( ^ω^)が家庭を売るようです
- 242: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:51:11.16 ID:yVfKkUwb0
第6話 「ホライゾン:崩壊」
- 254: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:53:21.61 ID:yVfKkUwb0
- 彼の後先考えない向こう見ずな性格は昔からだった。
小学校の頃からとりえも無く、告白しては振られを繰り返していた。
怠慢な彼は己を磨く事や熱くなれるものを何一つと持たず、ただひたすらに夜郎自大に振舞っていた。
お調子者で自分勝手で、友達と呼べる人間は殆どいなかったことだろう。
その証拠に小学校中学校高校と、卒業するたびに全て縁が切れていた。
かろうじてドクオという男がいたくらいだ、それも中高大と一緒だった腐れ縁にすぎないが。
最も彼に聞けば「ドクオは唯一の親友だ」などとのたまうのだろうが、おめでたい事だ。
ドクオが人付き合いの良い人間に過ぎない話だと、いつ気付くのだろうか。
彼が大学に行ったのも、大学で理想の彼女を見つけるためだった。
その証拠に彼は三流大学の文学部に入り、遊び呆けた挙句一年就職浪人した。
肝心の彼女は出来ても一ヶ月ともたなかったが、理由は言うまでも無いだろう。
振られると一週間ほどは落ち込むが、その後すぐに別の女性へ目移りする辺り奔放で彼らしい。
( ^ω^)「なんだ、結局自分と生涯ともになるべき女は大学にもいなかったお」
そうやって全てを片付けられる辺りにも、彼の性格が顕著に現れている。
- 261: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:55:07.84 ID:yVfKkUwb0
- マイペースや能天気という表現が適切なのだろうが、彼はそれ以上に抜けている性格だった。
そのくせ自分勝手に振舞った。
仕事についてもそれは変わらず、職についてから十数年と役職が変わっていないのも頷ける。
発言力はぴか一で、くせに厄介ごとを嫌った。
発言も自分本位なものが多く、気配りなどしない。
ξ ゚听)ξ
不運にも惹かれあうのは当然かも知れない。
怒られても何一つと反省を覚えない男、自我をもっていて面倒見の良い女。
女としても、気兼ねなく意見を言える相手というものを求めていたのだろう。
何を間違えばその相手にこの男を選ぶのか、そればかりは分からない。
おそらく彼女の面倒見の良さと母性本能の二つで片付けられる問題なのだろう。
支店まで任されるほどやり手の彼女は、最後まで面倒を見なくてはいけない責任意識が強過ぎたのだろう。
もっともこの男を放っておけなくなるのも分からないでもない。
放っておけばどこの馬の骨とも分からぬ女に騙される事間違いないだろう。
心を許し、想いを馳せれば最後だ、彼から目を離せなくなる。
いつでも彼を追ってしまう、彼のことが頭に過ぎる、なんと歪んだ恋愛事情か。
自分を心より好いてくれるのであれば殊更に気掛かりだ、傍から離せなくもなる。
- 265: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:56:36.76 ID:yVfKkUwb0
- そして意外なほど男は従順であり、浮気の素振りなど微塵と無いほど女に惚れ込んでいた。
自分勝手なのは考える頭が無いだけで、根は純粋な人間なのだ。
そう、まんま子供なのだ彼は。
可愛さなど無ければ時折憎くもなる、それでもそののほほんとした風貌は憎めない。
喧嘩しても寝て起きたらケロッとしている様な相手ならば、怒り続けるだけ馬鹿らしい。
大喧嘩をしても次の日に何食わぬ顔で「朝ご飯何?」と聞かれればきっと皆も分かるだろう。
強情を張ってしまう自分が、彼以上に子供っぽく感じてしまうのだ。
彼にムキになってしまっては子供、大人の対応で振舞わざるをえなくなってしまう。
どこまでも男は子供なのだ。
それならば彼女が放っておけないのも納得してくれようか。
彼女が結局彼に固執してしまう理由が分かろうか。
そして彼に悪気など微塵とありはしない理由に至るまでが。
- 274: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 21:58:34.46 ID:yVfKkUwb0
- 当然だが彼も全てが悪いわけではない。
素行は目立つが、注意は聞くし一端の努力も見せる。
持続力も無ければ興味の移り変わりが早過ぎる為に、その成果が現れる事など殆どありはしないが。
そして何よりも、全力で物事にぶつかっていく傲慢さがあった。
興味無い事や厄介事に首を突っ込みたがらない特性は前述した通りだが、
やるべき事だと分からせ、その他の興味さえ取っ払えば遺憾なく力を発揮する。
そうまでして使うだけの価値があるかどうかは別だが。
その点で会社は彼を使えないものとは認識しなかった。
もっとも、それ以上の人材などざらだ、同情で雇う余裕もなくなればクビの第一候補は明確だった。
彼の最もすごい箇所は、その事実にすら動じる事無く何食わぬ顔でいられることかもしれない。
常に彼を危ぶむのは彼の周りばかりだ。
- 280: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 22:00:09.82 ID:yVfKkUwb0
- ('A`)「聞けって、さっきも言ったけど、俺は今ようやく一つ大きな番組任されてな。
そのコーナーが一つ埋まらなくて四苦八苦していたんだ。
『密着・職無し父親の7人家族生活』……どうだ、興味惹かれないか?」
無茶を言うな、彼が食いつかないわけが無いだろう。
なまじ知識ある子供を騙す事など他愛も無い。
それほど騙しやすい人材がどこにいるだろうか。
本当の子供のような素直さが無い。
そのくせ楽な事ばかり意識がいく。
目の前に美味しそうな餌さえ出せば、誘うまでも無く喰いついてくる。
盲目となった後は簡単だ、何をしても文句など言えないだろう。
厳しい拘束条件も、彼に向けられたものでなければ気にも留めないだろう。
話はトントン拍子に進み、その崩壊は始まった。
後はただ、終結までのカウントダウンを待つのみだった……。
- 282: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 22:01:07.00 ID:yVfKkUwb0
('A`)「聞けって、さっきも言ったけど、俺は今ようやく一つ大きな番組任されてな。
そのコーナーが一つ埋まらなくて四苦八苦していたんだ。
『密着・職無し父親の7人家族生活』……どうだ、興味惹かれないか?」
- 290: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 22:02:47.84 ID:yVfKkUwb0
(;^ω^)「ちょww何言っているんだお、別れるなんて正気かお!?
