( ^ω^)ブーンは砂漠に生きるようです
- 2: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:02:02.74 ID:36DX56Uv0
第十一話「お人好しのナチュラリスト」
アサヒ村の宿屋。
ギコに担がれ、宿に戻ってきたブーンとツンは、怪我の治療を受けていた。
(;^ω^)「いでででっ! しみる、しみるお〜……」
( ,,゚Д゚)「うるせぇ! 男ならこれくらいで騒ぐなゴラァ」
消毒液が傷にしみる。
ブーンの体は、切り傷や打ちみが多いものの、大事には至っていなかった。
- 3: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:02:56.75 ID:36DX56Uv0
( ^Д^) 「これでよし、と」
ξ゚听)ξ「ありがとうございます、プギャーさん」
(;^Д^) 「いえいえ。それより、一体外で何があったんですか?
そして、この少年は……?」
治療薬をしまい、プギャーは視線を下に向けた。
そこには、部屋の隅で俯き座っている少年がいる。
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「ねぇ、君」
('A`)「は、はい」
少年はびく、と体を震わせながら返事をする。
怖がらせないよう、ツンは優しい笑みを浮かべながら話しかけた。
- 4: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:05:41.26 ID:36DX56Uv0
ξ゚听)ξ「私はツン。君、名前は何ていうの?」
('A`)「え、あ……ドクオ、です」
消えてしまいそうなくらい小さな声で、ドクオは答えた。
( ^ω^)「僕はブーンだお! よろしくだお、ドクオ!」
('A`)「よ、よろしくお願いします……」
(;^ω^)「お……」
ドクオは軽く頭を下げる。
その口調から放たれる暗いオーラに、思わず言葉が詰まってしまった。
- 8: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:13:36.34 ID:36DX56Uv0
( ^Д^) 「……それで、どういった経緯でこうなったんですか?」
いまいち状況が掴めていないプギャーが、疑問を口にする。
( ^ω^)「実は――――かくかくじかじか、ということがあったんですお」」
(;^Д^) 「なるほど。そんな事があったんですか」
ブーンは外であったことを手短に話した。
ドクオからペンダントを奪い取ったフードの男の事。
そして、戦いに負けてしまった事。
(;^ω^)「ドクオ、ごめんだお。ペンダント取り返せなくて……。
逆にフルボッコにされちゃうし、僕、情けないお」
('A`)「いえ、いいんです」
ドクオは首を横に振る。
- 10: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:15:17.38 ID:36DX56Uv0
('A`)「カーチャンの形見だけど……盗られちゃった物は、仕方ないから……」
(;^ω^)「ドクオ……」
それっきり黙り込むドクオ。
慰めようと思うが、何と声をかけてよいのかわからなかった。
室内に、重い沈黙が流れる。
( ,,゚Д゚)「……気にいらねえ」
それまで口を閉じていたギコが、呟いた。
顔を上げると、大股でドクオの前へと移動する。
- 11: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:17:52.05 ID:36DX56Uv0
( ,,゚Д゚)「ドクオっつったな。お前、そんな大事な物とられて悔しくねーのか?」
('A`)「え……」
( ,,゚Д゚)「くやしくねーのかって聞いてんだよ!
お前にとって、その母親の形見は、仕方ないですませられる物だったのか? あぁ!?」
ギコが声を荒げる。
その迫力に、ドクオは体を強張らせた。
(;'A`)「その、でも……」
( ,,゚Д゚)「あぁ?」
眉を吊り上げ、恐ろしい剣幕でドクオを睨み付けるギコ。
- 15: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:20:34.43 ID:36DX56Uv0
(;'A`)「盗まれちゃったら……どうしようもないですよ。
……諦めるしか、ないです」
猛獣に追い詰められた兎のような様子で、返答するドクオ。
その言葉に納得がいかないのか、猛獣、もといギコは大げさに首を横へと振った。
( ,,゚Д゚)「かーっ! お前はどこのお嬢様だゴラァ! てめえそれでも男か!?
