( ^ω^)ブーンは砂漠に生きるようです
- 2: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:09:20.06 ID:8cxLPSxg0
第七話「決着の行方は風が知る」
砂漠の空気が、振動する。
全力でぶつかり合う打撃は、轟音と共に衝撃を放っていた。
( ^ω^)「おっ!!」
ブーンの蹴りが、ギコのガードを抜けて腹部に打ち込まれる。
しかし、岩体化したギコの体はそれを無効化。
( ,,゚Д゚)「甘いぞゴラァ!!」
ギコは蹴りで生じた隙を狙い、カウンターを放つ。
蹴り足を引き、ギコの側方に回り込むような軌道でそれを避けるブーン。
- 3: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:10:20.42 ID:8cxLPSxg0
(;^ω^)「やっぱ一発じゃ通らないかお!!」
( ,,゚Д゚)「はっ!! 動きは断然良くなったが、まだまだ腕っ節の強さが足りねえな!!」
互いの距離が離れる。
ギコは依然、その場でどっしりと構えたまま動かない。
完全な、受けの姿勢。
確かに岩体化していれば、ノーリスクでカウンターを狙える。
速度が遅くなるギコの能力には、最も適した戦い方だ。
- 6: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:13:49.93 ID:8cxLPSxg0
( ^ω^)(お? ちょっと待てお。動かないってことは……)
ブーンの頭の中に、ぼんやりとある考えが浮かんだ。
動かないということは、攻撃を防ぐ手立ては必然的に防御に限られる。
回避でなく、防御。
何かが、頭の片隅に浮かび上がってくる。
やがてそれは明確な形となり、頭の中にしっかりと描かれた。
('、`*川『ブーン、同じ場所ばかり狙わない!
敵は絶えず動きまわってる物だと思って打ち込みなさい!』
- 8: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:15:11.14 ID:8cxLPSxg0
( ^ω^)「……わかったお」
( ,,゚Д゚)「あん?」
僅かに頷くと、勢い良く地を蹴るブーン。
低い跳躍を繰り返し、飛ぶようにギコ目掛けて突っ込んでいく。
( ,,゚Д゚)「何度やっても同じだゴラァ!!!」
( ^ω^)「おっ!」
ギコが拳を引き、カウンターの体勢に入る。
勝負は一瞬。少しでも遅れたら負けだ。
覚悟を決め、さらに加速するブーン。
- 9: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:16:56.92 ID:8cxLPSxg0
(#^ω^)「おおおっ!!!」
ギコの懐に飛び込む。
瞬時に、ブーンは全ての風を腕に集中させ、強化する。
(#^ω^)「せぁぁぁっ!!」
一発目が、ギコの腹部に入った。
( ,,゚Д゚)「効かねぇ!! その程度の攻撃で……!」
(#^ω^)「おっおっおっ!」
間髪入れず打ち込まれた二発目が、ギコの言葉を遮った。
- 10: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:18:20.07 ID:8cxLPSxg0
(#^ω^)「だあああああああぁぁぁ!!!」
三発。四発。五発。
連続で打ち込まれる打撃の速度は、回数に比例して増していく。
( ,,゚Д゚)「ぐッ!?」
ギコが初めて、苦痛の声を漏らす。
一点に打ち込まれるブーンの拳は、ギコを守る岩の鎧をじわじわと削った。
激しい打撃の嵐に押され、ギコが後方によろめく。
- 11: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:19:13.21 ID:8cxLPSxg0
(#^ω^)「だあああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
( ,,゚Д゚)「や、野郎――――!!!」
後ろ足を踏ん張り、攻撃の態勢に入るギコ。
拳を振り上げる。
だが、ブーンの攻撃は止まらない。
(#^ω^)「おぉぉぉぉ!!!」
