( ^ω^)ブーンとプリンなようです

29: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:03:08.68 ID:nBWjvx5XO
('A`)「くそっ……プリンが……ブーン……一体お前はどうしちまったんだ」

最近、どうもおかしい
仕事に行く気もなく、一日中何もする気が起きない…とてつもなくだるい
とあるマンションの一室に住むこの男は自分の体に異変を感じていた

禁煙中のときの、あの禁断症状のようなイライラが毎日続く、しかし別に禁煙中では無い



30: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:04:18.36 ID:nBWjvx5XO
そして毎晩のように悪夢にうなされる
それも決まって同じ夢

それはものすごくブサイクな顔をしたプリンが自分のことを追いかけてくるという夢だ
捕まれば何をされるか分からない
だから全速力で逃げる 逃げる 逃げる
そしてそのプリンは顔をしかめてこう言う
「お前が欲しい」と…
全く持って意味の分からない夢である
しかしこれが毎晩続くとなると精神的にもキツいものがある
こうなった原因はもちろん、あのプリンを口にしたから他ならない
確かにあのプリンを口にした時、彼は言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じたのである



31: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:07:15.32 ID:nBWjvx5XO

しかしそれと引き換えにこのプリンという欲望に苛まれることとなったのだ

…全ての始まりは一週間前のことだった

( ^ω^)「ドクオ、おいす―」

('A`)「ブーンじゃねえか!!どうしたんだよ!!」



32: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:08:34.15 ID:nBWjvx5XO
そのドクオと呼ばれた男が目を丸くして驚くのは無理もなかった
なぜならば、彼は…ブーンは3ヵ月も姿をくらませてたのだ
警察も動くという事態になっていながら彼は一向に姿を現さず、何か事件に巻き込まれたとさえ言われていたのに、まるでそれを感じさせないようなツヤツヤの肌と以前よりも健康的になった体で突然ドクオの自宅にやってきたのだ
あのプリンを手に持って
('A`)「お前、ずっと連絡もしないで何してたんだよ!!お前の両親がどれだけ心配したと思ってるんだ!! それからツンはどうした? お前一緒にいたんじゃないのか?」

ツンとはブーンの恋人のことだ
彼女もまたブーンと同じ日に行方不明になっていたため、この2人が一緒に心中を図ったのではないかとさえ言われた

( ^ω^)「ツンは…プリン プリン♪♪」

('A`)「……は?」



33: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:10:25.99 ID:nBWjvx5XO
全く意味不明なブーンの言動に唖然とするドクオ

('A`)「何言ってんだお前…?」

( ^ω^)「いいからプリン食えお」

そう言って無理やりドクオの口にプリンを押し込もうとするブーン

('A`)「ちょ!!!やめr…ぶふぉ!!!!」

無理やり口に流し込まれた、ドロッとしたゼリー状の黄色い物体…
そして口の中に広がる、ワンダーランド



36: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:14:47.34 ID:nBWjvx5XO
('A`)「…うまい」

( ^ω^)「プップップリン♪」
('A`)「…ププププ…プリン?」

( ^ω^)「甘くて濃厚」
('A`)「そしてジューシー?」
( ^ω^)「とろける美味しさ」

( ^ω^)('A`)「プリン プリン 美味しいプリン♪」

いつの間にか吊られて歌い出してしまったドクオ
正気に戻った時はブーンはすでに目の前から姿をくらましていた

('A`)「…一体何だったんだ」

結局、あまりの突然の出来事にこれは幻だったと自分に言い聞かせて部屋に戻り、警察とブーンの両親には連絡をしなかった

…そして今に至り、あれは本当だったんだと薄々感じるようになった



38: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:16:34.56 ID:nBWjvx5XO
('A`)「どこだ…ブーン…プリン…プリン…」

もはや理性を失いつつあったドクオはプリンを求め外に飛び出した
フラフラとただひたすらプリンを求めてさまよった


しかし、ブーンを探すという目的はあっけなく達成されることとなる

( ^ω^)「プップップリン♪」
<ヽ`∀´> 「オゥ イエィ♪♪ プリンこそ唯一無二の神なり 他は糞、いわゆるうんこ♪ 」

('A`)「ブーン!?」



40: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:20:03.48 ID:nBWjvx5XO
後ろについているチンピラはともかく、あれは間違いなくブーンだった
しかしドクオはあえて状況を見るためこの2人にこっそりついていくことにした

<ヽ`∀´> 「おい、ブーン、本当にプリン工場はあるんだな?」

( ^ω^)「お お お そりゃもう、素晴らしいワンダーランドだお」

('A`)(コイツら、まさかあのプリンが作られている工場にいくのか!?)

