( ^ω^)ブーンは砂漠に生きるようです

6: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 12:47:14.90 ID:dlt5NUz/0

第十五話「己の殻をぶち破れ」


アサヒ村から少し離れた酒場。
店は崩落し、重い衝撃音が四方八方で響いている。

戦っているのは、ジョルジュとギコ。
互いに能力を開放し、手加減無用の死合いを繰り広げていた。


( ゚∀゚)「シャァァァ――――!!!」

ジョルジュが天地蛇をギコ目掛けて伸ばす。
巨大化したギコの手甲、岩竜手甲の隙間を掻い潜り、喉元へ牙を走らせた。

( ,,゚Д゚)「ゴラァァァァッ!!!」

対し、ギコは跳躍。
空高くへ飛び上がり、天地蛇もそれを追う。



7: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 12:48:27.65 ID:dlt5NUz/0

     イワオウカリュウゲキダン
( ,,゚Д゚)「岩桜花竜撃弾!!!」

瞬間、岩竜手甲が砕け多数の岩礫と化す。
宙に浮くその礫は、ギコが手を対象へと向けることで攻撃を開始。

( ,,゚Д゚)「はぁっ!!!」

小さな岩礫は意思を持ったかの如く、襲い掛かる天地蛇へと降り注ぐ。

岩礫の雨。
局地的な嵐が、天地蛇を襲う。

( ゚∀゚)「チぃッ!!」

その無数ともいえる岩礫の嵐を掻い潜るのは不可能と判断するジョルジュ。
攻撃を受けながらも、素早くその場から天地蛇を退かせる。



8: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 12:49:46.00 ID:dlt5NUz/0

( ゚∀゚)「へっ。パワー馬鹿じゃないってことか。
     いいね、面白くなってきたじゃん!?」

( ,,゚Д゚)「クソが……!」


ギコの腕に再び光が灯る。
砕けちった岩竜手甲を、再度その腕に備える。

だが、その大きさは半分程度だ。

( ,,゚Д゚)(超越力を使いすぎたか……)

最初に天地蛇に噛み付かれた腕も、痛みが倍増している。
ギコの表情に、焦りが浮かび始めた。



10: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 12:52:42.62 ID:dlt5NUz/0

(;^ω^)「……」


対峙する二人を、ただ呆然と見つめるブーン。
今まで見たことも無いような、大きな力のぶつかり合いが
すぐ目の前で展開されている。

その合間に見え隠れするのは、特訓などでは味わう事の無い、死。
それが、この戦いではすぐ傍にある。

無意識の内にそれを感じ取り、ブーンの心は恐怖に支配されていた。

怖かった。
それは意思ではなく、本能がそう呼びかけているのだろう。

死にたくない、という生物の本能。

(;^ω^)「戦わなきゃ……けど……!!」

死ぬのは――――怖い。



13: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 12:57:28.68 ID:dlt5NUz/0

(  ω )(けど……今の僕じゃ……無理だお。勝てるわけないお)


その場に膝をつき、ブーンは目を瞑った。
現実から目をそむける事で恐怖から逃げる。

復讐だ何だと騒いでおいて、結局、自分は死の覚悟すら出来ていなかったのだと自覚する。

心底、自分が情けなかった。

口だけなら、なんとでもいえる。
しかし、体は正直だ。

エクシード状態になれないことが、何よりの証拠だった。



17: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 13:00:33.20 ID:dlt5NUz/0

( ,,゚Д゚)「小僧――――!!!!」

(  ω )「……お?」

そんな事を考えていると、誰かの叫び声が聞こえた。

ゆっくりと目を開けるブーン。
直後、目の前に広がった光景は。


( ,,゚Д゚)「こんの、馬鹿野郎がぁ――――!!!!」


(;^ω^)「がっ!!」


ギコの強烈な拳が、ブーンの頬を打ち抜いた。

勢い良く吹っ飛ばされ、頭の中が真っ白になるブーン。
思い切りぶん殴られ、口の中に血の味が広がる。



19: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 13:04:50.47 ID:dlt5NUz/0

