( ^ω^)が空を行くようです

9: 78 ◆pP.8LqKfPo :2006/12/03(日) 22:17:07.04 ID:2e36LFM10

第十二話 「ウグイス」


それからもブーンとツンは赤と青の訓練を受け続けた。

みっちりしごかれ、こってり鍛えられたブーンとツンは、
やっとこの艦で一人前と呼ばれるくらいのパイロットとナビへ成長した。


川 ゚ -゚)「よく私のしごきに耐えた。
     今のお前達にはAランクの仕事など簡単にこなせるだろう。
     もうお前達はどこに行っても通用する一人前のパイロットとナビだ」

( ´∀`)「大したもんだモナー!
     クーにここまで言わせたのはジョルジュ以来だモナー!!」


そう言われた直後、少年と少女の二人は抱き合って喜んだ。
赤と青、二人のパイロットは、そんな少年達をいとおしげな眼差しで見つめる。

一方、遠くからその様子を見ているオカマと眼帯男の表情には、
嬉しさの中に少し寂しげな色が含まれていた。


その夜、二人は興奮と感動で眠れなかった。

そして翌日、二人はショボンに呼ばれ、艦長室へと足を踏み入れた。
何でも任務があるらしいのだが……。



10:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:19:55.10 ID:2e36LFM10

(´・ω・`)「いらっしゃ〜い」

ξ゚听)ξ「相変わらず軽いノリですね、艦長」

( ^ω^)「で、任務って何なんですかお!?」


ショボンの目の前に立つと、ブーンは彼の眼を覗き込むように見つめた。

「VIP」で生活するようになって初めての単独任務。
自分達だけで空を自由に飛べる久しぶりの機会。

以前より成長した自分の進む先には、どんな空が待っているのだろうか?

少年は、はやる気持ちを抑えられずにいた。


(´・ω・`)「ブーン君、落ち着いて。まだ外は明るいよ?
      お楽しみは夜、暗くなってから……ね?(はぁーと)」

ξ#゚听)ξ「よし。死刑。ザキ!」

(´・ω・`)「なんの!リフレク!!」


お尋ね者の「VIP」の艦長がこんなだと、誰が想像できるだろうか?



12:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:22:14.77 ID:2e36LFM10

( ゚ω゚)「そんなことより早く!」

(´・ω・`)「ハァハァ……早く……挿れてほしいのかい?」

(;゚ω゚)「あーもう!早く任務の内容を説明してくれお!!」

(´・ω・`)「ならば
     『僕のグチョグチョのあそこに艦長様のマンモスを挿れてください』
     と十回言いたまえ」

(# ゚ω゚)「うあああぁぁぁあああぁああ!!」


自分の髪の毛をかきむしり、禁断症状を起こしたかのよう叫ぶブーン。

そんな幼馴染を見て、
「こいつ、本当に空が好きなんだなぁ」なんて考えながら、ツンは軽く微笑んだ。

その視線の先では、幼馴染が八の字眉毛の男に尻を触られて鳥肌を立てている。
やがて、じゃれあっていた二人が落ち着くと、ようやく話は本題へと移った。



13:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:23:22.28 ID:2e36LFM10

(´・ω・`)「それじゃ、君たちの初任務の内容を説明しよう」

( ゚ω゚)ノξ#゚听)ξノ「「バッチコーイ!!」」

(´・ω・`)「君達の任務とは、ある御方をとある島の遺跡へと運ぶことだ」

( ^ω^)「あるお方?」

ξ゚听)ξ「とある島?」

(´・ω・`)「うん。とりあえず『あるお方』の方から説明しよう。
      どうぞ、お入りになってください」



14:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:24:17.81 ID:2e36LFM10        ∧_∧ 
       (@盆@)  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
  -=≡  /    ヽ  | やあ、諸君! |  
.      /| |   |. |  \_   __/  
 -=≡ /. \ヽ/\\_   \/
    /    ヽ⌒)==ヽ_)=  _,,..,,,,_
-=   / /⌒\.\ ||  ||  / ,' 3  `ヽーっ 
  / /    > ) ||   l  l   ⊃ ⌒_つ
 / /     / /_||_ || `'ー---‐'''''" _.
 し'     (_つ ̄(_)) ̄ (.)) ̄ (_)) ̄(.))



17:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:26:22.98 ID:2e36LFM10

ショボンの言葉の後、台車を押して入ってきた不細工な男。
彼の傍に立つと、ショボンは続ける。


(´・ω・`)「この方は、民間における古代学の権威であらせられる
     『荒巻スカトロチノフ』教授だ」


その言葉に、二人は目の前の男をまじまじと見た。
不細工な顔だが、なんだかすごそうな肩書きだ。きっとエロい人に違いない。
そう判断したブーンとツンは、姿勢を正して挨拶した。


( ゚ω゚)「びっくりするほどユートピア!
     びっくりするほどユートピア!!
     『VIP』の新米パイロット、ブーンですお!」

ξ゚听)ξ「同じく、そのナビのツンです!」


二人は不細工な男にうやうやしく頭を垂れた。
しかし、彼は困った顔をする。



18:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:27:30.30 ID:2e36LFM10

(@盆@)「……」

(;^ω^)ξ;゚听)ξ「「あのー……??」」

(´・ω・`)「違う違う。この不細工じゃない」


そう言うと、ショボンは台車の荷台に乗せられた荷物を指差した。


(´・ω・`)「このヘチャムクレのぐうたらジジイが『荒巻スカトロチノフ』教授だ」

( ゚ω゚)ξ;゚听)ξ「「な、なんだってー!!」」  


ショボンの言葉に、二人は大げさに驚いて見せた。
視線の先には、台車に乗せられたヘチャムクレの、おおよそ人間の形を成していない物体。


ξ;゚听)ξ「この物体が……」

(;゚ω゚)「……人間!?」


そう呟いたブーンの頬に、熱いコブシが食い込んだ。



21:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:29:23.74 ID:2e36LFM10

一瞬のうちに床へと倒れこむブーン。
そんな彼を見下ろして、八の字眉毛の艦長は熱い涙を流している。


(#´゜ω゜`)「失礼なことを言うんじゃねぇ!この大バカヤロウ!!」

(#)ω;)「痛いお……なにも殴らなくても……」

(#´゜ω゜`)「俺だって好きでお前を殴ったんじゃねぇ!
      いいか?これはお前のためを思った俺の愛のムチなんだ!!
      痛いのは俺のコブシだって同じなんだよ!!」

(*゚ω゚)「……艦長!!」

(´;ω;`)「ブーン君!!」


ここに、身をも焦がす禁断の関係が生まれた。



〜日曜洋画劇場「ブーンとショボンが禁断の花園へ行くようです」のはじまり〜



25:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:31:51.21 ID:2e36LFM10

ξ゚听)ξ「で、さっさと任務の内容を説明してもらえる?」

(#)ω(#)(´;ω(#)「「はい、すみません!!」」


日曜洋画劇場「ブーンとショボンが禁断の花園へ行くようです」は日の目を見ずに終わった。
ツンに殴られボコボコにへこんだ顔で艦長は続ける。


(´;ω(#)「先月、『ドクシン』のはるか東の小さな島で、旧世界の遺跡が見つかったんだ」

ξ゚听)ξ「そこへ、このヘチャムクレを乗せて飛べと言いたいわけね?」

(´;ω(#)「ご名答。
      だけどね、もうそこはすでに『トップページ』の研究者たちが調査した後なんだよ…。
      本当はもっと早く行ってほしかったんだけど、このジジイが……」


そう言ってショボンが見下ろした先には、台車の上に転がっているヘチャムクレジジイ。


(´;ω(#)「……約束の日付を一ヶ月も間違えやがってね」

/ ,' 3「そういうわけじゃ」


ここへ来てはじめて口を開いた荒巻の声に、悪びれた様子など微塵もなかった。



27:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:33:38.27 ID:2e36LFM10

(´・ω・`)「ぶち殺しますよ?」

/ ,' 3「やーん、いけず〜。ちょっと日付勘違いしていただけじゃないか」

(´・ω・`)「どの世界に一ヶ月も日付を勘違いする人間がいるんですか?」

/ ,' 3「わし」

(´・ω・`)「よし。死ね」

ξ゚听)ξ「まあまあ、艦長。これくらいで許してあげましょうよ。
    それによく見ればこのおじいちゃん、キモ可愛いじゃない?」


そんな二人の間に割って入ってきたツン。
彼女は台車から荒巻を持ち上げると、彼を赤子のように抱き上げた。

そんな少女を見て、「あーあ、やっちゃった」といいたげな表情のショボン。


(´・ω・`)「……それは君がこのジジイの性格を知らないからそう言えるんだよ」



28:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:35:14.99 ID:2e36LFM10

ξ゚听)ξ「どういうこと?」


ツンがそう聞くや否や、彼女の胸に抱き上げられた荒巻が、
少女の胸に顔を押し付け始めた。


/ ,' 3「むひょひょひょwwwww
   おなごじゃwwww若いおなごの胸じゃwwwwww」

ξ////)ξ「……イヤ――――――!!」


少女は顔を真っ赤にして胸元のくそジジイを壁に向かって投げつけた。
しかし荒巻は体中の毛を逆立てて衝撃を吸収し、安全に地面の上に転がった。
そんな老人を見下ろして、ショボンが申し訳なさそうに言った。