ドクオの心は躍った
もしこの2人があのプリンの工場へ行くとなれば思う存分プリンを食べられると、そう思ったのだった
そしてなるべく距離をとって2人の尾行を始めた
先頭を切って歩いている彼が行方不明者だということも忘れて



41: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:21:33.98 ID:nBWjvx5XO
どれくらい歩いただろうか

気がつけば彼らは人気の少ない林の中を突き進んでいた
道は舗装されてなく、ただひたすらに木々の生い茂る道を枝や葉を掻き分けて進んでいく

( ^ω^)「やっぱりあんまり人に来られると困るからねー」

ブーンがそんなことを言っているのを耳にしたが、それにしてもここはとても人が踏み入れるような所じゃない



42: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:24:32.49 ID:nBWjvx5XO
………林の中を進んで30分ほど立っただろうか
ブーンは立ち止まり、辺りをキョロキョロ見回した
今、彼の目の前には半壊状態の古い錆びれた塗炭の小屋がある
まさかここがあのプリン工場だというのだろうか
大きさはどう見ても車一台入る車庫ほどの大きさしかないし、ましてこんな交通の不便な所でプリンなんかのナマモノをつくれるはずがない
( ^ω^)「それではお入り下さい」

しかしブーンは彼を招き入れたのだった
<ヽ`∀´> 「お、おい!!まさかこんな豚箱が工場だというニダか?…お前、やっぱりおかしいニダ」

流石にここへ来て不信感を露わにするニダー

( ^ω^)「チッチッチ これだから素人童貞プリンは困る」



43: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:27:14.91 ID:nBWjvx5XO
しかしブーンは塗炭の建物の入り口らしきところから中に入り込んだ
それにガラの悪いチンピラも不機嫌な顔をしながら恐る恐る続いて入る


……そのまま10分をたっても2人は出てこなかった
人が2人も入った塗炭小屋はさぞ窮屈なはずなのに、物音さえ聞こえない


('A`)「中で一体何が起きてるんだ…」
そう思い、恐る恐る近づいてみるドクオ
しかし、やはり建物には人気がない

('A`)「ぇえい!!!こうなったら突撃だ!!!」

ついにドクオは建物に入る決意をする

('A`)「とぅ!!!!おぃ!!ブーン出て来い!!!!」



46: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:30:57.79 ID:nBWjvx5XO

('A`)「…って、あれ?」

周りを見渡しても…とは言っても見回せる広さではないがそこはもぬけの殻だった

('A`)「…っかしいな」

まるでプリンセステンコーのイリュージョンマジックのごとく、2人は姿はまるで見当たらない

('A`)「あ―――くそ!!!」

ドクオは地団太を踏んだ
せっかく追ってきたのに、結局分からないまま消えてしまった2人の男



47: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:31:49.11 ID:nBWjvx5XO
('A`)「……あれ…??」
しかしドクオは床のある異変に気づいた

('A`)「この床…下に何かある…」

地団太を踏んだときにそう感じた
ここの床…というよりはもはや建物の中にも枯れ葉や雑草で覆われて床とは言い難いのだが明らかに違和感がある
つまり中が空洞の部分を叩くと他の部分と違う音がするという原理だ
ドクオはそれに気づいたのだ

('A`)「そうなるとこの真下に隠し扉があるはずだ」

丁寧に枯れ葉を掻き分けて探すと



50: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:34:57.03 ID:nBWjvx5XO
…あった
それは一見、何の変哲のない金属の小さな突起
普通の人から見れば全く気がつかないし、見つかってもただの金属片としか思わないだろう
この山の中といい、小屋といい、ここまでして秘密にしたがるブーンのプリン工場とはどんな所なのだろう
ドクオの胸は高鳴る
そして震える手でゆっくりと扉を開いた


そこには下へと続く階段があった
その階段を慎重に降りていくとそこには小さなドアがある
赤く錆びていたドアで『関係者以外立ち入り禁止』と書いてある



52: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:36:29.26 ID:nBWjvx5XO
しかしここまで来ていまさら引き返すはずがない
ドクオは迷わずドアノブを回し、そして未知の世界へ飛び込んでいった

