( ^ω^)ブーンは砂漠に生きるようです

3: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 17:10:28.54 ID:cxWwBgMY0

第十八話「―悲劇と過去のクレッシェンド―」


突如、バーボンハウスに現れた来訪者により、
兄者は重度の火傷を負わされた。

上半身が焼け、見るも無残な姿と化している。


(´<_`;)「兄者、しっかりしろ! 今、プギャーさんが薬を持ってくるから!」

(  _ゝ )「……」


呼吸はしているものの、弟者の呼びかけに対する反応は皆無だった。
横に寝かされた兄者は、虚ろな目で弟者を見つめる。



4: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 17:14:08.14 ID:cxWwBgMY0

(;^Д^) 「弟者さん! これを!」

(´<_`;)「はい!」


弟者は薬を受け取り、兄者に塗りつける。
兄者から、苦痛の声が上がった。
しかし、それすらも弱弱しく、ただうめくような声が兄者の口から漏れた。

(´<_` )「兄者……!」



6: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 17:17:54.37 ID:cxWwBgMY0

           ※


ミ,,゚Д゚彡「お前らが、封魔か? いや、それにしては、超越力が弱すぎるな」

(;^ω^)「封魔……? 一体何のことだお!?」

ミ,,゚Д゚彡「貴様が知る必要は無い。我ら月光狂団に入るというなら、話は別だがな」


月光狂団。
その言葉を聞いて、ブーンはジョルジュを思い出す。

確かジョルジュも、そんな組織名を出していた。


ξ゚听)ξ「月光狂団って……ジョルジュが言ってた……?」

ミ,,゚Д゚彡「いずれ、ナチュラリストによる統一国家の旗揚げをする組織だ。覚えておけ」



8: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 17:22:43.59 ID:cxWwBgMY0

( ,,゚Д゚)「んなことぁどうだっていい……!!
     今、てめえは自分の心配をすべきなんじゃねぇのかゴラァァァァ!!!」

ギコが、一歩前に出た。
瞬間、ギコは足に力をいれ、地を蹴る――――。


ギコの岩拳が、フサギコの大剣とぶつかり合う。


ミ,,゚Д゚彡「吼えるな、雑魚が」

( ,,゚Д゚)「破ッ!!!」

拳を引き、さらに連撃をぶち込むギコ。
回転し、突きと蹴りを織り交ぜた流れるような乱舞。

流れるような動き、しかし、一撃の打撃音からして、その打撃は重い。

まるで、その打撃は……例えるならば、鉄を粉砕する鉄槌。



10: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 17:26:26.89 ID:cxWwBgMY0

しかし、フサギコはそれを、まるでギコの手の内が読めているかの如く、全て防御。

ミ,,゚Д゚彡「無駄だ。そして、邪魔だ」

( ,,゚Д゚)「っ……!!」


フサギコは大剣を、横一線になぎ払う。
風を切る音。ヒュッ! という音だ。

( ,,゚Д゚)「ちぃぃ!!」

回避は不可能。
そうギコは判断し、防御を固める。

( ,,゚Д゚)(並みの斬撃ならば、岩体で防御できるはずだ――――)



11: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 17:31:00.09 ID:cxWwBgMY0

しかし


ミ,,゚Д゚彡「大剣、炎帝よ」

( ,,゚Д゚)「!!!」


しかし、その判断は、否。

フサギコの振るった大剣が、ギコの腹部に触れる。
それと同時、大剣が燃え上がり、そして――――

( ,,゚Д゚)「何……!?」


ミ,,゚Д゚彡「超越、開放」



14: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 17:36:46.27 ID:cxWwBgMY0

空気が、揺れる。
それは今までに受けた事のある、どの攻撃よりも恐ろしく感じられる前触れ……。

集中的に、何らかのエネルギーが炎剣の剣先に凝縮されているのだ。

ギコは思う。
危険だ、と。

しかし、そう直感が働いた時には、すでに遅かった。
大剣は太陽のように真っ赤に染まり、そして――――


凝縮されたエネルギーが、局地的な大爆発を起こす。


激音。
爆音。

そして、それに比例した信じられないほどの衝撃がギコを襲うッ!


( ,,゚Д゚)「るおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」



15: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 17:43:36.69 ID:cxWwBgMY0

(;^ω^)「ギコさん!!」

ξ;゚听)ξ「な、何……今の……」


店の壁を突き破り、外にまで吹き飛ばされたギコ。
あまりの衝撃に、あの頑丈な岩鎧までも破壊されていた。

もしも防御していなかったならば、上半身の半分は、吹き飛んでいただろう。

それほど、強力な一撃であった。


ミ,,゚Д゚彡「仕留め損なったか。しぶとい奴だ」

( ,,゚Д゚)「ぐっ……がっ……の野郎……!!」


口の中に溜まった血を吐き捨て、再び体に岩を纏う。



16: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 17:48:26.93 ID:cxWwBgMY0