( ,,゚Д゚)「がっ……ぐっ!!」
再びよろめくギコ。
そして、ブーンの拳が厚い岩体を――――破った。
(#^ω^)「おおおおおおおぉぉぉっ!!!!」
捻りを込めた、最大力の突きがギコの腹部へ打ち込まれた。
拳を押し込めるように、前のめりになるブーン。
- 12: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:23:08.13 ID:8cxLPSxg0
( ,,゚Д゚)「俺の岩体を……破っただと……!!!」
ギコがそう呟いた直後、衝撃が拡散する。
全身が岩に包まれた、重いギコの体が宙に浮いた。
( ,, Д )「うがあああああっ――――!!」
呻きながら、前のめりに地面に倒れこむギコ。
重い体が砂漠へと沈み、砂煙があがる。
(;^ω^)「はぁ……はぁっ……ング……どうだお!!」
肩で息をし、叫ぶブーン。
拳を空高く上げ、勝利という二文字がブーンの頭に浮かんだ。
- 14: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:24:21.73 ID:8cxLPSxg0
(;´_ゝ`)「親分!!」
焦りの表情を浮かべ、ギコの元へ駆け寄る兄者。
鉄壁だと思われた、岩の鎧が敗れた。
それは、ギコ本人にとっても初めての経験だった。
( ,, Д )「手出しするんじゃねぇ……!!」
(;´_ゝ`)「うっ……」
ギコの鋭い眼光が、兄者の足を止めさせた。
口に溜まった血を吐き捨て、口元を拭い立ち上がる。
- 17: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:26:55.69 ID:8cxLPSxg0
( ,,゚Д゚)「攻撃を一点に集中させるとは、考えたじゃねえか……」
(;^ω^)「ぐ……。全力でぶん殴ったのに、立ち上がれるのかお」
うんざりしたように、ブーンが呟く。
息遣いは自然と荒くなり、疲労の波が足に錘をつける。
ギコの方も、能力を使いすぎたせいか、大量の汗が額に浮かんでいる。
次の一合で決まる。
無言の承諾が、二人の間で交わされた。
( ,,゚Д゚)「ぜッ……はぁっ……泣いても笑っても、次が最後の一撃だ。
覚悟は決まったか……小僧っ!!」
(;^ω^)「ハッ……ッング……絶対、負けないお……負けられない!!」
- 18: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:29:50.41 ID:8cxLPSxg0
最後の力を振り絞り、拳に込める。
否、込めるのは力だけではない。
譲れない想いを、信念を、意思を、拳に託す。
ブーンとギコ。二人の視線が、真っ直ぐにぶつかった。
(#^ω^)「うああああぁぁぁ―――!!!」
( ,,゚Д゚)「ゴラァァァァァ――――!!!」
同時に地を踏み、飛び出す。
互いに最後の一撃を放とうとした、その時だった。
(;^Д^) 「誰か助けてくれ――――!!!」
遠方から、助けを呼ぶ声が二人の耳に入ってくる。
ブーンとギコは咄嗟に足を止め、悲鳴の方へ視線を向ける。
(;^ω^)「なっ……!!」
( ,,゚Д゚)「な……!!」
( ,,゚Д゚)(;^ω^)「なんだあれはぁ――――!!!」
- 19: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:31:36.86 ID:8cxLPSxg0
(;^Д^) 「ひぃ……はぁ……!」
大きな鞄を背負った商人――プギャーが、必死で何かから逃げ惑っている。
背後から這うように現れたそれは、巨大な蟲だ。
赤い目を光らせ、大きく開いた口がプギャーを飲み込もうと襲い掛かっている。
(;^Д^) 「た、助けて……!!」
ふらふらとよろめき、商人はその場に膝を着いてしまう。
逃げる体力を失った獲物を見て、蟲が口を広げ、飲み込まんとする。
- 22: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:34:04.37 ID:8cxLPSxg0
(#^ω^)「うおおおぉぉぉ!!!」
( ,,゚Д゚)「ぜあああぁぁぁっ!!!」
蟲の口が、商人に覆いかぶさろうとした瞬間。
