( ^ω^)ブーンは砂漠に生きるようです
- 6: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 19:35:34.00 ID:01layHF80
第十二話「新たなる力、超越力」
宿を出て、ブーン達はドクオのペンダントを取り返すべく、
それぞれ行動を始めた。
ドクオとプギャーは情報を集める為に、聞き込みへ。
一方、ギコに連れられて、ブーンとツンは町外れの砂漠にいた。
( ,,゚Д゚)「ここら辺でいいだろう」
(;^ω^)「あのー、ギコさん。一体何を始めるつもりなんですかお?」
未だに、町外れへと連れてこられた理由がわからず、当惑するブーン。
ギコはさも当然といった具合で、答えた。
( ,,゚Д゚)「あん? 特訓に決まってんだろゴラァ!」
ξ゚听)ξ「特訓?」
いまいち状況が掴めてない二人を他所に、ギコは言葉を続ける。
( ,,゚Д゚)「お前ら、超越力って言葉知ってるか?」
- 15: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 19:39:40.47 ID:01layHF80
( ^ω^)「超越力? ツン、知ってるかお?」
ξ゚听)ξ「ううん、聞いたことない」
二人は首をかしげる。
その様子を見て、ふんと鼻を鳴らし、ギコは説明を始めた。
( ,,゚Д゚)「お前らはナチュラリスト……つまり、一般人とは違う能力者だ。
それはもう知ってるな?」
ブーンとツンは目を合わせ、うんうんと首を縦に振った。
( ,,゚Д゚)「エクシードを唱えることにより、俺たちナチュラリストは特殊な能力を発動することが出来る。
一つは身体強化。そして、もう一つは特有の能力。小僧、お前なら風を身に纏う能力がそれに当たるな」
( ^ω^)「おっお」
ブーンは、話を理解しているのか相槌を打った。
( ,,゚Д゚)「エクシードによって引き起こされる能力の効果量の事を、超越力と一般的に呼ぶんだゴラァ。
超越力が強ければ強いほど。身体強化も強くなり、特有の能力もその威力と規模を増加することができるんだゴラァ」
- 16: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 19:41:47.23 ID:01layHF80
( ^ω^)ξ゚听)ξ「へぇー……」
ブーンとツンは感心したように、息を漏らした。
早口で説明を終えたギコは、呼吸を整え、結論を口にする。
( ,,゚Д゚)「俺の見た所、お前らはまだ超越力を半分も出し切れてねえ。
そんな程度じゃ、あのフード野郎には到底勝てんだろう」
(;^ω^)「あう……」
はっきりと、そう告げるギコ。
その判断は強ち間違ってはいないのだろう。
昨日の戦闘の際、フードの男はまるで赤子の手を捻るかのように
ブーン達を倒して見せたのだ。
実力の差は歴然だった。
それが、はっきりとわかっていることが、余計に悔しかった。
- 19: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 19:43:43.38 ID:01layHF80
( ^ω^)「ギコさん。どうすれば、その超越力っていうのをもっと引き出せるんだお?」
疑問を口にする。
ギコはそれを待っていたかのように答えた。
( ,,゚Д゚)「感情が高ぶったり、強烈な刺激でリミッターを外す、という手もあるが、
一番確実なのは、エクシードを唱える時に集中し、想像する事だ」
ξ゚听)ξ「……? 抽象的過ぎてよくわからないんだけど」
( ,,゚Д゚)「あぁ、つまりだな……えっと、難しい事はわからん!
とにかく、エクシードを唱える時に、頭の中で光の球が弾ける感じを想像しろ!」
答えに詰まったのか、ギコは語尾を荒げてそう言い放った。
- 21: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 19:47:08.43 ID:01layHF80
(;^ω^)「うー……よくわかんなけど、何となく把握したお」
( ,,゚Д゚)「うし、じゃあ実践だ。最初は目を瞑った方がやりやすいかもしれん。
んで、後は俺が言った通りだ。やればわかる。わからなかったら失敗ってことだゴラァ」
腕組をし、早口で二人を促すギコ。
ブーンとツンは、疑問を抱きながらも言われたとおりに目を瞑り、集中した。
( −ω―)(光の球……)
ブーンは目を瞑り、意識を集中した。
頭の中を、意識が巡る。
真っ暗な中に、光の球など存在していない。
耳元を、風の音が通り過ぎる。
じりじりと照りつける太陽が、ブーンの体温を上昇させ、集中力を奪っていく。
- 24: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 19:48:57.59 ID:01layHF80
(;−ω−)(光の球なんて見つからないお……)
頭の中は依然真っ暗で、何も存在していない。
隣にいるツンも、未だにエクシードを唱えられていない。
恐らく、ツンも同じような状況なのだろう。
想像の中で、ブーンは暗闇を掻き分けるように手探りで進む。
そのまま、何分が経っただろうか。
限界だと思い、目を開けようとした時だった。
( ^ω^)(……お?)