ミ,,゚Д゚彡「お前の悪い所は、そうやって俺に立ち向かってくる事だ」

フサギコが、炎剣をだらりと構える。

ミ,,゚Д゚彡「俺という存在を、俺自身が認めるには、強さしかない。
      しかし、ギコ。お前は同じDNAを持っているにもかかわらず、俺よりも強かった。
      お前が俺よりも上にいることで、俺の存在価値は消えてしまったんだよ」

( ,,゚Д゚)「んだとっ……!!」

剣に纏われた炎が、さらに激しく燃え上がる。
真紅の炎。まるで、フサギコの感情を表しているかのようだ。


ミ,,゚Д゚彡「だが、今は違う。お前よりも、俺は強い。
      そう……貴様に存在価値は無い」



19: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 17:54:41.23 ID:cxWwBgMY0

刹那、ギコの視界に、振り下ろされる炎剣が映った。
速い。初期動作が、見えなかった。

いや……初期動作など、無かったのではないかッ!?

だが、ギコは持ち前の動物的感で、振り下ろされる斬を防御。

腕をクロスさせ、その一撃を受け止める!!


( ,,゚Д゚)(重い……!!)


ギィン!
岩と鋼が、ぶつかり合い悲鳴をあげる。

その音が意味するのは、お互いに一歩も譲らない、物質と物質の交互破壊だ。



21: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 18:01:50.63 ID:cxWwBgMY0

ミ,,゚Д゚彡「足掻くな動くなくたばれ雑魚がッ!!!!」


炎剣に込められた重さが、さらに増す。
さらに、纏われた炎が、ギコの岩体を溶かしていく……!!


( ,,゚Д゚)「ぐ、あああああ!!!」


斬。
振り下ろされる、炎剣。

爆音と共に、ギコの体に斬撃が打ち込まれる。


(;^ω^)「ギコさぁぁぁん!!!!」


噴煙が、視界を覆った。
ブーンが最後に見たものは、炎剣に押しつぶさるギコの姿であった。



22: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 18:05:19.71 ID:cxWwBgMY0

           ※


(´<_`;)「な、何だ……!?」


バーボンハウス二階で、弟者がその爆音に驚愕の声をあげる。
もしかして、いや、確実にあの来訪者による、攻撃だ。

嫌な予感が、胸を過ぎる。

親分は、どんな困難も勝利という二文字で打ち勝ってきた。
信じている。親分は、誰にも負けない。


(´<_`;)(しかし……この胸騒ぎは何だというのだっ!?)

( ´_ゝ`)「お、弟者……」

(´<_`;)「む、兄者、どうした!? 苦しいのか?」>

兄者が、弱々しい声で弟者を呼ぶ。
治療は施した物の、油断は出来ない。

何しろ、上半身に大火傷をおっているのだ。



23: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 18:09:06.55 ID:cxWwBgMY0

( ´_ゝ`)「……け」

(´<_` )「え?」


聞き取れないほどの、小さな声。
しかし、兄者はもう一度、今度は息を吸って、大きな声で言う。


( ´_ゝ`)「親分を助けに……行け……!!」


兄者が、弟者の腕を掴む。
驚くほど、強く。



(´<_`;)「何を言ってるんだ兄者! 兄者を放っていけるものかっ!」

( ´_ゝ`)「弟者……忘れたのか……俺達の……牙猫盗賊団の誓いを……」


その言葉で、昔の記憶が弟者の頭を過ぎった。
それは、まだ牙猫盗賊団を結成した当時の、誓い。

職も技術も無い、ただのチンピラだった俺達を、実の兄弟のように扱ってくれた、親分に対する誓い。



26: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 18:14:23.46 ID:cxWwBgMY0

(´<_`;)「しかし……兄者が……」


それでも、弟者は迷った。
目の前には、生死の先目を彷徨っている、実の兄がいるのだ。

突如、兄者は弟者の襟首を掴んだ。


(#´_ゝ`)「命をかけてでも、親分を守る……そう、あの時誓った……!!
       あの言葉を、嘘にするな……!! 今が、あの誓いを守るときなんだよ、弟者ッ……!!!」

(´<_`;)「……兄者」


兄者の瞳は、すでに覚悟を決めた光が宿っていた。

甘かった。
俺が、甘かったのだ。

誓いとは、命をかけるということは、それほどまでに重い――――!



28: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 18:19:57.16 ID:cxWwBgMY0

立てかけてある、木刀を手に取った。
これは、親分に貰ったもの。

思えば、俺達は何年間も親分に守られてきた。

どんなピンチにも、
どんな修羅場にも

必ず、親分が助けに来てくれた。

今度は、俺達が返す番だ。
実力だとか、無謀だとか、勝機が無いとか。

そんな打算的な考えはいらない。

借りは、倍にして返す。
それが牙猫盗賊団としての、誇りッ……!!

