時。
ドクオが亡くなってからは、不眠の日々が続いている。
('、`*川「ドクオ君……」
ペニサスが呟いていると、パジャマ姿のヒートが扉を開けて入って来た。
そして、大きな声で叫んだ。
ノパ听)「またお母さんはメソメソして!!」
ヒートはそう叫ぶと、窓のカーテンへと向かう。
カーテンをヒートは、両手で勢いよく開いた。
すると、満月の淡い光がリビングに差し込んだ。
ヒートはソファに座っているペニサスに向け、再び大声で叫ぶ。
ノパ听)「そんなんじゃ、ドクにいもあっちで安心出来ないぞおぉぉ!!」
('、`*川「……そうね」
ペニサスとヒートは窓辺に並んで、満月を眺める。
二人で、願い事をした。
ノパ听)「ドクにいがあっちでも、だるそうにしてませんように!!」
('、`*川「ドクオ君とブーン君が、仲良くしてますように」
満月は、その願い事に少し戸惑った様な、光を放った。
- 58: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:39:06.18 ID:IBuPyD4lO
- ショボンは電気を消して、カウンターの端っこの席に座っている。
そして、ビデオを再生し歌を聴いていた。
(´・ω・`)「ドクオ君……ヤヨちゃん……」
二人を亡くしたショボンは、悲嘆に暮れていた。
最近、仕事をする気力すら湧かない。
『二人が生き返れば良いのに』と願っている時もある。
ショボンは珈琲を淹れてあるコーヒーカップの縁に、口を付けて飲む。
(´・ω・`)「苦い……恋か……」
そんなショボンを、窓から入り込んだ、月明かりが照らした。
優しく、ふんわりとした月明かり。
テレビ画面から歌声が聞こえて来る。
『昔にはもう戻れない だけど強く生きて行こう』
すぐ側に答えはあった。
(´・ω・`)「……頑張るかな」
ショボンは立ち上がり、テレビの電源を消した。
- 59: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:41:49.43 ID:IBuPyD4lO
- 从'ー'从「シュー、飯だぜー」
渡辺は、シューの墓前に白いご飯を供えた。
木で作られた十字架を、満月の光が優しく照らす。
从'ー'从「ふふふふん、ふふふふふふーん♪」
渡辺は鼻歌を奏でながら、満月を見上げる。鼻歌を止め、渡辺は満月へと問掛けた。
从'ー'从「元気でやってるかー?」
その言葉を満月が聞いたのか、渡辺に明るい光が降り注いだ。
渡辺は一つ頷き、小さく呟いた。
从'ー'从「お前もゆっくりしろよ」
言い終えると渡辺は小屋の中へと、入って行った。
お墓を、ベンチを、小屋をふんわりと月灯りが照らし出した。
- 64: ◆iFirHT6FV. :2007/08/25(土) 02:46:28.48 ID:IBuPyD4lO
- 月は少し前から、この星を眺めている。
優しい光を、放ちながら思う。
「面白いな」
月は星を眺めて、色々な事を知る。
それは幸せな事だったり、或いは不幸な事だったりもする。
『頑張れ』
時々、『願い事を叶えて欲しい』と呼び掛けられる事がある。
しかし、月は叶えない。
『すぐ側に答えがあるぞ』
月は、にっこりと優しく、笑う。
『さぁ、月下で努力しろ、負けるな、人間達』
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/25(土) 02:48:27.80 ID:IBuPyD4lO
- 第十二月話
『月に願う』
終わり。
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