太陽の光を浴び、うだるように熱かった体が急激に冷め始めた。
- 28: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 19:51:07.40 ID:01layHF80
(;^ω^)(なんだお……この感覚)
今までに無い感覚に、ブーンは戸惑った。
水中にいるような浮遊感。
胸の辺りに感じる、鼓動。
辺りの雑音が、消える。
唯一聞こえてくるのは、恐らく心臓の音であろう、鼓動。
(;^ω^)(これは……!)
- 30: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 19:54:17.82 ID:01layHF80
目の前に、突如として小さな光の球が浮かび上がってきた。
( ^ω^)(――――ッ!)
光輝く球体は、ふわふわと暗闇に浮かんでいる。
そして、意思を持っているかのように、ふらふらと揺らめいていた。
『本当に、強くなりたいのか……』
( ^ω^)(!!)
球体から声が聞こえた。
その声は、酷く低い声であったが――――紛れも無い、ブーン自身の声だった。
- 36: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 19:57:15.16 ID:01layHF80
『何が故に、力を求める。力の先に何を望む』
( ^ω^)(僕は……)
今、必要としている力。
それは、誰の為だ? 自分の為か?
意識の中で、自問自答を繰り返すブーン。
やがて、浮かんでくるのは復讐という二文字と、ドクオの悲しい瞳。
( ^ω^)(僕は……)
自分の目的の為に、強くなりたいのか。
それも、少なからずあるだろう。
しかし、今、力を欲している理由は。
今、力の先に望むものは。
- 45: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 20:02:03.94 ID:01layHF80
( ^ω^)(ドクオの笑顔を……取り返したい!)
故に。
強さの壁を乗り越えなければならない。
ブーンは強く欲した。
己の中に潜む力を。
壁を乗り越える為の、力を。
『Bring out a latent faculty.』
光の球が、ブーンの体へと吸い込まれていく。
- 48: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 20:04:00.32 ID:01layHF80
(#^ω^)(これを――――!)
それを、この手で掴み取る。
瞬間、光の球が弾け、暗闇を消し去るように光を放つ。
体の底から、力が溢れてくる。
胸の辺りにある熱い何かが、その鼓動を急速に速めた。
今なら、言える。
エクシード
――――限られた境界線を打ち破る、言葉をッ!!
- 53: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 20:05:34.87 ID:01layHF80
ξ−凵|)ξ(……!)
ツンもまた、ブーンと同じ感覚を味わっていた。
頭の中に浮かぶのは、光を放つ弓。
ξ゚听)ξ(これは……何?)
その弓に吸い寄せられるように、手を伸ばした。
瞬間、ツンの頭の中に光が溢れる。
- 59: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 20:08:01.71 ID:01layHF80
ξ )ξ(これは、希望……?)
その光は強大な力を持ち、しかし暖かいやさしさに包まれている。
それは、護る為の力。
希望と言う名の矢を放つ、聖なる弓。
体の底から、希望が溢れてくる。
胸の辺りから湧いてくる暖かい何かが、ツンの体を包みこんだ。
今なら、言える。
エクシード
――――大切な人を護る為の言葉をッ!!
- 64: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 20:11:19.32 ID:01layHF80
( ^ω^)ξ゚听)ξ『『エクシ――――ドッ!』』
二人の体から、光があふれ出した。
その光の量は、以前の何倍もの輝きを放つ。
( ,,゚Д゚)「うおっ!」
ギコは思わず目を瞑った。
視界が光で遮られ、押し寄せる波動が砂を散らす。
光が収まり、ギコはそっと目を開けた。
そこに立っていたのは、さらなる超越力を引き出した、二人のナチュラリスト。
- 69: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 20:12:38.16 ID:01layHF80
( ^ω^)「すごいお。体がとっても軽くて……風が、僕の手足みたいな感じだお」
そこにいたのは、風のオーラを纏ったブーンだった。
目に見えるほどの力を持つ、白き風をその身に纏っている。
( ,,゚Д゚)「どうやら、成功したみたいだな」
そう呟くと、ブーンは自分の状況を改めて認識し、満面の笑みを浮かべた。
(*^ω^)「すごいお! ギコさん、見てくださいお! 凄く体が軽いんだお!」
左右に飛び跳ねてみせるブーン。
その動きは、残像を生み出すほどの速さだった。
- 73: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 20:13:57.69 ID:01layHF80
ξ;゚听)ξ「ちょ、ブーン! 見て!」
( ^ω^)「おっお。ツンもうまくいったかお?」
ブーンがご機嫌な様子で、ツンの方へ視線をやった。
そして、ツンが持っているそれに気付く。
(;^ω^)「つ、ツン。その弓矢、なんだお!?」
ξ゚听)ξ「わかんないよ! けど、凄く懐かしい感じがする……」
ツンの手にあるそれは、小柄な銀色の弓矢。
太陽の光を反射し、神々しく輝いている。
- 76: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 20:15:05.84 ID:01layHF80
( ,,゚Д゚)「ほう……。ツンは創造系だったのかゴラァ」
ξ゚听)ξ「創造系?」
聞きなれない単語に、ツンが疑問の声をあげる。
( ,,゚Д゚)「俺や小僧のように、自然にある物を操るのは自然系と呼ばれている。
そして、ツンみてぇに超越力で何かを創造するのを、創造系というんだゴラァ」
(;^ω^)「おぉ、何かよくわかんないけど、凄いおツン!」
理解はしていないのだろうが、雰囲気だけ把握し感心するブーン。
ツンは弓矢を見つめ、ふと思った事を口にした。
- 85: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 20:17:14.60 ID:01layHF80
ξ゚听)ξ「そういえば、ギコさん」
( ,,゚Д゚)「あん?」
ξ;゚听)ξ「何でそんなに、エクシードの事について詳しいんですか?
