(´・ω・`)はメールを打つようです

483: 「それから」 :2007/08/26(日) 01:45:50.08 ID:PA9lLIBU0
後で聞いたところによると、
僕は事故があったあの日から四年以上もの間眠り続けていたらしい。

彼女は『青春を返して!』などといたずらっぽく僕を責めた。
冗談なのは分かっていたけど、僕はそれに全力で応えなくてはならない。


季節は移り変わっていく。
街の姿もどんどん変貌していく。

都会の人ごみの中には、一度しか見たことの無い顔もたくさんいる。
むしろ殆どで、それは仕方の無い事だ。
現代という時代はアクセルしか用意されていない車のようなものだ。


そんな流れる時の中で。
僕達は緩やかに、一歩ずつ歩いていこうと決めた。



496: 「それから」 :2007/08/26(日) 01:48:12.48 ID:PA9lLIBU0
大変な事もあったけれど、僕と彼女の会話には何ら変化なく、
顔を見合わせて携帯を持ち、メールで話をする一連の流れはそのままでいた。


手話を覚えようかと彼女が申し出た事もある。

けど、僕はそれを勧めはしなかった。
僕達にはメールを打つ方が合っていると思ったからだ。

そう告げると、しぃは笑って、
『それもそうですね』と返信を送ってきたのだった。


今も、これから先も二人でメールを交換する。
絵文字も顔文字も使わない。
だって、言葉よりも相手に届く記号なんて存在しないだろうから。



507: 「それから」 :2007/08/26(日) 01:50:41.76 ID:PA9lLIBU0

(*゚ー゚)『ねぇ、もう一回言ってくれません?』

(;´・ω・`)『ええ、またかい?』

(*゚ー゚)『いいじゃないですかw
    折角あれだけ練習に付き合ったんですから、もっと一杯聞きたいです!』

(´・ω・`)『やれやれ、仕方ないな。これで最後だよ』



「しぃ、好きだ」


僕は言葉を並び替える。


「大好きだ」






                 「(´・ω・`)はメールを打つようです」   おしまい



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