盗られたらその倍取り返すぐらいの気合はねーのか! 気合は!!」
テーブルに拳を叩きつけ、怒鳴るギコ。
至近距離で怒声を浴びたドクオは、怯えるように俯く。
ξ;゚听)ξ「ギコさん! やめてよ、怖がってるでしょ!」
(;^ω^)「そうですお、落ち着いてくださいお!」
見ていられなくなったのか、二人がギコを止めに入る。
- 16: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:22:35.19 ID:36DX56Uv0
( ,,゚Д゚)「しかしなぁ……!」
ξ゚听)ξ「ギコさんみたいに強ければいいだろうけど、この子はそうはいかないでしょ?
見てよ、この細い腕! 青白い顔! 戦う前にKO負けって感じじゃない!」
(;'A`)「あう……」
(;^ω^)「ツン、それ言い過……」
ξ゚听)ξ「とにかく、これ以上ドクオ君をいじめちゃ可愛そうよ!
ただでさえショックを受けてるんだから……」
- 20: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:26:42.20 ID:36DX56Uv0
ツンはドクオの肩を優しく掴んだ。
ξ゚听)ξ「ごめんね、怖がらせちゃって」
('A`)「……いえ、大丈夫です」
さっきよりも暗い空気を放つドクオ。
彼は顔を上げると、ブーンの方へと視線を向け、頭を下げた。
('A`)「運が悪かったんです……。僕があの人にぶつかったりしなければ、こんな事にはならなかったんだ。
……トラブルに巻き込んでしまって、すいませんでした」
(;^ω^)「ちょ、それは違うお。僕は自分の意思で、君の助けに入ったんだお。
だからドクオが謝る必要なんてないお」
否定するブーンを他所に、ドクオは頭を下げ続ける。
('A`)「怪我の治療までして頂いて、ありがとうございました……。
僕はもう大丈夫ですから……心配しないで下さい」
- 23: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:33:38.59 ID:36DX56Uv0
部屋中の誰もが、沈黙した。
重苦しい空気が、部屋を支配する。
そんな空気の中心で、自分よりも幼い少年が、責任を感じ頭を下げている。
ブーンは居た堪れない気持ちになり、拳を握った。
もし自分がドクオの立場だったら、
もし自分が、大切にしている母親の形見を奪われたら。
想像しただけで、悔しさが湧き上がった。
あまりの理不尽さに。
己の無力さに。
その悔しさは諦めに変わり、やがて悲しみが襲い掛かってくるだろう。
( ω )「そんなの……」
嫌だった。
納得がいかなかった。
- 27: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:39:08.72 ID:36DX56Uv0
( ^ω^)「ドクオ」
ブーンは真っ直ぐに、ドクオを見つめた。
顔を上げたドクオの瞳の中は、悲しみと諦めの色が浮かんでいる。
( ^ω^)「僕が、盗られたペンダントを取り返してあげるお」
('A`)「……え?」
(#^ω^)「あんなフード男のために、ドクオが悲しむなんて間違ってるお!
ドクオの大切な物は、僕が取り返してやるお!」
怒気を含んだ叫び声が、部屋中に響いた。
正義無き力は暴力。
昔、ショボンが幼き頃のブーンに言った言葉だ。
その言葉を、今になってようやく理解した。
目の前の少年は、暴力によって大切な物を奪われ、悲しんでいる。
許せないと、ブーンは思った。
- 31: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:44:19.89 ID:36DX56Uv0
(;'A`)「そ、そんな……悪いですよ! 僕、ほんとにもう気にしてないですから……!」
( ^ω^)「嘘だお」
('A`)「!!」
即座に、ドクオの心情を見破るブーン。
( ^ω^)「ドクオの目は、悲しみで溢れてるお」
('A`)「そんな、こと……」
ドクオは言葉を切り、視線を逸らす。
( ^ω^)b「大丈夫だお! 僕に任せてくれお!
