( ^ω^)が空を行くようです
- 65:VIP奴隷 :2006/11/27(月) 20:46:04.58 ID:pZSgmORy0
第三話 「STROBOLIGHTS」
二人はヘトヘトに疲れた体を引きずって飛行機械までたどり着くと、すぐさま離陸した。
幸いにも、ラウンジ艦隊の演習空域はそう遠くなく、
速力を上げて飛べば一時間もたたずに到達しそうであった。
夜の空は不気味なほどに暗く静かで、
真下に広がる雲海はこの世のありとあらゆるものを飲み込んでしまうかのような漆黒の闇。
しかし、そんな周囲の様子に眼を向けるほどの余裕は今の二人にはなかった。
ブーンは襲ってくる睡魔との戦闘に必死で、
後部座席のツンはいつでもブーンたたき起こせるようにと、
スパナを片手に必死のまなざしで彼の後頭部を注視している。
この道中の、深夜の飛行の中で響く音といえば、
途中で睡魔に敗れたブーンの後頭部にスパナを投げつけるツンの怒声と、
二人の飛行機械から鳴り響く低いエンジン音、
そして、彼らが風を切って空を進む音だけであった。
- 68:VIP奴隷 :2006/11/27(月) 20:48:23.19 ID:pZSgmORy0
それから一時間ほど飛行を続けた彼らのはるか前方斜め下に、
星の光とは比べ物にならないほどに強い無数の光が姿を現した。
ξ゚听)ξ「ブーン!ラウンジ艦隊よ!」
( ´ω`)「……これでやっと眠れるお」
なぜか操縦席に散らばっているスパナを拾い上げ、
後部座席のほうを振り向き、ブーンは身を乗り出してスパナをツンに手渡した。
そして、なぜだかひどく痛む後頭部をさすりながら、彼はラウンジ艦隊の旗艦を探した。
すると都合のいいことに、
他の艦に比べはるかにきらびやかに装飾された旗艦と思われる飛行戦艦は
ブーン達の飛行する方向からもっとも近い位置にいた。
一見すると、われわれの世界の海に浮いている戦艦の様相を呈しているそれは、
本来海面に沈んでいるべき船底部分が骨組みのみでスカスカであり、
そこに飛行機械が着陸できるような甲板や作業場などが備え付けられている。
もちろん、われわれの世界の戦艦と同様、上部にも甲板は備え付けられており、
その上部甲板に向かって、ブーンはゆっくりと飛行機械を進めた。
- 69:VIP奴隷 :2006/11/27(月) 20:50:42.29 ID:pZSgmORy0
( ^ω^)「ツン、発光信号を頼むお」
ξ゚听)ξ「把握したわ」
そう答えるや否や、少女は座席から発光信号機を取り出す。
銃のような形状をしているそれは、銃身の部分が強力な電灯になっており、
銃となんら変わりない形状をしたトリガーを指で引けば明かりが付き、
離せば明かりが消えると言う仕組みになっているようだ。
彼女は起用にトリガーを引いたり離したりして、
ラウンジ艦隊の旗艦へ向けて、まるでストロボのような光を放った。
ξ゚听)ξ「信号は送ったわ。後はあっちの返答を待つだけ」
( ^ω^)「乙だお」
返答が帰ってくるまでの間、
ブーンはラウンジ艦隊旗艦から適当な距離を取って、空中をグルグルと旋回していた。
するとしばらくして、相手側の上部甲板から瞬く光が見えた。
- 70:VIP奴隷 :2006/11/27(月) 20:56:13.52 ID:pZSgmORy0
ξ#゚听)ξ「な、なんですって――――!?」
それを見たツンが素っ頓狂な叫び声を上げる。
両手で耳を押さえて、その叫び声で鼓膜が破れるのを防ぐブーン。
(;^ω^)「な、なんて言っているんだお?」
ξ#゚听)ξ「『着艦は認められない。早急に立ち去れ』ですって!
何考えているのよ、あの馬鹿ちん達は!?」
長時間の飛行による疲れがそうさせるのか?
それとも、彼女自身の性格がそうさせるのか?
