( ^ω^)が空を行くようです

31:VIP村人y :2006/11/30(木) 21:46:54.05 ID:DxktykC70

第十話 「人が夢を見るといふ事」


(;^ω^)「これは……どういうことですかお?」

(´・ω・`)「どういうことって、そういうこと」


八の字眉毛をピクリともさせず、男は平然と答えた。


ξ゚听)ξ「……私達がVIPに招待される理由がわからないのですが?」


ツンは鋭い目付きで言葉を放つ。


(´・ω・`)「君達の夢、それを目指す動機、そして荒削りではあるがそれ相応の飛行技術。
      それらすべてが我々のそれと合致したからこそ、君達をここに招待させてもらった」



32:VIP村人y :2006/11/30(木) 21:48:19.79 ID:DxktykC70

その言葉に、少年と少女はさらに話が見えなくなる。

『海賊狩りのVIP』として悪名高いこの戦艦の野望と
自分達の夢の間のどこに共通点があるというのだろうか?


ξ;゚听)ξ「あの…お話がよくわからないのですが……」

(´・ω・`)「我々『VIP』の目的は、『エデン』到達。
      君達の夢と合致する」

(;゚ω゚)ξ;゚听)ξ「「!?」」

(;゚ω゚)「なぜ僕達の夢をあなたが知っているんですかお!?」

(´・ω・`)「それを聞くのは当然だよね。入っていいよ」


その言葉の直後、部屋の扉がガチャリと開き、
そこから見知った二人の男?が姿を現した。



34:VIP村人y :2006/11/30(木) 21:50:08.10 ID:DxktykC70

('∀`)「ぶほほほほwwwwチャオ!お二人さん♪」

( ゚д゚ )「久しぶりだな。……と言っても、昨日会ったか」


入ってきたのはパーツ屋のオカマ店主と職場の受付の男だった。
思いもよらない人物の登場に、少年たちはもはや何も言えなくなっていた。


(´・ω・`)「簡単に説明するとね、彼ら二人は我が『VIP』のスパイさ」

('∀`)「あらヤダ艦長!スパイなんて物騒な言い方止めてよ!
    スカウトと言って頂戴、ス・カ・ウ・ト!!ぶほほほほほwwwwww」

( ゚д゚ )「と言うことだ、スロウライダー。騙していて悪かったな」


態度も口調も対照的な二人。
彼らが眼帯の男の隣、艦長と呼ばれた男の後ろに立つと、八の字眉毛の艦長は続けた。


(´・ω・`)「紹介しよう。
      我が『VIP』の整備長の毒男に、副長のジョルジュ長岡、
      副艦長のミルナに、そして私が艦長のショボンだ」

('∀`)「ぶほほほほwwwwそういうことよ、ブーンちゃん♪」


もはや少年と少女は、何が何だかわからなくなっていた。



36:VIP村人y :2006/11/30(木) 21:52:42.22 ID:DxktykC70

( ゚д゚ )「我々『VIP』は、『エデン』を目指すもの達が集まって結集された戦艦だ。
    各人がその夢に向かい、日々努力している」
  _
( ゚∀●)「設備一流!技術超一流!それが俺達『VIP』さ!!」

('∀`)「そのメンバーとしてあんた達が選ばれたのよぅ!」

(´・ω・`)「僕のセリフ無くなっちゃった……」


次々とまくし立てる面々に、

「ちょっと待ったー!!」

と大声を上げると、少女は腕を組んで頭の中を整理し始める。

その隣では、呆然と虚空を眺める少年。
どうやら、ただでさえ容量の少ない脳みそがパンクしてしまったようである。

そんなしばらくの沈黙の後、少女は一つ一つ言葉を並べた。



38:VIP村人y :2006/11/30(木) 21:55:49.40 ID:DxktykC70

ξ゚听)ξ「ええっとー、つまりあんた達は『エデン』を目指していて、
     オカマからあたし達のことを聞きつけてメンバーに勧誘した」

(´・ω・`)「ご名答」

ξ゚听)ξ「えっと……それじゃ、なんであたし達をこんな危険な目に合わせたわけ?」

(´・ω・`)「君達の実力を確かめたかったから」

ξ゚听)ξ「ああ、そういうことね。とりあえず死んで。
     ……それじゃあ、なぜ私達を『トップページ』に呼びつけたの?
     実力を測るなら他の方法もあったでしょ?」

