(´・ω・`) ショボンは風邪の料理人のようです〜FINAL〜

8: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 18:51:18.06 ID:1HdRkG7DO

プロローグ

亡き者



9: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 18:52:32.95 ID:1HdRkG7DO
今、僕は深い寝むりから目を覚ました。
風邪をこじらせて寝込んでいたのだ。

(´・ω・`) 「お粥でも作るかな…」

看病してくれる彼女が、友達が欲しい。
布団から這い出て、僕は呟いた。
一人暮らしは、なかなか辛い。
その時だ。
地獄の亡者から、悲鳴が聞こえた。

(´・ω・`) 「仕方ない…行くか…」

着替えるのが面倒臭かったので、僕は裸のまま、アパートを出たのだった。



10: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 18:53:17.99 ID:1HdRkG7DO

1話

鬼技



13: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 18:54:29.60 ID:1HdRkG7DO


今、俺はフライパンを振っている。
疾風の如く手早く、稲妻の如く大胆に、それは出来上がった。

('A`) 「チャーハン出来たよ!」

決まった。あぁ、決まった。
あの悪名高い『黄金チャーハン』。
今、それが俺の目の前にある。

('A`) 「いただきましゅ〜」

手を合わせ、俺は言った。
しかしだ。

('A`) 「美味くはないな…パサパサだし」

何故だ。俺に間違いはなかったはずだ。
俺は先程のことを思い出した。



15: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 18:55:55.61 ID:1HdRkG7DO


('A`) 「今日は黄金チャーハン作るよ!」

('A`) 「まず、炒める前に、ご飯と溶き玉子を混ぜる」

炒める前に、ご飯と溶き玉子を混ぜる。
そう、これは、素人が黄金チャーハンを作るための裏ワザである。
こうすれば間違いなく、全体が玉子に包まれた黄金チャーハンが出来上がる。

('A`) 「あとは、炒めて、塩胡椒をする。
もちろん、フライパンは全力で振る。
最後に、刻んだネギを入れて完成だ」



16: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 18:56:57.85 ID:1HdRkG7DO


('A`) 「俺に間違いはなかった…はずだ」

その時だ。
あの男が現れたのは。

(´・ω・`) 「ゴホッゴホッ…風邪の料理人、ショボンだ」

男は裸だった。

('A`) 「でもそんなの関係ねぇ!!」

俺も裸になったのだった。



18: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 18:58:12.86 ID:1HdRkG7DO
('A`) 「チャーハンの作り方を教えてくれ!」

俺は懇願した。
しかし、男の口から出た言葉は、今世紀最大のタブーだった。

(´・ω・`) 「ご飯を水で洗え」

ご飯を水で洗う。
その行為は、お鍋を食べた後に、サラッとした雑炊を食べたい人のみに許された禁忌である。
いくらこの男であっても、それは許されない行為だ。



20: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 18:59:35.37 ID:1HdRkG7DO
(´・ω・`) 「ご飯の表面のでんぷんを洗い落とせ。
そうすることで、米がバラバラにほぐれる。
その後、強火で焼き付ける様に炒めろ」

(´・ω・`) 「フライパンを振る必要はない。
あくまで、『焼き付ける様に』だ」

(´・ω・`) 「最後に、事前に作っておいた炒り玉子と、刻んだネギを入れて、完成だ」

(´・ω・`) 「表面はサラッとしているが、中はシットリとした、『ご飯らしさ』が残るチャーハンだ」



22: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:00:32.47 ID:1HdRkG7DO
気付くと、俺は叫んでいた。

('A`) 「ありがとう!風邪の料理人、ショボン!」

男は一言残して消えた。

(´・ω・`) 「とりあえず服着たら?」

あんたに言われたくない。



25: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:07:00.35 ID:1HdRkG7DO

2話

破綻



26: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:08:02.21 ID:1HdRkG7DO


今、僕はパスタを茹でて―――

いない。

( ´ω`) 「夏バテでパスタなんか食えないお…」

暑さで胃が殺られていたのだ。
しかし、僕は仮にもパスタのプロ(自称)。
パスタ以外の炭水化物は許さない(ピザは例外)。

( ´ω`) 「今日はなんも食べなくていいお…」



28: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:09:00.13 ID:1HdRkG7DO
その時だ。
あの男が現れたのは。