( ,,゚Д゚)「何ビビってやがる! テメエ、タマついてんのかゴラァァァ!!!」

(;^ω^)「ぶっ、ぎ、ギコさ……」

ギコはブーンの胸倉を掴み、顔をギリギリまで近づけ叫んだ。

( ,,゚Д゚)「この後に及んで迷ってんじゃねえアホ!! お前の信念はそんなモンだったのか!?
     覚悟がなきゃ、信念なんて貫き通せねーだろーが!! 今更後に引けねーんだ、さっさと腹括れゴラァ!!!」

至近距離で叫ばれ、意識が一気に現実へと引き戻された。

(;^ω^)「あ……」

ξ#゚听)ξ「こんのヘタレ――――!!!」

(;^ω^)「うぎゃっ!」

ブーンが何か言おうとした時、
今度は、背中に衝撃が走った。

後ろを振り向くと、そこには腕から血を流しながら、憤怒の表情を浮かべるツン。



20: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 13:05:37.37 ID:dlt5NUz/0

ξ#゚听)ξ「ギコさんの言う通りよ! あんなに意気込んでたくせに、いざとなったら自分だけ逃げるの!?」

(;^ω^)「そ、それは」

ξ゚听)ξ「ブーンにとって自分の命が一番大切なら、それでも別に構わないわ。
     だけど、中途半端はやめて。退くなら退く! 前に出るなら、出る!」


そう叫ぶと、ツンは息を荒げながら、再び銀色の弓を創造する。
光の矢を引き絞り、ジョルジュに標準を合わせた。


(;゚∀゚)「おーい、なんだ? 仲間割れか? そういうのは後にしてくんねーかなー」

ξ゚听)ξ「人の心配より、自分の心配をした方がいいんじゃない!?」

( ゚∀゚)「お?」


瞬間、ツンの腕から矢が放たれる。
光を発しながら、一直線に飛ぶそれは、まさに光線。

対し、ジョルジュは余裕の笑みを浮かべる。



21: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 13:09:53.26 ID:dlt5NUz/0

( ゚∀゚)「へっ。そんなモン当たるかよ。何回やっても同じだっつーの」

確かに、その光の矢は速い。
だが、直線的なそれを避けるのは容易だった。

ジョルジュは体を軽くずらし、難なく回避。

ξ゚听)ξ「……今!」

( ゚∀゚)「んあ?」

光の矢がジョルジュの真横に位置した瞬間、ツンが指をぱちん、と鳴らす。


ξ゚听)ξ『聖なる矢よ。我の希望を光と成し、その力を、今、解き放て――――』


光の矢は、その場で動きを止める。
ツンは再び銀色の弓を構える。

しかし、矢は備えていない。

ツンは弦を引き、見えない矢を空目掛けて放つ――――。



22: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 13:15:56.13 ID:dlt5NUz/0

     クロスフィアアーティクル
ξ゚听)ξ『裁きの十字架――――!!』


瞬間、光がジョルジュの頭上に展開。
その輝きに、誰もが目を瞑る。

( ゚∀゚)「ぐっ!?」

直後、空に浮かぶ光が形を変える。

それは、ツンの作り出した光の矢。
しかし一つや二つではない。

無数の矢が、砂漠に振るスコールの如く天から降り注ぐ。

( ゚∀゚)「な、何っ!?」

ジョルジュはその位置から回避しようと試みるが、矢の雨はジョルジュを貫き、それを許さない。



26: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 13:25:39.69 ID:dlt5NUz/0

(  ∀ )「ウぐおおおおおおぉぉぉ!!!!!」

ジョルジュの悲鳴が鳴り響く。
矢の雨はそれでも収まらず、貫く。貫く貫く貫く――――。

ξ゚听)ξ「これで、終わり!!!」

ひときわ大きい衝撃音が響いた。
抉られた地面から、砂埃が激しく舞い上がる。


ξ゚听)ξ「ハァ……ハァ……」

( ^ω^)「ツン!!」

超越力を使い切ったのか、ツンはその場に倒れこんだ。
ブーンはすぐに駆け寄り、心配そうな顔つきでツンの背中を支える。

( ,,゚Д゚)「……やったか?」



28: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 13:31:26.70 ID:dlt5NUz/0

