( ^ω^)が家庭を売るようです
- 174: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:30:39.72 ID:yVfKkUwb0
第5話 「ツン:後悔」
- 180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:32:05.69 ID:yVfKkUwb0
- 彼女は高校を卒業し、就職した先は大手チェーン店のスーパーだった。
最終学歴は高卒だが、確固たる意思を持っている理知的な彼女の事だ、すぐにも支店を任されるにまで上りつめた。
勉強して学べる事など大した事ではない、経験こそが至極の知識とは彼女の持論だ。
支店を任されるまでになると、彼女は落胆した。
自分とろくに意見も交わそうとしない従業員、言われた事しか出来ない駒。
出身大学ばかりをステータスにかかげるくせに、結局の尻拭いは全て彼女だ。
『経験』を積み重ねた彼女にとって、それらのなんともどかしい事か。
そして意識は仕事から遠のき、新しい『経験』を欲した。
高校時代の仲間に誘われた合コンに参加したのも、それが目的だった。
ξ ゚听)ξ「はじめまして、ツンって言います!」
( ^ω^)
そこで彼女達は出会ったのだ。
- 183: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:33:41.05 ID:yVfKkUwb0
- 合コンとはいかに自分を売るかなのだろう、それぞれが出身大学や仕事で自己紹介をした。
そして彼女が高校卒だと知ると、畳み掛けるように学歴自慢へと繋がった。
高卒が大学卒を崇高しているとでも勘違いしているのだろう、
彼女にはそれが仕事場の無能な人間を連想させられ、受け入れる事など到底できなかった。
高学歴が格好いいなどと勘違いしているバカは、低学歴人よりも惨めに映った。
( ^ω^)「大学も結局なんにも大したことないお、ツンちゃんの仕事のほうが皆よりすごいお!
僕も大学出たけど結局三流で、後悔ばかりだおwwww」
彼女には不覚だったのだろう。
男の大学は確かに偏差値的には三流大学ではあるが、スポーツ業界など名は知れ渡っており自慢できることなど枚挙に暇が無い。
だというのにそれよりも彼女の仕事を褒めた。
ただそれだけだったが、彼女が欲していたものもただそれだけだったのだ。
ξ*゚听)ξ(^ω^*)
なんだかんだでいい感じでそのまま合コンを終え、メールアドレスを交換した。
その日から、毎日のように男の積極的なアプローチがツンへと続いた。
- 189: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:36:33.46 ID:yVfKkUwb0
- 世の中不思議なもので、常に好きだといわれるとものすごく安心感を覚えてしまう。
そして気付くと、そのぬるま湯に入り浸ってしまう。
怖い話だ、どんな自分でも受け入れてくれる包容力だなんて勘違いしてしまうのだ。
初めはほとんど相手にしていなかったが、次第に愛着染みたものを覚える。
母性本能を動かされるとはこの事か、どれだけいい男達のアプローチにも屈しなかったが、彼にだけは反応した。
高卒など、ある劣等部分を持ちながらに周りよりも出来る人間とは評価される事に酷く弱い。
まるで彼女が必要とされているように感じ、駄目と知りつつも男の面倒を見続けてしまった。
ξ ゚听)ξ(もう、私がいないと駄目だから……!
私くらいしかあの人の面倒見れないからね!)
表面上は酷い事を言いながらも、持ち前の器量の良さで世話をし続けた。
そうすることで彼女自身も安堵感を保つことが出来ていた。
( ^ω^)「結婚しよう」
ξ*゚听)ξ「べ、別に構わないわよ……そんな経験も必要かなと思うし!」
彼女は言い切れる、今なお彼の何がいいかと聞かれると答えられないと。
顔も良くなければ部屋は汚いし仕事も出来ない、常識も全然知らない。
そんな彼のどこに惹かれたかは知らないが、『彼女でなくてはいけないこと』だったのだ。
仕事を辞めてまでも。
- 192: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:37:39.29 ID:yVfKkUwb0
- 子沢山にも恵まれた。
家計は夫の収入だけではやり繰りが出来ず、彼女は内職を始めた。
彼女が仕事で溜めた貯金は、日に日に減っていった。
そして、その日は来た。
(;^ω^)「会社……首になったお」
常々楽天的でマイペースな彼の事だ、そうなるだろうとは予てから想像できていた。
しかしいざその局面に立たされるとどうしようもない、すぐにも仕事を探してもらうしかなかった。
これで彼がまた一歩、成長してくれると信じて。
そして彼が持ってきたモノは、私達を変えた。
- 196: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:39:17.32 ID:yVfKkUwb0
- ξ;゚听)ξ「私がしっかりしないと、外から見られても恥ずかしくない一家にしないと!
