(´・ω・`) ショボンは帰ってきた風の料理人のようです
- 9: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:34:00.37 ID:eh9BompZO
1話
常夏夜
- 10: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:34:58.58 ID:eh9BompZO
- ※
俺は張り切っていた。
今夜は、毎週金曜恒例の、定例毒男祭りを開催するからだ。
様は、俺の住む小汚ないアパートに集まって、毒男同士で飲み会をするというものだ。
('A`) 「豚肉と生姜」
俺は、カートに入っている豚肉と生姜を見て、ニヤけた。
スーパーは、やはりいい。実に居心地がいい。
- 11: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:36:21.17 ID:eh9BompZO
- ('A`) 「今夜の肴は生姜焼きだ」
俺の考えは決まっていた。
酒の肴に生姜焼きを作ろう。生姜焼きは実にいい。
仮に、酔っていたとしても、確実に上手く作れる。それでいて、美味い。
濃いめの甘辛味は、酒にもよく合う。
俺は、さらにニヤけた。相変わらず、周りの奥方の目が痛い。
その時だ。
(´・ω・`) 「無難な料理で、毒男たちを喜ばすつもりか?」
いつかの男だった。
そう、その名は―――
(´・ω・`) 「ひさしぶりだな。風の料理人、ショボンだ」
- 12: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:37:23.27 ID:eh9BompZO
- 俺は、全身を歓喜に震わせた。
('A`) 「今日は一体どんな料理を教えてくれるんだ?」
俺の期待は高まっていた。
(´・ω・`) 「生姜焼きだ」
俺の期待は、まんまと裏切られたのだった。
('A`) 「ガッカリしたよ」
あぁ、ガッカリだ。
(´・ω・`) 「パイナップルジュースを用意しろ」
俺の落胆を無視し、男は不可解なことを言い出した。
- 17: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:38:25.33 ID:eh9BompZO
- ('A`) 「そんなもん用意してどうするんだ?」
生姜焼きについて教えると言ったり、パイナップルジュースを用意しろと言ったり。
男の考えは、俺には到底理解出来なかった。
ただ、俺の体は自然とジュースコーナーの前に移動していた。
脳は拒否しても、体は既に、男を受け入れていたのだ。
- 18: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:39:34.23 ID:eh9BompZO
- (´・ω・`) 「生姜焼きのタレに、パイナップルジュースを使え」
なんということだ。肉と果物だと。
俺の発想の規格外だ。
(´・ω・`) 「砂糖の代わりに、パイナップルジュースを使え。
独特の香りと甘味が、豚肉とよく合う」
(´・ω・`) 「こんな暑い夜には、常夏の果物のサッパリ感が堪らない」
そう言って、男は俺にトロピカーナの200ml紙パックを手渡した。
- 21: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:40:54.96 ID:eh9BompZO
- (´・ω・`) 「タレを作った後に残ったパイナップルジュースで、事前に肉を漬け込んでおけ。
肉が柔らかくなる」
気付くと、俺は叫んでいた。
('A`) 「ありがとう!風の料理人、ショボン!」
男は一言残して消えた。
(´・ω・`) 「毒男たちの夜に、幸あれ」
今宵は、いい祭りになりそうだ。
- 25: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:45:00.40 ID:eh9BompZO
2話
運動会
- 27: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:46:00.86 ID:eh9BompZO
- ※
僕は意気揚々と、パスタを茹でていた。
( ^ω^) 「得意料理はパスタだお♪」
考えると、僕はパスタを茹でるたびに、こんなことを呟いている。
好きな女子に見せるには、少々痛々しい。
( ^ω^) 「仕上がりはもちろんアルデンテだお♪」
もはや、僕の腕前は、パスタを茹でることに関してはプロ級だろう。
正直、自信がある。
- 28: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:46:58.25 ID:eh9BompZO
- パスタを湯から上げ、あらかじめ炒めておいたソーセージと野菜と一緒に炒め合わせる。
そして―――
( ^ω^) 「ケチャップ大量投入だお♪」
