ξ゚听)ξはいたずらっ子のようです

136: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:24:13.25 ID:UbsKR27d0


ブーンは走ったお。
ブーンの自転車の鍵、また誰かに隠されてたお。
ブーンの革靴、誰かに持っていかれてたお。
今日はまだツンを見かけていないけど……こんないたずらするのは、一人しかいないお!
ブーンに話したいって言ってたこと、ブーンまだ聞いてなかったお!
ツンは、それをブーンに伝えたかった!聞いてほしかったんだお!
ブーン自分のことしか……見えてなかったお……ツン、ごめんなさいだお!


海に近づくにつれて風が強くなってきた。
このぐらいの風なら、波の花は綺麗に咲いていて、ツンも喜ぶだろう。
そう思ったお。
だけど、海岸に着いたとき
広い海岸の真ん中で、イーゼルを広げて絵を描いていたツンは、どこも嬉しそうじゃなかったんだお。



140: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:25:43.17 ID:UbsKR27d0



(;^ω^)「はぁっ、ツ、ツン」

ξ゚听)ξ「……ブーン?」

( ^ω^)「なにしてるんだお。こんなところで!」

ξ゚听)ξ「なにって、絵を描いてるのよ。見ればわかるでしょ?」

( ^ω^)「そうじゃなくて!」


どうみても普通じゃないお。
風に舞う波の花の真ん中で、まっすぐと海を見つめて筆を進めるツンは
ブーンが今までに見たことないぐらい寂しそうな顔をしてるんだお。



141: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:26:13.70 ID:UbsKR27d0


ξ゚听)ξ「…」

( ^ω^)「風邪ひくお。もう帰るお!」

ξ゚听)ξ「この絵、思い出したんだ」

( ^ω^)「…」

ξ゚听)ξ「ほら、私言ったでしょ?今までずっと……ブーンに絵を描いてあげてたんだよって」

( ^ω^)「ツン」

ξ゚听)ξ「思い出したんだ。小さい頃からさ、いたずらばっかりする私に……手先が器用なんだからツンは芸術家に向いてるって」

( ^ω^)「…」

ξ゚听)ξ「ブーンが言ってくれたんだよ?」

( ^ω^)「……そうだお」

ξ゚听)ξ「だから私、それが嬉しかったから……嬉しかったから、ずっとブーンのために絵を描いてたんだ」

( ^ω^)「ブーンも嬉しかったお」



143: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:27:03.19 ID:UbsKR27d0

ξ゚听)ξ「でもね」

( ^ω^)「…」

ξ゚听)ξ「最近の私、いったい誰の為に絵を描いてるんだっけって……」

( ^ω^)「それは」

ξ゚听)ξ「ううん。私は誰に見せたいからこうやって絵が巧くなったんだろうなって」

ツンは筆を動かすのをやめた。
ブーンの方を振り向かず、その小さな肩を震わせたんだお。

( ^ω^)「…」

ξ゚听)ξ「……ブーンに見せれないのに、なんで私は絵を勉強するの?」

( ^ω^)「…」

ξ゚听)ξ「ブーンが傍にいないのに、私は誰の為に絵を描くの?」



144: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:28:36.24 ID:UbsKR27d0

( ^ω^)「ツン……」

ξ;凵G)ξ「ブーンに見てもらえないなら……私の絵なんかなんの価値もないのっ!」

( ^ω^)「そんなこと」

ξ;凵G)ξ「ブーンがいたから!ブーンが傍にいたからっ!……だから私は頑張ったの!」

( ^ω^)「…」

ξ;凵G)ξ「もうやだ……描けないよ。これがブーンにあげる最後の絵だなんてやだ!」

( ^ω^)「…」



146: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:29:07.71 ID:UbsKR27d0

ξ;凵G)ξ「ずっとブーンの傍にいたい。一分、一秒でも離れたくないの!」

( ^ω^)「ツン」

ξ;凵G)ξ「ずっとずっと!ずっとブーンには私の絵を見ててもらいたいの!」

