( ^ω^)ブーンは砂漠に生きるようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/04(金) 02:51:02.00 ID:QvUD9JH50

第二十話「命、燃え尽きる時」


ミ,,゚Д゚彡「オーバーエクシードだと……!!」

( ,,゚Д゚)「ぐっ! おぉぉぉぉぉ!!」

ギコを纏っているオーラが、飛躍的に拡大する。
超越を超えた超越は、大地を揺らし、己の持つ超越力を極限まで生み出す。

その比率は、およそ『1500倍』以上だ。

ミ,,゚Д゚彡「ギコォォオォ!!! 貴様はどうして、いつも俺よりも先に!!」

不死鳥と化したフサギコが、咆哮をあげる。
辺りを包んでいる炎が、一層激しくなった。



4: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 02:53:03.12 ID:QvUD9JH50

( ,,゚Д゚)「簡単な事だ……そんなこともわからんのか、フサギコ」

ミ,,゚Д゚彡「何!?」


ギコの体に纏われていた岩が、光となって消える。
その光は、次々と空へ消えていく。

( ,,゚Д゚)「お前は、自分の為だけに力を欲した」

燃え盛る炎が、ギコに襲い掛かる。
しかし、超越力のオーラに包まれたギコには、もはやその程度の炎など無効。

一歩一歩近づくギコに対し、フサギコは顔をゆがめる。



6: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 02:55:34.44 ID:QvUD9JH50

( ,,゚Д゚)「たった一人で、力を得ようとした」

空気が、歪み始めた。
何か大きな力が、ギコを中心に発動している。

( ,,゚Д゚)「だけど、それでは本当の強さは手に入らない。
     何も背負ってない、何も信念を持っていない、貴様にあるのは――――恐れだけだ」

ミ,,゚Д゚彡「俺が恐れているだと……!?」

( ,,゚Д゚)「そうだ」

きっぱりと言い放つギコ。
フサギコは、その余裕の態度に、憤怒の表情を浮かべる。



9: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 02:58:27.17 ID:QvUD9JH50

ミ,,゚Д゚彡「くははは!! 俺が恐れている!? 一流のナチュラリストであるこの俺が!?
      ――――笑わせるぜ」

刹那、フサギコは翼と化した腕を振るい、炎のウェーブを起こす。


ミ,,゚Д゚彡「メルトオーバーンウェイブ――――!」


否、それは溶岩の津波だ。
摂氏4000度を越える不死鳥の炎。

フサギコは通常のエクシードで、約400倍近くの超越力を出力している。

だが。

しかし。


( ,,゚Д゚)「一人で戦って、一人で強くなった気でいるてめーじゃ、超越を超える事はできねぇんだよゴラァ――――!!!!」



11: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:02:01.54 ID:QvUD9JH50

咆哮と共に刹那の速度で空から舞い降りるは、小惑星群。
大気圏を越え、砕け、しかしそれでもギコの元へ落下してくる。

( ,,゚Д゚)「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!」

空を突き抜けるが如く、跳躍する。
それに答えるように、砕け散った隕石群がギコの体に吸い寄せられた。


( ,,゚Д゚)「俺には守らなきゃならねぇ奴らがいる!!
     守らなきゃいけねえ信念がある!! そして、俺にあって貴様にない物――――
     それは、命を賭ける『覚悟』だ!!!!」


装着された隕石は、鎧と成りギコの体を覆った。
銀色に輝くその姿は、例えるならば白銀騎士。

神話に綴られた、天馬を仕えるホーリーナイト……!!



