( ^ω^)ブーンは砂漠に生きるようです

3: ◆ExcednhXC2 :2007/11/10(土) 23:51:42.53 ID:1zxrn5Be0

第十三話「過去」


特訓開始から、三日が経った。
あれから、ブーンとツンは新たな力を使いこなすべく、ギコとの特訓を続けていた。

午前は特訓。午後は聞き込み。夕方は再び特訓。夜間は酒場や裏通りで聞き込み
そんな具合で、ブーン達の一日の予定はみっちりと詰め込まれている。

一週間しか無いのだ。休んでいる暇など、無かった。


(;^ω^)「ただいま戻りましたおー……」

宿に戻ってくるなり、盛大なため息をつくブーン。

('A`)「お帰りなさい、ブーンさん、ツンさん」

ξ;゚听)ξ「疲れたぁ……。もう一歩も歩けなーい……」

空ろな目をしながら、ぶつぶつと呟くツン。
そのままふらふらとした足取りでベットに向かい、勢い良く倒れこむ。



4: ◆ExcednhXC2 :2007/11/10(土) 23:53:17.47 ID:1zxrn5Be0

(;'A`)「大丈夫ですか?」

ξ゚听)ξv「だいじょうぶだよー。ぶいっ」

(;'A`)「なるほど。あんまり大丈夫じゃないみたいですね」


明らかに作り笑顔を浮かべながら、ピースサインを見せるツン。
そのまま目を閉じるツン。そして、すぐ穏やかな寝息を立てて眠りに入ってしまった。


( ,,゚Д゚)「おーおー、起きてる時とは違って、眠ってる顔は可愛らしいもんだなゴラァ」

(;^ω^)「ギコさん、あなたは疲れってものを知らないのかお?」

( ,,゚Д゚)「鍛え方が違うんだよ。鍛え方が。
    お前らはまだ超越力を引き出す事に慣れてねえから、しばらくはキツイだろうがな」



5: ◆ExcednhXC2 :2007/11/10(土) 23:54:45.26 ID:1zxrn5Be0

いつも通りの調子で、溌剌と話しながら茶を飲むギコ。
特訓の際もこんな調子で、「暑ければ暑いほど燃える」などと根性論を唱え始める始末だ。

おまけに攻撃は容赦が無い。
まさに、その様は鬼コーチそのもの。


(;^ω^)「慣れてないのはともかく、あの訓練量は流石に堪えますお」

( ,,゚Д゚)「あん?」

(;^ω^)「あ、いや……」


口が滑った、とブーンは後悔するも時既に遅し。
ギコの耳は、その滑り落ちた呟きを逃さない。



7: ◆ExcednhXC2 :2007/11/10(土) 23:56:26.46 ID:1zxrn5Be0

( ,,゚Д゚)「今、弱音吐いたな? 弱音だな? 弱音なんだな?」

(;^ω^)「い、いえ。違……」

( ,,゚Д゚)「ようし! まだまだ根性が足りねえみたいだな!」


ギコはバン、とテーブルを叩き、勢いよく立ち上がる。
そのまま有無を言わせずブーンの腕を掴むと、外へと引っ張っていく。


( ,,゚Д゚)「特別補修してやる、ついて来い! ドクオ、留守番とツンの世話よろしくな!
     プギャーさんが帰ってきたら遅くなると言っておけゴラァ!!」

( ;ω;)「いやー! 今のは冗談、冗談なんですおー!」


ずるずると引きずられていくブーン。
その悲痛な光景を見ながら、ドクオはただ同情の目を向けながら、見送ることしか出来なかった。


(;'A`)「ファイトです。ブーンさん……」



8: ◆ExcednhXC2 :2007/11/10(土) 23:58:15.64 ID:1zxrn5Be0

                ※


夜空に月が浮かぶ下。
昼間の干乾びるような暑さから一転、夜の砂漠には冷たい風が吹いていた。

服を着重ね、夜の砂漠で対立するのはブーンとギコだ。


( ,,゚Д゚)「さて、一丁もんでやるとするか! いいか、てめぇ自身の速さに置いてかれるなよ!」

( ^ω^)「はいですお!」


ブーンは構えると、静かに瞑想をはじめる。
体内にある超越力を引き出す為の集中。

