( ^ω^)ブーンたちは漂流したようです
- 47: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:19:21.26 ID:es/DDJnU0
- 第二話 ゴミペット
野菜や果物を作るには畑が必要である。
魚をとるには海が必要である。
肉を育てるには牧場が必要である。
しかし、先ほど見渡した限り、そのような場所は見当たらなかった。
それだけではない。会社のような類も、工場の類もなかった。
ただあるのは奇妙に同一性を持った建造物群だけなのである。
( ^ω^)「変な感じだお……」
( ・∀・)「あ、そっちは行っちゃだめですよ!」
モララーに呼びかけられ、ブーンは慌てて立ち止まる。
考え事をしている間に、随分とルートを外れてしまったようだ。
(;^ω^)「も、申し訳ないお」
( ・∀・)「気をつけてくださいね。
危険区域への立ち入りだけは避けるように」
从 ゚∀从「なんだよ、それ」
( ・∀・)「ところどころ崩れかかってるんですよ。
足を踏み外して下に落ちたら大変です」
- 49: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:20:47.14 ID:es/DDJnU0
- ( ^ω^)「崩れかかっている……?」
ブーンは靴でとんとんと地面を叩いてみた。
確かに土ではなくコンクリートか何かであるが、
この下に何かがあるというのだろうか。
从 ゚∀从「下には何があるんだ?」
( ・∀・)「落ちたらわかると思います」
挑発するような台詞で、案の定ハインは「んだと!」と食って掛かろうとした。
慌ててブーンが止める。だが彼も、別の違和感を覚えていた。
なぜ彼らは下にある何かを調査しようとしないのだろうか。
好奇心の欠片でもあれば気になるはずである。
ただ危険区域を決めるのは如何なものか……
ここは、やっぱり常識が違う。
そう結論付けるしかなかった。
- 50: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:21:10.88 ID:es/DDJnU0
- 从 ゚∀从「しっかし、人いねえな」
無人と静寂で周囲の描写が片付けられるほどである。
気になるのは地面ぐらいだろうか。ところどころに
( ・∀・)「もうすぐすると人がよくいる場所になりますから」
歩きながらモララーがいう。
その間、ブーンは違う行動を起こしていた。
( ^ω^)「ど、ドクオっていうのかお」
('A`)「……」
( ^ω^)「ぼ、僕はブーンっていうんだお!」
('A`)「……」
(;^ω^)「よ、よろしくだお……」
('A`)「……あぁ」
コミュニケーションというにはあまりにも粗末な会話が早々に終了する。
どうにも、彼は人と会話することを得手としていないようである。
今も周囲を落ち着き無くキョロキョロ見回しているあたり、
もしや外に出ること自体あまりないのであろうか。
何にせよ、ブーンにとって未知の領域の住人であることは確かだ。
- 52: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:21:53.13 ID:es/DDJnU0
- ( ^ω^)「ええと、きみはペニサスだったっけお」
('、`*川「うん」
今度はすばやく答えが返ってきた。
それだけでもやや感動物である。
( ^ω^)「僕はブーンだお」
('、`*川「ん、よろしく」
( ^ω^)「よ、よろしくだお!」
結構普通の人じゃないか、やはり第一印象で決めるのはよくないな。
ブーンは嬉々として考えを改める。
( ^ω^)「それで、ペニサ……」
('、`*川「あのさ」
( ^ω^)「お?」
('、`*川「あまり喋りかけないで、考え事してるの」
( ゜ω゜)「……」
この気持ちをどう表現すればいいのか。
北極で釜茹でにされるような気分である。
- 55: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:23:12.05 ID:es/DDJnU0
- ( ・∀・)「つきましたよ」
ブーンが失意の内側に閉じこもっていると、モララーがいった。
彼の指差す先には、やはり先ほど違和感を覚えた一階建ての建物がある。
( ・∀・)「ここが第一ホールです。とりあえず、中に入りましょうか」
ホール、というと芸術鑑賞とかそういうことをする場所かと思いきや、そうではない。
自動ドアから中に入ると、
そこにはブーンたちが最初に出現した場所と同じような大きな空間が広がっているだけなのだ。
しかし、違う点が一つあった。
奥に備えられている巨大な装置である。
从 ゚∀从「なんだよ、ありゃあ……」
ハインが溜息ともとれぬ声をだす。
それは見るからに異様な形をしていた。
高さは2mほど。いくつものパイプが四方八方に伸びている。
そのパイプは天井や壁を伝い、最終的には床から地下へと繋がっているようだった。
( ・∀・)「食料を配給する装置です。
カードをリーダーに通すことで一日一回、配給を受けることができます。