('A`)「うわ…!!!!!!!!」
そこはまさに夢のようなワンダーランドだった

色とりどりのお菓子が山のように詰まれ、何に使われてるのか分からない機械が忙しなく動いている
そしてとにかく広く、サッカーの競技場のコート2つ入れても足りないくらいに思えた

しかしドクオの一番の関心はお菓子でもなく、機械でもなく、広さでもなく、辺りに漂うとっても甘い甘い香りだった

…そしてこの香りは間違いなく
('A`)「プリンだ!!!近くにプリンがあるぞ!!!」



53: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:37:50.45 ID:nBWjvx5XO
ドクオは一目散に広い工場を駆け回り、臭いの元を探す
この時の彼が自分の顔を鏡で見たのなら恐らく愕然としていただろう
目は見開いて、よだれを垂らしながら走り回るその姿はまるでボルゾイ犬が必死の形相で獲物を追いかけているかのようだった

('A`)「!!!!!!」

そして見つけた
ベルトコンベア―から流れてくる大量のプリンを



54: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:39:31.10 ID:nBWjvx5XO
('A`)「ハフッ!!!! ハム!!!ッハフ!!うぇっうぇっwwwwうぇwwww」

とにかく手当たり次第にプリンを口に運ぶドクオ
('A`)「ぅぐ…うぇ…ぐぅぇ……」





しばらくして彼の胃はいきなり流し込まれるプリンという名の異物に拒否反応をみせ始める

吐いても尚プリンを口にすることを止めないドクオ



55: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:41:29.25 ID:nBWjvx5XO

体が受け付けなくてもどうしても理性が働かない
彼は本能のままにプリンをむさぼり、そして吐いた
それでもプリンを口に運び続ける
そしてまた吐く
('A`)「……はぁ…はぁ…」

( ^ω^)「あーらら こんなに汚しちゃって…これにはさすがに引くお」

('A`)「…ブーン…いたのか」
もはや唯一無二の友だったこの男にドクオは親しみを感じることはない
目の前に現れたその男にかつての旧友の面影はなかったのだから

( ^ω^)「…プリンがそんなに好きかお?」
こんな状況でも不気味なほどの笑顔を決して崩さない彼は人としての感情を持ち合わせていないようにも思えた

('A`)「好きじゃねぇよ…止めたくても…ぅっぐ…止まんねぇんだ…このプリンに何入れやがった」


( ^ω^)「それじゃあ美味しいプリンの秘密の材料を教えるお♪」



59: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:43:48.83 ID:nBWjvx5XO
( ^ω^)「じ・つ・は!!! そのプリンには欲深き人間の怨念が含まれているんだお」

( ^ω^)「具体的には人の血ね チョットだけど、…ほんとにチョットだよ?」

( ^ω^)「人間というのはどういうわけか今の自分の現状に決して満足をしないんだお」

( ^ω^)「衣食住全てを満たしているものは今以上の生活向上を望むお
金、つまり富を求めるお

そして富を蓄えたものはこんどはそれを自慢し始めてチヤホヤされたがるんだお

つまり、人々の名声を欲しがるんだお

富と名声両方を手に入れた人間はとにかく何もかも自分の思い通りになるように周りの人間を自分の理想に染めようとするんだお

言うなれば政治家だお



60: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:45:17.42 ID:nBWjvx5XO


度が過ぎるとこれは独裁に発展するお
この時にその人間は自分の目的を果たすためなら人を殺すこともいとわないんだお
感覚の麻痺、これは実際に自分から行動を起こさなくても自らに従うものが全て動いてくれるからなんだお

銃で撃ち合うゲームをしている人が実際に本物の銃をもって人を殺せるかお?

出来るハズ無いお
なぜならゲームの中は空想の世界だし、プレイヤーが握るのは銃じゃ無くてコントローラーだお



62: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:47:54.19 ID:nBWjvx5XO
かつてのドイツの独裁者、ヒトラーは芸術家を目指し、話術に優れた青年だったお

彼をユダヤ人迫害を始めとする大量殺人を平気でやってのけるようになったのは戦争という当たり前のように人が死ぬ環境があったことと、彼が『殺れ』と命令するだけで下っ端兵が銃でパンッだお