最初こそ、発動するのに時間がかかったものの、特訓のお陰でだいぶコツを掴んだようだ。



9: ◆ExcednhXC2 :2007/11/10(土) 23:59:34.25 ID:1zxrn5Be0

( ^ω^)『エクシ――――ドッ!』


言葉と同時、風がブーンの体に纏う。
足元から頭上へ吹き上げるように纏われた風は、オーラと化している。

具現化された風。
そこに含まれる超越力は、以前とは比にならにほど増加している。


( ,,゚Д゚)「発動はだいぶ早くなったな。では、俺も発動するとしようか」


ギコは両手を胸の前で合わせる。
腰を落とし、大きく息を吸い、


( ,,゚Д゚)「エクシ――――ド!!!」


唱えると同時、大地が震え大気が揺れる。
ギコの体に纏わり付くのは、岩の鎧。



10: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:00:15.63 ID:E9iJq3dM0

( ^ω^)「それじゃ、いきますお!!」

( ,,゚Д゚)「来いっ!!」


直後。
地を蹴る音。否――大気を蹴る音が砂漠に響き渡る。

( ^ω^)「おっ!!」

瞬間移動とも思えるほどの高速移動。
神速で跳躍したブーンは、右拳を真っ直ぐに打ち出す。

( ,,゚Д゚)「右ッ!!!」

ギコは瞬時に判断。
左腕に備え付けられた岩手甲で防いだ。

ブーンはさらに追撃をしかける。
右方向へと跳躍し、踵落としでギコの頭上を狙った。



11: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:02:23.37 ID:E9iJq3dM0

( ,,゚Д゚)「そんな大振りの攻撃が当たるかっ!!」

上段受けで踵落としを受けるギコ。
鈍い音が鳴、ブーンの足が止まる。

(;^ω^)「おっ!?」

バランスを崩し、隙だらけになったブーンに岩拳が迫る。
だが、ブーンはふらつく足を踏ん張り、真正面から迫る脅威を睨みつけ


(#^ω^)「今だおっ!!! うああああああぁぁぁ――――!!!」


( ,,゚Д゚)「!!!」


ギコの拳に、ブーンの拳がぶち当たる。
威力ならば岩拳のが上のはずだった。だが――――



13: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:03:35.87 ID:E9iJq3dM0

蒙風。
そう呼ぶに値するほどの風の塊が、ブーンの拳から放たれる。

螺旋状に回転する白き風圧は砂を撒き荒らし、大気に消えた。


( ,,゚Д゚)「な、なんだぁ今のは……!」

信じられない面持ちでそれを見つめるギコ。
あんな物に当たっていたら間違いなく吹き飛ばされていただろう。

当惑するギコを他所に、
当の本人はにやにやと笑みを浮かべながら、

(*^ω^)「やっと成功したお!」

などと喜んでいる。
訳が分からないギコは、エクシード状態を解除し冷や汗をぬぐった。



15: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:05:14.01 ID:E9iJq3dM0

( ^ω^)「あれ? 終わりですかお?」

( ,,゚Д゚)「あ、ああ。今日はこのくらいで勘弁してやるぞゴラァ」

( ^ω^)「おっおw ありがとうございましたお!!」


礼を言い、同じくエクシード状態を解除するブーンを見て、ギコは動揺を隠せずにいた。

日に日にブーンの力は上がっている。
元々持ちあわせている超越力が高かったのか、引き出た能力は予想を遥かに超えている。

強大な力は扱い難い。能力を生かすも殺すも使い手次第だ。
だが、ブーンはどんどん自分の能力を使いこなし始めている。

それに、まだまだ超越力を秘めている可能性もある。

底が見えない。
ギコは改めて、ブーンの強さに驚いていた。

( ,,゚Д゚)(下手したら俺より強いかもしれんな……)



