( ^ω^)ブーンは砂漠に生きるようです
- 7: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:07:07.75 ID:SvpTaRnr0
第八話「新たなる門出」
( −ω−)「お……」
意識が覚醒し、うっすらと目を開けるブーン。
目をこすりながら、上半身を起こす。
(;^ω^)「あれ? 僕は何をやって……痛っ」
体を動かすと、全身を鋭い痛みが走った。
苦痛の表情を浮かべながら、ブーンは辺りを見回す。
壁に掛けられた、どこの誰が書いたのかもわからない、草原の絵。
無造作に転がっている、錘や砂袋。
- 10: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:08:32.91 ID:SvpTaRnr0
( ^ω^)「ここ……僕の部屋だお」
ぼんやりと現状を把握すると、徐々に記憶が戻ってきた。
ギコとの決闘。そして、突如現れた巨大な蟲との戦い……。
(;^ω^)「……って、そうだお! 皆は無事なのかお!?」
痛む体を引きずり、階段を降り一階へと駆け下りるブーン。
階段を半分ほど降りると、バーである一階から何人かの笑い声が聞こえた。
( ,,゚Д゚)「いや、だからよぉ。俺の土竜拳がそこでドカンと決まったわけよ!」
( ФωФ)「ワハハハ! あの技をはじめて受けた時は、度肝を抜かれたもんだ!」
- 12: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:11:28.14 ID:SvpTaRnr0
(;^ω^)「おっお?」
目の前に見える光景に、少し違和感を覚えるブーン。
目の前で楽しげに語り合っているのは、どう見ても盗賊団と保安官であった。
( ,,゚Д゚)「おう、起きたか小僧!」
( ФωФ)「お邪魔しておりますぞ」
(;^ω^)「えーっと、ロマネスクさんはともかく」
ゆっくりと息を吸い、
(;^ω^)「なんであんたがここにいるんだお!?」
椅子にどっしりと座っているギコを指差し、叫ぶブーン。
ギコは酒のせいか、すっかり赤面した顔をブーンの方へ向ける。
- 14: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:12:47.37 ID:SvpTaRnr0
( ,,゚Д゚)「んあ? 何でって、酒飲む為に決まってんじゃねーか!」
(;^ω^)ノシ「いやいや、そういう事を聞いてるんじゃなくて……お〜」
もどかしげに言葉を切るブーン。
頭を抱え込み、納得がいかない様子で唸っている。
( ´_ゝ`)「まぁまぁ少年。ジュースでも飲んで落ち着け」
(´<_` )「あたかも自分の物のように言っているが、それは店の商品だぞ兄者」
カウンターからジュースのボトルを取り、グラスに注ぐ兄者。
ブーンは礼を言いながらそれを受け取ると、一気に飲み干し、一息ついた。
- 16: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:15:40.43 ID:SvpTaRnr0
( ^ω^)「落ち着いたお。……で、何で盗賊団の皆さんがここにいるんだお?」
( ,,゚Д゚)「おいおい、俺達は客だぜ? ったく、接客態度ってもんがなってねぇな」
(;^ω^)「お客?」
握り飯を頬張りながら、偉そうにふんぞり返るギコ。
その横に座っていたプギャーが、首をかしげるブーンに対し説明をはじめた。
( ^Д^)「いやぁ、命を救ってもらったのでね。
せめてものお礼にと、食事を御馳走させてもらってる次第です」
( ,,゚Д゚)「おい、おかわり!」
('、`*川「うーん、凄い食べっぷり。料理のし甲斐があるなー」
(´<_` )「おい、小娘。酒を注げ」
ξ゚听)ξ「ちょっと、誰が小娘よ!」
(*´_ゝ`)「ツンちゃ〜ん! この醜い豚めに口移しして下さい!」
ξ#゚听)ξ「全力で断る!」
- 17: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:17:18.08 ID:SvpTaRnr0
奥のテーブルで騒ぐツンと流石兄弟。
そのやり取りを見て、納得したようにブーンは頷いた。
(;^ω^)「おー。なんとなく状況は把握したお」
( ,,゚Д゚)「おら、小僧! おめぇも飲め飲め! 疲れが吹っ飛ぶぜ?」
(;゚ω゚)「オフゥッ!」
頭をつかまれ、無理やりボトルに入った酒を飲まされるブーン。