それは彼もまた自分の置かれた状況が現実的に起こっていることを空想のようにしか捉えられなくなったからなんだお」



63: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:49:48.36 ID:nBWjvx5XO

('A`)「…何が言いたいのか分からんな…じゃあこのプリンなんだっていうんだ」

( ^ω^)「だ・か・ら 人間の欲望の怨念♪
人間の欲望のエキスがたっぷりなんだお」

( ^ω^)「このプリンは何かしら強い欲望を持つ人間が食べると更に欲するようになるんだお
そしてこのプリンを手に入れるためなら手段を選ばない行動にでるお」

( ^ω^)「そして僕はその愚かな人間達をですね…」

('A`)「お…おい何しやがる」
ブーンはドクオの腕をグイッと引っ張り、引きずるようにしてベルトコンベアーが動いている方向に歩き出す

( ω )「人間とは欲深い、汚れた生き物、いわゆる糞、うんこ、下衆、ウジ虫 」



64: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:51:00.08 ID:nBWjvx5XO
なんとかブーンの手をほどこうとするが体に力が入らない
あれだけのプリンを食べて吐いただけに歩くこともままならないほどに体力を消耗したらしい
('A`)「くそ!!離せ!!!」

( ^ω^)「さぁ、これを見るお」

しばらく引きずられた後にそう言ってブーンが指差したのは大きな大きな鍋だった
あまりに大きいため備え付けられたはしごを登らないと中に何が入っているのか分からなかった



65: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:53:26.13 ID:nBWjvx5XO

すると巨大鍋の真上からパイプのような透明の筒上のものが出てきて鍋の中の液体らしきものを吸い上げ始めた

透明の筒から吸い上げられるその液体は美しい琥珀色をしていた
( ^ω^)「お気づきかお?」

('A`)「…カラメルソースか?」

( ^ω^)「お、お、お ご名答♪」

それはまさにあのプリンのカラメルソースだったのだ
ドクオはこの鍋のはしごを登りたくなった
……登ってあの琥珀色の液体を飲みたい……
いてもたってもいられずドクオはフラフラとはしごに手を掛け、登りだした

('A`)「…プリン…プリン…」
はしごを登り終えるとそこには黒ずんだ液体がまるで洗濯機のようにぐるぐると回されていた



68: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:56:08.34 ID:nBWjvx5XO
ドクオはその液体を手ですくってみる
…上澄みはやっぱり美しい琥珀色をしたカラメルソースだった
そうなるとこの下に沈殿している黒いものは一体何なんだろうか
しかし今はそんなことはどうでもよかった
( ^ω^)「さて、さっきの話の続きをするお」

( ^ω^)「まあ早い話、彼の野望は完全に達成されることはなかったんだお

ごめん、例えにヒトラーはあんまり関係ないお



つまり欲望というのは最終的には自らの身を滅ぼす結果となるんだお」



69: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:57:34.98 ID:nBWjvx5XO

('A`)「ズズズ……っぷはー!!うめー!!」
ドクオは夢中でカラメルソースを口に流し込んでいる

(  ω )「…そういった人間を1人でも出さないようにすることが僕の使命…」

('A`)「ぅわっぷ……」

急に何かに背中を押されて思わず鍋の中にダイブするドクオ

('A`)「おい、ブーンなにsぁ…



72: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 00:59:30.10 ID:nBWjvx5XO
そして彼は自分に何が起きたのか知ることもなく……







ガシャ……






バリバリ…… バギ…





鍋の中の液体は一層濃く黒ずみだし、やがてプカプカと浮いてきた、ブーンのかつての旧友の肉片がコツコツと何かにぶつかるような音を立てて鍋の回りをぐるぐると回っている







78: ◆sTNBUYiVdc :2007/08/17(金) 01:05:09.45 ID:nBWjvx5XO
( ^ω^)「鍋? 洗濯機? いいえ、違います 」

( ^ω^)「これはフードプロセッサーです」

ブーンは網で彼の肉片をすくいながら呟く

( ^ω^)「欲深き人間はみんな滅ぶんだお
そしてその怨念はこの液体に注ぎこまれるんだお
鉄分の補給も大事だお」

( ´ω`)「…もう疲れたお」

巨大な鍋の中に備え付けられたスクリューのようなプロペラが今日もくるくると黒い液体を回す

( ´ω`)「液体が濃くなったから薄めるお」

(メ。ω゜`;;;;;「………」

( ´ω`)「また変なのがついてきたお……まあ、明日ぶち込むお


ドス………



プップップリン♪

プププ プリン♪

…………………



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