絶対、取り戻してみせるお。約束だお!」
ブーンは親指を立てながら、いつもの元気な声で言った。
その瞳に映るのは、希望の光。正義の心。
そんなブーンを見て、ドクオの暗い顔に、僅かだが笑顔が浮かんだ。
('∀`)「……うん」
- 32: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:45:14.70 ID:36DX56Uv0
ξ゚听)ξ「ブーン、『僕』じゃなくて、『僕達』でしょ?」
( ^ω^)「お? それって……」
ξ゚ー゚)ξ「私も協力するって事よ。あんた一人じゃ、見つかる物も見つからないでしょ?」
微笑みながら、ツンはそう言った。
ブーンは言葉の意図を理解すると、太陽のように明るい笑顔を浮かべる。
( ^ω^)「ツン、ありがとうだお!」
ξ゚听)ξ「べ、別にあんたの為じゃないわよ。ドクオ君の為に、仕方なく付き合ってあげるんだからね!」
そっけない態度で、ぷいっ、と顔をそらすツン。
それでも、ブーンは嬉しそうに笑っていた。
- 33: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:47:11.13 ID:36DX56Uv0
( ,,゚Д゚)「小僧」
( ^ω^)「お?」
やる気に溢れ、小躍りしているブーンに向かい、ギコが口を開いた。
( ,,゚Д゚)「お節介をするのはお前らの勝手だが……プギャーさんの護衛はどうするつもりだ?」
(;^ω^)「あ……」
突きつけられる言葉に、仕事の事を思い出し、言葉を詰まらせるブーン。
ブーンは、プギャーの護衛としてここまできたのだ。
焦るブーンに、攻めるような強い口調でギコは続ける。
- 34: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:48:45.52 ID:36DX56Uv0
( ,,゚Д゚)「お前ら、仕事をほっぽり出して、そいつの探し物をする気か?」
(;^ω^)「いや、そんなつもりじゃ……」
( ,,゚Д゚)「じゃあどんなつもりだゴラァ」
(;^ω^)「あう……」
言い返そうと、必死で頭を回転させるブーン。
しかし、意思とは裏腹に何も思い浮かばない。
ξ゚听)ξ「ギコさん、私達は仕事を放棄するつもりはありません。
ただ、ドクオ君のペンダントを取り返そうと……」
( ,,゚Д゚)「フード男の行方を捜して、取り返そうってか?
それにかかる時間を考えたか? 長引いた時の宿代は、誰が払うんだ?
お前らの都合で、プギャーさんの足を止めさせるのか?」
ξ;゚听)ξ「それは……」
一言一言が、重く圧し掛かった。
重い沈黙が流れる。
ギコは腕を組んで、二人の答えをじっと待っている。
- 35: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:50:36.48 ID:36DX56Uv0
(;^ω^)「その、お願いしますお。時間を……」
( ,,゚Д゚)「……」
(;^ω^)「少しでもいいんですお! 僕達に、ドクオのペンダントを取り返す時間を下さいお!
プギャーさん、ギコさん!」
頭を下げ、そう頼み込むブーン。
それを見たギコは、すぅ、と大きく息を吸い
( ,,゚Д゚)「甘えるなゴラァァァァァ――――!!!!」
宿が揺れるほどの怒号を放った。
- 39: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:52:44.94 ID:36DX56Uv0
( ,,゚Д゚)「頭を下げたくらいで、我侭が通ると思ってるのか!!
小僧! てめぇは責任感ってもんが全くねぇぞゴラァ!!」
(;^ω^)「ひっ!」
鬼のようなギコの迫力に、ブーンは小さな悲鳴をあげる。
ドクオも飛び跳ねるように驚き、怯えながらツンの後ろに隠れた。
( ,,゚Д゚)「いいか、人の放つ言葉の一つ一つにゃ、責任ってモンがつくんだよ!!