二つの人影が化け物じみた蟲の体に衝突し、その巨体を僅かに吹き飛ばす。
( ^ω^)「大丈夫ですかお?」
(;^Д^)「あ、ああ。君は確か……ブーン君?」
( ^ω^)「お? 何で僕の名前知ってるんだお?」
( ,,゚Д゚)「てめえら、お喋りしてる暇はねえぞゴラァ!」
- 24: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:35:50.23 ID:8cxLPSxg0
突然の攻撃に怯んだ蟲は、標的を襲撃者へと向ける。
体勢を立て直し、怒りの声をあげながら、ブーン達目掛けて突進してくる蟲。
( ,,゚Д゚)「小僧! そいつを安全な所まで連れて行け!」
( ^ω^)「わかったお! 商人さん、しっかり捕まってて下さいお!」
(;^Д^) 「え……う、うわっ!」
プギャーの体を抱きかかえ、大きく跳躍するブーン。
猛然と向かってくる蟲は、逃げる獲物に刺激され、さらに加速する。
- 25: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:37:29.82 ID:8cxLPSxg0
ξ;゚听)ξ「何なのよアレ!」
(;´_ゝ`)「あばばばば。落ち着け、素数だ、素数を数えるんだ!」
突如現れた規格外の蟲を見て、動揺を隠せないツンと兄者。
それもその筈だ。普通、蟲というのは大きくても掌に収まる程度を想像するだろう。
しかし、今現在目の当たりにしている蟲は、優に4メートルを超えていた。
(´<_` )「あれは……サンドワームか」
ξ;゚听)ξ「サンドワーム?」
(´<_` )「砂漠に生息する蟲の一種だ。……といっても、あそこまで大きいのは異常だな」
- 26: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:39:55.35 ID:8cxLPSxg0
(;´・ω・`)「くそっ!」
恐怖を押し殺すように歯を食いしばり、蟲の方へ走り出そうとするショボン。
しかし、その行動を鋭い木刀が遮った。
(´<_` )「何をするつもりだ」
(´・ω・`)「決まっている、ブーンを助けにいくんだ!」
(´<_` )「馬鹿か。ナチュラリストでもないあんたが行った所で、何が出来る」
(´・ω・`)「そこをどけ。子を守るのは、親の使命だ」
(´<_` )「……親の使命、か」
ショボンの言葉を、静かにかみ締める弟者。
一瞬、さびしそうな表情を浮かべ、しかしすぐにショボンを睨みつける。
数秒の沈黙の後、突きつけた木刀を降ろし、兄者へと視線を向けた。
- 27: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:41:54.88 ID:8cxLPSxg0
(´<_` )「兄者。仕事だ」
(;´_ゝ`)「1,3,5,7……え?」
(´<_` )「ターゲットは商人。風使いから商人を奪い、安全地帯まで移動する」
弟者はそう言いながら、ショボンに背を向ける。
(´・ω・`)「え……」
(´<_` )「小娘。お前はそこの馬鹿親を守れ。無理に出てこられたら、邪魔になるからな」
ξ;゚听)ξ「え、ちょっと」
(´<_` )「行くぞ、兄者!」
(;´_ゝ`)「マジで? マジで行くんですか? って置いてかないで――!!」
ツンが返答する前に、弟者は地を蹴り走り出した。
慌てて兄者もその後を追う。
- 28: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:43:31.16 ID:8cxLPSxg0
( ,,゚Д゚)「ちぃっ!」
岩体化したギコは、砂を蹴り跳躍。
蟲の眉間目掛けて、強烈な突きを振るう。
硬い甲羅が音を立てて僅かに削れるも、蟲の猛進は止まらない。
(;^ω^)「おっおっお!」
迫る蟲から、必死で逃げるブーン。
プギャーを担いでいるせいか、思うように足が前に進まない。
- 29: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:45:34.24 ID:8cxLPSxg0
(;^Д^) 「ブーン君! もういい、降ろしてくれ!