12: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:04:42.99 ID:QvUD9JH50

ミ,,゚Д゚彡「有り得ない。貴様が俺より強いなどあってはならないんだ」

震えるフサギコ。
だが、今一度炎を燃え上がらせ、その炎翼を大きく広げる。


ミ,,゚Д゚彡「ギコ。貴様の答えと俺の答え。
      どちらが正しいか――――!」

( ,,゚Д゚)「どちらが強いか――――!」



( ,,゚Д゚)ミ,,゚Д゚彡「勝負だ!!!!」




            激突。衝撃。閃光――――



14: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:08:21.33 ID:QvUD9JH50

            ※


( <●><●>)「――――ッ」

遠方を眺めるワカッテマスの目が、その光を捉えた。
僅かな電気の流れを察し、やがて状況を把握したのか、小さく唸る。

川 ゚ -゚)「死んだか」

( <●><●>)「ええ。恐らく」

隣に座っているクーは、無表情で遠方を見つめ続ける。
やがて興冷めしたのか、団長――――モナーの元へ戻っていった。



15: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:11:04.73 ID:QvUD9JH50

( ´∀`)「フサギコ一人で十分かと思ったが、まさかこれほどとはな」

( <●><●>)「団長。敵は恐らく、第二段階まで達しているナチュラリストかと」

( ´∀`)「第二段階……オーバーエクシードか」

モナーは顎に手をやり、しばし思考する。


( <●><●>)「第二段階まで使うとなると、敵が封魔の可能性が高いのでは……」

( ´∀`)「……いや、封魔の能力はそんなモンじゃねえ」

鋭い眼光をワカッテマスに向けるモナー。
その威圧感に、ワカッテマスは背中に冷たい物を感じた。



16: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:14:54.85 ID:QvUD9JH50

( ´∀`)「俺の80%を奪っていった封魔は、それ以上だ。
      6000万……いや、8000万近い超越力を発動する」

(;<●><●>)「8000万……!」

川 ゚ -゚)「私の『フォース』でいうと、どの位なんだ?」

( ´∀`)「試してみるか? クー。クハハハ!!」

腕に巻かれた包帯を見せるモナー。
その腕は、異様なまでに筋肉隆々としている。

( ´∀`)「行くぞ。封魔の情報の有無に関わらず、久々に暴れたくなった」

( <●><●>)「……」



19: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:18:47.90 ID:QvUD9JH50

ワカッテマスは思う。
月光狂団。その団長であるこの男こそが、現代に蘇った神である、と。

その圧倒的な能力。
未だかつて、目に焼きついて離れないのだ。

( <●><●>)「……」


――――まもなく、この世界が終わる。


そして、新たな時代が幕を開けようとしているのだ。

ワカッテマスは、そこに立ち会える嬉しさと緊張で、震えた。



21: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:21:49.43 ID:QvUD9JH50

             ※


ミ,,゚Д 彡「……」

( ,,゚Д゚)「ハッ……ガハッ!」

フサギコが、倒れている。
全身の骨を折られ、もはや虫の息となったフサギコ。

騎士と不死鳥の一騎打ちの勝者。立っているのは、ギコだ。


自身の体が、限界突破した超越力に耐えられるか心配であったが、
辛うじて手足は動くようだ。


……ようやく、長かった因縁にケリをつけられる。



22: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:23:08.17 ID:QvUD9JH50

( ,,゚Д゚)「は、はっ……」

悲鳴をあげる体にムチを打ち、倒れているフサギコの前まで移動する。
そして、その首を絞める。

( ,,゚Д゚)「これで、終わりだ。長かったぜ、フサギコ」

ミ,,゚Д 彡「が……」

殺されたヒッキーの敵を。
今、この手であの時の雪辱を、果たす。

( ,,゚Д゚)「……」

ミ,,゚Д 彡「……コ」

フサギコの口が、僅かに動いた。

( ,,゚Д゚)「!?」

何を、言っている。

こいつは、今更、何と……!!



23: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:24:16.92 ID:QvUD9JH50


ミ,,゚Д 彡「ギ……コ」


( ,,゚Д゚)「!!!!」

何だ、その目は。
やめろ。迷うな。

こいつが、今まで何をしたか……
それを、忘れるな。

ミ,,゚Д 彡「ギコ……ギコ……」

( ,,゚Д゚)「クソッ!」


首を絞める手に込める力が、強くなる。



24: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:26:41.45 ID:QvUD9JH50

だけど。

――――ヒッキーを殺した!!