(´・ω・`) 「ゴホッゴホッ…風邪の料理人、ショボンだ」

男は裸だった。

( ^ω^) 「風邪ひいてるなら服ぐらい着るお…」

そう言って僕は、男に服は着せずに、靴下だけを履かせた。
基本、僕はSだ。



31: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:11:34.04 ID:1HdRkG7DO
(´・ω・`) 「ならば、対夏用パスタを作れ」

それは一体。

(´・ω・`) 「『水菜と豚しゃぶの梅肉和えパスタ』だ。
冷製パスタだ。サッパリとして、ノドごしもいい」

名前を聞くだけでサッパリ感が伝わって来た。
ありがとう。靴下の料理人。



33: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:12:37.48 ID:1HdRkG7DO
(´・ω・`) 「今回は、細めのパスタ、『カッペリーニ』を用意しろ」

(´・ω・`) 「『カッペリーニ』は、『天使の髪』という意味だ」

僕は『天使』と聞いて、何故か『幼女』が頭に浮かんだ。

(´・ω・`) 「その気持ちはよくわかる…」

なぜだ。なぜ、僕の考えがわかったのだ。
違うんだ。僕は断じて、ロリコンでは―――

( ^ω^) 「ふふふ」

僕は笑った。

(´・ω・`) 「ふふふ」

男も笑った。



35: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:14:03.98 ID:1HdRkG7DO
(´・ω・`) 「具には、水菜と、豚肉だ」

(´・ω・`) 「水菜は食べやすい長さに切る。
豚肉は、茹でてから食べやすい大きさに切る」

(´・ω・`) 「今回は、『梅ダレ』を作る。これから言う量は、パスタ一人前分だ。
パスタをたくさん食べるなら、梅ダレもたくさん作れ」



38: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:15:20.34 ID:1HdRkG7DO
(´・ω・`) 「まず、種を取って、たたいた梅肉を大サジ0.5杯だ」

(´・ω・`) 「次に、和風だしを大サジ1杯。
間違っても『和風だしのもと』を大サジ1杯なんて入れるなよ」

(´・ω・`) 「次に、E.X.V.オリーブオイルも大サジ1杯」

(´・ω・`) 「次に、薄口醤油が小サジ1杯」

(´・ω・`) 「最後に、胡椒を少し」

(´・ω・`) 「これを軽く混ぜたら、『梅ダレ』は完成だ。
梅ダレは、このパスタ以外にも、サラダのドレッシングとしても使える」



40: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:16:23.64 ID:1HdRkG7DO
(´・ω・`) 「さて、カッペリーニを茹でるのだが…」

(´・ω・`) 「今回は、茹で上げたパスタを冷水に取るから、パッケージに書いてある茹で時間より、1〜2分長く茹でろ。
パスタは冷水に取ると、かなり固くなる。だからだ」

なんということだ。アルデンテのプロである僕の出番がないじゃないか。
しかし、そんなことは問題ない。
僕は、このパスタを、食べたい。
僕の胃は、既に歓喜の胃液を放出している。



41: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:17:20.32 ID:1HdRkG7DO
(´・ω・`) 「パスタ、水菜、豚しゃぶ、梅ダレをザックリ和えたら、完成だ」

(´・ω・`) 「和風パスタは、箸で食え。箸で」



42: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:18:14.51 ID:1HdRkG7DO
気付くと、僕は叫んでいた。

( ^ω^) 「ありがとう!風邪の料理人、ショボン!」

男は一言残して消えた。

(´・ω・`) 「靴も貰ってっていい?」

ダメ!!



