( ^ω^)は18歳になったようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/19(水) 00:31:05.05 ID:6s7dP0060
第二十壱話『再会』

夏休み最終日。それ即ち決戦の日。
心身共に万全の状態で挑むべきその日の朝、

(#)ω(#)「「……」」(#)∀(#)

本屋の前に立っているボクらは既に瀕死だった。

(#)∀(#)「糞……兄貴の奴本気で殴りやがって……」

(#)ω(#)「前が見えないお……」

顔が蜻蛉っぽいけど気にしてはいけない。
ボクらは見た目通り繊細なのだ。
些細な中傷で傷ついてしまうのだ。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/19(水) 00:31:52.81 ID:6s7dP0060
( ゚∀゚)「まぁすぐに治るんだけど」

( ^ω^)「若さって素晴らしいよNE!」

コレが十代の若さという奴だ。
性欲をもてあますボクらだからこそ、と言えない事も……

「……あの、すいません」

( ^ω^)「お?」

( ゚∀゚)「え?」



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/19(水) 00:32:58.21 ID:6s7dP0060
川д川「やっぱりこの前の人だ……やっと見つけた」

ボクら……というかボクに声をかけたのは、つい先日十円をあげた女の子。
どうりで聞き覚えのある声だと思った。

( ^ω^)「やっとって……もしかして、あの後からボクの事を探してたのかお?」

川д川「はい……あの、この前は本当に……」

(;^ω^)「いや、アレはボクが勝手にやった事だし……」

川д川「でも、アレで私が助かったのは変わりありませんし……」

何と言うかアレだ。
アレアレ言い合うのも何かアレだなぁ……あれ?
と言うかだ、ちょっとした人助けがこんな展開になるとはまさに予想外。
たとえ神様お天道様丞相様でも想像できなかっただろう。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/19(水) 00:34:18.06 ID:6s7dP0060
(;^ω^)(……ちょっとばっかし困ったお……)

……正直言えば、こういうやり取りは少しばかり苦手なのだ。
でも、ジョルジョなら何とかしてくれるんじゃないだろうか。
何の根拠も無いが、その期待を視線に乗せてジョルジョに送信してみる。

(;^ω^)(……ヘールプ!リオンヘールプ!)

( ゚∀゚)「……」

だが、ジョルジョは彼女を見つめたまま沈黙を保っていた。

( ^ω^)(……あれ?)

おかしな事にその視線は胸ではない。
冷静に、観察するような目で、彼女をくまなく見つめていた。
確かに胸は少々薄いかもしれないが、ボクからしてみればその膨らみは充分と……



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/19(水) 00:36:01.72 ID:6s7dP0060
川д川「あの……」

(;^ω^)「おっ……ちょっと魂抜けて……」

川д川「本当に、ありがとうございました」

言葉と共に、彼女の頭が下がる。
深々と一礼。

(;^ω^)「……」

何とも義理堅い人だ。
たった十円の礼をする為に人探しする人なんて普通はいないだろう。
軽い言葉の礼ならともかく、こんな深々と礼をしながら言う人はもっといないだろう。
天然記念物……いや、絶滅してしまった筈のトキを見つけてしまった気分だ。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/19(水) 00:38:02.66 ID:6s7dP0060
(;^ω^)「あの、頭を上げてほしいお」

川д川「でも……まだ恩を返していません」

( ^ω^)「じゃあ、困ってる人を見つけたら助けてあげてほしいお」

川д川「え……?」

( ^ω^)「それがボクにとって最高の恩返しなんだお」

誰かが困っている時に助けてあげるヌクモリティ。
それを心に持ってくれる事はボクにとって十分な恩返しだ。
ボクだっていつ同じ状況に立たされるか分からないのだから。

( ^ω^)「それに……」

ここから先の言葉は他の人に聞かれちゃいけない。
ジョルジョには言ってしまったから仕方ないとしても、道行く人に聞かれないとは限らないのだから。
だから、彼女の耳に手を添えて口を近づけた。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/19(水) 00:39:54.79 ID:6s7dP0060
川*゚д川「ひあっ!」