喉が焼けるのではないかと思うほど、熱い液体が体内へ入り、体温を急上昇させる。
(;´・ω・`)「ちょ、ちょっと! ブーンはまだ未成年……」
( ,,゚Д゚)「ギコハハハ! 細けぇとこは気にするな!」
(;゚ω゚)「おー、おー……」
ふらふらとよろめくブーン。
そのまま力無く壁に寄りかかり、沈黙してしまった。
- 19: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:18:39.62 ID:SvpTaRnr0
(;´・ω・`)「ほら、言わんこっちゃない! ブーン、大丈夫か?」
( ω )「おふ……ふふふふ」
(´・ω・`)「ブーン?」
俯きながら、不気味に笑うブーン。
その口からは、随分と濃いアルコールの匂いが漂っている。
(*^ω^)「おっおっお!! オウフwwwww酒うめぇwwww」
いつも以上に崩れた笑みを浮かべるブーン。
テーブルの上にあるボトルを掴むと、その一瓶を一気に飲み干した。
( ,,゚Д゚)「いい飲みっぷりじゃねえか! お前、いける口だな!?」
( ^ω^)「おっおっお。酒うめぇwwww」
( ,,゚Д゚)「よーし、飲め飲め! 小娘! もっと酒もってこい!」
ξ#゚听)ξ「だ・か・ら、小娘って言うな――――!」
- 20: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:19:45.69 ID:SvpTaRnr0
そんな騒がしいテーブルを、カウンターから眺めるショボン。
鼻で笑いながら、グラスを拭く彼の目の前に、誰かが移動してきた。
( ФωФ)「いやはや。何とも愉快な夜だ」
そう言いながら、カウンター席へと、その大柄な体を沈めるロマネスク。
彼は手に持ったボトルを、グラスに注ぐと一口飲んだ。
(´・ω・`)「いいんですか? 保安官のあなたが、盗賊団と一緒にお酒を飲んだりして」
( ФωФ)「なぁに。悪さをしなければ、捕まえる必要など無いのですよ。
そりゃ盗みを働いた時は我輩の鉄拳と、もれなく三日間の拘束が待っていますがね」
- 22: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:21:14.84 ID:SvpTaRnr0
(´・ω・`)「しかし、彼らは根っからの悪人という訳ではなさそうですね」
( ФωФ)「……あいつらも、まともな職につければ盗みもしなくなると思うのですよ」
そう呟き、騒々しいテーブルへと目をやる。
視線の先では、流石兄弟が歌を歌い、ギコやブーンも乗じてお祭り騒ぎをしている。
( ФωФ)「VIPで職を持つのは、中々難しいですからな。
我輩も奴らとは長い付き合い。何とか職を見つけてやりたいのですが……」
( ^Д^) 「ありますよ。彼らにとっておきの職なら」
( ФωФ)「おや、あなたは……」
( ^Д^) 「商人のプギャーと申します」
プギャーはロマネスクに手を差し出し、軽く握手をした。
- 23: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:23:07.76 ID:SvpTaRnr0
( ФωФ)「商人さんですか。しかし、彼らはお金の計算すら怪しいですぞ。
正直、商人として働くのは厳しい野のでは……」
( ^Д^) 「いえいえ。そういう事では無いですよ。
実は、彼ら……いえ、正確にはギコさんに、私の護衛をお願いしたいんですよ」
( ФωФ)「護衛?」
首をかしげるロマネスク。
グラスに残った酒を一飲みし、プギャーは説明を続ける。
( ^Д^)「私ども商人は、砂漠を渡って町を行き来し交易をしているんです。
ですが、最近、砂漠を移動中の我々を狙ってくる盗賊が多くなりましてね」
( ФωФ)「それで護衛を?」
( ^Д^) 「はい。ナチュラリストの方が護衛につけば百人力です。
今日みたいにサンドワームに襲われても、安心ですからね」
- 25: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:24:48.37 ID:SvpTaRnr0
( ФωФ)「お、おおおお……! そうか、その手があったか……!」
(;^Д^)「な、ななななんですか!?」
プギャーの肩をがっしと掴むロマネスク。
その瞳はきらきらと輝き、尊敬と感謝に満ち溢れていた。
( ФωФ)「まさに天才! そういったことなら、きっと奴らの馬鹿力も役に立ちますぞ!