16: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:07:27.78 ID:E9iJq3dM0

( ^ω^)「どうしたんですかお?」

( ,,゚Д゚)「いや、何でもねぇ……」


そう言い、手ごろな岩に腰掛けるギコ。
一息つき、大きく息を吐いた。

ブーンもその隣に座り、ふと空を見上げる。
今日も綺麗な月が砂漠を照らしていた。


( ,,゚Д゚)「小僧」

( ^ω^)「お?」

( ,,゚Д゚)「……お前、強くなるのには何が必要だと思う?」

( ^ω^)「強くなるのに必要なもの、ですかお?」

( ,,゚Д゚)「そうだ」



18: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:09:33.24 ID:E9iJq3dM0

唐突な質問に、ブーンは腕を組んで考える。
単純だが、難しい疑問だった。

強くなる為に必要な物……。
力、だろうか。ならば、力を得る為に必要な物は何だろう?

疑問に疑問を重ねるブーン。
やがて、一つの答えを出す。


( ^ω^)「目的……だと思いますお」

ブーンの答えは、目的。
それはブーン自身が強さを求める理由でもあった。



20: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:11:28.52 ID:E9iJq3dM0

ギコはしばし沈黙し、頷く。

( ,,゚Д゚)「そうだな。目的、信念、そういった類の物だろう。
     強い意志がなきゃ、強さは得られねぇ」

( ^ω^)「……」

( ,,゚Д゚)「正直に言う、お前は強い。力や能力じゃない。
     強くなりたいという確固とした意志を持っているからだ。
     ……よかったら教えてくれ。お前が持っている、目的ってやつを」


ギコは真面目な顔で、ブーンに問いた。
二人の視線が交わる。ギコの瞳には、真っ直ぐな意思が込められていた。

無限とも思える沈黙の時間が流れ、
やがて、ぽつりぽつりとブーンは語り始める。



22: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:13:04.03 ID:E9iJq3dM0

( ^ω^)「僕は……化け物を探してるんですお」


ブーンは全てを話した。
旅に出た本当の目的。

それは、かつて全てを奪い去った赤い化け物への復讐の為。


( ^ω^)「僕は奴を見つけ出して――――殺すお。
      僕が強さを求める理由は、それだけですお」

( ,,゚Д゚)「……なるほどな」


ギコは静かに頷く。
冷たい風が、二人の間を吹きぬけた。



23: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:15:24.40 ID:E9iJq3dM0

( ^ω^)「誰が何と言おうと、この事を諦めるつもりはないお。
      他の人からしたら、復讐なんて馬鹿らしいと思うだろうけど……」

( ,,゚Д゚)「別に馬鹿にゃしねぇよ。いや、出来ねえ」

ギコは間髪入れずに答える。

( ,,゚Д゚)「それがてめぇの選んだ道なんだろ?
    だったら、他人がそれに対して文句を言う筋合いはねえ」

( ^ω^)「お……」

( ,,゚Д゚)「復讐の先にあるのは光じゃなく闇かも知れねえ。
    だがよ、自分を信じ抜け。後悔だけは……するな。俺みたいにな」

( ^ω^)「……」



24: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:17:18.22 ID:E9iJq3dM0

ギコはそう言うと、立ち上がり背を向ける。


( ,,゚Д゚)「お前は立派に、過去に立ち向かってる。凄ぇ奴だよ。
    過去から逃げてる俺とは……違う」


いつもと違い、弱気な声がギコの口から放たれる。
ギコは遠くを見つめながら、何かを思い悲しげな表情を見せた。


( ^ω^)「ギコさんは……強さを求める理由が、あるんですかお?」

ふと浮かんだ疑問。
対し、ギコは背を向けたまま返答する。



25: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:18:15.40 ID:E9iJq3dM0
( ,,゚Д゚)「……ああ。そうだな、お前だけに喋らせるのは不公平か」