51: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:23:40.96 ID:1HdRkG7DO

3話

完全な、はじまり



52: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:24:48.93 ID:1HdRkG7DO


最近、子供が狂った様に「カレーが食べたい」と言う。
「三食カレーでもいいよ」とも。

そして―――

「ママのカレー、『無難』に美味しいんだもん」

無難だと。
私の専業主婦としての自尊心は、再び崩壊した。

(#゚ー゚) 「マジで美味いカレーを作ってやるよ…」

私は子供に復讐することを誓ったのだった。



54: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:25:44.52 ID:1HdRkG7DO
( ・∀・) ならばカレー粉から、本場のカレーを作れ

(*゚ー゚) 「あなた誰!?」

( ・∀・) 復讐神タートゥーだ

(#゚ー゚) 「わかったわ…
カレールーは使わない!見せてやるわよ!本場インド風!」



58: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:28:25.37 ID:1HdRkG7DO


そして、今に至る。

(;゚ー゚) 「カレー粉を買って来たのはいいけど…どうしよう」

カレー粉を前に、私は困っていた。
なぜなら、私はカレールーを使ってのカレーしか作ったことがなかったからだ。
しかも、先程の亀はいなくなっていた。



61: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:29:27.19 ID:1HdRkG7DO
その時だ。
あの男が現れたのは。

(´・ω・`) 「ゴホッゴホッ…風邪の料理人、ショボンだ」

男は裸だった。
いや、違う。靴下は履いている。

(*゚ー゚) 「来たな!性病野郎!」

私は男を罵倒した。
しかし、下のお口は正直なもので、濡れていた。



63: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:30:35.01 ID:1HdRkG7DO
(´・ω・`) 「カレールーをあまりバカにするものじゃない…」

(´・ω・`) 「カレールーを使って、『完全に美味いカレー』を作ることは可能だ」

『完全に美味いカレー』。それは一体。

(´・ω・`) 「まず、カレールーは違うメーカーで二種類用意しろ」

(;゚ー゚) 「なんで二種類なの?」

(´・ω・`) 「カレールーは、各社ごとに、味や香りに特徴がある。
それらを組み合わせることで、より深い味わいになる」



65: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:31:35.75 ID:1HdRkG7DO
一つ、私には気になることがあった。

(*゚ー゚) 「もし、同じメーカーのを二種類用意したらどうなるの!?」

(´・ω・`) 「どうなるだと…」

(´・ω・`) 「嫁にひっぱたかれるんだよ!!」

(´・ω・`) 「世紀末のはじまりだ!!」



69: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:33:15.23 ID:1HdRkG7DO
(´・ω・`) 「さて、続きだ。
ここまでカレールーをヨイショしてきたわけだが、欠点だってもちろんある」

(*゚ー゚) 「なんなのそれは!?」

ところが、男は私の質問には答えず、逆に私に質問をしてきた。

(´・ω・`) 「五味って知ってるか?」

私は激昂した。

(#゚ー゚) 「ゴミ!?私、肉便器だけど、そこまで言うことないじゃない!!」



70: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:34:16.51 ID:1HdRkG7DO
(´・ω・`) 「甘味・苦味・酸味・辛味・塩味」

私の怒りを、男は華麗にスルーしたのだった。カレーだけに(笑)

(´・ω・`) 「カレールーは、これらのバランスがあまりよくない。
塩味だけが異常に強い」

(´・ω・`) 「つまり、『不完全』だ」

(´・ω・`) 「そこでだ。
このバランスをよくする。そうすれば、カレールーを使ってのカレーでも、格段に美味くなる」



72: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:35:26.22 ID:1HdRkG7DO
(´・ω・`) 「まず、『甘味』だ。
タマネギを飴色になるまで炒めろ。
そうすることで、『苦味』も同時に生まれる」

(´・ω・`) 「次に、『酸味』だ。
赤ワインを使え。
ただし、入れ過ぎは禁物だ。
ビーフカレーの場合には、一晩牛肉を赤ワインに漬けておけ。
驚く程、牛肉が柔らかくなる」

