( ^ω^)が空を行くようです

90:VIP悪魔 :2006/11/27(月) 22:22:35.82 ID:pZSgmORy0

第四話 「空中レジスター」


ブーン達の飛行機械は一直線にラウンジ艦隊の旗艦を目指した。
体が急激に座席に押さえつけられる中で、ブーンは冷静に相手の様子を観察した。

戦艦の上面には主砲が一丁と副砲が八丁。
上部甲板にワラワラと湧き出した無数の黒い影は、
おそらくこちらを狙撃しようとする銃兵たちの群れだろう。

上部甲板に着陸するのはあまりに無謀すぎる。
となれば、目指すべきは骨組みのみでスカスカの船底に備え付けられた下部甲板だ。

そう判断したブーンは機体を斜めに倒すと、
弧を描きながら戦艦の下部へ向けて下降した。



92:VIP悪魔 :2006/11/27(月) 22:25:01.87 ID:pZSgmORy0

ξ;∀;)ξ「あははははは……ママ……
     ……あたし、今からそっちに行くね…」


後部座席ではツンが不気味な笑みを浮かべて、
うつろな瞳で空を見上げながら何やらブツブツと呟いている。
ツンが使い物にならないことをバックミラーで確認したブーンは、
全方位に向けて神経を集中させた。

最年少飛行機械乗りの称号は伊達じゃない。
これでもいくつもの空を駆け抜けてきたんだ。

もちろん駆け抜けたと言っても、こんな状況を経験したことは一度もない。
こういう日が来ることを想定して、
暇な時間に興味半分でいろんな操縦技術の練習をしただけだ。

だけど、今はそんな細かいことは言っていられない。

「絶対にやれる」と自分に言い聞かせながら戦艦の側部へと下降した彼は、
戦艦の測部から放たれる火線の洗礼を受ける羽目になった。



93:VIP悪魔 :2006/11/27(月) 22:26:41.45 ID:pZSgmORy0

(;゚ω゚)「狙うライフルには……宙返りのサービスだお!」


そう叫ぶと、彼は操縦桿を一気に手前に引いた。
すると機体は上方に弧を描き、見事な宙返り(360度ロール)をして見せた。

そのまま同時にロール、ピッチアップの操作を行う。
すると高等な操縦技術(マニューバ)であるバレルロールの完成だ。
某アニメでも成されたこのマニューバは、ミサイルや機銃から避けるのに効果的な技術だ。

そのまま彼は一気に戦艦の下部甲板を目指した。

そしてついにそこへたどり着けるかと思ったそのとき、
彼の視界の端に、上方から急降下してくる一機の黄色い飛行機械の姿が飛び込んできた。



94:VIP悪魔 :2006/11/27(月) 22:28:37.37 ID:pZSgmORy0

(;゚ω゚)「 こ れ は ま ず い ! !」


このまま甲板を目指せば急降下してくる黄色い飛行機械にぶつかると判断した彼は、
機首を下げ、戦艦の側面に沿って一気に下降した。

バレルロールというマニューバは、速度を一気に落としてしまうという特性を持つ。
そのため、迫りくる飛行機械から逃れるためのスピードを稼ぐには下降するしかなかった。

相手からの銃撃を避けるために機軸を中心にロールしながら、そのまま下降を続ける。

視界が回る。
強烈な圧力が、体を座席に押し付ける。

速度を稼いだところでそのまま機体を水平に戻す。
すると案の定、後方から迫り来る黄色の飛行機械も水平になりブーンに向かってきた。



96:VIP悪魔 :2006/11/27(月) 22:30:58.63 ID:pZSgmORy0

(;゚ω゚)「完全に後ろを取られたお……落とされるお!」


飛行機械同士の接近戦、いわゆるドッグファイトでは、
後ろを取られれば90%以上の確率で勝ち目はないと言われている。

残された選択肢は高等なマニューバをうまく使い相手を前方にやるか、
ひたすら逃げ回るかのいずれかしか存在しない。

ここで逃げれば仕事は失敗に終わる。

それならば残された選択肢は一つしかないのだが、
実践の経験がまったくないブーンには戦艦からの射撃をよける自信はあっても
ドッグファイトで勝つ自信はまったくといってなかった。