君だけでも逃げるんだ!」
(;^ω^)「大丈夫だお! こうやって風を足に纏えば……」
神経を足に集中し、風を呼び起こす。
しかし、ブーンの意思とは逆に、足に纏う風はその風力を弱めていった。
(;^ω^)(やばいお。もう体力が無くなってきてるんだお……!)
轟音が次第に近づいてくる。
気持ちばかりが焦り、何度も後ろを振り返るブーン。
- 32: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:47:10.01 ID:8cxLPSxg0
( ,,゚Д゚)「くそったれがぁ!! 大人しく止まりやがれぇ――――!」
そう叫びながら、ギコはブーンと蟲の間に立ち塞がる。
全身を岩体化し、腰を落として迎え撃つ姿勢を取った。
( ,,゚Д゚)「うおらぁぁぁぁぁっ! 舐めんなよ蟲公!!
どっちが強ぇか一対一の勝負だゴラァァァ!!!」
砂嵐が舞い上がる。
巨大な蟲は速度を落とさず、ギコはそれを正面から迎え撃つ。
大降りのテレフォンパンチと、迫り来る蟲の体が衝突した。
- 33: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:49:25.58 ID:8cxLPSxg0
( ,,゚Д゚)「あwせdrftgyふじこlp!!!」
(;^ω^)「ギコさん!!」
まるで勝負にならず、紙切れのように吹き飛ばされるギコ。
空中を回転しながら、岩で包まれた体が砂漠に墜落する。
とどまる事を知らない蟲は、大きな口を開けブーンを仕留めにかかる。
(;^ω^)「くそおおおぉぉぉぉぉ!!!!」
己の無力さを嘆く叫び。
寸前まで蟲の口が迫り、流石のブーンも死を覚悟したその時。
( ^ω^)「お……?」
二つの人影が、ブーンの横を通り過ぎる。
同時に、抱えていた重さが無くなり体が軽くなった。
- 34: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:52:25.30 ID:8cxLPSxg0
(;^Д^) 「うわっ!」
(´<_` )「ターゲット確保!」
( ´_ゝ`)b「OK、弟者。おい、少年。さっさと飛べ!」
(;^ω^)「流石兄弟!?」
意外なる声主は、ブーンの抱えていたプギャーを奪い取り二手に分かれる。
身が軽くなったブーンは、咄嗟に足に力を込め、空高く跳躍した。
- 35: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:55:02.28 ID:8cxLPSxg0
獲物を見失った蟲は、その猛進を止め赤い目を左右に動かす。
左を走るは兄者。右に走るは弟者とブーン。
蟲はどちらを追うべきか、戸惑いその足を止める。
( ´_ゝ`)「お尻ペンペンペンタゴーン!!
蟲公おいでーこちらにおいでっと!」
尻を徐に突き出し、蟲を挑発する兄者。
その声に反応し、蟲の体が兄者へと向けられる。
(;´_ゝ`)「うおっ! まじやっべ! 最高のスリルドライブだぜぇぇ!!」
標的は兄者へと絞られた。
蟲は再び猛進を開始する。
対し、兄者は尻をしまうと余裕の表情を浮かべ、逃げ始めた。
( ´_ゝ`)「そんな鈍足で追いつけるのかな?