(´<_` )「兄者、俺は行く」

( ´_ゝ`)「ああ……し、死ぬなよ……」

(´<_` )「兄者もな」

振り返る事も無く、そう言い、弟者は部屋を出た。



31: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 18:23:53.84 ID:cxWwBgMY0

           ※


(;^ω^)「ギコさ……」


噴煙が晴れる。
ブーンの視線に入ってきたのは、巨大な穴。

さっきの斬の衝撃によって起こったのだろう。

つまり、ギコはこの下まで押しつぶされた事になる。
無事では、ないだろう。

(#^ω^)「く、くそっ、くそぉおおおおおおおお!!!!
       エクシー……ッ!!」

ブーンは怒り、言葉を唱えようとする。
だが、その言葉を遮断する声が、穴から発せられた。


( ,,゚Д゚)「手を……出すな……ブーン!!! こいつは……俺の、獲物、だ!!」



33: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 18:30:10.20 ID:cxWwBgMY0

(;^ω^)「ギコさん!!」


穴から跳躍し、再びフサギコと対峙するギコ。
しかし、その体はボロボロであった。

片腕の骨は折れているであろう、だらりと垂らしている。
頭から出血し、そして、何より体のあちこちが焼け爛れていた。


ミ,,゚Д゚彡「抵抗しなければ、楽に死ねたものを。愚かな奴だ」

( ,,゚Д゚)「……ぜってぇ、殺すッ! てめえは、生かして帰さねぇぞゴラァ……!!」

ミ,,゚Д゚彡「威勢だけはよくなったな、ギコよ」

( ,,゚Д゚)「ぬかせっ!!!」


ギコが飛び掛る。
しかし、すでに超越力も切れ掛かっているギコの拳は、フサギコには届かない。

ミ,,゚Д゚彡「すでに勝機は無いというのに、何故抵抗する?
      やはり貴様は馬鹿だなッ!! 存在する価値が、砂埃ほども無い!!」

大剣が振るわれ、ギコの体ごと降りぬかれる。
上空に吹き飛ばされ、地面へと激突し横たわるギコ。



35: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 18:36:31.82 ID:cxWwBgMY0

(´<_` )「存在する価値が無いのは、お前の方だ」

ミ,,゚Д゚彡「む?」

フサギコが、振り向いた。
その視線の先に佇むのは、木刀を構える弟者だ。

ミ,,゚Д゚彡「邪魔をするのならば、死ぬ事になるぞ。
      貴様も、最低限の脳みそがあるならば、手を出さない方が安全だとわかるだろう?」

(´<_` )「生憎、俺には守りたい人がいるんでね」

( ,,゚Д゚)「弟者……て、てめぇ、下がってろ。そいつは俺が倒す」

(´<_` )「親分、あの時の誓いを覚えていますか?」


瞬間、弟者が跳躍する。
しかし、その動きはやはり一般人。

ナチュラリストのフサギコからすれば、止まって見えるほどの速度だ。

ミ,,゚Д゚彡「炭になれ、馬鹿が」

フサギコの掌が、弟者に向けられる……。
しかし、それでも弟者は木刀を手に、フサギコへ一直線に落下する。



37: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 18:44:04.13 ID:cxWwBgMY0

( ,,゚Д゚)「弟者、よせ!!!!」

ギコが、ボロボロの体から必死に声を張り上げる。
しかし、それでも弟者は止まらない。

(´<_`#)「俺達、流石兄弟は――――」

フサギコの掌から、炎が放たれる。
しかし、弟者は恐れを感じなかった。

力よりも、もっと大切な物があると、親分は言った。

それは、信念。
それを持っていれば、どんなピンチも乗り越えられる。

俺の信念。それは、誓いを守ること。
男として、それを破るわけにはいかない。

(´<_`#)「命に代えても、親分を――――守るッ!!!!」


その強き信念は――――


           この世界のあらゆる物質と共鳴し 

       誓 い を 果 た す 神 の 剣 と 成 す ! !



40: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 18:51:08.22 ID:cxWwBgMY0

ミ,,゚Д゚彡「何ッ!! 俺の炎を……かき消した!?」

(´<_`#)「うおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!」


木刀――――否、神剣『森羅万象』が、迫り来る炎をかき消した。
その力は、超越力ではない。

限りなき信念の力。約束の刃。

弟者の強き想いに、万物が反応したのだ。


(´<_`#)「森羅、万象斬――――ッ!!!!!」


その信念が、一つの太刀となりフサギコへ襲い掛かるッ!

初撃にして終わりを司る神の一撃。
その威力は、破壊ではない。

破壊と再生を同時に起こす、いわば創造錬金術の類……ッ!!



42: ◆ExcednhXC2 :2007/12/13(木) 18:58:21.47 ID:cxWwBgMY0

ミ,,゚Д゚彡「ぬうううううううううううう
      ああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」


光が、フサギコを包み込んだ。
その光の中で、フサギコは『破壊』される……!

対極的に再生されるのは、ギコと、そして、兄者……それと、バーボンハウス。

対象が攻撃した、全ての万物を再生させる。

それが、森羅万象の極意。
この事は、まだ誰も知る由が無い。

しかし、使い手の弟者には、全てが頭の中に流れ込んでくる。


(´<_` )「俺の、勝ちだ。」

ミ,,゚Д゚彡「……」


自らが与えた、全てのダメージを受けることになったフサギコは、その場に倒れる。

己の誓い、そして、それを貫こうとする信念。
その想いが、報われた瞬間であった。


第十八話 おしまい



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