とりあえず、覚えておかなければならない設備ですね」
从 ゚∀从「へぇ。それじゃあ早速……」
( ・∀・)「だめですよ。これは朝のうちしか機能していません。タイミングを逃さないように」
- 56: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:23:45.34 ID:es/DDJnU0
- ( ・∀・)「さぁ、次は第2ホールです。あまり使うこともないと思いますが……」
外に出る。
そこでようやく、人通りがあることに気づいた。
数人の人たちが、受付の施設に向かって歩いていく。
从 ゚∀从「そういやここ、遊べる場所がねーよな」
( ・∀・)「娯楽ならありますよ。施設でいえば、図書館がありますね」
从 ゚∀从「いらねー、マジいらねー」
( ^ω^)「……まぁ仕方ないお。ここはやっぱり、僕達の世界とは少しズレてるんだお」
( ・∀・)「そういうものですかね。私達にはこれが普通なのですが」
微妙にぎくしゃくした会話を繰り返し、彼らは第2ホールへと向かう。
その途中、角を曲がった時、ブーンはとんでもないものを見つけてしまった。
- 57: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:24:32.44 ID:es/DDJnU0
( ´∀`)「あ、もしかして内部機構の人モナ?」
( ・∀・)「はあ、そうですが」
( ´∀`)「このペット、一年過ぎたから処分しようと思うんだけど、ダストホールの場所を忘れちゃったんだモナ」
男は右手に持っていた鎖をぐいと引っ張った。
それを見て、ブーンたちは仰天した。
鎖に繋がれていたのは犬でも猫でもなく、裸体の少女だったからである。
(*゚ー゚)「……」
およそ十二歳ぐらいだろうか。
二本足で立ち、どうみても人間であるはずなのに首輪をつけられている。
そして彼女も抵抗せず、別段感情のない目で主人を見上げているのだ。
( ・∀・)「ああ、わかりました。ご案内します」
( ゜ω゜)「ちょ、これはなんだお!?」
( ・∀・)「何って……ペットですが」
( ゜ω゜)「人じゃないかお!」
( ・∀・)「何言ってるんですか、ペットですよ。
これは、B型種ですね」
- 59: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:25:21.83 ID:es/DDJnU0
- (;´∀`)「え、どうかしたモナ?」
( ・∀・)「すみません、ちょっと変わった人たちでして」
( ゜ω゜)「いや、いやいやいや!」
从 ゚∀从「おいブーンよ。お前だろ? ここはちょっとズレてるっていったのは
それでさっき俺を無理矢理納得させたくせに」
確かにそうだ。
しかし、こればかりは看過できないだろう。
どうしても理解の範疇をこえているのだ。
( ・∀・)「可愛いものですよ、ペットは」
見当違いの説明を始めるモララーが居ます。
( ・∀・)「さほど頭はよくありませんが、芸も覚えますし、このとおりおとなしい。
それなりに教え込むと人間の言葉も多少ながらしゃべるようになります。
保護層には人気の趣味ですよ」
そういう問題ではない。
そういう問題ではないのだ。
そもそも人間ではないというのだから驚きである。
身体の造形は間違いなく人間のソレであるというのに。
- 60: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:25:41.72 ID:es/DDJnU0
- ほとんど唖然としたブーンたちを引き連れ、モララーは足の方向を変える。
そして行き着いた先は、やはり先ほどと同じような建物だった。
从 ゚∀从「こりゃ道に迷いそうだ」
( ・∀・)「後で地図をお渡ししましょう」
そんな会話もブーンの耳にはほとんど入ってこない。
ペットと名づけられた少女は心配そうに周囲を見回している。
( ・∀・)「ここですよ。ついでに皆さんにも案内しておきましょう」
そういって、モララーは中に入る。
そこに、これまでとはまるっきり違う光景があった。
部屋一面を埋め尽くすほどの大きさの円形装置がある。
シートほどの薄さのようで、実は床が機械に沿う形で凹んでいるのだ。
そしてそれは、轟々とすさまじい音をたてていた。
近づいてわかったのだが、その装置は大きな渦を巻いて回転しているのだ。
装置の中心に穴が開いている。
それがどこに繋がっているのかは定かではない。
そして、更に近づいていくと、渦をかたどっているのが刃物であることが判明した。
- 61: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:26:28.58 ID:es/DDJnU0
- ( ・∀・)「これがダストシュートですね。
主に粗大ゴミはここに捨てることになっています。
まぁ、大抵は私達内部機構が巡回しているのでそれに任せてもらえれば結構なのですが。
ペットは動くので各自処理という形をとっています」
処理。
それはつまり、どういうこと?