( ^ω^)「ツン!」

ξ;凵G)ξ「……もういい」

( ^ω^)「…」

ξ;凵G)ξ「ブーン、ごめんね?私、いたずらばっかりして悪い子だよね?」

( ^ω^)「そんなことないお」

ξ;凵G)ξ「そうしないと、ブーンが私から興味なくなるんじゃないかって」

( ^ω^)「そんなことないお!」



147: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:29:35.05 ID:UbsKR27d0

ξ;凵G)ξ「素直じゃなくてごめんね?もう……絵なんか描かないから」

( ^ω^)「…」

ξ;凵G)ξ「こんなに辛いなら、絵もいたずらもしないで……ずっとブーンの傍にいたいよ」

( ^ω^)「そんなのだめだお」

ξ;凵G)ξ「こんな絵、もういらない!」

( ^ω^)「おっ!?」


ツンは、海に向かって絵を放り投げたんだお。
その絵は風に乗って、波の花に混ざりながら海に飛んでいったんだお。
まるで薄い薄い和紙のように、波の中に……



150: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:30:51.05 ID:UbsKR27d0


気がつけばブーンも、その絵を追ってたんだお。



153: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:31:10.43 ID:UbsKR27d0



ξ;凵G)ξ「!ブ。ブーン!?」

バシャーン!
( ^ω^)「わっぷ!」

ξ゚听)ξ「ちょっと!ブーン!?」

( ^ω^)「おっお!だめだお!この絵はブーンの絵だお!海になんかあげないお!」

ξ゚听)ξ「危ない!おぼれちゃうよ!ブーン!」

(#^ω^)「うおおおおおっ!!!」



154: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:31:41.50 ID:UbsKR27d0


ξ゚听)ξ「ブ、ブーン!大丈夫?ねぇブーン!」

( ^ω^)「うぅ……だ、大丈夫だお。絵も、なんとか表はげほっ!濡れなかったお。奇跡だお」

ξ゚听)ξ「そんなのどうでもいいわよ!あ、あんた死ぬ気じゃ」

( ^ω^)「どうでもよくなんかないお!!」


びしょびしょになったブーンの制服に
無理やりツンを埋めたお。
凍えそうな体に……ツンのあったかい体温が広がっていったお。



158: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:32:33.47 ID:UbsKR27d0

ξ゚听)ξ「…」

(#^ω^)「どうでもいいなんていうなお!ブーンは……ブーンはツンが大好きだお!」

ξ゚听)ξ「えっ……」

( ^ω^)「ツンのこと大好きだから……だからツンにもらった絵は全部大切にしてるんだお」

ξ゚听)ξ「…」

( ^ω^)「ツンにいたずらされるのも、ツンが大好きだから……誰よりもツンが大切だから、それすらも愛しいんだお!!」

ξ゚听)ξ「ブーン……」

( ^ω^)「ごめんなさいだお……ブーン、忘れてたお。ブーンは誰よりもツンと離れるのが嫌だったんだお」

ξ゚听)ξ「…」



161: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:33:29.67 ID:UbsKR27d0


( ^ω^)「ツンの応援なんかしたくなかったお!ツンにはずっと傍にいてほしかったお!」

ξ;凵G)ξ「…」

( ^ω^)「それなのに、ツンのためだからって……ブーンは自分に嘘ついてまでツンを突き放そうとしてたお!」

ξ;凵G)ξ「…」

( ^ω^)「もう放さないお。ツン、大好きだお。ブーンは、ツンの傍から離れない。だから……だからずっと、ブーンのために絵を描いてくれお」

ξ;凵G)ξ「……ひっく……な、なに言ってるのよ!そんなこと……無理にきまってるじゃない!」

( ^ω^)「無理じゃないお」

ξ;凵G)ξ「じゃあどうするのっ!ブーンはここに残って!私は大学に行って!二人とも離れ離れになっちゃうじゃ――」

( ^ω^)「ブーンはここには残らないお」

ξ;凵G)ξ「……え?」



