( ^ω^)が家庭を売るようです

114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:07:32.67 ID:yVfKkUwb0





    第4話 「ギコ:意地」





122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:09:41.26 ID:yVfKkUwb0
ギコは当然頭脳明晰ではないが、随分と背伸びしたそこそこ有名な中学へと入学を決めることができた。
一番後ろからのスタートと言ってもいい、毎度のテストでは頑張って赤点を免れるくらいがギリギリだった。
元々勉強は好きではない、合格を聞いた教師が腰を抜かしたくらいだ。

それでも彼は持ち前の人当たりの良さとリーダーシップで、人望はとても厚かった。


  「ギコ、放課後B組の奴らとサッカーしね?」

(,,゚Д゚)「おう、ボコボコにしてやんぞゴルァ!」


親友は多く、勉強も沢山の協力者がいた。

ちゃっかりと彼女まで作って、学生らしい歳相応の楽しさを満喫していた。


(*゚ー゚)「次の日曜日、ね?」

(,,゚Д゚)「おう、約束だぞ!」


4月、彼に変化が起きることで、やはりそれらは崩れるのだが。



126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:11:25.02 ID:yVfKkUwb0
誰よりも本人が分かっただろう、その微妙な距離を。
それまでと変わらないように彼自身は努めた。
一緒にバカやって、運動も供に楽しもうと必死だった。


なのに誰も彼に文句を言わなくなったのだ。


彼が何を言っても笑ってくれた。

勉強も嫌な顔をせずに教えてくれた。

サッカーではボールを持ったら誰も取りに来ない。


小学生ならまだしも、良識が出来始める中学生なら分かる、特にその学校がなまじっか賢いからこそ。
なまじ賢いからこそ、そういった極端な対応としか現れなかったのだ。


誰よりもギコ自身が気付いていた、自分の特異性に。

どれだけ自分が今まで通り振舞おうと、無駄であることに。



129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:13:12.29 ID:yVfKkUwb0
今まで通り振舞おうとする自分、無理して合わせてくれる相手。

ただただ苦痛だった。
どうして友達と気を使いながら話をしなくてはならないのだ。
これは本当の友達ではないのではないか。

疑心暗鬼となった。
彼は何を信じればいいのかも分からず、自分を見失った。

まるで友達たちが、自分に気を使って遊んでくれている、そんな錯覚に陥ったのだ。


(,,゚Д゚)「なぁ、今度の休みさ……」

(*゚ー゚)「ゴメン、テレビ来るかもしれないんだよね……」

(,,゚Д゚)「うん、嫌だよな、仕方ないよ」


本当に好きならそんなこと関係ないのでは?
これは本当の愛じゃないのではないだろうか。

妹のクーは毎日そんな中で生活しているというのに、
ギコには何がそうも彼女を引き止めているのかが理解出来なかった。
あくまでクーが異端であるだけなのだが、それでも彼自身彼女の言動が腑に落ちなかった。


そして疑心は火を見るよりも明らかに、彼らの関係を蝕んでいった。



131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:14:59.64 ID:yVfKkUwb0
(*;ー;)「ゴメンなさい、別れて」

(;゚Д゚)「どうしてだよ、納得できねーって!」

(*;ー;)「私も嫌だよ、でも、ギコ君いつも私の反応を伺いながらしか話してくれないもん。
  それで私が反応すると、『やっぱりか』って眉間に皺よせるの……
  私いつも頑張っているけど、絶対にギコ君、笑ってくれないんだもん」


世の中に感情を完璧に隠せる人間がどれほどいるとして。
目は口ほどにものを言うというが正にその通りだった。
口以上に、彼の目は彼女を追い詰めていたんだ。

説得の甲斐空しく、一年ほど続いた関係は崩れ去った。


他人の監視ばかりの家、他人と距離の離れた学校。

彼の落ち着ける場所などどこにもなかった。


この憤りをどこに向ければいいのか分からなかった。


何に責任転嫁すればいいのかすら分からなかった。



136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:16:45.27 ID:yVfKkUwb0
ξ ゚听)ξ「アンタは長男だから、他の4人のお手本となるようにしっかりとしてもらわないとね。
  勉強もこれまで以上に頑張って、子供たちの世話をして手伝いもして。
  今までみたいに遊んでばっかりじゃいけないんだから、分かるでしょ?」


親の言いつけなど何一つと守らなかった。
他の兄弟がはいはいと従う中、初めから守る気などありはしなかった。

テレビには元から反対していた。
いい体風を装えという言葉を無視し、できる限り今まで通りなんら変わらずに振舞った。


その顛末がこれだ。

今まで通り振舞っているだけ、何も変わっていない筈なのに家の中はピリピリとし、
今まで通り同じ事をしているだけなのに怒られる回数はどんと増えた。


周りだけが勝手に変わっていき、彼だけが取り残されたのだ。


この憤りをどこに向ければいいのか分からなかった。


何に責任転嫁すればいいのかすら分からなかった。



139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:18:04.36 ID:yVfKkUwb0





ξ ゚听)ξ「アンタは長男だから、他の4人のお手本となるようにしっかりとしてもらわないとね。
  勉強もこれまで以上に頑張って、子供たちの世話をして手伝いもして。
  今までみたいに遊んでばっかりじゃいけないんだから、分かるでしょ?」