(´・ω・`)「こんなジジイだけど研究の腕は確かでね……。
     こいつを連れて、遺跡まで飛んでくれ……もう目ぼしいものは残ってないと思うけど」



30:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:39:53.35 ID:2e36LFM10

その後、移動した飛行機械の格納庫の中で、またひと悶着あった。


ξ#゚听)ξ「イヤ!絶対にイヤ!!」


そう叫ぶツンの目の前にはくそジジイこと荒巻教授の姿。
何でも、彼を飛行機械のどこに乗せるかで問題が起こっているようだ。

ツン曰く、「こんなエロジジイを自分のひざの上に乗せるなんて絶対イヤ」
荒巻曰く、「男(ブーンのこと)のひざの上に乗るなんて死んでもイヤ」
そして、ブーン曰く、「どうでもいいから早く空を飛ばせてくれ」

ブーンとツンの乗る飛行機械は複座式で席が二つしかなく、
まさか仮にも人間である荒巻を積み荷用のスペースに乗せるわけにもいかず、
結局、どちらかのひざの上に荒巻を乗せるしか飛ぶ方法はなかった。

しかし、少女とエロジジイはどちらも自分の意見を譲らない。

そして最終的に、予想だにしないメンバーとブーンは飛び立つことになる。



31:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:41:19.98 ID:2e36LFM10

空は快晴。
機体の調子は最高。

機体から響くエンジンの振動、そして風を切る感覚が最高に気持ちいい。

久しぶりの、誰にも縛られない単独飛行。
自由な空。

少年は駆け出した世界に心を奪われている……予定だった。


(;^ω^)「あのー、荒巻さん?」

/ ,' 3「……zzZ」

(;^ω^)「荒巻さん!!」


ブーンは後部座席に座った荒巻の方を振り返った。
そこでは、くそジジイが狭い座席の上に器用に寝転んで寝息を立てていた。

後部座席にツンの姿は、無い。



32:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:43:03.97 ID:2e36LFM10

(;^ω^)「起きてくれお!荒巻さん!!」

/ ,' 3「……なんじゃ、騒々しい」


我慢しきれず大声を上げたブーンを歯牙にもかけない様子で答える荒巻。
そんな彼にため息をつきながらも、少年は続ける。


(;^ω^)「進路を見てほしいお。僕達はちゃんと東に進んでいますかお?」

/ ,' 3「……東って、お茶碗持つほうだっけ?」

(;^ω^)「……もういいですお。
     それより、今どのあたりを飛行しているか地図で確認してくださいお」

/ ,' 3「わしゃ地図なんて読めん!」

(;^ω^)「……」

( ;ω;)「……これが学者バカっていうやつかお」


荒巻の言葉にうなだれるブーン。
本当ならば今頃、ツンと談笑しながら楽しい飛行を満喫しているはず。
しかし、後部座席にいるのは人形のようなジジイ荒巻。

……何で、こんなことになったのだろう?



34:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:44:53.48 ID:2e36LFM10

ξ#゚听)ξ「絶対に嫌だからね! 
     あたしのかわりに、このエロジジイにナビしてもらいなさいよ!」


そんなツンの言葉が決め手となり、格納庫での言い争いは結局、
荒巻がナビとして後部座席に乗り込むことで決着が付いた。

あんなに楽しみにしていた単独飛行をあきらめてまで荒巻との乗船を拒否したツン。

そんな彼女の決断を不審に思っていたブーンであったが、
後部座席で自由気ままに行動する荒巻の姿を見てすぐにそのわけを理解した。

彼女が今回の飛行をあきらめたわけはきっと、
逃げることの出来ない空で荒巻と同じ座席に縛り付けられれば、
何をされるかわかったもんじゃないからに違いない。

だが、「地図を読めない」「方角もわからない」「すぐに寝る」の三拍子……
いや、三重苦を所持していた荒巻には、ナビの役目なんてとても期待できない。



35:宿屋の女中 :2006/12/03(日) 22:46:24.34 ID:2e36LFM10

( ´ω`)「ハァ……ツンの存在がここまで大きいだなんて、思いもしなかったお……」


結局、この任務の間中、
少年は一人でパイロットとナビの二役をこなすしかなかった。

久しぶりの空の旅は最悪。

再びため息が出そうだったが、
そんな自分に、見上げた空が語りかけてきている気がする。


『おかえり。また来たね』


そう言ってくれる空は、雲一つ無い一面の蒼。
再び顔を上げれば、それは少年の視界一杯に飛び込んでくる。


( ^ω^)「……荒巻さん、飛ばすお!」

/ ,' 3「へ? のわあああぁぁぁぁあああぁあ!!」


グッとペダルを踏んで、ブーンは青空に向けて「ただいま」と呟いた。


第十二話 おしまい



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