(´・ω・`) 「そして、『辛味』だ」

そう言って、男は、私が先程買って来たカレー粉(S&B赤缶)を指差した。

(´・ω・`) 「カレー粉は、あくまで『辛味の補強』として使え」



77: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:36:31.98 ID:1HdRkG7DO
(´・ω・`) 「これで、五味のバランスが取れた『完全に美味いカレー』の、完成だ」

気付くと私は、またしても叫んでいた。

(*゚ー゚) 「抱いて!!」

男は一言残して消えた。

(´・ω・`) 「だから、(風邪が)うつるよ」

せめて、おちんぽペロペロしたいよぉ…



84: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:41:58.17 ID:1HdRkG7DO

最終話

孤高の王



85: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:43:04.28 ID:1HdRkG7DO


地獄の亡者三人を退治し、僕はアパートに帰って来たのだった。

(´・ω・`) 「風邪がやばいな…死ぬかも…」

僕は、すっかり疲弊していた。
布団で横になると幻覚を見た。いや、これは走馬灯という奴だろうか。



86: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:45:07.09 ID:1HdRkG7DO


(´・ω・`) 「師匠なんか嬉しそうですね」

( ∵) 「あんまり顔に出ない方なんだけどなw」

(´∵`) 「顔っすかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」



87: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:46:02.61 ID:1HdRkG7DO
(´・ω・`) 「なんかあったんですか?」

( ∵) 「いや、ご飯美味しいなーってw」

(´・ω・`) 「僕、料理上手くなりましたか?」

( ∵) 「料理が上手とか、そういうことじゃないんだよ」

(´・ω・`) 「へ?」

( ∵) 「お前もそのうちわかるよw」



88: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:46:57.90 ID:1HdRkG7DO


(´・ω・`) 「僕もいよいよか…む…無念…」

このまま孤独死するのだろうか。
僕が意識を失いそうになった、その時だ。

ピンポーン―――

来客を告げるチャイムが鳴った。



89: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:47:50.17 ID:1HdRkG7DO
(´・ω・`) 「どちらさまー?」

玄関まで行くのが面倒臭かったので、その場から呼んだ。
どうせ新聞勧誘だろう。
だが、玄関を開けて現れたのは、地獄の亡者三人だった。

('A`) ( ^ω^) (*゚ー゚) 「どーもー!!!」



91: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:48:50.91 ID:1HdRkG7DO
(;´・ω・`) 「どうしてここに!?」

('A`) 「具合悪そうだったんで看病しに、後を付けてました」

( ^ω^) 「靴下返してもらいに来ましたお」

(*゚ー゚) 「私…覚悟が出来ました!あなたが梅毒だってかまわない!」

僕は涙が止まらなかった。
かわいい弟子たちめ。



94: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:49:43.22 ID:1HdRkG7DO
('A`) 「もうすぐ夕飯時なんで、何か作りますよ」

( ^ω^) 「僕は帰りますお」

(*゚ー゚) 「私はオナニーしてます」

なんてかわいい弟子たちなんだ。



97: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:50:48.26 ID:1HdRkG7DO


数十分後。
僕の目の前に出て来た料理は、お粥だった。

(´・ω・`) 「ありがとう」

('A`) 「じゃあ、俺たちもいただきます」

(#^ω^) 「味がしないお…女将呼べお!」

(* ー ) 「お粥…ハァハァ…らめぇぇぇぇ!!!」



104: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:52:06.95 ID:1HdRkG7DO
そのお粥は、生の米から炊いた様な、満足のいく代物ではない。
そう、決して、『上手い』料理ではないのだ。
それでも、僕は胸を張って言える。

(´・ω・`) 「いや、みんなで食べると『美味い』よ」



106: たろお ◆agZBhzWYDw :2007/08/23(木) 19:53:45.08 ID:1HdRkG7DO
そのお粥は、ちょっとしょっぱかった。
たぶん、僕のお粥だけだろうけど。
自然と、涙が頬を伝っていた。

師匠、今ならわかります―――

あなたがあの時、言いたかったこと―――



おしまい\(´・ω・`)/



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