('A`)ドクオと( ^ω^)ブーンが旅行をするようです
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/29(火) 01:03:15.54 ID:sUxzLUUH0
- 第20幕:散策(前編)
結局、ふたりは4時になってから外出することにした。
ブーンが用を足してからは特にする事も無かったのだが、だからと言って、そうせわしなく外出しなければならないような
理由は無い。
そうは言っても、実のところ時間が足りない。
今日は土曜日であるが、日曜日もこのvip峡に泊まっていたいと、彼らは心底願った。
だから敢えて、『時間』を大切にした。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/29(火) 01:05:10.86 ID:sUxzLUUH0
- 天井の木目。
空気の美味しさ。
自然の音。
木の薫り。
畳の触感。
('A`)(畳って、こんなに暖かかったっけな……)
時折寝返りをうつ。仰臥から側臥へ。側臥から伏臥へ。そしてまた、伏臥から仰臥へ。
着ているワイシャツに皺が寄るのも気にしない。そんな事を気にする者は居ない。
( ^ω^)(たまには、パソコンが無い生活も良いものだお……)
文明の利器らしいものは、電燈と、床の間に置かれた黒電話ぐらいしか無い。
たまには、本当にごくたまには、そんな生活も良いものだ。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/29(火) 01:07:47.87 ID:sUxzLUUH0
- 暫らくの間寝転がっていた。
ふと気づいたら、南向きの窓から差し込む光が弱くなっていた。
高く昇っていた太陽が、少しずつ西に傾き始めたようだ。
('A`)「ん、そろそろ4時かな…………?」
時間が経ったのを実感して、ドクオは携帯電話の画面を見る。
('A`)「――あれ? まさか、そんな…………?」
( ^ω^)「どうかしたのかお? 時空が歪んでいるのかお?」
('A`)「いや、時間的にはおかしい所は無いんだが……」
そう言ってから、次の言葉を少し言い淀む。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/29(火) 01:09:47.76 ID:sUxzLUUH0
- ('A`;)「アンテナが全く立たん。圏外のようだ」
(^ω^; )「え、それは困るお。携帯でvipができないじゃないかお……。
せっかくスレ立てて実況でもしようかと思ってたのに……」
('A`;)「お前、高松駅では俺に携帯でのvipは控えろと言ってたクセに……」
( ^ω^)「まあ、そんな事は関係ないお。部屋が暗くなってきたところで、とっとと散策に行くお」
言いながら立ち上がり、きびきびとした動作で開け放たれたアルミサッシを閉める。
( ^ω^)「ほら、いつまでも寝転がってないで早く起きるんだお!!」
('A`)「わかったわかった。景色はそう簡単には逃げやしないよ……」
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/29(火) 01:10:38.31 ID:sUxzLUUH0
- 片膝を立て、緩慢な動作で立ち上がる。
('A`)「じゃ、財布とか、金目の物を持ったところで、行きますか」
( ^ω^)「こんな平和を絵に描いたような村じゃ、泥棒なんて居ない気がするお」
('A`)「地震の被災地に、東京から盗人がワザワザ足を運んでくるこの時世だ。用心に越したことは無いさ」
それからは、ふたりは言葉少なに部屋を後にした。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/29(火) 01:12:45.87 ID:sUxzLUUH0
年季の入った階段を軋ませながら1階に降りてきたふたりは、まず高岡の姿を見た。高岡は、
長髪に三角巾で作った帽子をして、階段に背を向けて太い梁にハタキをかけていた。
('A`)「高岡さん」
不意に声を掛けられて、高岡は顔だけを声のした方に向ける。
从 ゚∀从「ああ、ドクオさん達でしたか。お部屋は如何でしたか?」
手を止めて、ふたりの方に向き直る。
('A`)「ええ、満足してますよ。いい部屋をどうも有り難うございます」
从 ゚∀从「これからどちらかに行かれるんですか?」
( ^ω^)「ちょっとvip峡を散策してみようと思ったんですお」
从 ゚∀从「ああ、散策ですか。では、vip峡の地図を取ってきますので、少々お待ちください」
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/29(火) 01:15:17.21 ID:sUxzLUUH0
- 高岡はハタキをそばの座敷に置くと、フロントに向かっていった。よく見えないが、カウンターの中で屈んで、
何やらごそごそしている。引き出しを開けたり閉めたりしているようだ。
待っている間、ふたりは玄関の方に足を進めていた。ガラス張りの玄関からは、vip川に架かる橋がよく見える。
やがて、紙が擦れる音が聞こえる。大股で、高岡がふたりの許にやって来た。
从 ゚∀从「ありました、ありました。いやぁ、宿泊客自体が久し振りなもので、お渡しする地図を何処にやったか
すっかり忘れてましたよ」
そう言って高岡が差し出した2枚の紙は、B5版ぐらいの藁半紙に、ガリ版で刷られた手製の地図。
紙は相当前に刷られたままなのか、古い紙特有のセピア色になっている。手触りは、かなりザラザラしていた。
从 ゚∀从「プリンターか何か有れば良いんですがね、電器店も無いし、そもそも需要がないので相当昔に刷ったモノを
今でも流用しているんですよ。まあ、ここは幾ら年月を重ねても町並みが変わるなんて事は無いので、10年ぐらい前の
地図でも十分現役で使えますので、ご心配なく」
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/29(火) 01:19:10.08 ID:sUxzLUUH0
- ('A`)「へぇ……。白黒でも、なかなか上手く地図が作られているじゃないですか」
最近のオフィスではまず見かけないシロモノだけに、高岡から渡された地図をまじまじと見つめていた。
地図に所々には、建造物やら具体的な見所などが挿絵つきで表現されている。
( ^ω^)「なかなかイラストが綺麗ですお」
从 ゚∀从「ははッ。それをツンの目の前で言ってみてください。不器用ながらも大喜びしますよ。顔を真っ赤にしてね」
('A`)「へぇ、ツンさんが描いたのですか」
( ^ω^)「それは是非とも一度は拝んでおきたいものですお」
ひとしきりの談笑。
('A`)「じゃあ、地図も貰ったことだし、行くとするか」
玄関のドアに手をかけて、ブーンを促す。
( ^ω^)「そうするお〜」
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/29(火) 01:20:23.36 ID:sUxzLUUH0
- 从 ゚∀从「はい。では、晩御飯の時間に遅れないよう、行ってらっしゃいませ」
ふたりが出て行った。
从 ゚∀从「さて……と」
少し大きめに息をつく。
从 ゚∀从「私は、『準備』に取り掛かるとしましょうか。何せ、今夜は盛大なパーティーなのですから……」
そう言う高岡の口元は、微かに歪んでいた。
第20幕:散策(前編) 了
戻る/第21幕