本当にどうしようも無い奴らですが……一つ、よろしくお願いします!!」
(;^Д^)「は、はぁ」
( ФωФ)「よっしゃ! お――い! ギコ、お前にとっておきの話が来たぞ――! 祝杯じゃー!」
ロマネスクは新しいボトルを手に持ち、向こうのテーブルへ走っていった。
残されたプギャーは、ぽかんと口を開けてその光景を見つめる。
- 27: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:26:52.96 ID:SvpTaRnr0
(;^Д^) 「彼と盗賊団は敵対関係ですよね? 何故あんなに喜ぶんだろう……」
(´・ω・`)「きっと、悪ガキと親のような関係なんでしょうね」
そう言いながら、共感するようにショボンは微笑んだ。
向こうでは求職の報告を受けたギコを、流石兄弟が胴上げしてさらに馬鹿騒ぎになっている。
('、`*川「ショボンさーん、ボトル追加でーす」
(´・ω・`)「まったく、店の酒を飲み干すつもりかね、彼らは」
('、`*川「ふふ、店としては嬉しい悲鳴ですね」
ペニサスはそう言いながら、空のボトルをショボンに渡した。
( ^Д^) 「これはこれは、ペニサスさん。どうです、一杯」
- 28: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:28:51.17 ID:SvpTaRnr0
('、`*川「う〜ん、せっかくですけど、まだ私はお仕事が残ってるのでごめんなさい」
( ^Д^) 「では、お仕事の後に二人きりで……どうでしょう」
('、`*川「え……」
二人の男女が見つめ合う。
その間に生まれる沈黙は、何とも心地よい物だろう。
しかし、そんな光景を黙って見ていることが出来ない人物が一人。
(´゚ω゚`)「おいおい、誰がそんな逢引をしていいと言ったのかな?」
(;^Д^) 「げっ。い、いや、その……」
- 29: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:29:24.84 ID:SvpTaRnr0
(´゚ω゚`)「ヘイ、バットボーイ! カモン!!」
(;^Д^) 「すいません勘弁してくださ―ーい! 嫌だぁぁぁぁ!!!」
ずるずると引きずられていくプギャー。
数秒後、店の奥から痛々しい悲鳴があがった。
('、`*川「プギャーさん……うふふ、私に気があるのかしら。
やだ、どうしよう。……うふふ」
こうして、バーボンハウスの夜は更けていった。
- 31: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:32:36.85 ID:SvpTaRnr0
※
(;^ω^)「うう……呑みすぎたお」
宴会騒ぎから二時間後。
青ざめた顔で、トイレから出てくるブーン。
辺りはすっかり暗闇に包まれ、窓から差し込む月の光が、店内を僅かに照らしている。
( ´_ゝ`)「んが……ツンちゃんはワシの嫁ぞぉい……にゃむ」
(´<_` )「ん……兄者……そっちは……地獄だぞ……むにゃ」
頭痛に耐えながら、ふらふらと店内に戻ると、そこには大の字で眠る流石兄弟の姿があった。
( ^ω^)「まったく、図々しいお客だお。こんなとこで寝てたら風邪引くお」
ぶつぶつと文句を言いながら、適当な毛布を持ってきて、寝転がる二人にかけるブーン。
カウンター席に座ると、酔いさましにと水を一杯飲んだ。
- 33: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:34:21.56 ID:SvpTaRnr0
( ,,゚Д゚)「まだ起きていたか」
( ^ω^)「あ、ギコさん」
( ,,゚Д゚)「よっこいしょっと」
ギコはブーンの隣の席に、どっしりと座った。
二人の間に、何ともいえない、しかし悪くはない雰囲気が流れた。
( ,,゚Д゚)「結局、お前との決着はおざなりになっちまったなぁ」