出来上がったのは、ナポリタン。
古き良き一品にして、逸品である。
( ^ω^) 「無難にうめぇwwwwwwクチャクチャwwwwww」
- 29: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:47:59.42 ID:eh9BompZO
- 僕が美味しくナポリタンを頂いていた、その時だ。
(´・ω・`) 「温故知新て言葉を知ってるか?」
僕は盛大にナポリタンを吹いた。
いつかの男だった。
そう、その名は―――
(´・ω・`) 「ひさしぶりだな。風の料理人、ショボンだ」
- 30: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:48:59.64 ID:eh9BompZO
- 歓喜と共に、僕は苛立ちを覚えた。
僕は子供じゃない。温故知新の意味ぐらいは知っている。
( ^ω^) 「昔のことを研究して、それによって現代のことを解釈・理解することだお」
(´・ω・`) 「ほぉ、わかってるじゃないか。
古きを知り、今に活かせ。つまりはそういうことだ」
男は一体何を言いたいのだろう。
僕は首を捻った。
(´・ω・`) 「ナポリタンを、1ランク上にする」
- 31: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:50:01.33 ID:eh9BompZO
- なんということだ。
一つの完成形である、この、ナポリタンという料理を1ランク上げると言うのか。
僕の心は踊り出した。
だが、次の瞬間、その舞踏会は中止となった。
(´・ω・`) 「生クリームだ」
生クリームだと。
一人暮らしの僕に、使いこなせる代物ではない。
- 33: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:51:18.97 ID:eh9BompZO
- 一パックで約200ml。
ナポリタンごときに、そこまで大量に使えと言うのか。
(;^ω^) 「確実に余りますお」
(´・ω・`) 「お菓子作りでもするか」
余った分は、お菓子作りに使えだと。
無理だ。僕は甘党ではない。と言うか、お菓子作りについての知識は、皆無だ。
- 35: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:52:23.26 ID:eh9BompZO
- (´・ω・`) 「冗談だ」
そう言って、男は僕に、小さな塊を三つ、放り投げた。
(;^ω^) 「これは!?」
(´・ω・`) 「コーヒー用クリームだ」
(´・ω・`) 「これなら無駄は出ない。
一人前で、三つだ」
- 40: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:53:41.08 ID:eh9BompZO
- (´・ω・`) 「ケチャップが全体に行き渡った後、コーヒー用クリームを入れて、サッと炒め合わせろ。
あまり時間を掛けるなよ」
僕は想像した。
その様は、先程まで心に描いていた舞踏会ではなく、赤と白の入り乱れた、運動会だった。
- 42: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 22:55:48.61 ID:eh9BompZO
- (´・ω・`) 「酸味の中に、コクが生まれ、美味い」
気付くと、僕は叫んでいた。
( ^ω^) 「ありがとう!風の料理人、ショボン!」
男は一言残して消えた。
(´・ω・`) 「ナポリタンに、アルデンテは不要だ」
前略、お袋様。
プロへの道は、遠いようです。
- 50: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 23:00:26.10 ID:eh9BompZO
3話
置き去りに
- 51: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 23:01:27.25 ID:eh9BompZO
- ※
私は、自身の不甲斐なさに肩を落とした。
専業主婦としての自尊心は、既に崩壊していた。
(;゚ー゚) 「ハンバーグも上手く焼けないなんて」
周りは黒く焦げ、中身は赤かった。
俗に言う、『生焼け』だ。
(;゚ー゚) 「何がいけなかったのかしら?」
- 52: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 23:02:29.29 ID:eh9BompZO
- 私は料理の本を開いた。
そこには、こう、記してある。
『よく熱したフライパンに、タネを入れ、強火で表面を焼き固める』
(;゚ー゚) 「本の通りにしたんだけどなぁ…」
何故、どこがいけなかったのだろう。
(´・ω・`) 「オーブンを使って中まで火を通せ」
いつかの男だった。