( ^ω^)「よければ、聞かせてもらえませんかお?」

ギコは「ああ」と呟く。
そして、ゆっくりと自身の過去を紐解き始めた。


( ,,゚Д゚)「俺ぁ樹木の国の軍出身だって言った事は、覚えてるか?」

( ^ω^)「はいですお」

( ,,゚Д゚)「……俺は、子供の頃、『弱虫』だったんだ」


              ・
              ・
              ・



26: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:19:04.89 ID:E9iJq3dM0
              ・
              ・
              ・

ナチュラリストは、全員軍へ入る。
それが、その国の掟だった。

俺も例外でなく、強制的に軍へと入れられた。


( ,,゚Д゚)「嫌だよ……怖いよぉ」

( ∵)「あ? それじゃあ訓練にならねーだろうが!!」

( ,,゚Д゚)「痛いっ! 無理だよ、戦うなんて……」

( ∵)「貴様、それでも誇り高き樹木の軍人か!!」

「くすくす……またギコの奴だよ」
「へたれのギコ……ぷっ」

俺は戦う事が怖かった。
そういや、当時は『へたれのギコ』なんてあだ名で呼ばれてたな。



29: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:21:41.05 ID:E9iJq3dM0

( ∵)「もういい! まったく……兄貴とは偉い違いだな。
    才能を全て兄貴に持っていかれたか。この役立たずが!」

( ,,゚Д゚)「……」


俺の兄貴。
――――フサギコは、俺とは違って優秀な兵だった。


ミ,,゚Д゚彡「はっ!!」

「おお、すげぇ……」
「やっぱフサギコは別格だな」


( ,,゚Д゚)「……」

ミ,,゚Д゚彡「なんだギコ。きてたのか。
      お前、今日も戦闘訓練やらなかったんだって?」


俺は、兄貴の事が好きじゃなかった。
その見下したような口調が気に食わなかったんだ。



32: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:25:17.41 ID:E9iJq3dM0

ミ,,゚Д゚彡「ま、俺の名を汚すような事はするなよ。ハハハ!」

( ,,゚Д゚)「……」


兄貴は、新兵の中でも剣の腕は最強だった。
身体強化の能力も、兄貴だけ頭一つ抜けていた。

俺みたいな落ちこぼれとは、天と地の差。
扱いも地位も、全てが真逆。

事あるごとに兄貴と比較され、俺はそんな状況に心底嫌気がさしていた。



35: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:29:10.30 ID:E9iJq3dM0

( ,,゚Д゚)「うう……今日もご飯抜きだよ……。腹減った……」

(-_-)「ギコ、これ食べる?」

( ,,゚Д゚)「……! いいの?」

(-_-)「うん。僕、小食だから」

( ,,゚Д゚)「ありがとう! ハムッ!はふはふはむっ!」


そんな俺の唯一の救いは、同部屋にいるヒッキーだった。
ヒッキーも成績は芳しくなく、戦いが好きではなかった。

似た物同士、俺達はすぐ仲良くなった。

戦闘訓練でミスをして、一緒に罰を受けたり。
どちらかが飯抜きの時は、半分こしたり……。

俺にとって、無二の親友だった。



36: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:31:26.37 ID:E9iJq3dM0

そんな日々を過ごす中、異変は起きる。
野外訓練を受けている時。突如としてサンドワームの群れが俺達を襲ったんだ。


( ∵)「新兵は町まで退避しろ! 走れ!」


恐怖に怯え、悲鳴をあげながら逃げ惑う幼い新兵達。
俺も必死こいて、後ろから追ってくる化け物から逃げた。


(-_-)「あっ!!」

( ,,゚Д゚)「ヒッキー!!」


ヒッキーの足が、サンドワームの触手につかまれた。
俺は立ち止まり、助けに入ろうとするが

( ∵)「よせ! あいつは助からん! いいからさっさと逃げろ!!」

( ,,゚Д゚)「そんな!!」


(;-_-)「うわああああ!!!」



39: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:35:52.69 ID:E9iJq3dM0

その巨大な口が、ヒッキーを食らおうとする。

俺は、恐怖した。

親友の命が、目の前で失われようとしている。
ヒッキーの悲痛な声が頭に響いた。

助けなきゃ、助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ――――!