言葉の重みも考えねぇ、感情だけで行動する。そうやって考えも無しに安請け合いをするなゴラァ!!!」
ギコの言う事は、正論だった。
何も考えず、ただ助けたいと思い、安請け合いをしてしまった。
プギャーの護衛という自覚を持たず、ただその場の感情に流されていた。
- 40: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:53:37.62 ID:36DX56Uv0
( ω )「……が……う」
( ,,゚Д゚)「あ?」
違う。
安請け合いなんかじゃ、ない。
確かに、無責任な一言だった。
自分の仕事の事も考えず、感情に任せて約束をしてしまった。
だけど、ドクオの悲しげな瞳を見て、心に湧き上がった『助けたい』と思う気持ちは。
ドクオから笑顔を奪った、フードの男を許せないと思う気持ちは。
――――本物だ。
- 41: ◆ExcednhXC2 :2007/11/06(火) 23:55:37.43 ID:36DX56Uv0
ξ゚听)ξ「ブーン!?」
('A`)「ブーンさん!」
( ,,゚Д゚)「!!」
皆の視線が、ブーンに集まる。
床に手を着き、額を床につけ、頼み込む。
その土下座は、覚悟。
自分の我侭と責任に対する、覚悟の表れ。
(; ω )「お願いしますお! 僕達に時間を下さいお!!」
- 42: ◆ExcednhXC2 :2007/11/07(水) 00:01:12.45 ID:IFyCgN0R0
( ,,゚Д゚)「……プギャーさんよ、こいつはこう言ってるが、どうするんだゴラァ。
俺達の雇い主はあんただ。あんたの判断に任せる」
( ^Д^)「……」
プギャーはしばらく土下座するブーンを見つめる。
やがて、荷物の中から算盤を取り出し、何かの計算を始める。
(;^ω^)「……」
( ^Д^)「……宿代が……そうすると、利益は……」
静寂な室内に、ぱちぱちと数珠を弾く音だけが響く。
しばらくすると、計算が終わったのか、プギャーは算盤をしまった。
( ^Д^)「一週間です」
( ^ω^)「……え?」
(;^Д^)「正直、私も彼……ドクオ君を助けたいと思う気持ちはあります。
しかし、私も利益を投げ出してまで協力することは出来ません」
- 43: ◆ExcednhXC2 :2007/11/07(水) 00:05:22.69 ID:IFyCgN0R0
( ^Д^) 「一週間です。それまでの宿代は私が持ちましょう」
(;^ω^)「ほ、ほんとですかお!?」
( ^Д^) 「ただし、それ以上は待てませんよ。
一週間後、状況がどうであれ、VIPに戻りますからね」
ブーンは頭をあげ、顔に満面の笑みを浮かべた。
プギャーの手を握り、ぶんぶんと上下に振る。
(*^ω^)「ありがとうございますお! プギャーさん!」
( ^Д^)「私も出来る限り、協力させてもらいますよ。
フードの男に関する情報を、知り合いの商人にあたってみます」
- 45: ◆ExcednhXC2 :2007/11/07(水) 00:14:36.46 ID:IFyCgN0R0
( ^ω^)「よーし、それじゃあ早速聞き込みに行くお!
ツン、ドクオ、一緒に行こうお!」
ξ゚听)ξ「そうね、まずは情報を集めるのが先決ね。
ブーンにしては頭が回るじゃない」
('A`)「はい!」
三人は意気揚々と部屋を出ようとする。
( ,,゚Д゚)「待て」
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「何ですか? まだ止める理由が……」
( ,,゚Д゚)「違ぇよ。プギャーさんが良いっていったんなら、止める理由はねぇぞゴラァ。
それよりも、だ」
( ^ω^)「お?」
( ,,゚Д゚)「お前らに教えるべき事がある。ちょっと付き合え」
- 48: ◆ExcednhXC2 :2007/11/07(水) 00:21:31.46 ID:IFyCgN0R0
そう言うや否や、ギコは返事も聞かずに宿から出た。
ブーンとツンは、慌ててその後ろを追う。
(;^ω^)「ちょ、ちょっと待ってくださいお!
教えるべき事って何ですかお!?」
( ,,゚Д゚)「俺の見た限り、お前らはまだ超越力をうまく引き出せてねえ」
ξ゚听)ξ「超越力?」
聞きなれない単語に、疑問を浮かべるツン。
ギコは歩みを進めながら、答える。
( ,,゚Д゚)「いいから黙ってついてこいゴラァ! あのフード野郎に勝てるかどうかは知らんが、
今より強くなりたいのなら、いや、本当の強さを引き出したいならな」
( ^ω^)「強さを……引き出す?」
ブーンの疑問の声は、吹き抜けた風によって消される。
意味深な言葉に、ブーンはギコの意図を理解しきれないままその背中を追った。
超越力。
その言葉が、妙にブーンの頭から離れなかった。
第十一話 終わり
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