異性が近づく事に慣れていないのか、彼女の口から変な声が漏れる。
いや、口が近すぎて耳に息がかかってしまったのかも知れない。
まぁいいか。

( ^ω^)「あんな本を買う時は誰だって恥ずかしいし……」

川* д川「え、あ……気づいて……たんですか……」

彼女の頬がほんのり桜色に染まる。
きっと、あの時の事を思い出してしまったのだろう。
でも、僕の口はそんな事など関係なく言葉を紡ぐ



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/19(水) 00:42:14.07 ID:6s7dP0060
( ^ω^)「それ以前に、泣きそうになってる子を見捨てちゃ漢が廃るって奴だお」

川///川「……」

彼女が顔全体を真っ赤に染め、そのまま俯く。
あれ?僕はそんな恥ずかしくなるような台詞を言ったつもりは無いのだけど。
もしかして自分でも気付かない内にとんでもない事を……

(;゚∀゚)・',`、'; ブフォッ

え、吹き出すくらいとんでもない事言ったの?
と言うか聞き耳立てんな。

(;^ω^)「あの、僕変な事言ったかお……?」

川///川「いえっ!あ、ああああのっ、失礼します」

彼女は、そう言い残して行ってしまった。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/19(水) 00:43:58.81 ID:6s7dP0060
(;^ω^)「ジョルジョ、ボクって変な事言ったのかお?」

( ゚∀゚)「……それ本気で言ってんのか?」

(;^ω^)「……お」

本気で分からないから聞いているのだ。
それくらい理解して欲しい。

( ゚∀゚)「何っつーか、立った!フラグが立った!って言えばいいのかな」

( ^ω^)「そんな簡単にフラグが立ったら苦労しないお」

( ゚∀゚)「まぁいいか。面白いもん見れたし」

(#^ω^)「ボクが困ってるのが面白いって言うのかお」

( ゚∀゚)「そうじゃなくてだな……っと、そろそろ開店時間だぜ」



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/19(水) 00:45:57.79 ID:6s7dP0060
その言葉に、はぐらかされた感を抱きつつも腕時計を覗き込むと、時間は9:59。
もうすぐ、決戦の地への扉が開かれる。


――あと3秒――2秒――1秒――


扉は、ついに開かれた。


〜〜〜


( ゚∀゚)「……ん」

( ^ω^)「……お」

いつもと変わらぬ本屋。
朝一という事もあり客は少なく、エロ本を買うには絶好の機会と思えた。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/19(水) 00:47:58.94 ID:6s7dP0060
だが、油断は死に直結するという事を忘れてはいけない。
油断、慢心、増長、そういった気持ちは全て捨てるのだ。
それらが心にある事は敗北への第一歩である事を理解せよ。

これは、訓練ではない。
これからボクらがやるのは実戦。
これから先の事には、どんな言い訳も通用しない。
例えどんな事があっても敗北は許されないのだ。

( ^ω^)「今日で、決めるお」

( ゚∀゚)「……ああ」

周囲を一瞥。
警戒すべき敵は今の所存在しない。
ならば足を進めよう。彼の地へと。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/19(水) 00:49:08.55 ID:6s7dP0060
( ^ω^)「……」

( ゚∀゚)「どうか、したか?」

( ^ω^)「……おっおっ」

( ゚∀゚)「……なるほどな」

振り返ったボクらの視線の先……レジにはあの義理堅い女の子。

川* ー川「この本、ずっと探してたんだ」

(■、■*川「ハーちゃん、よかったねぇ」

隣にいるサングラスをかけた子は友人だろうか。
本当に、嬉しそうだ。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/19(水) 00:50:54.78 ID:6s7dP0060



願わくば、ボクらもあんな風に、笑って本屋を出られますように。



第二十一話『副題:書いてて殺意が沸くなんて生まれて初めて!』糸冬



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