( ,,゚Д゚)「うわあああああ!!! エクシ――――ド!!!」


その瞬間。
俺は、覚醒した。


強化された足で地を駆け、岩に包まれた拳をサンドワームにぶち込んだ。



41: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:37:29.72 ID:E9iJq3dM0

それから、意識が途絶えて……

気付いた時には、サンドワームの死骸が転がっていた。
ヒッキーは助かり、呆然とする俺に泣きながら礼を言った。

(;_;)「ギコぉぉ!!」

( ,,゚Д゚)「ヒッキー……無事でよかった……!」

「すげぇ……あいつ、能力を開放しやがった」
「ギコ!!すげえじゃん!」
「やっべえ、ギコつええええ!!!」

( ,,゚Д゚)「……」


俺は、新兵一の弱者から、新兵初の能力解放者になった。

周りの扱いも変わり、俺の名は軍内に広がった。
廊下を歩けば噂され、ちやほやされ、上からも期待され……。

当然、それまで上の立場だった兄貴は、完全に立場が逆転。



43: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:40:17.50 ID:E9iJq3dM0

ミ,,゚Д゚彡「……やるじゃないか。まさか、お前がそんな強さを持っていたとはな」

( ,,゚Д゚)「お、おう。ありがとう」


見下すような視線もなくなり、俺は嬉しかった。
認めてくれた。ようやく、俺は認められたんだ。


――――そう、思っていたよ。あの夜までは



44: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:45:34.92 ID:E9iJq3dM0

( ,,゚Д゚)「……何だよ、これは」


真夜中。
物音で目覚めた俺を待っていたのは、真っ赤な血の海。

( ,,゚Д゚)「なんなんだよ、これ」

俺は現実味を帯びないその光景に、呆然と立ち尽くしていた。
そして、その血の海の中心に転がっているのは――――


(-_-)


( ,,゚Д゚)「うあああああああああ!!!!!」


八つ裂きにされた、ヒッキーだった。
確認するまでも無い、彼は死んでいた。



47: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:48:39.96 ID:E9iJq3dM0

俺は頭の中がめちゃくちゃになり、発狂しそうな自身を抑えるのに必死だった。
だけど、顔をあげたその先にいた、月明かりに照らされた人物は。


( ,,゚Д゚)「お前が……やったのかっ!!!」

( ,,゚Д゚)「どうしてだよ……何故ッ!!!」

その人影は。



ミ,,゚Д゚彡「ふン……」



( ,,゚Д゚)「兄貴ぃ――――!!!!!!」


剣を持った、実の兄だった。



48: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:49:23.98 ID:E9iJq3dM0

ミ,,゚Д゚彡「お前は、強くなりすぎた」

( ,,゚Д゚)「あぁっ!?」

何を言っているのか、わからない。
ただ一言、違うと言って欲しかった。
だが、兄貴から発せられた言葉は――――


ミ,,゚Д゚彡「この事態は、お前の狂乱という事で上に報告する。
      ほら、返すよ。お前の剣を」


投げ返されたのは、俺の……剣。
俺の剣で……ヒッキーを殺したと言うのか……!!



49: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:50:02.24 ID:E9iJq3dM0

ミ,,゚Д゚彡「最強は俺一人でいい。お前は……目障りなんだよ。
      最後の情けだ。ここから失せろ。上には殺害の後、脱走したと伝えといてやる」

その一言で、俺の中で何かが崩壊した。


( ,,゚Д゚)「ふざけるなああああああ!!!!!」

熱い。
体が、燃えるように、熱かった。

そして、それは言葉となり発動する。


( ,,゚Д゚)「エクシ――――ド!!!」

ミ,,゚Д゚彡「……」

( ,,゚Д゚)「あああああああああ!!!!」


俺は兄貴に突進し、上から覆いかぶさる。
剣を兄貴の喉に突きつけ、指――――



50: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:52:18.50 ID:E9iJq3dM0

ミ,,゚Д゚彡「お前に、俺が殺せるのか?」

( ,,゚Д゚)「!!!!!」

手が、止まった。

ミ,,゚Д゚彡「実の兄である俺を、お前は殺すのか? ギコ」

( ,,゚Д゚)「あ、あああああ……」

ミ,,゚Д゚彡「……」


見るな、そんな目で俺を見るな。
何が兄だ。こいつはヒッキーを殺したんだぞ……!
何故、動かないんだ俺の手は!!!何を躊躇して……!

