('、`*川新聞部が嘘吐きを探すようです

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:30:48.57 ID:UL8MhmC5O

( ^ω^)「あー……確かに不思議だったお」

ξ゚听)ξ「アンタ、あんなもんに参加してんの?
      ほんっと馬鹿ねー」

( ^ω^)「いやいや、アレに当たれば一躍ヒーローだお?」

ξ゚听)ξ「わかんないわ。あんなのやるのはアホだけでしょ」

あの……事件の話を……。

( ^ω^)「あぁ、ごめんお。えーと確か……。
       そうだお、突然消えたんだお」

突然?

( ^ω^)「そうだお。
       アレは事前に番号の書かれたくじを貰って、購買のおばちゃんがそれを引くんだお。
       消えたのは確か……2回目のくじを引く前だったような……」

ξ゚听)ξ「違うわよ。1回目よ、1回目。
      くじを引いた直後に、ガラスケースの中からパンが消えてたのよ」

( ^ω^)「……なんで知ってるんだお?」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:34:35.88 ID:UL8MhmC5O

……そういえばツンちゃん、昨日お昼いなかったけど。

ξ;゚听)ξ「あ、いや違うわよッ!? 私は購買に普通のパンを買いに……!」

……私たちお弁当あるじゃん。

( ^ω^)「それに普通のパンを買うのは、抽選終わってからだお」

ξ;゚听)ξ「……」

……ブーンくんが、いつも当たらない当たらないって言ってるから?

( ^ω^)「お? 僕にプレゼントするためかお?」

ξ;゚听)ξ「ちッ、違うわよッ!
       ただちょっと……食べたかっただけなんだからッ!!」

……。まぁとにかく、突然消えたんだね?

( ^ω^)「そうだお。珍味パンが突然、失踪したんだお」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:37:54.43 ID:UL8MhmC5O








 第2話「パン失踪事件(後編)」








33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:40:04.79 ID:UL8MhmC5O


感覚、というのは、人により違う。
モノの感じ方は人それぞれ違う。だからこそ面白い。

そんなわけで、散らかっているか、散らかってはいないかというのも、人それぞれ違ってくるだろう。

だがしかしこの部屋は、散らかっている。
少なくとも、一人の頭の中では。

(#゚;;-゚) 「ふぅ……やばしいな」

放課後。

訛りを言いながらちっこいでぃは、机の上の紙をファイルに閉じる作業をしている。
ファイル、と言っても安っぽい紙製のもので、どれだけも閉じておく事ができない。

そしてパンパンに膨らんだファイルは部室の棚に整理するのだが、
既にそれは一杯であり、現在は段ボールにぶち込んでおく形だ。

(#゚;;-゚) 「……ほとんど私の字。あとはラクガキ」

l从・∀・ノ!リ人「こんちゃーなのじゃー!」

ぼやきが終わるのと同時、ちっさい妹者が部室へとやってきた。
手にはかわいらしいピンクの鞄。明らかに学校指定の物ではない。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:43:10.23 ID:UL8MhmC5O

ちっこいでぃとちっさい妹者。
彼女らはクラスは違えど同じ1年生。
中学生にも間違われるが、高校生である。

(#゚;;-゚) 「このラクガキ、捨てていい?」

l从;・∀・ノ!リ人「だ、駄目なじゃ! それにそれはラクガキじゃないのじゃ!!」

(#゚;;-゚) 「……いい加減文字くらい使ったら?
      パソコンの方がよっぽど面倒な気がするけど」

l从・∀・ノ!リ人「それが流石家流なのじゃ!」

妹者は取材時にメモは取らず、絵でそれを表現する。

曰く、絵の方がわかりやすいのじゃ!
曰く、本人にしか分からない。

しかしタイピング速度が尋常ではないので、ふまえて黙認はされていた。

(#゚;;-゚) 「それで、なにか情報は?」

l从・∀・ノ!リ人「これを見るのじゃ!」

ピンクのカバーのラクガキ帳、もとい手帳を開き、でぃに見せる。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:49:54.32 ID:UL8MhmC5O

(#゚;;-゚) 「……だから分からないってば」

l从・∀・ノ!リ人「むぅ、でぃは絵心がないのじゃ」

それはお前だ、と言うのを堪え、妹者がラクガキを文字に訳すのを待つ。
ある意味で凄い才能だな、とでぃは一人思った。

l从・∀・ノ!リ人「えーと……なんだこれ? 意味わからんのじゃ」

(#゚;;-゚) 「……辞めたら? 部活」

l从;・∀・ノ!リ人「ひ、ひどいのじゃ……妹者だって必死なのじゃ!」

(#゚;;-゚) 「……部長まだかな」

また情報の羅列された紙をファイルに入れ始めた時、もう一度ドアが開き、部員がやって来た。
金髪の巨乳、2年のデレだ。

ζ(゚ー゚*ζ「こんにちはー。今日は間に合ったよね?」

(#゚;;-゚) 「部長が歩く定刻なのでセーフです」

l从・∀・ノ!リ人「デレー! これを見るのじゃ!」

ζ(゚ー゚*ζ「ん? なぁにこれぇ」

l从・∀・ノ!リ人「情報なのじゃ! ……多分」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:53:23.71 ID:UL8MhmC5O