牙猫盗賊団の『流石兄弟』兄者様にはよ!」
- 36: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:57:08.33 ID:8cxLPSxg0
(;^ω^)「あ、ありがとうだお。助かったお」
(´<_` )「何がだ?」
( ^ω^)「え?」
(´<_` )「お前を助けたつもりなど毛頭無い。
俺はこの商人の持ってる物に目をつけて、こいつごとかっぱらっただけだ」
ブーンから目を離しながら、弟者は続ける。
(´<_` )「俺はこいつをバーボンハウスまで連れて行く。
お前は逃げるなり戦うなり好きにしろ」
(;^Д^)「あの、私はどうすれば……」
(´<_` )「黙ってろ。舌をかむぞ」
そういい残し、ブーンを置いて走り去る弟者。
一瞬だけ、彼は視線を逃げ惑う兄者へと向け、敬礼をした。
- 37: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 21:59:35.45 ID:8cxLPSxg0
( ^ω^)「お……」
残されたブーンは、呆然と立ち尽くす。
向こうでは兄者が蟲を引き付け、ジグザグに走り回って時間を稼いでいた。
( ,,゚Д゚)「……ぶはっ!」
(;^ω^)「うわっ!」
( ,,゚Д゚)「あー、流石に効いたぜ畜生が」
不意に地面からギコが首を出した。
どうやら、砂の下に潜っていたらしい。
(;^ω^)「急に出てこないで欲しいお。びっくりするお」
( ,,゚Д゚)「俺が知るか。それより、小僧、ちょっと耳かせ」
(;^ω^)「お?」
ブーンは膝を曲げ、ギコの口元に耳を寄せる。
- 38: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 22:01:16.17 ID:8cxLPSxg0
( ,,゚Д゚)「わぁぁぁ――――!!!」
(;゚ω゚)「ギャ――――!!」
( ,,゚Д゚)「ギコハハハ!! 引っかかったー」
(;゚ω゚)「な、ななな何するんだお!!」
( ,,゚Д゚)「怒ったか?」
(#^ω^)「当たり前だお! こんな時に何考えてるんだお!」
怒りながら咎めるも、ギコは悪びれた様子も無く口を開けて笑った。
( ,,゚Д゚)「気合入れてやったんだよ。小僧、あの馬鹿でけえ蟲を倒す気はあるか?」
( ^ω^)「お……?」
一転し、真剣な目つきで問うギコ。
- 40: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 22:03:10.85 ID:8cxLPSxg0
( ,,゚Д゚)「強制はしねぇ。ビビってる奴を引っ張り出しても、足手まといになるだけだからな」
(#^ω^)「む……僕はビビってなんかないお! あんな蟲、どうってことないお!」
( ,,゚Д゚)「ようし! 小僧、決闘は次の機会にお預けだ。
男の勝負を邪魔しやがった、あの蟲野郎を潰すぞゴラァ!!」
( ^ω^)「おお!!」
ブーンは力強く頷き、神経を集中する。
やがて柔らかな風が、ゆっくりとブーンの周りに集まり始める。
( ,,゚Д゚)「いいか、俺があいつを跳ね飛ばす! そしたら、下っ腹にぶち込め!
いいな、ドーンドカーンジュドーンのリズムだ!! ヘマすんじゃねえぞ!!」
( ^ω^)「よくわからないけど、何となくわかったお!!」
( ,,゚Д゚)「ようし、それでいい! 行くぞ!!」
岩体化したギコの体が、再び砂の下へと潜っていく。
ブーンは風を足に纏わせると、兄者を追い回す蟲の元へと駆けて行った。
- 42: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 22:05:09.75 ID:8cxLPSxg0
(;´_ゝ`)「うおおおお! 弟者、俺はこの後どうすればいいんだ――!」
自慢の逃げ足で、悉く蟲の攻撃を避け、逃げ続ける兄者。
しかし、体力は有限。
全速力で走り続ける兄者の足には、限界が来ていた。
(;´_ゝ`)「ふぎぃ!! 転んじゃった、テヘ♪」
砂に塗れながら、息を切らす兄者。
その体に、巨大な影が掛かる。
(;´_ゝ`)「振り向きたくないけど、振り向いちゃう心理……」
頭に冷たい感触が走る。
振り返り、上を見上げると、赤い目が兄者を見下ろしていた。
