ξ゚听)ξは夏服翻すようです
- 129: ◆uAn5dIn1Sw :07/27(金) 23:59 AyWD+g/bO
最終話 ツンとブーンと夏服
ビデオテープが壊れたのを確認した。
ルールは守ったよ。
('A`)ドクオ先輩。
川゚‐゚)クー先輩。
( ゚∀゚)ジョルジュ先輩。
そして顔もみたことない先輩の先輩。
校長室に向かって歩き出す。
試聴覚室の扉を横に滑らせ退室。もう戻るつもりはない。
ξ゚听)ξ「ありがとうございました」
校長室の前に立った。
近くに鏡がある。
最期の朝のように見た目を取り繕おうか。
ツインテールよし。
スカートよし。
『ξ゚听)ξ』
鏡に映った自分の姿は驚くほど生前と変わらない。
でも、私は死んでいる。
- 130: ◆uAn5dIn1Sw :07/28(土) 00:22 b518qQtTO
校長室の木製のドアに手をかけた。
焦る私の心にもう一つの心、
冷静な私が横やりを入れてくる。
『ねえ、おかしいじゃない?死んでいる人間がブーンの前に現れるなんて』
思わずドアノブにかかった手が離れる。
そうだ……
私はブーン達の世界では死んでいる人間で、ブーンの前に現れることは非現実的な有り得ないことだ。
そんな非現実がブーンが見たらどう思う?
逃げだすに決まっている。
私は実際先輩方から逃げ出したのだから。
ちっぽけなドアを前に、私の気持ちは揺らいでいる。
ちっぽけ……ちっぽけか。
私は誰だ?
私は……
ξ )ξ「私は……!」
私はちっぽけじゃない!
思い出せ!
私は強気な恋する女の子、
ξ゚听)ξ「ツンデレ だ!」
迷うことなんかない。
ただ、自分の気持ちに正直になればいい。
冷静な私、臆病な私、バイバイ。
強気な気持ちを焼き付け、
ドアを開いた。
- 132: ◆uAn5dIn1Sw :07/29(日) 00:27 90R0hT1NO
ドアからは蒸し暑い風が吹き込んできた。
一歩を踏み出した。
焼けるように熱いアスファルトの温度が上履きのゴム底から伝わってくる。
強い日差しは真っ昼間の証だ。
ξ;゚听)ξ「暑い……」
額から流れた汗が一滴、アスファルトに染みを作った。
空は青い。
でも、青い空には入道雲の他に巨大な砂時計が浮かんでいる。
こうして感傷に浸っている間にも、砂は落ち続けている。
時間が、五分がもったいない。
右足で力強くアスファルトを蹴って駆け出した。
大丈夫。ここは知っている道だ。
- 133: ◆uAn5dIn1Sw :07/29(日) 00:40 90R0hT1NO
息をどんなに切らせても
何度転んで擦りむいても
止まってたまるか。
私は走り続ける。
まだ午後の授業の途中の筈だ。
ブーンに逢って、一言大好きと言うんだ。
ξメ )ξ「がっ!」
アスファルトの微妙な段差に躓いて盛大にこけた。
もう三度目。
スカートは引っ掛けてすこし破けたし、ネクタイなんか邪魔だから投げ捨てた。
砂時計は半分の砂が落ちた。
ほっぺた擦っても、肘から血が垂れても痛くないよ。
前に前に前に前に!
- 134: ◆uAn5dIn1Sw :07/29(日) 00:49 90R0hT1NO
ξメ )ξ「ハァ……ハァ……」
わき腹や肺の悲鳴を聞き流しながら校門にたどり着いた。
気合いだけで立っている。
なら気合いだけで走れるよ。
グラウンドを横切り、玄関を走り抜けて教室に向かった。
階段を三段飛ばして登ろうとしたのが間違いだった。
踏み外して硬い階段に体を打ちつけてしまった。
立てよ……
体が動かない……
立ち上がってよ……
最期に最期くらい言うこと聞いてよ……私の体。
階段の窓から覗く空の砂時計は殆ど砂が残っていない。
- 139: ◆uAn5dIn1Sw :07/29(日) 13:13 90R0hT1NO
ならせめて
声だけでも伝えたい。
腹の底から
振り絞って
ξメ )ξ「ブーン!」
ξメ;;)ξ「大好きだよ!」
カッコいい言葉なんて思いつかない。
ストレートに叫ぶよ。
ξ ;;)ξ「大好きだよ!ブーン!」
学校がざわめいている。
聞こえたの?
駄目だ……
もう……視界が霞む……
( ω )「ツン……!」
あったかい。
あったかいよブーン。
心臓の鼓動がわかる。
ブーンは生きている。死人の私が彼の心を奪ってはいけないな。
ξ )ξ「ブーン、ありがとう。あったかいよ」
( ;ω;)「ツン!もう離したくないお!ずっとずっと一緒になりたいお!」
ξ ; ;; 「ダメだよブーン。私のことは忘れて。
ブーンが幸せになれなかったら、私が幸せじゃないの」
言えた。
体が……軽い。
まどろみの中に溶けていくように意識が遠くなる……
楽になるってこんな感じなんだ。
( ;ω;)「ツン!ねえツン!」
・
・
・
・
戻る/えぴろーぐ