142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:20:10.76 ID:yVfKkUwb0

ξ ゚听)ξ「ギコ、そういえばテストは? 返ってきたんでしょ?」

(,,゚Д゚)「ほい」

ξ ゚听)ξ「『ほい』じゃないわよ、何この点数?
  直前にちょっと勉強してももっと取れるわよ」

(,,゚Д゚)「直前にちょっと勉強したんだけどな」

ξ ゚听)ξ「それはアンタが馬鹿なだけでしょ、だったら事前にちゃんと勉強しなさい」

(,,゚Д゚)「はいはい」

ξ ゚听)ξ「……何その返事?」

(,,゚Д゚)「分かってるよ、ごめんなさい」

ξ ゚听)ξ「はいはい。
  いっつも決まって言葉だけ、もう流石に聞き飽きたわよ」

(,,゚Д゚)「……」



146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:22:39.37 ID:yVfKkUwb0

( ;∀;)「うわーん!」

ξ;゚听)ξ「ちょっとちょっと、何よ!」


ξ ゚听)ξ「ギコ、またアンタ?」

(,,゚Д゚)「別に喧嘩なんて珍しくないだろ」

ξ ゚听)ξ「珍しい珍しくないじゃ無いわよバカ。
  お兄ちゃんでしょ、何でそうやって弟に当たるかな?」

(,,゚Д゚)「でもコイツが……」

ξ ゚听)ξ「でもじゃない、謝りなさい!」

(,,゚Д゚)「別に俺悪くないもん」

ξ ゚听)ξ「お兄ちゃんでしょ、何強情はってんの? 謝りなさい」

(,,゚Д゚)「……ごめん」

ξ ゚听)ξ「はいはい、これで良かったわね、仲直り」



154: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:24:29.68 ID:yVfKkUwb0

ξ#゚听)ξ「ギコー!」

(,,゚Д゚)「何だよ帰ってくるなり……」

ξ#゚听)ξ「私が留守している間に、何よこの部屋の散らかり様は!」

(,,゚Д゚)「このゴミとかは俺だけど、他は知らね」

ξ#゚听)ξ「知らねじゃないでしょ、何でお兄ちゃんとしてちゃんと下を見ないの!?
  何であんたまで一緒になって散らかしてんのよ!」

(,,゚Д゚)「別に今までも良くある事じゃん、テレビが来てから少ないけど……」

ξ#゚听)ξ「テレビは関係ないでしょ! 何でそうやってすぐ他人のせいにするのアンタは!?」

(,,゚Д゚)「だって俺のせいじゃないし」

ξ ゚听)ξ「……いいわ、とりあえずここ片付けるまで食事はあんたには与えません。
  当然一人でよ、分かったわね」

(,,゚Д゚)「……はい」



158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:26:17.49 ID:yVfKkUwb0



(,,゚Д゚)「……カーチャン、どうかしたのか?」

ξ ゚听)ξ「……別に」

(,,゚Д゚)「あ、そう」

ξ ゚听)ξ「……」



ξ ゚听)ξ「アンタ以外に怒鳴られたのよ、うそつきだって」

(,,゚Д゚)「ふーん」

ξ ゚听)ξ「どうして家族のためを思ってやっているのに、こうやって悪者扱いなのかしら。
  本当嫌になってくるわ」

(,,゚Д゚)「実際嘘ついたんだろ?」

ξ ゚听)ξ「ついてないわよ、心当たりも無い!」

(,,゚Д゚)「カーチャン変わったよな」

ξ ゚听)ξ「変わりもするわよ」

(,,゚Д゚)「多分、俺も含めてみんな、変わる前のカーチャンのほうが好きだったんだと思う」



162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:28:06.14 ID:yVfKkUwb0
ξ#゚听)ξ「今の私が嫌って言うの? アンタたちのために頑張って変わらざるをえなかったのに。
  アンタだけね、前から何にも変わらずに一人馬鹿なままなのは……。
  アンタが長男として、一番上としてもっとちゃんとしていればこうもならなかったのに」

(,,゚Д゚)「……」

ξ#゚听)ξ「他の子達は頑張っていたのに、アンタが全部それを無駄にしたのよ。
  私の言いつけも守らずに一人勝手に突っ走って、それでこんなに他の子たちが苦しんだのよ!
  アンタのせいで、私もこうまで言われなくちゃならないのよふざけないで!」

(,,゚Д゚)「……カーチャン、確かに俺は反抗したよ。
  そして言うとおり皆、母ちゃんの言う事を守って変わったよ」

ξ#゚听)ξ「そうだよ、あんた一人が全てをめちゃくちゃにしたんだ、もっと……」

(,,゚Д゚)「でも」

ξ#゚听)ξ「……!」

(,,゚Д゚)「でもね、一番変わったのは他の誰でもない、やっぱりカーチャンだよ。
  こうやって家庭を壊していっているのもカーチャンだよ。
  そして俺は、そんなカーチャンは大ッ嫌いだ」

ξ#゚听)ξ「!!」

(#゚Д゚)「今のカーチャンなんて、いらない!」



168: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:29:34.50 ID:yVfKkUwb0





(#゚Д゚)「最ッ低の家庭だよ、ここは」










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