( ^ω^)が空を行くようです

61: VIP足軽a :2006/12/05(火) 21:04:43.27 ID:b6iBB9Ww0

第十五話 「修羅場」


(;゚ω゚)「ぶおおおおおおおおお」

\ξ(^O^) ξ/「イヤ――――――――!!」


雄叫びを上げて空へと駆け出したブーンとツン。

眼下に広がるのは、長年親しんだ故郷『ツダンニ』の町並み。
目的地は、思い出のたくさん詰まった我が家。

本当なら、とても楽しい飛行なのだろう。

しかし、今はそんなことを言っていられない。
自分達には長年追いかけてきた夢の行方を左右する重大な任務が課せられている。

そんな彼らに、久しいぶりの故郷での飛行に郷愁をかみ締める余裕など無かった。



62: VIP足軽a :2006/12/05(火) 21:06:28.32 ID:b6iBB9Ww0

ξ;゚听)ξ「ブーン!十時の方向から来たわ!!」

(;゚ω゚)「おk」


指示された方向を見ずに、ブーンは返事をした。
来たのは間違いなくギコだろう。伝わる気配で何となくわかる。

しかし、彼の機影を見るわけにはいかない。
見てしまえば、間違いなく自分は躊躇してしまう。
そうなれば、『即』 撃墜される。

ジョルジュの言葉を胸に、少年はただ前を向いて我が家へと急いだ。


『Positive Mental Attitude』


先日、その男から教えてもらった言葉が浮かんだ。
まったくもって皮肉としか言いようがない。

ブーンは頭に浮かんだギコとしぃの顔を振り払って、ペダルをグッと踏み込んだ。



63: VIP足軽a :2006/12/05(火) 21:07:30.11 ID:b6iBB9Ww0

その後方では、ジョルジュとオカマを乗せた足の遅いカーゴ。
積み荷積載用のスペースに乗せられた二人は、設置された小さな窓から外を見る。

  _
(#゚∀●)「……来やがった!!」


彼らの視線の先には、
空に浮かぶラウンジ艦隊旗艦「ジュウシマツ」の上部甲板から飛び出してくる黄色い点。

それがカーゴの目の前を駆けるブーン達の飛行機械めがけて一直線に降下していく。



64: VIP足軽a :2006/12/05(火) 21:09:14.04 ID:b6iBB9Ww0
  _
(#゚∀●)「……ちっ!来たのは『黄豹』一機だけか?
     舐められたもんだね、『海賊狩りのVIP』も!!」

('A`;)「相手も他国の領島内で戦闘を起こさないために必死なのよ。
   必要最小限の戦力で目的の物を手に入れるつもりなんだわ。
   その役目に選ばれたのが『黄豹』……あながち、舐められているわけでもなさそうよ」


そのまま彼らは視線を前方へと移した。

目の前を飛ぶブーン達の飛行機械の姿は、
ジョルジュ達を乗せた鈍重なカーゴをどんどん引き離し、ひたすら前へ向けて進んでいく。

  _
( ゚∀●)「いいぞ、ブーン!
     絶対に躊躇するなよ……『黄豹』は甘くねぇからな!!」

('∀`)「ブーンちゃんったら、なんて勇ましいの!……あたし、惚れなおしちゃった!!」


そう声を上げた後、二人は積載室へと戻り、
積み込んだ数々の武器の中から必要最小限の物を選び出し、突入の時を待った。



65: VIP足軽a :2006/12/05(火) 21:10:49.09 ID:b6iBB9Ww0

ξ;゚听)ξ「見えたわ!あたし達の家よ!」


飛行機械を飛ばしに飛ばし、ついに自宅上空へとたどり着いたブーン。


(;^ω^)「把握した!シートベルトを外すお!!」


着陸を待たず、彼らはシートベルトを外す。
瞬時に伝わってくる機体の振動が、二人の体を激しくバイブする。

感じる。
体の一部が何かを敏感に感じ取るのぉ!!