「クククク……今のは危なかったナァ……」


粉塵の中から、声がした。
今までのものとは違い、二つの声が混じったような、奇妙な声だ。

( ,,゚Д゚)「なっ……!!」

そこに立っていたのは。

( ゚∀゚)「まさか、この姿で戦う事になるとはな」

緑色の鱗を纏い、長い舌をだらりと垂らした、人間とは言い難い姿のジョルジュだった。
その姿は、言うならば蛇人間。蛇が人の形を成したら、恐らくこのような姿になるのだろう。



32: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 13:37:19.40 ID:dlt5NUz/0

( ゚∀゚)「てめえら、死んだな。俺の本当の姿を見て生き残った奴は一人としていねえ」

( ,,゚Д゚)「……それがテメェの本気って事か」

( ゚∀゚)「そういうこった。ここからが本番だぜ?
     そんな疲労した体で、どこまで持つのかな? ヒャハハハ!!!!」

( ,,゚Д゚)「……クソッタレが」


ギコは岩竜手甲を構える。
だが、その力も、もはや半分しか出せていない。

勝機は薄い。
だが、それにも関わらず、ギコはにやりと微笑んだ。

( ゚∀゚)「何笑ってやがる。絶望的すぎて、気が狂ったか?」

( ,,゚Д゚)「いや、その余裕の面があまりにも可笑しくてな。
     勝ちを確信したその瞬間が、一番危ないって知ってるか?」

( ゚∀゚)「……何?」



33: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 13:42:13.20 ID:dlt5NUz/0

ギコの視線が、ある人物へと向けられた。
そこには、さっきまでとは雰囲気がまるで違う男が一人、立っていた。


( ^ω^)「……ツン、ギコさん。ごめんだお。僕、ちょっとビビってたお」

( ,,゚Д゚)「バーカ。覚悟決めんのが遅いんだよ。元々てめえの喧嘩だろうが」


ブーンが一歩一歩、その足を前に踏み出す。
彼は視線をジョルジュへと向ける。その目に映るのは、覚悟の炎。


( ゚∀゚)「なんだ、餓鬼じゃねえか。こいつがテメェらの切り札だってのか?」

( ,,゚Д゚)「そうだ。気をつけたほうがいいぜ、こいつは俺よりも――――」



34: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 13:46:11.33 ID:dlt5NUz/0

ギコの言葉は、ブーンの叫びによってかき消される。

その叫びは、意思を持って初めて成す。
己の中にある力が鼓動する。

胸の奥にある熱い何かが、はじけた。
もう一度、信念を貫く為の。
大切な物の為に、超越の力を――――。


(#^ω^)『エクシ――――ド!!!』



39: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 13:53:17.51 ID:dlt5NUz/0

力の爆発が起こった。
発動の際に、衝撃波を発するほどの超越力。

溢れんばかりの発光の後、ブーンの体に風のオーラが纏われる。


( ゚∀゚)「ちっ!! 何だこりゃあ……!!」

( ^ω^)「ジョルジュ。たとえ神が許しても、僕はあんたを許さないお。
       罪の無い人を殺したり、色んな人から大切な物を奪ったあんたを」

( ゚∀゚)「許さない? はっ、ヒーロー気取りの餓鬼が……!
     いきがってんじゃねぇぇぇぇ!!!!」

ジョルジュが高速で移動する。
目で追うことが出来ないほどの速度だ。



40: ◆ExcednhXC2 :2007/11/18(日) 13:58:46.28 ID:dlt5NUz/0

( ゚∀゚)「!!!」

だが。
その神速から放たれた拳は、ブーンを捉える事は無かった。

否、捉えたと同時に、そこにいたブーンの姿は消えたのだ。

( ^ω^)「遅いお」

(;゚∀゚)「残像……だと?」

ジョルジュはすぐに振り返り、構えなおす。
長い舌をべろりと出し、不適に微笑んだ。

( ゚∀゚)「……面白れぇ。噛み殺してやるよ、餓鬼」


再び吹き始めた砂漠の風。
蛇と風……二つの能力が、今、激突する。


第十五話 おしまい



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