('、`*川新聞部が嘘吐きを探すようです
- 1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 00:35:50.92 ID:UL8MhmC5O
('、`*川「えーとぉ?」
冬服の、紺セーラーを着た少女が、黒い紙に目を通している。
よく見ればその黒紙は、レポート用紙にびっしりと黒い字が書き込まれた物。
ぶつぶつと何かを呟きながら、少しぼんやりと掻い摘んでそれを読み出した。
('、`*川「園芸委員がヒマワリを枯らした……。
3-Eで喧嘩、結果は引き分け……。
野球部の部費が異常に増え気味……これは面白いな」
白い塔のような、今にも崩れそうな紙の山。
それがあちこちにある不思議な部屋だ。
元はそこまで狭くはないのだろうが、置かれた大きな机にスペースを取られ、
さらに前述した紙の山のせいで部屋は狭苦しい。
隅に古くさいPCもあるが、その上にまで紙の山。
どうにも掃除が必要そうだった。
('、`*川「……ふぅ。ま、そこまで大した物はないね……。
今週も適当に刷っとくかなぁ」
(#゚;;-゚) 「頑張って集めたんですけどね」
('、`;川「うあっ!? 居たの!?」
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 00:37:41.89 ID:UL8MhmC5O
(#゚;;-゚) 「部長が来た時から居ましたが」
('、`;川「ご、ごめんなさい……」
小さな少女が、その山に隠れるようにその部屋には居た。
部長、と呼ばれた少女にはちょうど見えない位置に、ちょこんと。
('、`*川「でもさぁ、居るなら挨拶くらいしてよ……ビックリしたじゃん」
(#゚;;-゚) 「以後気を付けます」
小さな子はそう言うと椅子から降り、懐から手帳を取り出しながら部屋のドアへと進む。
('、`*川「ん? どっか行くの?」
(#゚;;-゚) 「取材です。大した物はないと言われましたので」
機械のように言うとドアを左に引き、部屋から出ていった。
('、`*川「真面目だなぁ……なんでウチの部に入ったんだろ?」
小首を傾げながら、もう一度先程の紙に目を通す。
しかし何度見ても彼女のお目にかかるような情報はなかったらしく、
深いため息と共にそれを落とすように投げ捨てた。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 00:41:26.88 ID:UL8MhmC5O
第1話「パン失踪事件(前編)」
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 00:44:13.27 ID:UL8MhmC5O
ざわざわと騒がしいクラス。
鞄を持ち教室から出ていく者も居るので、今日の授業は終わったようだ。
そんな例に漏れない一人の少女。
金髪のツインテールがくるくると巻かれた、特徴的な髪。
そんな髪のツリ目な彼女は、同じ金髪の少女に話し掛けた。
ξ゚听)ξ「デレー。帰るわよー」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、ごめん。今日部活あるんだ」
もう一人の金髪ツインテール。
しかし彼女の場合は、髪がそこまでは巻かれてはいない。
さらに何よりの違いは、巨乳と貧乳という事。
ξ゚听)ξ「部活って新聞部?
いい加減辞めなさいよ、あんな怪しい部活」
ζ(゚ー゚;ζ「怪し……ま、まぁね。でもみんな優しいよ?」
ξ゚听)ξ「ふーん。ま、なんかあったら言いなさいよ?
バット持って乗り込むから。んじゃね」
簡単に恐ろしい事を言うと、軽く上げた右手を振り、教室を出ていく。
もう一人の少女は、少し戸惑った顔をしながら彼女を見送った。
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 00:45:46.64 ID:UL8MhmC5O
ζ(゚ー゚*ζ「……さて、行こうっと」
一つ呟き鞄を持つと、踵を返し反対のドアから、目的地へと歩を進めた。
その後ろ姿を濁った目で見つめる視線に、気付く事なく。
場所は戻って最初の部屋へ。
その部屋に入るための唯一のドアには磨りガラスが付けられている。
しかし中は見えないので意味はないと判断したのか、
手書きで『新聞部』と書かれた紙が上から貼られていた。
どうやらこの部屋は、新聞部の部室、のようだ。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 00:49:11.52 ID:UL8MhmC5O
( 、 *pλノ「あぁ、そこ……気持ちいい……」
l从・∀・ノ!リ人「ここ? 部長はこんな所がお好きなのじゃ?」
( 、 *pλノ「そう、そこ……いい……」
部長と呼ばれたのは、長い黒髪の女生徒。
今はポニーテールを作っているが、髪を下ろせば肩甲骨まで達しそうな長さだ。
('、`*pλノ「はぁー……妹者ちゃん上手ね」
l从・∀・ノ!リ人「いつも家で姉者にやらされてるのじゃ!」
('、`*pλノ「あら、お姉さんいたの?」
l从・∀・ノ!リ人「おっきい兄者とちっちゃい兄者も居るのじゃ!」
('、`*pλノ「へぇー……大家族ね。今時珍しいわ」
妹者と呼ばれた、ちっこい少女。
彼女も紺のセーラー服を着ているが、丈が長く手も出きっていない。
そんな小さな手を耐えず動かし、彼女は部長の肩を揉んでいた。
l从・∀・ノ!リ人「それで姉者の肩を揉むときは、いつもお駄賃を貰うのじゃ!」
('、`*pλノ「へぇー、いいお姉さんね」
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 00:53:39.72 ID:UL8MhmC5O
l从・∀・ノ!リ人「……」
('、`*pλノ「……」
妹者の手が止まる。
l从・∀・ノ!リ人「……部長はくれないのじゃ?」
('、`*pλノ「……まぁ、学校って縦社会だし?