一人、先客がいた。
その男も――違う種類ではあるが――ペットを連れていたのだ。
( ・∀・)「大体ペットの寿命は一年なんです。
それを過ぎると後々どうなるやもわからないので、
とりあえず一年で処分してもらうようにしてるんですよ」
男はペットを機械の前に押しやる。
危機を察知したのか、ペットが一瞬飼い主に逆らい、逃げるようなしぐさを見せる。
その瞬間、男はペットを思い切り突き倒した。
後ろにのけぞる形になったペットはそのまま渦の中へ、落ちた。
瞬間、刃物がぐちゃり、ぐちゃと粘着質な音を立てて暴れまわる。
ペットと呼ばれた少女の皮膚が、剥き出しになったピンク色の肉が、
ザクロのように割れ、下からでてきた骨が、刃物に裂かれ、砕けていく。
最終的に、それらは全て細かい破片となって、穴の中へ落ちていった。
- 62: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:26:51.58 ID:es/DDJnU0
- ハインたちは見ていなかったようだ。一様に顔を背けている。
ペニサスなどは耳まで塞いでいた。
しかしブーンだけはその光景を、最初から最後まで見届けてしまった。
赤黒い血はしばらく刃物にこびりついていたが、やがて消し飛ばされる。
彼女は跡形も無く消えてなくなったのだ。
気づくと、男の姿はもう無かった。
きっと、彼女が機械に巻き込まれるのを確認して、すぐに去ってしまったのだろう。
( ・∀・)「さて、我々も行きましょうか」
( ´∀`)「あ、ありがとうございましたモナ」
( ・∀・)「いえいえ、どうも」
どうすればいいのだろう。
目の前の少女も今にこうやって消えていく。
肉片になって消えていく。ここはつまり、保健所のような場所だ。
処分の方法は違う。しかし、やっていることはほとんど同じであるような気がしてならない。
そしてそれを、ブーンたちは別段言及もしない。
- 63: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:27:11.13 ID:es/DDJnU0
- 少女が機械のほうへ押しやられる。
少し不安げに、時々飼い主のほうを見る。
ハインが後ろから「はやくしろ」と叫んでいる。
動けない。
彼女の目が移ろって、一瞬こちらを見た。
純粋無垢な、美しい色だった。
( ゜ω゜)「ちょっと待ってくれお!」
気づいたとき、ブーンは男の肩をつかんでいた。
( ´∀`)「な、何するモナ?」
言葉が出てこない。
とにかく、どうすればいい。
ペットは飼い主の所有物で、そして彼女は所謂寿命を迎えていて。
処分を止める理由は彼女の表情だけだ。
( ゜ω゜)「え、えと」
从 ゚∀从「ブーン! てめぇいつまでグズグズ……」
( ゜ω゜)「その子、僕に預からせてくれお!」
- 64: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:28:01.96 ID:es/DDJnU0
- ( ´∀`)「……モナ?」
( ゜ω゜)「た、大切にするお! だから……」
( ・∀・)「どうしました?」
能天気な口調と共にモララーがやってくる。
今にも泣き出しそうなブーンとあきれ果てたハイン。
そして戸惑うばかりの男を見やる。
(;´∀`)「いや、ええと……」
( ・∀・)「ダメですよ、もう寿命が差し迫ってますし、その後のことは保障できません。
欲しいなら、他のペットを第2ホールで……」
( ゜ω゜)「そういう問題じゃないんだお!」
ハインがじっとこちらを見ている。
嘲るような、同情するような。そんな目だ。
少女が不思議そうな目でこちらを見ている。
何も知らず。
- 65: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:29:14.74 ID:es/DDJnU0
- ( ・∀・)「……まぁ、いいんじゃないですか」
変わった人だ。
そんな、奇異なものを見る目のモララーがいう。
彼にとっては、ブーンの行動など最初から最後まで理解できないのだろう。
( ・∀・)「寿命が過ぎていてもそのペットを好むなら……あなた、いいですよね?」
(;´∀`)「別にいいモナ……でも」
( ・∀・)「とりあえず彼の要望に逆らうわけにもいきませんし」
( ´∀`)「わかったモナ……ほら、しぃ」
その少女の名前はしぃというらしい。
未だきょとんとしている彼女を、男はブーンの前へ押しやった。
不安げに男を振り返るしぃ。
男はただ首を振った。
( ´∀`)「その人が新しい飼い主さんだモナ」
( ω )「……」
目を閉じ、考える。
正しいのか、いや、正しくは無い。
自己満足だ。
- 66: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:30:09.98 ID:es/DDJnU0
- (*゚ー゚)「……?」
首を傾け、疑問の表情を作るしぃ。
( ω )「服……」
( ・∀・)「はい?」
( ω )「服を着せてやってくださいお!」
( ・∀・)「服、ですか……
いるんですよね、たまに。ペットに服を着せる酔狂な人が」
言ってからモララーは口を噤む。
つい本音まじりの嫌味が漏れてしまったのだろう。
しかしブーンは意に介さず、しぃを見る。
- 67: ◆xh7i0CWaMo :2007/08/27(月) 00:31:06.91 ID:es/DDJnU0
- 何をすればいいのかもわからない。
しぃはじっとこちらを見ている。
まるで品定めでもしているかのようだ。
その頭を軽く撫でてやると、彼女はいかにも人間らしい鳴き声をあげた。
从 ゚∀从「……お前は相当のバカだよな」
( ω )「……」
从 ゚∀从「明日になったらまた、ペットがミキサーで粉々になるんだろうな」
( ω )「……」
从 ゚∀从「お前さあ、何がしたいの?」
ハインの、卑下するような、諭すような口調が、しばらく鼓膜に張り付いて離れなかった。
・・・
・・
・
第2話「ゴミペット」終わり
第3話「老いた影」に続く
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