163: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:33:53.51 ID:UbsKR27d0

( ^ω^)「ツン、いままで黙っててごめんなさいだお」

ξ;凵G)ξ「ど、どういうこと?」

( ^ω^)「実は……ブーンも大学を受験するんだお」

ξ;凵G)ξ「!」

( ^ω^)「ツンの受ける美大じゃないけど……ツンの大学と同じ町にある、ちょっとだけバカな大学だお」

ξ;凵G)ξ「えっ……な、なに」

( ^ω^)「でも、ブーンはスタートが遅れたお。だから、ツンにも内緒で必死に勉強してたんだお」

ξ;凵G)ξ「…」

( ^ω^)「それで眠れなくなって、イライラして……ツンがこんなに弱ってるのに、なにもしてあげられなかったお」

ξ;凵G)ξ「…」

( ^ω^)「まだ合格するかなんてわからないけど、ブーンもツンと同じように頑張ってるんだお」



164: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:34:16.80 ID:UbsKR27d0

ξ;凵G)ξ「…」

( ^ω^)「ツンは一人にしないお。卒業したら、二人で一緒に小さなアパートでも借りるお」

ξ;凵G)ξ「ブーン……」

( ^ω^)「そこで、ツンはブーンに絵を描いてくれお。ブーンはなにができるかわからないけど……」




( ^ω^)「ずっとツンの傍で、ブーンはツンを支えるんだお!」



165: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:34:38.85 ID:UbsKR27d0


ξ;凵G)ξ「…」

( ^ω^)「ごめんね、ツン?ツンとはずーっと仲良しだったから……なかなか言えなかったんだお」

ξ;凵G)ξ「私も……私もね」

( ^ω^)「ツン、ブーンはツンが大好きだお。もう二度とツンを放さないお。泣かさないお。ツンにずっと絵を描いてもらうお」

ξ;凵G)ξ「私も……私もブーンのこと大好きだよ」

( ^ω^)「……うん」



167: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:35:14.90 ID:UbsKR27d0

ξ;凵G)ξ「私もブーンが傍にいないとやだ。私、ずーっとブーンにいたずらするのっ!」

( ^ω^)「うん」

ξ;凵G)ξ「ブーンに絵を描いてあげて、それを褒められて……ずっとずっと、ブーンの傍にいるからっ!」

( ^ω^)「……約束するお」

ξ;凵G)ξ「ブーン……大好きだよ」

( ^ω^)「ブーンもツンのこと、ずっとずっと大好きだお」



168: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:35:33.51 ID:UbsKR27d0

風は弱くなって
それでも波の花は舞っていて
ツンはブーンの腕の中でやさしく笑っていて
しっかりとブーンもツンを抱きしめていて……

長い間ツンと過ごしていたから
ツンが傍にいるのが当たり前になってたから
ツンがいなくなることがこんなに辛いことだって気がつけたんだお。
ブーン一人じゃ、この波の花は多すぎるお。


ツンと二人だから
ブーンとツンだから


だからブーンは幸せだったんだお。

もう

二度とツンを放さない。

この真っ白な海岸で、ブーンはツンに約束したんだお。



169: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:35:53.78 ID:UbsKR27d0

ξ゚听)ξ「ひっく……」

( ^ω^)「ツン、泡が服についちゃうお」

ξ゚听)ξ「いいの。そんなことよりブーンが大切なの」

(*^ω^)「おっお」

ξ゚听)ξ「約束だからね?春から……一緒にこの町を出て行くんだからね?」

( ^ω^)「頑張るお。ツン一人になんて絶対しないお」

ξ*゚ー゚)ξ「…」

(*^ω^)「よっこいしょっと……」


ツンを抱っこして、イーゼルの前まで運んだお。
ツンはブーンから離れなくって……二人でひとつの筆を持って
白い花が一面に咲く海岸に、二人分のシルエットを書き足したお。