なんか、キャラが違うような……」
ギコは眉をぴく、と動かし、
( ,,゚Д゚)「おいコラ、お前俺のことどんな奴だと思ってたんだ?
まさか頭空っぽにして夢ばっか詰め込んだアホだと思ってたんじゃねえだろうな?」
ξ;゚听)ξ「あ、えーっと。うん、その、別に……」
ツンの思っている事を、見事に当てて見せた。
図星をつかれたツンは、言葉を詰まらせる。
- 87: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 20:18:51.06 ID:01layHF80
( ,,゚Д゚)「……まぁいい。何で俺がこんな事知ってるかって話だったな」
ギコはふー、と息を吐き、口を開く。
その雰囲気に、二人はギコの顔をじっと見つめる。
( ,,゚Д゚)「俺ぁ、樹木の国ってとこ出身でな。
その国に生まれたナチュラリストは、軍に入る事が掟だったんだ」
ξ゚听)ξ「樹木の国って……」
ツンにとって、それは聞いた事のある国名だった。
記憶を探り、その言葉を聞いた場面を思い出す。
- 94: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 20:24:04.05 ID:01layHF80
・
・
(´<_`;)「大樹の国とやらで作られた名刀だ。
そんじょそこらの木刀とは強度が違う」
ξ゚听)ξ「それも盗んだ物って訳ね。呆れるわ。
それを作った人がどんなに悲しんでるか、分からないの?」
(´<_` )「子供が……知った風な口を聞くな!」
・
・
ξ゚听)ξ「思い出した。弟者の持ってる木刀が作られた国ね」
( ,,゚Д゚)「ああ、あの木刀は元々俺が持ってたのを、弟者にあげたモンだからな」
それを聞き、ツンは納得したように頷いた。
弟者があの木刀を大切にしている理由。
それは、恐らくギコから譲り受けた物だからだろう。
- 98: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 20:25:44.08 ID:01layHF80
( ,,゚Д゚)「こういう知識は、軍にいた時にそこで学んだって訳よ」
意外な事実に、ブーンは驚いた様子で息を吐いた。
(;^ω^)「意外だお……ギコさんが元軍人だったなんて」
( ,,゚Д゚)「まぁ、堅苦しい規則とかに嫌気がさして、逃げ出したんだけどな。
朝五時起きだぜ? ったく、束縛と規律の世界だったぞゴラァ」
(;^ω^)「あー、それで盗賊団に?」
( ,,゚Д゚)「おう! 職が無かければ金も無い。という訳で、金持ちそうな商人から食料を恵んでもらったまでだ。
多少強引に。そしたら盗賊団って呼ばれてた」
ξ;゚听)ξ「どちらかというと、強盗団ね……」
- 102: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 20:26:57.09 ID:01layHF80
自慢気に話すギコに呆れる二人。
ギコは「とにかく」と仕切りなおし、
( ,,゚Д゚)「これでお前らは超越力をある程度引き出せるようになった。
後は、扱い方を学べばあの野郎とも対等に戦えるだろう。
……という訳で、今からその能力を扱う特訓を始める。覚悟はいいか?」
脅すように、威圧的な言葉をかけるギコ。
二人は負けじと、大きな声で返事をした。
( ^ω^)bξ゚听)ξb「オッケー!」
( ,,゚Д゚)「いい返事だゴラァ!!」
- 105: ◆ExcednhXC2 :2007/11/08(木) 20:29:15.15 ID:01layHF80
( ^ω^)「おっおっお」
( ,,゚Д゚)「何だ、へらへらしやがって」
( ^ω^)「何だかんだで、ギコさんも協力してくれてるお」
( ,,゚Д゚)「ば、馬鹿やろう。何で俺が、あんな見ず知らずのガキの為に……!
俺はただ、さっさとこの件を終わらせてバリバリ稼ぎたいだけだゴラァ!」
ぷい、とそっぽを向くギコ。
見た目どおり、隠し事が苦手なんだな、なんて思いながらブーンは笑った。
( ,,゚Д゚)「……ゴホン。よし、まずは自分の能力を理解する為に組み手だ!
面倒くせぇから、お前らいっぺんにかかってこい!」
( ^ω^)ξ゚听)ξ「はい!」
新たな能力に目覚めた二人のナチュラリスト。
果たして、彼らは悲しみに暮れる少年の笑顔を取り返す事が出来るのか?
第十二話 終しまい
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