それぞれ子供たちにしっかりと目指す先を教えないと。
大丈夫、私には昔の……支店を持っていた時の経験があるんだから!」
子を遊ばせて、しつけして、家事をこなして、内職もして……常にそれらを見張られる立場に立った。
そして彼女はその立場の重さを痛感した。
何かあれば自分のせいにしかならない環境。
頼れる夫は常に就職先を見つけるために外出だ。
たった一人で、常に監視され、常に家族を見る立場に置かれた。
その重圧、ストレスをどれだけ分かろうか。
学校や仕事といった逃げ道の無い、家という檻の中。
外に出れば、カメラ以上の目線が彼女を捕らえてきた。
近所との付き合いもままならない、ツンはずっと一人で戦った。
そして 彼女は 壊れた。
- 200: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:40:46.22 ID:yVfKkUwb0
ξ;゚听)ξ「私がしっかりしないと、外から見られても恥ずかしくない一家にしないと!
それぞれ子供たちにしっかりと目指す先を教えないと。
大丈夫、私には昔の……支店を持っていた時の経験があるんだから!」
- 204: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:42:04.73 ID:yVfKkUwb0
- ( ^ω^)「なんだお、突然話があるだなんてわざわざレストランまで……。
隣町まで来て……家じゃ出来ないのかお? 今日も職探しで疲れているんだお」
ξ )ξ「……今日ね、掃除していたら……クーの部屋でカメラ、見つけたんだ。
そんな所にカメラ付けるだなんて聞いていないのに、思春期の女の子の部屋に……よ?」
( ^ω^)「それがどうかしたのかお?」
ξ#゚听)ξ「どうしたって……女の子の部屋よ!? 今年でまだ13の!
そんな部屋に勝手にカメラだなんて……おかしいでしょ!?」
( ^ω^)「確かに悪い事だお、でもクーならそんなこと気にしないお。
何よりだからどうするのかお、それをTV局に言ったら僕達はまた明日から収入源を失うお。
家庭を守るためだお、分かるだろうけどどうしようもないんだお」
ξ ゚听)ξ「……私、もう駄目かもしれない」
( ^ω^)「何がだお?」
ξ ゚听)ξ「……こんな生活無理よ、もう続けられない」
( ^ω^)「うん、分かるお、いいたい事はよく分かるお、でも落ち着くお」
ξ#゚听)ξ「分からない、アナタなんかには分からない!」
( ^ω^)「ツン、お前だって僕の苦労を分からないお。
毎日毎日汗水垂らして、30代にもなりながら就職先を探して奔走している自分の苦労をわからないお。
それでよくそんな事言えるお」
ξ ゚听)ξ「だって……アナタ、就職なんてする気ないでしょ?」
- 210: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:43:44.60 ID:yVfKkUwb0
- (;^ω^)「何言うんだお、する気なかったらこんなにも毎日頑張ったりしていないお」
ξ ゚听)ξ「テレビのためでしょ? 私達のためでも何でもない、テレビのためでしょあなたは!?」
(#^ω^)「馬鹿にするなお!」
ξ#゚听)ξ「アナタこそ私を馬鹿にしないでッ!!」
ξ ;凵G)ξ「もう私駄目なの、子供を怒らなくちゃって、子供を怒るためにいるみたいで。
嫌われている自分がいるのも分かっているけど、どうしようもなくて」
ξ ;凵G)ξ「初めはね、常に怒っていて、私だけが嫌われていればそれでいいんだなんて思ったわ。
笑い話よね、私が悪者になればそれでいいいだなんてヒロイン気取っていたわ。
でもいつからか……怒る事こそが私の目的みたいになっていたんだと思う。
私自身、怒らないと自分を保てなくなったんだと思う」
ξ ;凵G)ξ「毎日何か出来事を起こさなくちゃいけないでしょ?