そんな状況でも、ブーンは自宅前の道路に飛行機械を華麗に着陸させた。
クーとモナーの訓練に感謝しつつ、着陸と同時に地面へと飛び降りた二人。
そのままブーンは玄関の扉を開けにかかる。

その後ろから、後方の空を見上げていたツンの叫び声。



66: VIP足軽a :2006/12/05(火) 21:11:43.75 ID:b6iBB9Ww0

ξ;゚听)ξ「ブーン!黄色い飛行機械が来るわ!!」


彼女の言葉に時間が無いことを悟ったブーンは、大急ぎで自宅の玄関の扉を開けた。

そんな幼馴染の横を走り過ぎ、ツンは自室の扉へと走る。
駆け抜けていく彼女を見届けたブーンは玄関の扉を固く閉ざした。

途端、あたりに響く飛行機械のエンジン音。


(;^ω^)「ツン!急いでくれお!!」

ξ;゚听)ξ「わかってる!!」



67: VIP足軽a :2006/12/05(火) 21:13:37.71 ID:b6iBB9Ww0

久しぶりの自室へと飛び込んだツンは、壁に張られた写真をすべてポケットに収めた。

『きっと、ここには戻ってこられない』

女の直感でそう判断した彼女は、
机の引き出しから家族の思い出の詰まった写真、その他の思い出の品々を引っ張り出した。

ほんの少しのロスタイム。

しかし、これが致命傷となった。
作業を終え、すぐさま自室から飛び出したツン。

そんな彼女のこめかみに、恐ろしくひんやりした何かが突きつけられた。


ξ;゚听)ξ「……」


血の気が一気に引いていく。
体中がひんやりと冷えていく。

それらの感覚を瞬時の内に知覚しつつ、少女はゆっくりと顔を横に向けた。
視線の先に広がるのは、銃口を自分の眼前に向けて突きつける男の姿。


( ,,゚Д゚)「ゲームオーバーだ、キティガール」



69: VIP足軽a :2006/12/05(火) 21:16:57.85 ID:b6iBB9Ww0

不気味にニヤリと笑うのは、『黄豹』の二つ名を持つ男。

その男の肩越しに見えるのは、地面にうつぶせに倒れている幼馴染の姿。
彼はうつぶせのまま顔だけを上げ、こちらを注視している。

おそらく腹を殴られたのであろう、顔に脂汗を浮かべ苦しそうな表情で言う。


( ´ω`)「ギコさん……止めて下さいお……」

( ,,゚Д゚)「……悪いな、少年。
    こんな形で再会したくなかったが……これも仕事だ」


必死の声を上げる少年の方を振り向こうともしないで、冷徹に言い放つ『黄豹』。
彼は手に持った銃の引き金を、遊びの分だけ「カチャリ」と軽く引いた。


( ,,゚Д゚)「反論は受け付けない……早く『エデン』の地図を渡すんだゴルァ!!」



70: VIP足軽a :2006/12/05(火) 21:17:56.01 ID:b6iBB9Ww0

家中に響く怒鳴り声。
震え上がる少女。

彼女は震える手でポケットに詰め込んだ写真の束をギコに渡すと、そのまま力なく床にへたり込む。

脱力した彼女に銃口を突きつけたまま渡された写真の束をめくり、
その中から目的の一枚を見つけたギコは、残りの写真を地面にばら撒き、言葉をつむいだ。


( ,,゚Д゚)「任務……完……」



71: VIP足軽a :2006/12/05(火) 21:20:19.65 ID:b6iBB9Ww0
  _
(#゚∀●)「待ちやがれ!!」


その言葉をさえぎって、突如玄関の扉をぶち破って入ってきた大小二つのシルエット。
ジョルジュとオカマだ。


(;^ω^)「ちょwwww僕ん家の玄関こわすなおwwwww」

('∀`)「あらやだ、ごめんなさいね!ぶほほほほほwwwwwwww」


ぶち破った玄関の扉を笑いながら見つめ、なんとかしてそれを元に戻そうと奮闘するオカマ。
一方、その前に立つジョルジュの手に握られているのはいびつな黒い光を放つマシンガン。

玄関の修復に必死なオカマとブーンを背に、
手にしたマシンガンをギコの方へ向けると、ジュルジュは静かに言った。



72: VIP足軽a :2006/12/05(火) 21:21:51.17 ID:b6iBB9Ww0


  _
(#゚∀●)「会いたかったぜ……『黄豹』さんよぉ!!」

( ,,゚Д゚)「お前は……『桃色の乳首』……生きていたのか」



ツンに向けた銃口をそのままに、首だけ振り返った『黄豹』。

その男の瞳を、隻眼の副整備長は怒りの眼差しで射た。


第十五話 おしまい



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