大きな大きな冬の海には
ブーンとツン。二人だけの世界が広がったんだお。



172: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:36:40.45 ID:UbsKR27d0


('A`)「……ライフイズビューティフルってか」

川 ゚ -゚) 「うむ」

('A`)「ってなにやってんだよ先輩」

川 ゚ -゚) 「いいじゃないか。ツンとブーンの祝福だ」



ドクオとクー先輩の気配がしたけど
ブーンは気にせずツンと引っ付いてたお。
だって、ツンが離れないから……ブーンも離れたくなかったから。



176: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:37:19.78 ID:UbsKR27d0


海岸に落ちてた花を拾って、ツンは無邪気にブーンの顔に塗ってきた。
ブーンも避けながら、それでもツンを放さなかった。
ツンは、もう二度と離さない。
ずっとずっと、ブーンの傍でいたずらしててもらうんだお。
その代償に……ずーっとブーンは幸せを貰っておくんだお。



('A`)「よっしゃぁぁぁ!ザ・エンドォ!!」


最後の最後までドクオはうるさいお。



177: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:37:38.48 ID:UbsKR27d0



―数年後―


  _
( ゚∀゚)「おっぱいおっぱい!」

(*゚ー゚)「ちょっ、おっぱいじゃないよー。そこは制服だよぉ」



('A`)「おいおい、なにやってんだ」


(*゚ー゚)「あ、先生!またジョルジュ君が暴走してて……」
  _
( ゚∀゚)「暴走じゃないっすよ!ここはおっぱいが必要なんすよ!」

('A`)「……チーフ。バット持ってきて」



179: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:37:57.39 ID:UbsKR27d0

川 ゚ -゚) 「チーフじゃないぞ」

('A`)「ばっかおめー、何回言えばいいんだよ。仕事中はチーフでいいの。クーはそれ以外」

川 ゚ -゚) 「ふむ。常にその名前で呼ばれたいものだな」

('A`)「……なんだかなぁ」

  _
(;゚∀゚)「ななn、なんすかそのバットは!」
アッー



(*゚ー゚)「ねぇ先生」

('A`)「なに?そこは63番張っといて」

(*゚ー゚)「あのそうじゃなくてですね。あの絵ってなんなんですか?」



180: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:38:17.68 ID:UbsKR27d0

('A`)「え?あー、あれ?」

川 ゚ -゚) 「あれはな、私の後輩で旦那の同級生の描いた絵だ」

('A`)「んまーそんな感じ。ってだから先生って言えっつーの」
  _
( ゚∀゚)「おっぱいっすか」
メコォ


('A`)「綺麗な絵だよなぁ。幾らすんだっけこれ、すっげ高いと思うよ」

(*゚ー゚)「そうなんですか?」

('A`)「うん。この絵描いてるやつの旦那がなかなか売りやがらなくてなぁ。まあ本人も売る気ないみたいなんだけど」

川 ゚ -゚) 「今もここの近くで暮らしているぞ。二人仲良く」

('A`)「二人じゃぁないだろう?」

ピンポーン


('A`)「あ、ほらあれだ」



183: 甘sk2 ◆r5XONj/Bfg :2007/09/27(木) 00:39:05.59 ID:UbsKR27d0


ガチャ


('A`)「よぉ、久しぶり。おっきくなったなぁ琴欧州ぐらいあるんじゃないか?」

(#^ω^)「おまっ、久しぶりにあった友人の娘になんてことをっ!」

川 ゚ -゚) 「ドクオの漫画のヒロインのように可愛いじゃないか。よかったなお母さんにそっくりで」

ξ゚听)ξ「ほらほら、外寒いからお家の中入ろうねー?」




ガチャン




(;^ω^)「だからなんでドアを閉めるんだおwwwそんな所ばっかりツンそっくりだお!」



                                                    終。



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