差し出されたロールシャッハテストのような絵を見て、デレは首をひねり唸った。

いやこれはロールシャッハテストのような絵ではなく、
ロールシャッハテストなのではないか?
いやでも、下手な事を言って妹者ちゃんを傷つけたくはない。

色んな考えが浮かんでは消え、やがて一つの単語が口をついた。

ζ(゚ー゚*ζ「上手な絵ねー!」

お世辞である。
今日この日、彼女は大人への階段を一歩登った。

('、`*川「ういっす。みんな揃ってるー?」

部長こと、3年のペニサス。
2年間彼氏なし。最近太ってきたらしい。

ζ(゚ー゚*ζ「はい、揃ってます。
       ……情報はあんまりですけど」

(#゚;;-゚) 「私もあんまりでした。
      一応購買のおばさんにも聴きましたが、昨日と同じ。
      ……むしろ少し忘れているくらいでした」

('、`*川「ま、あの人も年だしねー」

(#゚;;-゚) 「……そうですね」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:56:23.80 ID:UL8MhmC5O

影のある言い方をして、でぃは席についた。
テーブルはほとんどが紙に埋まっているが、彼女はさっきの整理で場所を確保したらしい。

デレとペニサスの場所はほとんど紙がなく、妹者は基本PCの前。
というより紙はほぼでぃが書いたものなので、彼女の周りに溢れているのは必然ではあった。

('、`*川「さてさてさて……何か進展はあったかな?
     まぁぶっちゃけ、私は無いんだけど」

ζ(゚ー゚*ζ「私もです……。失踪は1回目の抽選直後、ってくらいですね」

l从・∀・ノ!リ人「不思議なのじゃー。皆は何も見てないのじゃ」

うーんと、全員が考え込み唸る。
一応新聞は出したが、如何せん情報はない。
今日一日の取材結果も、なんら意味をなさないものばかり。

('、`*川「……少し整理しよっか。まずは事件の頭から。
     でぃちゃんよろしこー」

手帳を開き、口頭で事件を追っていく。
そんな3人とは違い、妹者はパソコンにそれらを打ち込み、表作りを始めた。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 01:58:14.28 ID:UL8MhmC5O

(#゚;;-゚) 「はい。えー、10月18日の午後12時40分頃、当高校1階の購買で発生」

ζ(゚ー゚*ζ「月1の3個限定のパンが、購入者を決めるくじの1回目終了後に1つ消失」

('、`*川「事件の目撃者に話を伺うも、皆が突然消えた、と述べた」

(#゚;;-゚) 「……そんなものですね」

ζ(゚ー゚*ζ「怪事件でお蔵入り、ですかね……?」

('、`*川「うーん……」

また唸り。整理したはいいが、わかるのは不思議さだけ。

l从・∀・ノ!リ人「質問なのじゃー。
       この事件の名前って『パン失踪事件』で決まりなのじゃ?」

(#゚;;-゚) 「まぁ部長命名だし、決まりでしょ」

l从・∀・ノ!リ人「むぅ……パンお無くなり事件のが語呂がいいのじゃー……」

(#゚;;-゚) 「どこがよ……」

でぃが小さく呟くのと同時に、ペニサスの右眉がピクンと動いた。

('、`*川「……でぃ、何て言った?」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 02:00:25.41 ID:UL8MhmC5O

(;#゚;;-゚) 「え? ど、どこがよ……ですが」

l从#・∀・ノ!リ人「むぅ、また悪口を言ったのじゃー!」

('、`*川「違う、今じゃなくて昨日よ。
     昨日ここに来た時、私たちに何て言った?」

(#゚;;-゚) 「昨日……? 昨日は確か……」

ζ(゚ー゚*ζ「パン泥棒……でしたっけ?」

('、`*川「そう、パン泥棒が出た、って言ったのよ。
     おかしくない? 突然パンが消えたのに、泥棒、なんて」

ζ(゚ー゚*ζ「まぁ言葉の綾ってやつじゃ……」

(#゚;;-゚) 「……私が聞いたんです。購買のおばさんから、直接。
      パンが盗まれた、と……鼻息荒く」

('、`*川「……行ってみよう」

(#゚;;-゚) 「はい……!」

どこか興奮した口調の2人は、飛び出すようにして部室を出て行く。
残されたデレと妹者は困惑しながらも、走りあとを追った。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 02:03:49.26 ID:UL8MhmC5O