いずれにしてもヒステリーを起こしたかのごとく叫び声を上げる彼女は、
再びの発光信号をラウンジ艦隊へと送る。
- 73:VIP奴隷 :2006/11/27(月) 20:58:44.19 ID:pZSgmORy0
返答はすぐに返ってきた。
それを確認したツンは、まるで親のカタキを見るかのような眼でブーンをにらみつける。
そのまなざしにビビりながらも、少年は恐る恐る少女に問いかけた。
(;^ω^)「……あのー、ツンさん?
ラウンジの方々は……なんておっしゃっているんでしょうかお?」
ξ#゚−゚)ξ「……」
少女は少年をにらみつけたまま、何も言わない。
この沈黙が幼馴染の怒りが最高潮に達しているというサインであるということを、
少年は長年の付き合いからわかっていた。
それでも彼は、彼女に聞かないわけにはいかなかった。
(;^ω^)「あのー……ツン様?」
ξ#゚听)ξ「『配達人の飛行機械に、なぜ機銃が付いているのか』ですってよ!!」
そう叫んで、ツンは自分達の飛行機械の機首に備え付けられた機銃を指差した。
- 74:VIP神 :2006/11/27(月) 21:01:13.30 ID:pZSgmORy0
ξ#゚听)ξ「だからあたしは前から何度も言ってたのよ!機銃は外そうって!!」
(;゚ω゚)「これは僕達の父ちゃんが僕達のために作ってくれた飛行機械だお!
機銃を外すなんてこと、父ちゃんたちに申し訳なくてできるわけないお!」
ξ#゚听)ξ「だからあんたは子供なのよ!
必要に応じて飛行機械の部品を外すなんて、プロとして当然のことでしょうが!」
(;゚ω゚)「他のどの部品を外したりいじくったりするのはかまわないお!
だけど、この機銃だけは絶対に外したらだめだお!!
この機銃は父ちゃんが、僕が死なないように、
いざという時に身を守れるようにって付けてくれた、大切な機銃なんだお!!」
ξ#゚听)ξ「そんな感傷的なことを言っているからあんたはガキなのよ!!
この機銃のせいであたし達が死んだりしたら、悲しむのはそれを付けたパパ達なのよ!?」
ラウンジ艦隊からの再びの発光信号が送られていることなどお構い無しに、
二人は空中で言い争いを続ける。
そして、怒りが頂点に達したツンが
スパナをブーンに投げようと腕を振りかぶったそのとき、
あたりに轟音が鳴り響き、周囲の空気が振動した。
- 75:VIP神 :2006/11/27(月) 21:02:25.05 ID:pZSgmORy0
ξ;゚听)ξ 「くぁwせdrftgyふじこ!!」
(;^ω^)「ううう、撃ってきたお!!」
どうやら、ラウンジ艦隊の旗艦の甲板前方に備え付けられた砲台から弾丸が発射されたようである。
その直後、再びラウンジ艦隊から発光信号が送られてきた。
(;^ω^)「ななな、なんて言っているのかお!?」
ξ;゚听)ξ「『今のは威嚇だ。立ち去らなければ今度は命中させる』ですって!
この仕事は失敗よ――――――!!」
そう叫んで、ツンは頭を抱えた。
- 76:VIP神 :2006/11/27(月) 21:04:03.31 ID:pZSgmORy0
( ^ω^)「……仕事は失敗じゃないお!」
ツンの様子を見て、ブーンは叫ぶ。
ξ#゚听)ξ「何言ってんのよ!失敗に決まってるでしょ、この馬鹿ちん!!」
( ^ω^)「……あそこに着陸して書簡を届ければ、仕事は成功だお!!」
幼馴染のその言葉を聞いて、
少女は自分の顔から血の気が引いていくのがはっきりとわかった。
ξ;゚听)ξ「あんた……まさか!?」
( ^ω^)「発砲されたって、それを避けて着艦すればいいだけのことだお!!」
そう言って、ブーンはラウンジ艦隊の旗艦へ向かって一気に下降した。
- 77:VIP皇帝 :2006/11/27(月) 21:05:35.15 ID:pZSgmORy0
( ゚ω゚)「父ちゃんの機銃が有ったって、
仕事はちゃんと出来るんだおおぉぉおぉおおお―――――!!」
\ξ(^O^) ξ/「いやあぁぁああぁあ―――――!
アタシの人生オワタ―――――――!!」
二人の叫び声は、
その直後にラウンジ艦隊から鳴り響いた発砲音によってかき消された。
第三話 おしまい
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