97:VIP悪魔 :2006/11/27(月) 22:32:50.62 ID:pZSgmORy0

(;゚ω゚)「ツン!生きているかお!?」

ξ;∀;)ξ「あははー……死んでるわよー……」


バックミラーに写ったツンは、冗談なのか本気なのかわからない表情で言う。
そんなツンに向かって、ブーンは叫ぶ。


(;゚ω゚)「後方の飛行機械に発光信号を送るお!相手が撃ってくる前に……早く!」

ξ;∀;)ξ「あははははー……ブーン……三途の川が見えるわー…」

(;^ω^)「ちょwwwwwいい加減にするおwwwwwwww」

ξ゚听)ξ「はいはい、わかったわよ」


かなり危険な状態だというのに、
この様子から見たところ、先ほどまでのツンの態度は冗談だったようだ。

肝が据わっているというかなんというか、まったくいい加減な女である。



98:VIP悪魔 :2006/11/27(月) 22:38:29.92 ID:pZSgmORy0

ツンは後ろを向いて後方の飛行機械に発光信号を送る。


ξ゚听)ξ「よし、オッケーよ!」

( ^ω^)「なんて送ったんだお?」


何かを達成したような口ぶりの彼女に対し、
「これは期待できる!」と、ブーンは首だけを振り返らせてゴーグルの奥の瞳を覗いた。


ξ゚ー゚)ξb 「『か弱いレディーを襲うんじゃないわよ、この馬鹿ちん!!』
      って送ってやったわ」


少年は口をあんぐりと開けて、満面の笑みを浮かべる彼女を見つめた。



99:VIP悪魔 :2006/11/27(月) 22:39:59.88 ID:pZSgmORy0

(;^ω^)「……mjd?」

ξ゚听)ξ「mjd」

(;^ω^)「……」

ξ゚ー゚)ξ 「……えへっ♪」

\(^ω^) /「僕の人生オワタ―――――――!!」


ブーンは操縦桿から手を離し、両手を空に広げて叫んだ。



102:VIP皇帝 :2006/11/27(月) 22:41:52.80 ID:pZSgmORy0

しかし、後方の飛行機械はいつまでたっても発砲してこない。

正気に戻った彼は、バックミラーをズラしてそこに敵機の姿を映した。
するとそこから、黄色い敵機から送られてくる発光信号が見えた。


(;^ω^)「ツン!相手はなんて言ってきてるお!?」

ξ゚听)ξ「『ついてこい』だって!」

(;^ω^)「……それなんてエロゲ?」


ブーンがそう呟くと同時に敵機は進路を180度変え、
ラウンジ艦隊の旗艦の方へと戻っていく。

ブーンもあわてて進路を変え、その飛行機械の後を追った。



103:VIP悪魔 :2006/11/27(月) 22:44:57.45 ID:pZSgmORy0

( ,,゚Д゚)「ギコハハハ!勘違いして悪かったなゴルァ!!」

(*゚ー゚)「本当にごめんねぇ……」


ラウンジ艦隊の旗艦『ジュウシマツ』の上部甲板に降ろされたブーンは、
ブーン達を追ってきた黄色い飛行機械のパイロットであるギコと、
そのナビとして後部座席に乗っているしぃと名乗る二人組みに艦内を案内されていた。


ξ゚听)ξ「ほんとに死ぬかと思ったわ……」

( ^ω^)「まあまあ、過ぎたことだお」

ξ#゚听)ξ「……もとはと言えばあんたのせいでしょうが!」


そう言って、ツンはブーンに向かってドロップキックを繰り出した。

そんなやり取りを交わしながら狭い艦内の通路を歩いていると、
前を歩いていたギコとしぃが突然立ち止まる。
どうやら艦長の部屋へと到着したようである。


( ,,゚Д゚)「ギコです。配達人を連れて参りましたゴルァ!」


扉に向けて一言かけて、ギコはその扉を開けた。



105:VIP悪魔 :2006/11/27(月) 22:46:58.33 ID:pZSgmORy0

\               U         /
  \             U        /
             / ̄ ̄ ヽ,
            /        ',      /     _/\/\/\/|_
    \    ノ//, {0}  /¨`ヽ {0} ,ミヽ    /     \          /
     \ / く l   トエエイ   ', ゝ \     <  トエエエイ!!>
     / /⌒ リ   `ー'′   ' ⌒\ \    /          \
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  −−   |    f\      ノ     ̄`丶.
        |    |  ヽ__ノー─-- 、_   )    − _
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   /_ノ /              ,ノ 〈           \
    (  〈              ヽ.__ \        \
     ヽ._>              \__)



107:VIP悪魔 :2006/11/27(月) 22:48:06.67 ID:pZSgmORy0

扉の先に広がっていたのは、思ったより広くないこじんまりとした部屋。

室内には窮屈そうに置かれた無駄に大きな机があり、
その先のイスに館長らしき、鳥のような顔をした男が座っていた。


住職「トエエエイ!!」

( ,,゚Д゚)「艦長が書簡を渡せとおっしゃっている」

(;^ω^)「は、ハイですお!」


ブーンは恐る恐る鳥にしか見えない艦長へと近づき、書簡を手渡した。



111:VIP悪魔 :2006/11/27(月) 22:49:42.72 ID:pZSgmORy0

ξ゚听)ξ「……あれ、人間なの?」

( ^ω^)「どう見ても鳥です。本当にありがとうございました」


艦長が書簡を読んでいる間、部屋の外でそんなことを話し合っていると、
しばらくして部屋の中に残っていたギコとしぃが出てきた。


( ^ω^)「受取書に艦長さんのサインはいただけましたかお?」

( ,,゚Д゚)「ああ、ほれ」


そう言って、ギコは受取書と、
そしてもう一つ、書簡らしきものをブーンに手渡した。



112:VIP悪魔 :2006/11/27(月) 22:51:11.71 ID:pZSgmORy0

(;^ω^)「あのー……なんですかお、コレ?」

( ,,゚Д゚)「届けられた書簡の返事だそうだ。折り返し、早急に届けてくれだとさ」

(*゚ー゚)「よかったね!仕事はAランク扱いにしてくれるって!」

( ^ω^)ξ゚听)ξ「「………」」


ブーンとツンの二人はしばらく無言で見つめあった。
そして頭を抱えると、もはやお決まりとなった一言を言い放つ。


( ;ω;)ξ;凵G)ξ「「 勘弁してよ――――――!!」」


ブーン達の眠れない日々はまだまだ続くようです。


第四話 おしまい



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