ゴメンだお、今まで以上に頑張って職を見つけるお!
頑張るから考え直して欲しいお、許して欲しいお!」
ξ )ξ「ゴメン……無理……」
(;^ω^)「無理なもんかお、出来るお、大丈夫だお!」
ξ )ξ「……」
( ;ω;)「お願いだから……首を縦に振って欲しいお。
僕を……見捨てないで欲しいお」
ξ )ξ「……」
( ;ω;)「……」
ξ )ξ「……」
- 298: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 22:04:22.30 ID:yVfKkUwb0
( ;ω;)「もう、本当に……駄目なのかお?」
ξ )ξ「……ごめん」
( ;ω;)「そんな、子供たちはどうするんだお!?」
ξ ゚听)ξ「私が引き取るわ、もう一回私も働く。
足りない分は祖父母の年金やお父さんお母さんに補助してもらえば何とかなると思う」
( ;ω;)「……駄目だお、僕には……ツンも、子供たちも残らないのかおッ!?
そんなのないお、有り得ないお! 嘘だお!」
ξ ゚听)ξ「ごめんなさい、でも、アナタには渡せない、絶対に」
(#;ω;)「ふざけんなお、もう僕も三十後半でどうやっても挽回なんて無理だお!
どうしろって言うんだお、勘弁してくれお!
お願いだから……ゴメンだお、もうどうにか……」
ξ ゚听)ξ「……」
- 311: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 22:05:58.68 ID:yVfKkUwb0
- ξ ゚听)ξ「何回も考えてみたけれど、やっぱり一度リセットしないと無理だなって。
私もこの歳になったけど、もう一度何とか頑張ってみようと思う。
だからさ、アナタも……出来るよ、絶対に」
( ;ω;)「お願いだお……見捨てないで欲しいお……
僕にはツンが必要なんだお、ツンじゃないと駄目なんだお僕は。
それは誰よりも僕自身が一番知っているお」
ξ ゚ー゚)ξ「そんなこと無い、アナタはやれば出来るわよ。
今までその機会が無かっただけ、絶対」
( ;ω;)「無理無理、絶対出来ないお、オマエがいなくちゃ駄目なんだお!
明日から働くお、子供の面倒も一緒に見るお!
テレビカメラももう止めるお、明日からいつもの、今までの暮らしに戻れるんだお!」
ξ ゚听)ξ「……」
( ;ω;)「一緒に戻るお、今までの幸せだった頃の家庭に。
カメラも何にも無い、誰のものでもない、僕達の家庭に」
ξ ゚听)ξ「……」
( ;ω;)「……」
ξ ゚听)ξ「……」
( ;ω;)「……やっぱりもう駄目なのかお?」
ξ;゚听)ξ「……ゴメンなさい」
- 318: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 22:07:51.42 ID:yVfKkUwb0
- (#;ω;)「ふざけんなお、ツンのバカ、自分勝手で、最後には見捨てて裏切り者ッ!
寂しいじゃないかお、もう一緒に暮らせないのかお!?
こんなに大好きなのに、今でもこんなに好きなのにッ!」
ξ ゚听)ξ「あのね、これだけは……勘違いしないで欲しいの。
私もアナタが好きだって事を……」
( ;ω;)「だったら……どうして……」
ξ;゚听)ξ「ゴメンなさい……」
( ;ω;)「……僕こそ、今までオマエに苦労ばかりで……ゴメンだお。
そして今まで本当にありがとう」
ξ ゚听)ξ「……」
( ;ω;)「お願いだから、アプーだけ預けてくれないかお?」
ξ ゚听)ξ「!?」
( ;ω;)「もう一度やり直す上で、僕が頑張るためにもアプーが欲しいお。
立派な女の子に育てて、またいつかツンに会うために。
誰かのために、頑張れるように」
ξ ゚ー゚)ξ「……うん、わかった」
- 326: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/09/25(火) 22:08:55.88 ID:yVfKkUwb0
「さようなら」
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