- 43: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 22:08:23.91 ID:8cxLPSxg0
(;´_ゝ`)「ノゥ――――!!!」
その口が、兄者を包み込み閉じようとした瞬間。
ξ゚听)ξ「エクシ―――ド!」
( ´_ゝ`)「!?」
衝撃音と共に、蟲の動きが止まった。
その隙に、兄者はほふく前進で口内から脱出する。
(*´_ゝ`)「ツンちゃぁぁん!! 助けにきてくれたんだね――!!」
ξ;゚听)ξ「勘違いしないでよね、変態。気まぐれよ、気まぐれ」
蟲に強烈な蹴りを放ち、砂漠へと着地するツン。
足にしがみつく兄者を蹴り飛ばし、胸の前で腕を交差させ、構えなおす。
- 44: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 22:10:32.06 ID:8cxLPSxg0
( ^ω^)「二人とも、どいてくれお――――!!」
腕を横に広げ、ブーンがこちらへ駆けて来る。
ツンと兄者の間を高速で抜けると、蟲に向かい跳躍。
蟲の赤い目が、ブーンへと向けられた瞬間
――――地面が破裂した。
蟲の体が、大きく仰け反る。
( ,,゚Д゚)「土竜拳っ――――!! ゴラァァァッ!!」
ブーンに意識を取られた蟲は、地面からの襲撃者を完全に見落としていた。
地面から放たれたアッパーカットは、甲羅で守られていない下部を打ち抜く。
- 45: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 22:15:53.94 ID:8cxLPSxg0
( ,,゚Д゚)「小僧、今だ!!」
(#^ω^)「おkだお!! うおおおりゃあぁぁぁぁ――!!!」
空中で回転し、遠心力を拳へ込める。
追い風がさらにブーンの推進力を上げ、無防備な蟲の腹を見やる。
(#^ω^)「吹っ飛べぇぇぇぇ――――!!!」
回転を止め、暴風が纏う拳を打ち込む。
風力と遠心力が込められた、爆発的なエネルギーが炸裂する。
- 47: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 22:20:05.02 ID:8cxLPSxg0
大地が震えるような衝撃音が、砂漠に響く。
蟲は痛々しい悲鳴をあげ、自らの重さに耐え切れず、その巨大な体を砂の海に沈めた。
それを空中から見送ったブーンは、着地すると同時にエクシード状態を解いた。
(;´_ゝ`)「やった……のか?」
恐る恐る、倒れた蟲を見やる兄者。
蟲の赤い目は光を失っており、生態活動は完全に停止していた。
(;^ω^)「やった……お……!」
緊張感が解けたのか、その場に力無く倒れこむブーン。
( ,,゚Д゚)「けっ。こんな所で眠りやがって、だらしねえ……」
ブーンの元へ、覚束ない足取りで近づいたギコも、その横に倒れこむ。
- 48: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 22:27:37.13 ID:8cxLPSxg0
ξ゚听)ξ「ブーン!」
(;´_ゝ`)「親分!」
( -ω-)「zzz……んお……」
( ,,-Д-)「ゴラァ……」
(´・ω・`)「……大丈夫だ。二人とも、眠っているだけだよ」
倒れている二人に耳を近づけ、そう呟くショボン。
さっきまでの騒乱がまるで嘘だったかのように、穏やかな表情で眠る二人。
そんな二人を見て、ショボンはやれやれとため息を吐きつつも、微笑んだ。
穏やかな風が、頬を撫でる。
こうして、少年と盗賊団の決闘騒動は幕を閉じた。
- 49: ◆ExcednhXC2 :2007/10/24(水) 22:30:14.52 ID:8cxLPSxg0
('、`*川「ロマネスクさん、こっちですよこっち!」
(;ФωФ)「おぉっとこいつはすまん! こっちですな、とうっ!」
('、`*川「そっちじゃないですってば――!!」
一方、砂漠の街VIP。
助けを呼びに言った筈のペニサスは、何故か助けを求めた人間の対応に困り果てていた。
保安官ロマネスク。
彼の唯一? の困ったところは、常識を超えた方向音痴にある。
('、`*川「もうっ! 誰か何とかして――――!!!」
困り果てたペニサスの叫び声が、砂漠の街に響き渡った。
第七話 終わり
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