後輩が先輩の肩を揉むくらいで一々……」
l从・∀・ノ!リ人「やーめた、のじゃ」
愛想を尽かしたかのように言う妹者。
すぐに手を離し、古ぼけたパソコンの前にある椅子に座り、PCを起動させた。
('、`*pλノ「チッ、現金な奴め……。いい? 妹者ちゃん。
後輩っていうのは常に先輩に敬意を払って……」
l从・∀・ノ!リ人「説教はつまらないのじゃー」
('、`;pλノ「くッ、生意気な……」
後ろで纏めていたゴムを解き、髪を掻き上げる。
少しセクシーな感じを出したかったらしく、うふんと呟く部長。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 00:57:18.10 ID:UL8MhmC5O
l从・∀・ノ!リ人「……」
しきし部室に響くのは、PCのガリガリという耳障りな音だけだった。
('、`*川「……虚しい」
大げさに肩を落としていると、部室のドアがガラガラという音を立て横に開き、
先程の金髪の少女が微笑を浮かべながら、部室に入ってきた。
ζ(゚ー゚*ζ「すいません遅れましたー」
('、`*川「あ、デレちゃん。遅刻だよ〜?」
ζ(゚ー゚*ζ「ごめんなさい、今日掃除当番だったので……」
('、`*川「言い訳しなーい。なんか情報あるー?」
ζ(゚ー゚*ζ「ないです」
('、`;川「またそんなキッパリと……。
真面目に取材してるの、でぃちゃんだけじゃん……」
ζ(゚ー゚*ζ「あれ? そのでぃちゃんは?」
l从・∀・ノ!リ人「取材んぐ、なのじゃー」
ζ(゚ー゚;ζ「しゅ、取材んぐ……?」
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:00:27.05 ID:UL8MhmC5O
('、`*川「ing。現在進行形ね」
ζ(゚ー゚*ζ「あぁ、取材中って事か……。でぃちゃんは偉いな」
('、`*川「そうそ、2人もちょっとは見習いなさい?」
ζ(゚ー゚*ζ「……部長もですけどね」
('、`*川「……すいません」
そんな不真面目な部員の、溜り場とも言える部室の扉がまた開き、噂の女生徒が戻ってきた。
(#゚;;-゚) 「ただいま戻りました」
('、`*川「お帰り〜。なんかあった?」
(#゚;;-゚) 「はい。……凄いのが」
懐から黒革の小さな手帳を取出し、目的のページをパラパラと探す。
他の部員3名も、それぞれ手帳を取出し、でぃと呼ばれた少女を待つ。
記述はすぐに見つかったようで、少女は外見に合わぬ大人びた口調で読み始めた。
(#゚;;-゚) 「今日の昼間、ある事件が起こったそうです」
ζ(゚ー゚*ζ「事件?」
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:03:24.02 ID:UL8MhmC5O
('、`*川「おっきい事件? ちっさい事件?」
(#゚;;-゚) 「見た目はちっさい事件です。購買のパン泥棒」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
l从・∀・ノ!リ人「ほんとにちっさいのじゃー」
('、`*川「あのねぇでぃちゃん……」
(#゚;;-゚) 「だから見た目、です。その盗まれたパンというのが問題なんです」
少し間を起くと、でぃは声のトーンを落とし、続ける。
(#゚;;-゚) 「そのパンというのが……」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
l从・∀・ノ!リ人「……」
('、`*川「……」
(#゚;;-゚) 「世界三大珍味パン……!」
l从;・∀・ノ!リ人「な、」
ζ(゚ー゚;('、`;川「「なんだってー!!」」
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:06:30.70 ID:UL8MhmC5O
世界三大珍味パン。
その名が示すとおり、世界の三大珍味こと、キャビア、トリュフ、フォアグラを、
なぜか一緒にコッペパンに挟むという、伝説のパンだ。
値段は1個¥3000。
学生に優しい値段では決してないが、月に一度。しかも3つの数量限定。
抽選で買う者を決めるというシステムが若干不評だが、
話題に飢えた学生が食い付かないわけがない。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ、一度食べてみたかったんですよ……。
でも私、くじ運ないしお金もないし……」
l从・∀・ノ!リ人「妹者も食べたいのじゃー」
('、`*川「意外と不味いらしいよ」
(#゚;;-゚) 「ちなみに犯人は不明。購買のおばちゃんからの情報です」
そこまで言うと、でぃはパタンと手帳を閉じた。
('、`*川「……でもま、あれだけ人気なパンだしねぇ。
盗むくらいは珍しくないんじゃない?」
ζ(゚ー゚*ζ「一応記事にはできますね」
l从・∀・ノ!リ人「さっそく纏めるのじゃー」
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:09:29.86 ID:UL8MhmC5O
(#゚;;-゚) 「……待ってください」
その一言に、作業に入ろうとしていた3人の視線が、今一度でぃに集まった。
(#゚;;-゚) 「不思議だと思わないんですか?