だから私、子供がわるびた事をすると嬉しくてね、精一杯怒るの。
怒る事で安心してしまう自分がいるの」
ξ ;凵G)ξ「子供が何もしていなくても、怒らなくちゃいけないの。
毎日何かイベントを起こさなくちゃいけないからなんて理由つけながら、私の精神を維持するため……」
- 217: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:45:36.53 ID:yVfKkUwb0
- ξ ;凵G)ξ「しつけをしなくてはいけないから、私は怒り役よ。
さっきも言ったけど、初めはそれでいいかななんて思っていた、私が嫌われる事で他の家族が幸せなら。
でもね……私だって本当は子供たちと仲良く笑い合いたいの!
ξ ;凵G)ξ「家でも外でも監視されて、家の中でもくつろぐ素振りすら出来ずに内職ばかりに手をつけて。
外に買い物に行けば四方八方から視線が集まって……
一番安い商品に手を出せないような些細なストレスでも私にはもう辛くて辛くて……」
ξ ;凵G)ξ「私は最悪な事に、その全てのストレスを……子供たちにぶつけていたの。
子供たちを怒る事で自分を保っていたの、本当に馬鹿よね」
ξ ;凵G)ξ「でも、アナタはいつもテレビの事ばかりで私に家庭の事は丸投げして……誰を頼ればいいの私は!?
そしてこんな親元にいる子供たちは、誰を信じて付いていけばいいの!?」
(;^ω^)「僕だってそれは分かっているお、だから毎週休みには家族で食事へ……」
ξ ;凵G)ξ「本当にそれで子供たちが楽しんでいると思っているの!?
カメラから離れられるその時は、家での反省ばっかりじゃない!
家族揃っての外食を何よりも嫌っている子供が、私達の子供なのよ!?」
- 224: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:47:06.72 ID:yVfKkUwb0
(;^ω^)「……」
ξ ;凵G)ξ「私……子供たちに謝りたい、そしてもう一度やり直したい。
今度はちゃんとした親として、子供たちと共に笑いあいたい。
これ以上嫌われたくない、最低の親になりたくない」
(;^ω^)「……」
ξ ;凵G)ξ「子供たちを怒鳴ってでしか安心と安らぎを得られない、最低の親はもう嫌。
そしてどんどん自己嫌悪に陥って……その発散はやっぱり怒る事で……。
もう嫌なの、もっと子供たちと面と向かい合いたい、笑いたい……」
(;^ω^)「ツン……」
ξ ;凵G)ξ「笑うだけでいいの、笑い合いたい……それ以上は何も望まないか。
どうして名前を呼ぶだけで、子供たちは嫌な顔するの?
どうして眉間に皺を寄せてでしか私と話してくれないの……辛いよ……
私は誰のためにこんなに怒鳴って、頑張って耐え忍んでいるの……もう分からない……」
(;^ω^)「……」
- 230: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:48:53.54 ID:yVfKkUwb0
ξ ;凵G)ξ「アナタはそうよね、いつも黙ってばっかりで、私に手なんて差し伸べてくれないわよね」
(;^ω^)「……いや、その……」
ξ ;凵G)ξ「私ね、すごくアナタが羨ましかったの。
子供たちと仲良くしているアナタが、怒ってしか会話できない私と違って。
私の気も知らずに何食わぬ顔して子供たちと意気投合できるアナタが羨ましかったの」
(;^ω^)「……」
ξ ;凵G)ξ「いつも仕事探しだもんね。
今日だってそう、厄介ごとがあるときは決まって仕事探し終えた後で疲れているもんね。
だから私が怒って発散するしかなくて、子供たちから嫌われていくのは私だもんね」
(;^ω^)「ツン、それは違うお」
ξ ;凵G)ξ「違わない!」
(;^ω^)「……」
ξ ;凵G)ξ「……」
(;^ω^)「……」
ξ ;凵G)ξ「……ねぇ」
- 235: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:50:14.25 ID:yVfKkUwb0
ξ ;凵G)ξ「アナタ……別れましょ」
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