('A`)ドクオと( ^ω^)ブーンが旅行をするようです
- 9: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:30:01.06 ID:GIQVALj/0
- 第4幕:2日目の幕開け、記憶の幕開け
…あれ?
……俺は何でこんな所に立っているんだ?
………確か高松に居たんじゃなかったっけ?
…………じゃあ何で周りはこんなに山が深いんだ?
………………………………………
自分は今、明らかに高松とは違うところにいる。
目を擦る。目を凝らす。
- 10: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:31:17.45 ID:GIQVALj/0
- 今、俺は森の中の遊歩道らしき所に立っているようだ。頭上には広葉樹が鬱蒼と生い茂り、
日光が届かないぶん空気が冷んやりとしている。風が吹くと木々の枝が揺れ、森全体がざわつく。
………まったく今の状況がつかめない。
こんな木立の中に居たのでは、周りの状況が掴めないし、ただぼんやりと突っ立ってても
仕方が無い。
俺は前に向かって歩き出す。
さくさく。さくさく。
どうやら小径は緩やかな上り坂のようだ。地面には枯葉が敷き詰められている。
- 11: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:32:15.52 ID:GIQVALj/0
- さくさく。さくさく。
木立の中から空を見上げてみると、葉と葉の間隙から太陽の姿が見える。雲は見えない。
さくさく。さくさく。
後ろを振り返る。径は続いているようだが、径そのものが曲がりくねっている上に、なにぶん
木立が目隠しの役割も果たすので、100メートル後方の様子も満足に掴めない。
さくさく。さくさく。
さくさく。さくさく。
暫らく歩くと、前方に何か構造物が見えてきた。大きさは……ちょうど百葉箱ぐらいだろうか。
- 13: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:33:52.97 ID:GIQVALj/0
- さくさく。さくさく。
径の前方の視界が開けてくる。どうやら……、この構造物は祠のようだ。
祠の周囲だけ径は広がり、頭上を覆う木々はぽっかりと無くなって頭上からは太陽の光が
燦燦と降り注いでいる。
……ん…………?
さく、さく、ざくっ。
………この景色……………
……………見覚えが………………ある?
- 14: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:35:16.28 ID:GIQVALj/0
足を止める。もう一度目を凝らす。
ここは………
……………………
…………………………だめだ。思い出せない。
唯一思い出せたのは、俺がここに居るのは何か理由があってのことである、ということぐらいだ。
- 15: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:37:14.11 ID:GIQVALj/0
- 深呼吸し、集中する。
思い出せ
思い出せ
俺は何のために此処に居るんだ…………
集中しろ………………
もっと集中しろ…………………………………………………………………………………………
- 16: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:38:13.07 ID:GIQVALj/0
- 。
。
。
- 17: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:39:37.68 ID:GIQVALj/0
- ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!
('A`)「ん……。何だよ」
細く目を開ける。旅館の天井が、電燈が見える。
雲が出ているせいか、部屋の中には日の光が満足に差し込んでこない。
ここは確かに旅館だ。高松だ。そして、いまドクオの枕元では携帯が合成の金属音をけたたましく
鳴り響かせている。
リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!
('A`)「ったく……うるせぇな………」
手を伸ばし、携帯を手にすると、ボタン一押しでそれを止める。
- 18: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:41:58.71 ID:GIQVALj/0
- 目覚ましの音が止む。
それに反比例するかのように、風で旅館全体がガタゴトと揺れる音が鮮明に認識される。
本格的に台風の暴風域に入ったかな、とドクオは考えた。
('A`)「ったく……台風の野郎もうるせぇな………」
本当にうるさい。よくこんな中で寝ていられたものである。
ドクオは、隣で寝ているブーンのほうを見る。
ブーンは……まだ寝ている。
('A`)「おーい、起きろー」
へんじがない。ただの(ry
揺すってみる。
- 19: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:43:20.48 ID:GIQVALj/0
- ('A`)「起きないかコラー」
蹴ってみる。踏んづけてみる。それでも起きない。
( -ω-)zzZ………
…埒が開かないので、言いたくないがカマをかけてみることにした。
('A`;)「ウホッ、いい男…………」
煤i ゚ω゚)「!!」
- 20: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:44:53.97 ID:GIQVALj/0
- ('A`)「起きたかブーン?」
( ;゚ω゚)「い、い、い、今何と……」
('A`;)「さて、何のことだ?それより、もう起きる時間だぞ。目覚ましが鳴っても寝続けやがって」
ほら起きた起きた、と言うと、ドクオは自分の布団を畳む。
それにしても……。
あの夢は何だったんだろう?
- 21: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:47:10.18 ID:GIQVALj/0
- 夢の記憶は薄れつつあるものの、今までに見た夢とは明らかに違っていた。知っている人が
出てこないし、そもそもあそこが何処だったのかすらもわからない。
なぜ、あんな夢を見たのだ……?