世界三大珍味パンですよ?」
ζ(゚ー゚*ζ「……? むしろ、世界三大珍味パンだから納得いくけど……」
(#゚;;-゚) 「ふぅ……いいですか?
世界三大珍味パンは月に一度だけ。しかも3つしか売り出されません」
l从・∀・ノ!リ人「それがなんなのじゃ?」
(#゚;;-゚) 「なんで3つしかないのに盗まれるんですか?
そんな目立つ犯行をすれば、すぐに犯人は捕まるはずですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「? 人が群がってたんじゃないの?」
('、`*川「……いや、アレは抽選で購入者を決める。
その間は、専用のガラスケースの中に置いておくはず」
(#゚;;-゚) 「購買を開く前、パンはあったそうです。
そしてパンが消えたタイミングを聞くと、『気付いたら消えていた』と言われました」
('、`*川「気付いたら、って……そんな馬鹿な。
あれは百数人が集う伝説のパンよ? 周りの誰かしらが気付くでしょ」
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:13:15.40 ID:UL8MhmC5O
- (#゚;;-゚) 「その辺の、周囲にいた生徒にはまだ話は聞いてません。
ですが、今の今までその話を耳にしなかった」
('、`*川「……変ね。地獄耳の私が知らないなんて」
l从・∀・ノ!リ人「3個のうち何個消えたのじゃ?」
(#゚;;-゚) 「1個。残り2個で抽選はしたらしいです」
ζ(゚ー゚*ζ「うーん……言われればなんか変な話ですね」
('、`*川「……よし、決めた」
凛とした、強い声。
部長がやる気を出した時、彼女はそんな声を出す。
('、`*川「妹者、記事作成。でぃも手伝い。
私とデレは聞き込みして事件を徹底的に洗うわ」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、この時間じゃ生徒は……」
('、`*川「次に作るのはまた来週。
その時までに進展があれば十分よ」
ハキハキと喋り、指示を出す。
そして部長―――ペニサスは、一際力強い声で、こう言った。
('、`*川「私たち新聞部は、この事件の真実を探す」
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:17:23.89 ID:UL8MhmC5O
- VIP高校新聞 42号 10月19日(金)
【伝説のパン 突然失踪!?】
昨日、10月18日の昼、購買である事件が起こった。
伝説のパンこと、世界三大珍味パンの消失事件である。
世界三大珍味パンと言えば、百を越える学生がこぞって欲しがるパンだが、
その数は三個と極めて少なく、しかも抽選制であり口にした者は少ない。
現在新聞部は当事件を調査中であるが、今回はその一部の証言を紹介する。
購買担当者からの証言
『ケースに入れてあった珍味パンが、気付けば消えていた。
残り二個で抽選は行い、その場はなんとか収まった』
当時現場にいた学生からの証言
『毎月珍味パンを楽しみにしているんだが、こういう事件は非常に残念である。
犯人にはすぐに自首をして貰いたい』
【野球部の部費が異常の増加!?】
最近発覚した事実で現在調査中だが、野球部の部費が月々増えているという噂が出た。
本来部費というのは、生徒会主催の部長会議で決めるものなのだが、
前回の会議では野球部の部費の件は確認できなかった。
現在新聞部は、この噂を野球部、生徒会の両陣営の関係制も含め、調査中である。
【部員の一言】パン食いたいのじゃ。
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