(´・ω・`)「ここを守る連合艦隊の戦力状況を把握しておきたかったんだ。
     君達の実力を測ったのはそのついで」

ξ゚听)ξ「あーはん。地獄に落ちろ。
    それじゃあ、『エデン』を目指すあなた達がなぜ海賊狩りなんかしているの?」

(´・ω・`)「うん。それ、誤解なんだよね。
     僕達は売られた喧嘩を買っているだけ。こっちから仕掛けたことなんて一度も無いよ?
     だけど売られた喧嘩とはいえ、海賊を何個も壊滅させちゃえば、
     世間一般の僕達に対する印象はどうしてもそうなっちゃうよね」

ξ゚听)ξ「ああ、そうなの。よーくわかったわ、あんた達のこと」



39:VIP村人y :2006/11/30(木) 21:57:26.44 ID:DxktykC70

持ち前のマシンガントークで次々と質問を並べた彼女に対し、よどみなく答えるショボン。
そんな彼に対し、今まで沈黙を守っていたブーンが口を開いた。


( ^ω^)「……僕からも質問がありますお」

(´・ω・`)「なんだい?僕の性癖かい?」

ξ゚听)ξ「……あんた、五回くらい死んでみたら?」

(´・ω・`)「うん、そうだね。ぶち殺すぞ」


もはやどこかへ行ってしまった当初の緊張感。
それが、真剣な眼差しを放つブーンにより呼び戻された。


( ^ω^)「……なぜ、あなた達は『エデン』を目指すのですかお?」



40:VIP村人y :2006/11/30(木) 21:59:28.55 ID:DxktykC70

その言葉に目を細めると、ショボンは静かに話を始めた。


(´・ω・`)「……『エデン』、つまり『楽園』。
     この概念がどのようにして生まれるか、君はわかるかい?」

( ^ω^)「……いや、わからないお」

(´・ω・`)「それはね、絶望の中に住む人々たちの間の、希望という名の下に生み出されるんだ。
     ユートピア、桃源郷、アナスタシア。
     名前を変え、時代を変え、その類のものは存在し続けた。幻としてね」

( ^ω^)「……」

(´・ω・`)「しかし、その概念が唯一消え去った時代があった。
     科学の時代と呼ばれた時期がそれだ。
     その中で絶望にあえぐ人たちは、希望を『楽園』ではなく『未来科学』に求めた。
     そして、その『未来科学』の究極が今の時代、空に浮かぶ島々だ」



43:VIP村人z :2006/11/30(木) 22:01:08.97 ID:DxktykC70

(´・ω・`)「言っていなかったがね、
     『VIP』の構成員のほとんどが社会的最下層の人間、一般的に言えば絶望の中に生きる者達だ。
     そんな我々が希望を求めるとき、
     その場所は究極に達した『未来科学』に求められるはずも無く、
     旧来の概念である『エデン』に求めるしかなかったんだよ。皮肉な話だよね」

( ^ω^)「……」

(´・ω・`)「しかし、過去の『楽園』と現在の『エデン』とには大きな違いが一つある。
     それはね、『エデン』が実在することなんだよ。我々は集めた資料からその存在を確認した」

( ^ω^)「……理由になっていないですお」

(´・ω・`)「いやいや、話がこんがらがって悪いね。
     つまりだ、最下層の我々が夢見る楽園『エデン』が実在する。
     それでは、それを目指す理由にならんかね?」



44:VIP村人z :2006/11/30(木) 22:02:39.78 ID:DxktykC70

( ^ω^)「……よくわかりましたお」


そう言うと、ブーン静かに立ち上がった。


( ^ω^)「しかし、僕達はあなたの申し出には答えられませんお。
     僕はツンと二人でエデンを目指す、そう決めているんですお」

ξ゚ー゚)ξ「ブーン……」


その言葉に、ツンは潤んだ瞳で彼を見つめた。
しかしそれとは対照的に、彼らの目の前の四人は大声で笑いはじめる。


(´・ω・`)「あっはっは!これは参ったね!ミルナと毒男の言うとおりだ!」

( ゚д゚ )「ふふふ。だろう?」

('∀`)「ぶほほほほほwwwwwほーんと、若い頃のジョルジュにそっくりだわ!」
  _
( ゚∀●)「ちょwwwww俺はここまであおくなかったっすよwwwwww」



45:VIP村人z :2006/11/30(木) 22:03:54.10 ID:DxktykC70

そんな彼らを、むすりとした表情でにらみつける二人。
その表情に気づいて、ショボンが顔を引き締めた。


(´・ω・`)「いやいや、すまなかった」

( ^ω^)ξ#゚听)ξ「「……」」

(´・ω・`)「君達の主張は若くてすばらしいものだ。
     そういう気概があるからこそ、我々は君達を迎え入れようと言うのだよ」

( ^ω^)「……」

(´・ω・`)「ところで君は、『挑戦』ということがどういうことかわかるかい?」


突然の質問。
ほんの少し戸惑いながらも、ブーンは自分の考えを素直に述べた。


( ^ω^)「……不可能に挑むことだお」



47:VIP村人z :2006/11/30(木) 22:05:25.73 ID:DxktykC70

(´・ω・`)「うん。半分正解」

(;^ω^)「?」

(´・ω・`)「いいかい?
     挑戦とはね、不可能な点が可能な領域の境界線上に重なって初めてそこに出現するんだ。
     不可能な点とは決して広がることはなく、常にそこにポツリと存在する。
     しかしね、可能な領域はその者の努力しだいでどこまでも広がっていく」