こいつは。

――――己の力の為に、俺を追放した!!


こいつは、俺の。



( ,,゚Д゚)「兄……貴……」



全身から、力が抜けた。
フサギコの体に重なるようにして、倒れこむ。



25: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:27:59.57 ID:QvUD9JH50

(;゚ω゚)「ギコさん!!」

(;´_ゝ`)(´<_` ;)「親分!!」

ブーン達は、ギコの元へ走り寄ろうとする。
だが、未だ残っている炎の壁が彼らの足を止めさせた。

ミ,,゚Д 彡「何だ……何故、殺さん」

( ,, Д )「別……に……。俺が手を下すまでもねぇ……ほっときゃ、死ぬだろ、てめぇ」

フサギコは、ハン、と鼻で小さく笑う。

ミ,,゚Д 彡「やはり……貴様は、弱い、な」

んなことぁ、知ってるよ。
あんたも、昔から知ってるだろうが。

そして、あんたも、相変わらず臆病だな。

( ,, Д )「あ、あ……」



27: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:30:11.18 ID:QvUD9JH50

意識が、霞む。
やはり、オーバーエクシードは無茶があったか。

( ,, Д )「ギコハ……ハハ」

自然と、笑いが漏れた。

後悔はしていない。
むしろ、清清しい気分だ。

ボロボロの体で、息をする事すらままならないのに、この気持ちは何だろうか。



28: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:31:57.31 ID:QvUD9JH50

(;゚ω゚)「ギコさん!! クソ! エクシ―――ド!!」

ブーンが、炎の壁を吹き飛ばそうと、エクシード状態になろうとする。
だが、超越力を使い切ったブーンに、もはや風の力を纏うことは不可能であった。

(;´_ゝ`)「親分! 今、助けに……クソ、熱い、熱いよ!!」

(´<_`;)「くっそぉぉぉぉ!!!」


( ,, Д )「馬鹿、どもが」

もう無理だと、見ればわかるだろうが。
指の一本も、もはや動かす事ができない。

ミ,,゚Д 彡「そう、か。貴様、の、いう事、が……少し……わかっ……」

フサギコの言葉が、途切れる。

気付くのが、遅いよ兄貴。遅すぎだ。死んでから、気付くな。
俺があの時、エクシードを覚醒しなければ、他の未来があったのかもしれない。

( ,, Д )「いや、違うか」

他の未来なんて、まっぴらゴメンだ。
そしたら、俺はあいつらと出会うことなく一生を終えていたんだ。



29: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:33:02.49 ID:QvUD9JH50

(;´_ゝ`)「――――ッ!」
(´<_`;)「――――ッ!」

(;゚ω゚)「……ッ!!」

ξ;凵G)ξ「―――!!」


俺の為に、泣いてくれる奴ら。

馬鹿みたいに、俺を信用してくれた奴ら。


かけがいの無い、仲間――――



30: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:34:27.26 ID:QvUD9JH50

「あんたが越えられない壁というのなら、僕はそれを壊してみせるお!!!」

                     「おやぶーん!! うわあああやっぱ親分は最強だ――!!」    

     「何だかんだで、ギコさんも協力してくれてるお」

                     「俺はあんたの強さに惚れた……俺達を弟子にしてくれ!!」
     「ギコさん……」

            「ギコさんは強いですお! 僕が適わないくらい強いんだお!!
             ギコさんなら、過去なんて乗り越えられる……僕はそう信じてるお!!」



             「「親分!!」」



35: ◆ExcednhXC2 :2008/01/04(金) 03:39:47.24 ID:QvUD9JH50


ああ、何だ。


俺はこんなにも、幸せだったのか。

この砂漠に生まれて。
あいつらと出会えて。あいつらと同じ時を共有できて。


本当に、良かった。

ありがとよ。


( ,,゚Д゚)「――――達者でな、馬鹿共」



最後の言葉は、妙にはっきりと言葉になって、伝わった。



その直後。砂漠に生きた二人の兄弟は、その生涯の幕を静かに閉じた。



第二十話 おしまい



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