('、`;川「おばちゃーん! 待って待って!」

肩で息をし、呼吸を整える部員達。
現在の場所は、教職員用の出口。そこに目的の人物はいた。

購買のおばちゃんは用務員でもあるため、放課後も学校に居る事が多い。
しかし今日昨日と捕まえれたのは、運がよかったのかもしれない。

「あら、新聞部さん。事件は何か分かったかしら?」

( 、 ;川「その件で…ハァ…話…ハァ…聞きたくて…ハァ……」

ζ(゚ー゚;ζ「た、体力無さすぎですよ……部長」

はぁはぁがやがてふぅふぅに変わった頃、ペニサスはやっと話を始めた。
他の部員も息を整え、それに耳を傾ける。

('、`*川「ふぅ……あの、昨日この子に、パンが盗まれたって言いませんでした?」

「あら? そうだったかしら……」



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 02:07:35.35 ID:UL8MhmC5O

('、`*川「なんで盗まれた、と?」

「うーん……」

右肘に鞄の紐を通し、右手は頬に。
買い物を悩むおばさんスタイルで、考えている。

「なんか、忘れてる気がするわねぇ……。
 確かに私、盗まれたって言った?」

(#゚;;-゚) 「はい、間違いありません。
      取材の時のメモ、まだ残っていますから」

手帳を開き、その項を見せる。
そして口頭で付け加える。

(#゚;;-゚) 「そしてその後に、気付いたら消えていた、と……」

「……変ねぇ。なんで私、盗まれたなんて言ったのかしら?」

('、`*川「……お時間をとらせて、すみませんでした」

「あらいいのよぉ。私こそ役に立てなくてごめんね?」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 02:09:59.12 ID:UL8MhmC5O






戻り、今は部室。
戻りは歩いたのだが、ペニサスとでぃは黙ったきりだった。

ζ(゚ー゚*ζ「……あの、なにが引っ掛かってるんです?」

間に耐えられなくなったデレが問う。
当の本人達は、それを機に一つため息し、口を開いた。

('、`*川「あくまで予想なんだけどねー……」

(#゚;;-゚) 「私も予想、いえ、もっと儚いものです」

l从・∀・ノ!リ人「……一体全体なんなのじゃ?」

('、`*川「……でぃちゃんからどうぞ」

平手を差出し、話を促すも、こういうのは部長からと返された。
ペニサスは軽く理不尽に思いながらも、ある“説”を語りだす。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 02:14:05.70 ID:UL8MhmC5O

('、`*川「……不思議なのよ。最初から最後まで、ね。
     突然消えたパンに、突然変わった証言。作為は感じられないし」

ζ(゚ー゚*ζ「盗まれた、ですか? そんな気にする事ですかね?」

('、`*川「うーん……例えば、さ。
     見た、のかもしれないよ?」

ペニサスの言葉に、デレと妹者の頭からクエスチョンマークが飛び出る。
しかしでぃだけは、真剣な眼差しで次を待つ。

('、`*川「見た。だけど、覚えてない。
     言い方を変えると、見た事を忘れた。
     だから最初は盗まれたと思ったんだけど、次には忘れてしまっていた」

ζ(゚ー゚;ζ「……そんな事」

(#゚;;-゚) 「……現場にいた全員が、犯人を見ていた筈。
      でも忘れたんですよ、顔も、名前も全部」

l从・∀・ノ!リ人「つまり犯行も見ていたのに、
       いつのまにか記憶が、気付けば消えていた、に変わっていたという事なのじゃ?」

('、`*川「……そう、なるね」

ζ(゚ー゚;ζ「そんな……あまりに突飛してますよ」



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 02:17:22.28 ID:UL8MhmC5O

非現実的すぎる。
だがペニサスとでぃは自分達の推理が、どこか正しいものかもと思い始めていた。

('、`*川「……これが恐ろしいのは、皆が忘れてしまう事。
     犯人はなんでもできるわ。犯行を忘れちゃうんだから」

ζ(゚ー゚;ζ「……」

(#゚;;-゚) 「……もしかしたら、とんでもないモノに関わっちゃったかもしれないですね」

l从・∀・ノ!リ人「……犯人は超能力者なのじゃ」

全員の呼吸が止まったのかと錯覚するほどに、静かになった。
もし、が事実ならば……と考えると、恐ろしさが心を襲うのだ。

('、`*川「……私が部活に入ったころ、先輩に言われたわ」

静かな部室に響く、この部屋の長の声。
普段の、元気だけどやる気のない声とは違う、神妙さすら感じる声。

('、`*川「真実が噂になり、やがて嘘になる。
     犯人はそれを……高速でやれるのかもしれない」

(#゚;;-゚) 「……とんだ嘘吐きですね」



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/21(日) 02:20:43.95 ID:UL8MhmC5O

果たしてそれは、嫌味なのか。

恐れて付けた、忌名なのか。

('、`*川「嘘吐き、か……。まだ可愛いわね、パン程度なら。
     でももし……」

ζ(゚ー゚;ζ「や、止めましょうよ……!
       実際いるかもわからないんだし……」

l从・∀・ノ!リ人「……部長は真実を探す、と言ったのじゃ。
       これはまだ、真実とは言えんのじゃ」

('、`*川「……そうね、まだ仮定も仮定。真実とは程遠いわ」

でも、と付け加え、ペニサスは言う。

('、`*川「私はこの事件の真実を知りたい。
     そして……嘘吐きの事も……!」



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