そう、その名は―――
(´・ω・`) 「ひさしぶりだな。風の料理人、ショボンだ」
- 53: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 23:03:33.94 ID:eh9BompZO
- 私の股間を濡らした男が、再び、私の目の前に現れたのだ。
しかし、今回は濡れそうにない。
(;゚ー゚) 「オーブンはダメ!お菓子作り用よ!」
そう、私の趣味はお菓子作りだ。
肉を焼いたオーブンで、お菓子作りをするなど、考えたくもない。
(´・ω・`) 「なるほど…
ならば、始めから弱火で焼け」
男は信じられないことを言う。
- 55: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 23:05:04.23 ID:eh9BompZO
- 先程の本には、こうも記されている。
『強火で表面を焼き固め、肉汁を閉じ込める』
(#゚ー゚) 「私にパッサパサのハンバーグを食べろって言うの!?」
私は怒り狂った。そんなもの、美味いはずがない。
(´・ω・`) 「フライパンに油を敷き、タネを並べて、弱火で火を点けろ。
じっくり、中まで火を通せ」
私の怒りなど関係なく、男は話を続ける。
- 57: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 23:07:51.52 ID:eh9BompZO
- (´・ω・`) 「裏面が焼けたら、ひっくり返して蓋をしろ。
そして、また、じっくり中まで火を通せ」
(´・ω・`) 「中まで焼き上がったら、火を止めろ。
ここからが肝心だ」
(´・ω・`) 「蓋をしたまま、五分程度、放置しろ。
こうすることで、肉汁が落ち着く。
ナイフを入れると、肉汁が溢れ出す。
ジューシーな仕上がりだ」
- 61: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 23:09:53.90 ID:eh9BompZO
- いつの間にか、私の股間は濡れていた。
またしても欲情してしまった私は、叫んだ。
(*゚ー゚) 「抱いて!」
男は一言残して消えた。
(´・ω・`) 「うつるよ」
悲しきかな、男は、性病持ちらしい。
- 71: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 23:12:42.05 ID:eh9BompZO
最終話
眠れる師死
- 74: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 23:13:47.52 ID:eh9BompZO
- ※
今、僕はスーパーのレトルトコーナーにいる。
ここに来るたび、僕はあなたを思い出す。
(´・ω・`) 「師匠、僕は許せません」
- 76: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 23:14:43.97 ID:eh9BompZO
- ※
( ∵) 「ゴホッゴホッ…
私はもうダメだ。死期が迫ってるのはわかってる」
僕の最愛の師は、病に臥せていた。
(´・ω・`) 「師匠、そんなこと言わないでください…
僕が何かご馳走しますから」
すると、弱々しく、師匠は言った。
- 77: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 23:15:58.14 ID:eh9BompZO
- ( ∵) 「お粥が食べたい」
そんな簡単なものでいいのか。
僕は、炊飯ジャーから鍋に、ご飯を移した。
そして、水を入れ、煮た。
(´・ω・`) 「師匠、出来ました。どうぞ」
しかし、師匠はそれを口にすることはなかった。
( ∵) 「…」
師匠は死んでいた。
- 80: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 23:17:31.94 ID:eh9BompZO
- その手元に残されたメモ帳には、こう記されていた。
『お粥は生米から炊け』
(´;ω;`) 「師匠〜!!」
僕は泣いた。不甲斐ない自分を呪って、泣いた。
そして、僕は師匠に誓ったのだった。
(´・ω・`) 「僕は、あなたの意思を引き継いだ料理人になります」
(´・ω・`) 「僕は―――」
- 83: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/21(火) 23:19:06.12 ID:eh9BompZO
- ※
(´・ω・`) 「僕は『風邪の料理人』、ショボンだ」
レトルトお粥を握り締め、僕は呟いた。
そう、師匠は風邪をこじらせて死んだのだった。
\(´・ω・`)/ おしまい
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