( ^ω^)「お?」
開口一番に、そんなことを言いだすギコ。
ずっと気にしていたのだろうか。
( ,,゚Д゚)「まぁぶっちゃけ俺の勝ちは見えてたけどな。
あのままぶつかってりゃ、間違いなく最後に立っていたのは俺だったぜ?」
( ^ω^)「む……。そんなの、やってみなくちゃわからないですお。
僕が勝ったかもしれないですお」
( ,,゚Д゚)「いや、お前はまだまだ甘ちゃんだ。アマアマだ」
- 35: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:35:28.27 ID:SvpTaRnr0
そう言いながら、ブーンの髪の毛をくしゃくしゃと撫でるギコ。
子供扱いされてるのが気に食わないのか、ブーンは口をへの字に曲げた。
( ^ω^)「僕はこれでも、腕には自信あるんだお。
それに、もっともっと強くなるんだお。強くならなきゃいけないんだお」
( ,,゚Д゚)「ふーん」
熱意の篭ったブーンの言葉に対し、鼻で笑うギコ。
強さへの熱意をもった少年の瞳を見つめ、厳しい言葉を投げかける。
( ,,゚Д゚)「外の世界にゃ、お前より強い奴なんざぁゴロゴロしてるさ。
VIPで細々と鍛錬やって、強くなりたいなんて甘い。甘すぎるぜ小僧よぉ」
(;^ω^)「う……」
痛い所を突かれ、嫌な思い出がよみがえるブーン。
流石兄弟との、初戦。
戦闘経験が少なかったブーンが、初めて己の実力を知らされた瞬間だった。
- 40: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:40:59.90 ID:SvpTaRnr0
( ,,゚Д゚)「強くなりたいなら、ぬくぬくと岩ばっか相手にしてねえで外に出るんだな。
お前の決意がどの程度かは知らんがな」
( ^ω^)「外に……?」
ギコは窓の外に視線をやり、続ける。
( ,,゚Д゚)「明後日、俺はプギャーさんとアサヒ村まで行く」
( ^ω^)「……」
( ,,゚Д゚)「お前にその気があるなら、この機会に外へ出るんだな。
最初のチャンスってのは、一度逃すと二度目まで長いぞ」
- 43: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:45:12.19 ID:SvpTaRnr0
そう言い終えると、ギコは席を立った。
振り返ることなく、寝室へと向かう。
その大きな背中に向かい、ブーンは問いかける。
( ^ω^)「どうして、僕に……?」
( ,,゚Д゚)「……」
足を止め、しばし沈黙するギコ。
やがて、彼には似つかわしくない、消えるような声で呟いた。
( ,,゚Д゚)「なんでだろうな。お前を見てると……昔を思い出す」
( ^ω^)「お……?」
( ,,゚Д゚)「とにかく、てめえのことだ。これ以上は何も言わねぇ。
どうするかは、自分で決めろ。選択肢は与えてやったぞゴラァ」
- 47: ◆ExcednhXC2 :2007/10/29(月) 00:52:43.71 ID:SvpTaRnr0
階段を上っていくギコ。
やがてその姿は、ブーンの視界からは見えなくなり、再び静寂が少年を包み込んだ。
( ^ω^)「……」
一人残されたブーンは、美しく光る月を見やる。
思えば、VIPの外の世界は、ほとんど知らない。
かつて知っていた故郷が、どこにあるかさえ記憶に薄い。
( ^ω^)「いよいよ旅立つ時が来たのかも知れないお」
自分に言い聞かせるように、呟く。
( ^ω^)「僕は、強くなって……必ず奴を見つけ出す。
そして、この手で敵を取るんだお」
拳を強く握り、少年は決意を固めた。
( ^ω^)「決めたお。僕は、VIPを旅立つお! 待っててお、父ちゃん、母ちゃん。
絶対に、僕がみんなの雪辱を晴らしてみせるお……絶対に」
少年は旅立ちを決意する。
それは、この物語の、本当の始まりに過ぎないことを、彼はまだ知らない。
第八話 終わり
戻る/第九話