ミ,,゚Д゚彡「ギコ」

俺は――――……!!!


ミ,,゚Д゚彡「お前は、弱い」



51: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:53:24.24 ID:E9iJq3dM0
              ・
              ・
              ・

( ,,゚Д゚)「そして、俺はその場から逃げ出したんだ。
     全部夢だと思いたかった。何もかも……起きたら、また元通りになってるって」

( ^ω^)「……お」


ブーンはただ、黙ってギコの言葉を聞く。
目の前に見える背中が、心なしかいつもより小さく見えた。


( ,,゚Д゚)「その後は、VIPに流れ着いて、流石兄弟と出会って……。
     そんな風に、俺は今まで過去から逃げてきたのさ」

ギコはブーンの方へ振り返り、自虐気味に笑う。

( ,,゚Д゚)「俺は……何も変わってねぇ。過去から逃げた今も、夢を見るんだ。
     死んだヒッキーが夢の中で、どうして助けてくれなかったのかって責めるんだ」
 
    
( ,,゚Д゚)「俺は何も変わってねえ……。過去から逃げ続けてる、へたれのギコだ」



53: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 00:58:41.19 ID:E9iJq3dM0

俯き、下を向くギコ。
肩を落としたその様は、あの荒くれのギコからは想像もつかなかった。

あの溢れるような自信は。
拳に込められた熱い想いは。

全て、過去の弱い自分から逃げる為の虚像だったのか?


( ^ω^)「……違うお」

ぽつりと呟く。

( ,,゚Д゚)「え……?」

( ^ω^)「ギコさんは、僕が戦ったギコさんは強かったお。
      真っ直ぐにぶつかってきたギコさんの拳には、確かに強さが宿ってましたお!」


あの時受けた拳には、確かな重みがあったのだ。

その重みは信念。確固とした意思――――……。
それらは決して、ごまかしの虚像などでは無かった。

拳を合わせたブーンだからこそ、わかっていた。



55: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 01:03:05.21 ID:E9iJq3dM0

(#^ω^)「ギコさんは強いですお! 僕が適わないくらい強いんだお!!
       ギコさんなら、過去なんて乗り越えられる……僕はそう信じてるお!!」

( ,,゚Д゚)「!!!」

ブーンは叫んだ。
その言葉は、ギコの心へと響く。

目の前にいる少年の瞳に映るのは、信頼。
弱音を吐いてもなお、信頼してくれている。

不意に、頭の中に流石兄弟の言葉が浮かんだ。


 ( ´_ゝ`)「親分は最強っすよ!! へへ、こんな強い人が親分なんて心強いなぁ」
 (´<_` )「俺はあんたの強さに惚れた……俺達を弟子にしてくれ!!」


そうだ。あいつらは、俺の事を強いと言ってくれた。
それなのに、俺は過去に拘って、弱音を吐いて……。

何をやっているんだ。俺は。
顔をあげ、いつのまにか流れていた涙を拭うギコ。



61: ◆ExcednhXC2 :2007/11/11(日) 01:09:48.75 ID:E9iJq3dM0

( ,,゚Д゚)「すまねぇ……俺としたが、弱音吐いちまったなぁ。
     へへ、情けねぇとこ見られちまったな」

鼻を啜り、そう呟くギコ。
対し、ブーンはいつもの笑顔を浮かべ


( ^ω^)b「おっお」

親指を立てて見せた。
ギコも同じように親指を立て、笑った。

( ,,゚Д゚)b「……ありがとうよ。ブーン」


夜の砂漠。二人は親指を立て合った。

言葉はいらない。
男同士だからこそ、伝わるものがある。

月下で、二人のナチュラリスト――――否、二人の男達の絆が、深く刻まれた。


第十三話 おしまい



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