('A`)。○(まあ、そんなこと考えても埒が開かないか)
( ^ω^)「おっおー。何ぼーっとしてるんだお?」
自分の布団を畳みながら、ブーンが尋ねてくる。
('A`)「ん。ちょっと考え事をな。そんなに重要なことでもないんだが」
- 22: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:49:47.18 ID:GIQVALj/0
- 布団を畳み、浴衣からワイシャツに着替え、顔を洗うともう8時になっていた。
('A`)「朝メシ、喰いに行くか」
( ^ω^)「そうするお」
2人は、昨日のように連れ立って1階に降りる。昨日と違うのは、1階に降りてからは食堂に向かう
ことだ。食堂には4人がけのテーブルが整然と並べられており、ドクオたちが泊まっている
『亀の間』と書かれたテーブルには2膳の朝食が用意されていた。
2人が座ると、食堂の奥のほうから和服姿の渡辺さんがやってきた。
从'ー'从 「お早うございます。風が強かったですが、よく眠れましたかぁ?」
訊きながら、ドクオたちの据え膳に味噌汁やご飯を配膳する。
- 24: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:52:30.43 ID:GIQVALj/0
- ( ^ω^)「お早うございますお。バッチリ眠れましたお」
('A`)「ああ、よく眠れました」
从'ー'从「それは何よりです。ではごゆっくり」
ぺこりと頭を下げると、渡辺さんは盆を前に抱きながらいそいそと奥へと戻っていく。それを
見届けてから、2人は朝食に手をつける。カマボコに卵に漬物に…と、ごく標準的な朝食だ。
( ^ω^)「ドクオ、ちょっと」
ブーンが箸を止めてドクオに訊く。
('A`)「ん、何だ?」
ドクオも箸を止めて訊き返す。
- 25: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:55:21.14 ID:GIQVALj/0
- ( ^ω^)「朝食の後、いきなりタクシーで巡るのかお? お腹が正直キツいかも知れないお」
('A`)「ふむ…。確かにそうだな。……じゃあ、まずはどこかで時間を潰すか」
朝食を残してまでうどんを食べるのものも勿体無いし、と言うとドクオは再び箸を進める。
ブーンもそれに従った。
やがて、ふたりとも食べ終わる。今は、食後のお茶をすすりながら、窓の外に
目を遣っている。相変わらず雨風は強いが、これから段々弱まるはずだ。
ほどなくして、お茶も飲み干した。
('A`)「部屋に戻るか」
( ^ω^)「そうするお」
- 26: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:57:59.59 ID:GIQVALj/0
- 席を立ち、ふたりは食堂から出て行こうとする。
が、そこに渡辺さんがやってきた。見ると、うつむき加減でかなり困っている様子だ。
从'ー'从「あ……、えと…………申し訳ないんですが………」
('A`)「どうかしましたか?」
从'ー'从「はい……。実は、橋が通行止めになったお陰で、今日の晩御飯に出す予定だった
本州からの食材が入ってこないんです。有り合わせで良ければ頑張って晩御飯を用意
しますが……、いかがでしょう?」
もじもじしながら渡辺さんがふたりに訊いてくる。
('A`)「うーん。今日は日中にうどんを沢山食べるだろうから、夕飯まで腹には入らない
のじゃないか?ブーン」
- 27: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 01:59:15.89 ID:GIQVALj/0
- ( ^ω^)「んー。でも、うどんは消化が早そうだお……」
('A`)「そん時は近くのコンビニにでも行ったらいいだろう。厨房だって時間の制約があるぜ?」
( ^ω^)「……わかったお。なら日中に食べまくるお!!」
('A`)「その意気だ。というわけで、俺たちは今日の晩飯はいいですよ」
从'ー'从「申し訳ありません。では、宿泊料から今日の晩御飯代は引いておきますね」
('A`)「把握しました。あ、それと」
- 28: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 02:01:05.84 ID:GIQVALj/0
- ( ^ω^)「ご馳走様でしたお!!」
('A`)「俺のセリフ取るなよ……。まあいいか、引き上げるぞ、ブーン」
从'ー'从「ありがとうございましたぁ〜」
2人の背中から、渡辺さんの声が聞こえてきた。
- 29: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 02:02:58.93 ID:GIQVALj/0
- 食後は普通に部屋に戻ってきた。
部屋の布団は既に上げられ、洗濯物を入れたビニール袋も取り去られてがらんとしている。
('A`)「ところで、もう行くか?歯磨きしたらすぐ食べる気にもなれないだろう?」
( ^ω^)「うーん。まずは駅に行ったらどうかお?」
('A`)「駅に?そりゃまた何故?」
( ^ω^)「乗れなかった夜行の切符の払い戻しと、明日の列車の切符を買うお」
- 31: ◆spzKjTJd5o :2007/02/22(木) 02:04:25.00 ID:GIQVALj/0
- ('A`)「なるほどな。そうするか」
それぞれがそれぞれの切符を取り出し、簡単に荷造りをする。
('A`)「うん……もうやる事は無いな。じゃあ行くか」
( ^ω^)「長岡タクシーへいざ参るらん!!」
('A`)(コイツ食い物のことになると妙にテンションが上がるよな……)
第4幕:2日目の幕開け、記憶の幕開け 了
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