(;^ω^)「??」

(´・ω・`)「可能な領域を広げていき、
     その領域の境界線上に不可能な点が入ったとき、はじめてそれが挑戦となる。
     そして、その挑戦に成功したとき、不可能な点は可能な領域となるんだ」

(;^ω^)「???」

(´・ω・`)「だがね、可能な領域の境界線上に入らない不可能な点に挑むことを挑戦とは呼ばない。
     人はね、それを蛮勇や無謀なんて言葉で表現するんだよ」



50:VIP村人z :2006/11/30(木) 22:07:22.95 ID:DxktykC70

( ゚ω゚)「なにが言いたいんだお!」


クドクドと理屈を並び立てるショボンに、ブーンは思わず怒鳴り声を上げる。
それになんら表情を変えることなく、ショボンは続けた。


(´・ω・`)「つまり、君達二人だけでは可能な領域を広げるのには限界があると言うことさ。
     君達二人の努力だけでは、
     可能な領域の境界線上に『エデン』と言う不可能な点はいつまでたっても入ってこない」

ξ゚听)ξ「つまり、あんた達の仲間になれば、
    あたし達の可能な領域はどんどん広がっていくと言うわけね」


割りと理解した様子のツンがショボンの話に割って入る。


(´・ω・`)「おしいね。90%正解。
     それだけでなく、君達が我々『VIP』に入ることで我々の可能な領域も広がっていくのさ」

ξ゚听)ξ「だから協力してくれ、と言うわけね」

(´・ω・`)「ご名答。悪い話ではないだろう?」

ξ゚听)ξ「……いいわ。協力してあげる」


その問いかけに、彼女は即答で返した。



53:VIP村人z :2006/11/30(木) 22:09:16.67 ID:DxktykC70

(;゚ω゚)「ツン!何言っているんだお!!」


まったく予期していなかった彼女の言葉に、ブーンが食って掛かる。


(;゚ω゚)「こんな海賊の力を借りなくったって、僕達だけでも『エデン』に行けるお!」

ξ゚−゚)ξ「……それが子供の考えだって言うのよ」


激昂するブーンとは裏腹に落ち着いた様子のツン。


('A`)「言うじゃない?小娘」


そんな彼女に、対面の毒男が合いの手を入れる。



55:VIP村人z :2006/11/30(木) 22:11:07.78 ID:DxktykC70

目の前で繰り広げられるプロレスを尻目に、少女は幼馴染に向かって語りかける。


ξ゚听)ξ「ここの飛行機械の動きを見たでしょう?
     あんな華麗に舞う空の舟でさえ、未だ『エデン』にはたどりつけてないのよ?」

(;゚ω゚)「……」

ξ゚听)ξ「それにさ、あんた、昨日私に言ったじゃない?
     『ファイブA』の仕事で躊躇していたら、『エデン』なんて夢のまた夢だって」

(;゚ω゚)「……」

ξ゚ー゚)ξ「それと同じよ。
     こいつらの申し出を断っていたんじゃ、それこそ『エデン』なんて夢のまた夢よ。
     あたし達はこいつらの仲間になる。そしてこいつらを利用してやるのよ。
     私達の夢のためにね」



56:VIP村人z :2006/11/30(木) 22:11:52.84 ID:DxktykC70

大人の女性特有の現実的な、理にかなった意見を述べるツン。
いつもと違う様子の彼女に戸惑うブーン。

そんな二人を見て、ショボンは静かに笑う。


(´・ω・`)「ふふふ。実に肝の据わったお嬢さんだね。ますます気に入ったよ」

( ゚д゚ )「だろう?」


その後ろに立つ副艦長のミルナが、鋭い眼差しに優しい光をまとわせて続けた。


( ゚д゚ )「それが、『人が夢を見る』ということだ。スロウライダー」



57:VIP村人z :2006/11/30(木) 22:12:19.49 ID:DxktykC70

その眼差しを受けて、少年は静かに答えた。


( ´ω`)「……ツンがここに残ると言うなら、僕も残りますお」


後々振り返ったとき、
この決断が、まさに彼らの人生の転機だと呼ぶべきものだった。


第十話 おしまい



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